お気に入りして頂けたり、少しテンション上がりました。
仕事の関係上、とてつもなく遅筆ですがご容赦下さい。
チーム所属のウマ娘は完全妄想です。
リギルはルドルフやマルゼンスキーから伸び始めたチーム。
シリウスはかつての最強から話題性のあるウマ娘が多数在籍したチーム。
アンタレスは伏兵から王道まで特徴的なメンバーがそろったチーム。
そんなイメージで考えてます。
それでは、お目汚しになるかと思いますが、お読み頂けますと幸いでございます。
私はマックイーンには勝てない。
昼食の時間が終わり、トレーニングウェアに着替えてレース場に向かう。
マックイーン…アサマおばあ様、ティターン叔母様と続くメジロの本家筋。
私たちメジロの家には一つの命題として『天皇賞制覇』がある。
重賞レースと呼ばれる高ランクレースの中でもG1という最上ランクレース、そしてその中で最も格式の高いレースが天皇賞。歴史が一番古く数多くの名勝負が繰り広げられてきた。
私たちメジロ家はアサマおばあ様、ティターン叔母様と親子2代の天皇賞制覇を成し遂げていて、マックイーンは3代天皇賞制覇を目標として日々研鑽を積んでる。
それに比べて私は何を目標にトレセン学園に入ったのか、何のためにレースを走るのか、何も見つからないままだ。マックイーンと一緒に走ればわかるのかな?そんな事を思っていた時期もあったけど走れば走る程マックイーンとの実力差、意識の差を実感してしまった。
そして気が付けば一緒にいるのが怖くなって、マックイーンの邪魔をしてしまうのではと心配になり一緒に走らなくなっちゃった。
幸いにしてスポーツが好き、筋トレが大好きなおかげでトレーニングルームで気を紛らせ、レース以外のスポーツを友人と遊ぶことで悩みから逃げる事が出来た。
だけど、いくら鍛えたって私自身に自信がないのは変わらない。結局私はどこに行っても変われないのかな。
そんな事を考えながらストレッチをしながら今日走る子達を見回す、みんな気合の入ったいい顔をしている。観客席を見れば複数にトレーナーさんが既に準備をしている。
スカウトされたい、私を見て貰いたい。いい才能を持っている子をスカウトしたい。
そんな気持ちが今このレース場に充満してる様に感じ、居心地が悪くなった気がした。
私みたいな中途半端な者が居ていい場所なのかな?模擬レースでこの雰囲気、この先のレースに私は挑んでいいのかな?
「本日の芝・2200左周りに出走の16人は準備お願いしまーす!」
既にトレーナーと契約している先輩が声を掛ける。
模擬レースだからか仰々しいゲートは設置されていない。
私は事前にくじで決めてあった7枠・13番の位置につく。走る距離は長くなるけど外よりの枠でバ群に揉まれないの良いかもしれない。アイネスは内側の2枠・3番、そしてマックイーンは大外の8枠・16番だ。
自信が無いせいなのか鼓動が速くなってきた。吐き気もする…
自分の思考とは裏腹にパァンッ!というスタートの合図と共に私の体は自然に駆けだしていた。
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自分が事前にチェックしてた子を見る、やはり間違いなく今日走るどのウマ娘よりも優れたバ体をしている。鍛え抜かれた体躯は爆発的な加速と素晴らしいトップスピードを発揮するのに必要な条件である。
本日の模擬レースの出走表に目を落とす。
恐らく1番人気は、メジロの本家筋のご令嬢だろう。ラモーヌさんからも素晴らしいとは聞いている。2番人気はアイネスフウジン、逃げを得意とした子らしい。
あの子は…恐らく4番あたりだろう、メジロ分家と考えるとラモーヌさんやメジロアルダンさんから連想されて人気が出るだろう。
「わかった!君のお目当て!ハクタイセイちゃんでしょ?ハイセイコーさんの親戚だし話題性あるよね!」
「…はぁ、違いますよ。」
「えぇ!!じゃぁ誰だろ?メジロマックイーンさん?アイネスフウジンさん?」
「そんなに知りたいですか?あなたが教えてくれたら答えますよ?」
隣で顎に手を当てて出走表とにらめっこしている彼に呆れつつも訪ね返す。
