頭文字D 〜公道のハヤブサ〜   作:Many56

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どうもMany56です。
リクエストがあんまり集まらないのがちょっと悲しいです。
昨日は頭文字D THE ARCADEのオンライン対戦で久しぶりに2連勝しました。
1戦目は得意コースの秋名湖の左回り、相手はR34GT-R。NSXを使用しました。いやー、久々の勝利で嬉しかったです。
なんとなくなんですけど、NSXの方がR32より速い気がしますね。
2戦目は苦手コースの秋名(雪)で上り、相手はS30型のZ。今度はインプレッサを使用。コーナーで詰められましたがスケートリンク前の長いストレートで引き離してなんとかって感じでしたね。
やっぱり雪だと4WDの方が強いんですかね?
さて、9話目です。
皆大嫌いなアイツが登場します。


Act.9 Dirty Civic

 

 

 

「   というがあったんだよ」

 

帰宅した後、俺は親父とキリエに今日あった事を話した。

 

「ふーん。ハチゴーでもS13や180をね……」

 

「ああ。大した上手い奴らでもなかったけど、アレだけの性能差を軽く縮めてくるとはね」

 

「ふむ。思っていた以上に、文太のせがれのドラテクには幅広い適応性があるという事か」

 

「やっぱり、車体や足回りがハチロクと同じだったから操縦性が近かったのかな?」

 

「いや、それはないと思うぞ、キリエ。文太が時間をかけて作り上げたハチロクの足と、隼人の友達の買ったばかりハチゴーの足じゃあ、月とスッポンさ」

 

「え? じゃあ、兄ちゃんの友達の拓海って人、どんな車でも乗りこなせるって事⁉︎」

 

「流石にそこまではいかないだろ。でも、FRに限れば大抵の車は少し走ればすぐに限界性能ギリギリまで引き出せるんじゃないかな。ハア、自信無くしそう」

 

「何言ってるんだ、隼人? 4WDは初めてだったにも関わらず、たった1週間でインプを完璧に乗りこなせるようになったお前も相当だぞ?」

 

「え、そうか? 1週間もあれば流石に慣れると思うけど……」

 

「バカ言え、お前の場合は1週間で慣(・)れ(・)る(・)を通り越して乗(・)り(・)こ(・)な(・)し(・)て(・)る(・)んだよ。確かに、慣(・)れ(・)る(・)だけなら大抵の場合は1週間もあれば出来るがな、乗(・)り(・)こ(・)な(・)せ(・)る(・)ようになるには、相当走り込む必要がある」

 

「あ、はい」

 

「やれやれ、コイツも大概だな」

 

 

 

●●●

 

 

 

数日後

秋名山

 

いつものように、秋名山へと行く。

頂上の料金所跡には、既にスピードスターズのメンバーが揃っていた。

そして、そこではシルビアがサイドターンをしていた。

 

「どうも、先輩。サイドターンの練習ですか?」

 

「ああ、ちゃんとしたドリフトが出来るようになるために、まずはサイドターンが出来ないとな」

 

「なるほど。先輩達のはドリフトじゃなくてパワースライドでしたからね」

 

「まあな。いつかは拓海みたいな、カッコよくて速いドリフトが出来るようになりたいぜ」

 

「そりゃ難しいっすね。拓海のドリフトは荷重移動だけで曲がるブレーキングドリフトってだけじゃないですから。四輪ドリフトかつラインをセンチ単位で調整出来るトンデモ領域。池谷先輩がやってる、サイドブレーキでキッカケを作る初心者レベルのサイドドリフトからそこまで行くにはすごい時間かかりますよ」

 

「んな事は分かってるよ。少しでも追いつくために練習するんだ。さてと、俺はそろそろちゃんとしたコーナーで曲がる練習をしてくるよ」

 

「対向車に気をつけて。ああ、あと俺にも気をつけて下さい。すぐ抜くと思うんで」

 

「ハハハ、そうだな」

 

池谷先輩はそう言って、秋名を下って行った。

俺も早速準備しよう。

いつも通り、紙コップと水を用意する。

 

「この前拓海が言っていたヤツか」

 

健二先輩が聞いてくる。

 

「ええ、でもやっぱりかなり難しいですね。グリップ走行ならなんとかなるんですが、ドリフトが上手くいかなくて」

 

「当然だろ。いくらなんでも、コップの水を溢さずにドリフト出来るまでには、年単位の練習が必要だって。拓海でさえ、溢さずに走るだけで3年、ドリフトでも溢さないようになるまで5年かかってんだから」

 

「でも運転歴だと俺の方が倍以上なんですよね。実際、溢さずにグリップ走行するだけなら1週間もかからずマスターしましたし」

 

「マジかよ……!」

 

「さてと、それじゃあ俺も行ってきます」

 

シフトをニュートラルから1速に入れて出発した。

しばらくすると、前に車が2台走っている。どうやらバトルしている様子だ。

前の車は池谷先輩のS13か?

後ろのは、赤い車体が映えている。

ホンダのEG6型シビックか。

後ろについて、様子見だな。

そう考えていると、コーナーが見えてきた。

そして、シルビアがターンインに入った瞬間だった。

EG6がS13のリアバンパーを突いたのだ。

リアの荷重が抜けていたS13は、そのままコーナーのRに沿ってスピンして停車した。

一方のEG6もそのまま停車する。

だがドライバーは、謝りに車を降りるわけでもなく、そのまま去って行こうとする。

間違いなく確信犯だ。

 

「あの野郎、わざとだろ……!」

 

池谷先輩は追いかけようとするも、発進が遅れた事や、そして何より相手のテクニックが凄まじかったが故に、追いつく事は出来なかった。

そして麓まで下りきると、駐車場には先程のEG6が停まっていた。

他にも、ソイツのお仲間さんがいる様子だ。

 

「おい、お前! さっき俺のシルビアぶつけやがっただろ!」

 

「ああ、さっきの」

 

「何が『さっきの』だ! 謝れよ、1つ間違えたら、大怪我してたんだぞ!」

 

「はあ? 悪いのはそっちだろうが。まさか、あんな遅いツッコミとはな。誰だってブレーキ間に合わずにぶつけちまうよ」

 

「この野郎……!」

 

「池谷先輩ストップです! いくらなんでも、手を出しちゃダメですって!」

 

「どうしても謝って欲しいなら、謝ってやっても良いぜ。俺達のルールでダウンヒルバトルして勝てたらな」

 

「ルール?」

 

「大した事じゃねえさ。俺達は“ガムテープデスマッチ”って呼んでる。右手とステアリングをガムテープで固定してその状態でバトる、それだけのルールさ」

 

「なんだよそれ、ハンドルがほとんど切れないじゃないか! いくらなんでもヤバすぎる」

 

「お前なんかじゃ話にならねえな。そうだ、秋名には下り自慢のハチロクがいるそうじゃねえか。そいつを出せよ」

 

「!」

 

「今度の土曜日、秋名山頂でナイトキッズの庄司慎吾が待ってるって伝えておけ」

 

そう言い残して、EG6は去って行った。

 

「なるほど。拓海への挑戦って訳か」

 

 

 

●●●

 

 

 

翌日

GSゼネラル

 

池谷先輩が、店長と話している。

どうやら昨日会ったシビックのことだ。

 

「本当に、昨日のヤツには頭に来ましたよ」

 

「そうか、そいつは災難だったな」

 

「ただ、1つ気になる事があって」

 

「なんだ?」

 

「そのEG6、もの凄いスピードでコーナリングしながら、ブレーキ踏んでたみたいなんですよ」

 

「そうですか? 俺なんて、コーナー中にブレーキ踏むなんてしょっちゅうですよ」

 