「う~ん、本当はライバルには教えたくなかったんだけどなぁ」
顎に手を当てながら彼は悩み始めた。
「ライバル?」
聞きなれない言葉に思わず聞き返す。
シリウスシンボリさんとリギルに助けられた自分を周りの人間は『恵まれた者』『虎の威を借りる狐』と影で呼んでいるのは知っている。更に言えば東京優駿の後、シリウスシンボリさんの結果を見た者たちからは『リギルの有望株を潰した男』『リギルの失敗作』とまで呼んでいる。もちろんメディアからも存分に叩かれ、メシのネタにされていた時期もあった。
そんな自分をライバルと目の前の優男を言っている。
「うん、君は俺のライバルだよ。知っているかい?俺と君は同期の若手トレーナーなだけじゃないんだ。トレーナー養成機関の同期でクラスも同じ、君は俺たち世代ではトップの成績で養成機関のエリートコースを進んでいた。俺は精々トップ10程度で常に君の背中を追い続けていた。君に追いつく為に君が出した育成論の論文も穴が開くほど読んだ。君が当代最強のリギルの東条さんから直々にスカウトされてサブトレーナーになったって聞いた時、俺はシリウスのお師匠に土下座して弟子入りさせてもらった。君がサブトレーナーを卒業してシリウスシンボリさんとデビューした時は心が折れそうになった。だけど、やっと同じスタートラインに立てそうなんだ。こんなに心躍ることはないだろ?漸く君に勝てる、君と競えるんだ。」
先程迄のふわふわした雰囲気から一遍、目に闘志を滾らせ、獲物狩る猛獣の様な圧を自分に向けてきた。
驚いた、同期の手前か良く会話する中で彼は良くも悪くものんきで優しい、そんな印象を持っていた。そんな彼から発せられる気迫に思わず飲まれそうになる。
「君がどのウマ娘を気にしてるのかは知らないけど、俺はメジロマックイーンをスカウトする。メジロマックイーンとシリウスと共に君に挑戦して勝つ!」
メジロマックイーンさんか…倍率高いですよ?でも目の前の彼ならきっと射止めるだろう。そして彼女をスカウトするという事は自分と、自分がスカウトしたいあの子と必ずぶつかる事になる。
「なるほど、素直にライバル宣言は…嬉しかったです。そして、どうやら自分は貴方のライバルとしてちゃんと機能出来そうで安心しました。」
自分の発言に彼は首を捻る。
「言ったでしょう?『自分が一番速く走れると気づいてない子』だと、自分はメジロライアンさんと共にこのトゥインクルシリーズを駆け抜ける予定です。」
宣戦布告とも取れる返答、しかしお互いまだスカウトすらしていない。そんな状況に少し笑いそうになりながらターフに視線を戻す。
レースがスタートする合図が鳴り響き、彼女たちが一斉に駆け出した。
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スタートと共に1人がポーン、ポーンと2段3段加速してハナを奪う。
アイネスだ。彼女の得意な『逃げ』のスタイル、そしてアイネスに釣られるように何人かが無理やり加速して追い付こうとする。
スタートは自分たちが走りたい好位置を争う為に我先にと前に出る内埒に向かう等様々な駆け引きが起きる、そしてその熾烈な争いの結果が異常な体力消費だ。
私は逃げるアイネスを追わずに中段の外目、6番手付近に位置取る。ここなら前方先頭集団の動きが見えるからだ。マックイーンは前方の先頭集団のすぐ後ろ、4番手の位置で落ち着いた。
ウダウダとした思考のループに陥ってたのにゲートが開くと共にレースの事しか頭に浮かばないのはきっと私がウマ娘だからかな。
集中が対して出来ていなかったのに遅れることもなく綺麗にスタートできたのは普段鍛えてる筋肉達が助けてくれてるんだと思う。
トレセン学園内のレース場は東京レース場が再現されている。確か実際のレースで2200は開催されていないはず。このコースでは、向正面から第3コーナーにまたがるアップダウンと最終直線にある坂がキーポイントになるはず。
第2コーナーに差し掛かってインコースの奪い合いが激しくなる。コーナーは外より中を走る方が距離ロスが少なく体力消費が少なくなる。