イツキが話に割り込んできた。

 

「あ、スピード出過ぎた、怖いよチョンチョンって。くーっ、俺ってもう走り屋だよ〜」

 

バカかこいつは。

とりあえずイツキは無視だ。

 

「多分それは左足ブレーキですね」

 

「左足ブレーキ?」

 

知らないらしいから説明した。

 

「カートでもよく使われるテクニックですよ。俺もインプ乗ってる時にちょくちょく使います。ただ、俺みたいなカートとFF車じゃ用途が違いますけど。カートの場合は、普通にヒール・アンド・トゥーと同じ役割ですね。カートにはクラッチペダル付いてないんで、左足でブレーキ踏むのが普通なんですよ。FF車の場合はアクセル踏んだらアンダーなんで、リアの荷重を抜いて姿勢制御するために左足でブレーキ踏むんですよ」

 

「なるほどな」

 

「少なくとも、あのハイレベルっぷりには驚嘆ですね。ムカつきますけど」

 

「ああ、全くだ。速いのは認めるが、あのやり方は許せねえ。しかも、ガムテープデスマッチでの挑戦をしてきやがった」

 

「右手とステアリングをガムテープ固定するアレか?」

 

「そうなんですよ、店長」

 

「マジか。ソイツはあまりに無謀すぎるな」

 

本当にヤバいからね、このルール。

特にFRには危険だ。

ステアリングがほとんど切れないんから、全コーナーをドリフトで抜ける必要がある。

だからといって、ただ単に滑らせれば良いって訳じゃない。

カウンターを当てられないからドリフトのコントロールがメチャクチャ難しくなる。

ちょっとでもオーバーを出せば即スピン、かと言ってアンダーを出せばガードレールか岩壁に突っ込んで一巻の終わり。

ハチロクのようなFR車でクリアするには、綱渡りのような狭いコントロール領域をドリフトでも走り続ける必要があるのだ。

 

「まず、受けるべきじゃないですね」

 

「しかも相手はFF車だ。FFならオーバーステアをアクセルで止められるし、サイドを引けばアンダーも消せる。最悪の相手だな」

 

俺の言葉に続けて池谷先輩もそう言った。

そんな話をしていると、健二先輩がやってきた。

 

「よう、池谷。この前、お前が会ったっていうEG6のドライバー、庄司慎吾ってヤツを調べたんだが、どうも妙義ナイトキッズのメンバーで、しかもナンバー2らしい」

 

「ナンバー2?」

 

「一応はな。だが、下りには自信があるらしくて、自分でもナイトキッズの下り最速を名乗ってるそうなんだ。だが、目的のためなら手段を選ばないらしくて、チーム内での人望はあまりないらしい。特に、リーダーの中里とは犬猿の仲なんだとか」

 

「なるほどな。それで拓海にバトルを挑んで、チーム内での主導権を握ろうとしてるのか」

 

なるほど、マジで最低だな。

それはそうと、なんかイツキのヤツが「くーっ‼︎」の状態からあんまり戻ってない気がする。

いや、戻ってはいるんだけど顔がね。

真面目な話してるってのに。

 

「どうしたイツキ? なんか浮かれてるみたいだけど」

 

「ああ、いや、大した事じゃないですよ」

 

いや大した事あるだろ。

明らかに口がニヤけてるもん。

あ、分かったぞ。

 

「なるほど、女の子か」

 

「‼︎」

 

俺が言った瞬間イツキが顔色を変える。

図星だな、こりゃ。

まあ、彼女とかできれば普通は浮かれるもんだ。

俺はその辺にはかなり疎いけど。

 

「ああ、この前言ってた、沙織って子だな! 先輩を差し置いてこの野郎」

 

「はい、今度、秋名湖でデートしに行くんですよ!」

 

マジか。

コイツがこんな速い段階で彼女ゲットするとは思わなかった。

 

「なるほどな、そういう事だったのか」

 