私は外目枠からスタートだった為、最内に寄ろうとはせずにインコース争いに参加せず横列の中段で抑えようとした。体力はまだまだ大丈夫。
ふと外目に目やると大外だった子が無理やり内に寄せて来ている。私を内側に押し込んででも内を走りたいみたいだ。
肩と肩が接触しそうになる、時速60kmを超える速度で走る私たちにとって接触するの事故に繋がる。最悪転倒した場合、それは怪我では済まされない。
押し込んでくる子に目をやると必死の形相で走っている。瞳孔は開き気味で周りなんて見えていない。隣が
接触した結果、不利な状況になるのも嫌だ。仕方なく私は外目の子に向かって一歩踏み込む。
肩が接触して強い衝撃が体を走る、踏み込んだ足で踏ん張って地面を強めに蹴る。接触した際の衝撃を使って外にいた子の前に出るように加速する。
私と接触した子は衝撃に耐えきれず少しよろめきながら外目に戻されて速度が落ちる。一瞬だけ後方に追いやったその子に目を向けると信じられないといった顔でこちらを見ながら
最後尾の集団に飲み込まれていった。
悪い事をしちゃった、あとで謝らないと。
そう思いながら向正面に差し掛かり2バ身程前を一定のペースで駆けるマックイーンを見据えた。
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「すごいフィジカル…相手を弾き出して自分は再加速できるってやばいね!」
うっひゃーと言いながら彼は笑っている。
メジロライアンさん、名門メジロ家にして今年のトップのひとりであるメジロマックイーンさんと同期。不運な時代に生まれたとも言える。現にこのレースのメジロマックイーンさんは『先行』の理想型の走りをしてる。
好位追走の走りは注目を集めるタイプだ。それに対してメジロライアンさんは、『差し』の走りでレースを進めている。
『才能に溢れた同門の影に隠れて自信がない。』『信念の様な物が無いせいでレースに気持ちが向いていない。』
これがメジロライアンさんの事前集めた評価だ。前者は同意できる、彼女はコンプレックスを抱えている。
だが、後者の意見は全否定させて貰いたい。彼女はゲートが空いた瞬間から今まで普段持ち合わせているネガティブな感情を一切出さず走る事に集中出来ている。
そして今見せた他者を圧倒出来るパワー、情報によるとラントレーニングよりもトレーニングルームでの筋肉に負荷をかけたトレーニングを多く行っている。
走ることで得るものは勿論多いが、体を鍛えるのは確実に下地を作り他者との差を広げてくれる。
更に言えば、レースの練習をせずとも彼女は自分の走りに理解がありレース運びも理解している。現に差しの作戦で駆ける彼女の位置取りにミスはない。
『天才』は間違いなくメジロマックイーンさんだろう。だが『努力の天才』はと言われたら…
目の前のレースは向正面のストレートを彼女達が駆け抜けていた。依然として先頭はアイネスフウジン、メジロマックイーンは3番手、メジロライアンは6番手。
ここからはアップダウンがある。第4コーナーの出口で自分が見たい彼女の才能の片鱗が見れるだろうと思いながら勝負の行く末を見ていた。
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第3コーナーに差し掛かり徐々に全員の速度が上がっていく。ここからは緩やかな下り坂、そして最終直線には急こう配な上り坂となっている。
ここで速度を上げることで上り坂のタイミングで惰性を効かせて上り切ってスパートを掛ける、そんな考えで速度を上げる子が多かった。
いや、それではきっとマックイーンには勝てないよ。
きっとマックイーンは第4コーナーを抜けたタイミングでスパートを掛ける…他の子達が速度を落としながら登る坂を一気に駆け抜けようとする。
アイネスもだ、逃げ足を維持してるアイネスも登り坂のタイミングで最後の力を振り絞ってくるはず…なら、私はどうする?
6着をキープしながら第3コーナーが終わり第4コーナーに差し掛かる、私のパワーとスタミナなら…行けるよね?…いや!行く!!!
外目を走りながら軸足に最大現の力を籠め、地面を蹴り一気に加速しようとする。
『ズドンッ!!!!』
周りが一瞬スローモーションに感じた。
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わたくしは先団を維持しながら4コーナーを抜け、直線に入る瞬間にスパートを掛ける為に体制を整えようとしましたわ。
その時わたくしの後方からとてつもない音が聞こえ、体が竦みそうになる圧を感じました。
「!?ッ」
ドッドッドッドッドッドという地面を抉る様な足音が迫ってきて慌ててスパートに入る。
あぁ、『彼女』の足音ですわ、最近は一緒に走らなくなってすっかり忘れていましたわ…ライアンの怖さを。
慌ててスパートに入った結果予定よりも早い位置でのスパートになってしまい目の前に聳え立つ坂を越え、ゴールに駆け込むその時迄スタミナが持つか心配ですわ。
それでも、ライアンの『圧』に飲まれるよりはマシですわ!
意を決して一気に坂を駆けのぼる。まだ先頭のアイネスさんの背中は遠く感じた。
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このまま、このままなの。
あたしについてきてる子はもうバテバテ、後は沈むだけ。私はもう少しだけ余力が残っている。
ライアンちゃんにも負けたくはない。でもマックイーンちゃんにも負けたくないの!!
坂を上りはじめるタイミングで呼吸を止める、吐く息と一緒に残したスタミナが吐き出されてしまう。息を入れるなら上り切った最後の一瞬。
そこから本当のスパートなの!
歯を食いしばって坂を駆けあがろうとした時に後方からすごい『音』が聞こえた。
びっくりして後ろを見ると4コーナーの終わり、大外からライアンちゃんがとてつもなく低い姿勢で駆けこんできている。
「なっ?なの~~~!!!」
このままでは喰われる、残しておくつもりだった体力を全て使ってスパートに入った。
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『ズドンッ!!!!』
確かに聞こえた、きっとターフを駆ける彼女達には更に大きく聞こえたハズだ。メジロライアンさんが大外から仕掛けた音、デビュー前にしてシニア級の子達並みに鍛え抜かれた下半身がターフを抉り取っていく。ふざけたパワーだ、更に彼女のスパートと共に周囲にいた子達は音とその加速力に萎縮して速度が落ちている。
「ハハッ、これですよ。自分が魅入ってしまったのは、彼女圧倒的なパワー、そのパワーが生み出す爆発的な加速力です。」
思わず笑みが零れる、見たかったものが見れた。特にメジロマックイーンさんとアイネスフウジンさんは一早く彼女のスパートに気づいてしまった。その結果、
「つられて有望株の子達が全員スパートしてしまいましたね。これは最終直線でスタミナ切れが起きそうです。」
「すごいな。あの子、スパートで全員のペースが崩れちゃったよ。…でも」
彼が感心しながらも続ける。
「スパートが早いね」
そう、彼女の欠点は自信が無い故に自身のベストタイミングでの仕掛けが出来ない。恐らく彼女のベストな位置はコーナー出口で大外からのスパートだ。
その癖を治せないと彼女は永遠に勝ちに近づけない。
現在彼女は3着まで上がってきている。1着は依然としてアイネスフウジンさんだが速度確実に落ちて来てる。そこから2バ身離れてメジロマックイーンさん、そこから4バ身離れている。
坂を上り切った段階でアイネスフウジンさんとメジロマックイーンさんの差はもうなかった。そしてアイネスフウジンさんはそのまま抜かれ失速していく。それでも最後の意地で尚も2着をキープしている。
対して彼女は速度上げようと藻掻いているが既にスタミナが限界で速度が上がらない。1着のメジロマックイーンさんも限界に近い苦しい顔をしている。
勝負はあった、その代わり成果もあった。彼女の欠点はただ一つという事もわかった。
録画機器などを片付けタブレットを鞄にしまい、立ち上がる。
「えぇ!?最後まで見ないの?」
彼がギョッとした表情でこちらを振り向く。
「えぇ、見たいものは見れました。結果ももうわかりました。」
ではと会釈をしてレース場を後にする。彼女をスカウト出来たらと考えると少し気持ちが高揚してくる。彼女が化けた時、メジロ家に天皇賞春の盾は果たして誰が持っていくのでしょうね。秋の盾に刻まれる名前は果たしてどちらでしょうね。
鞄から一枚のファイルを取り出す。
『優先交渉権』
少し眺めた後に鞄に戻して、寮へと歩を進めた。
かなり遅くなりました。
駄文ですが読んで頂けると幸いです。