「という訳で店長、休みもらいますよ」

 

「やれやれ、まあ良いだろ」

 

「チクショー。羨ましいぜ」

 

本気で羨ましがる池谷先輩。

ただコイツの事だからどうせ……。

 

「浮かれてハメ外しすぎて、調子乗って失敗する未来が見えたわ。十中八九フラれるな」

 

「ひでぇ事言うなよ、隼人! あ、さてはお前、羨ましくて嫉妬してるんだな?」

 

メッチャ腹立つ顔してやがる。

無性にグーで殴りたくなってきた。

 

「今のところ恋愛に関しては興味ないから羨ましいなんて思わないな。だが、お前がフラれたところを冷やかしに行ったらどれだけ面白いことか、フフフフフ……」

 

「お前、趣味悪いな」

 

「ははは、冗談だよ。まあ、楽しんでこい」

 

 

 

●●●

 

 

 

さてと、今頃イツキは秋名湖でデートしてるんだろうな。

一方、俺は机に向かって勉強中。

成績良いから、割とガチで大学進学狙ってます。

出来れば国公立ね。

そんな時、親父から呼ばれた。

 

「おーい、隼人! ちょっと仕事手伝ってくれ」

 

「仕事?」

 

「ああ。秋名湖のホテルのバスがエンストしたらしい」

 

「この時間にか……。やれやれ、分かったよ」

 

そして、仕事用のワンボックスに色々詰め込んで出発した。

 

 

 

数時間後

 

「いやあ、思ったより時間かかったな」

 

「まあ、来た時点で既に日没してたしね。暗くて作業しにくかった」

 

そんな事を親父と話し合ってると、後ろから2台の車が駆け抜けて行った。

バトルしている様子だ。

2台がコーナーに入った直後だった。

ガシャッ!   という何かが潰れる音がした。

そして、そこにはリアハッチの潰れたレビンがあった。

間違いなくイツキである。

 

「おいイツキ、大丈夫か⁉︎」

 

「は、隼人……」

 

力なくイツキが答える。

隣には、怯えた様子の女の子がいる。

彼女が沙織って子だろう。

だがそんな事は後でいい。

 

「今は何も喋んなくていい。すぐ病院連れてってやるから!」

 

2人を車に乗せて、そのまま病院へと向かった。

 

 

 

市立病院

 

「イツキ、大丈夫か⁉︎」

 

病室の中に、池谷先輩と拓海が飛び込んで来た。

 

「あ、拓海に池谷先輩」

 

「どうしたんだ、一体?」

 

「心配要らないっすよ、池谷先輩。見た目ほど酷くはないですから。まあ、念のため検査しなきゃいけないから入院する事になっちゃいましたね」

 

「沙織ちゃんはどうしたんだ?」

 

「彼女はちょっと擦りむいただけだったから、家に帰ったよ」

 

「車の方は?」

 

「イツキのハチゴーは、今頃俺の親父の工場ですよ。リアのトランクルームが潰れたくらいで、そこまで酷くはないです」

 

「そうか……。あ、さては沙織ちゃんにカッコつけようと秋名攻めてたら   」

 

「そんなんじゃないですよ。例のEG6にやられたんです」

 

からかおうとした池谷先輩にそう言った。

当然それに2人の顔が変わる。

 

「!」

 

「あの、庄司慎吾とか言うムカつくヤツか⁉︎」

 

「ええ、間違いないです」

 

「コーナーで後ろからプッシュされて、そのせいで……」

 

「あの野郎……またやりやがったな!」

 

「……隼人、確かソイツ、俺にガムテープデスマッチとかいうの挑んできてたんだよな?」

 

「ああ……って、まさかお前!」

 

「ガムテープデスマッチだろうがなんだろうが、やってやる!」

 

「やめるんだ、拓海! あまりにも危険すぎる!」

 

「俺負けませんから、池谷先輩。何があっても!」

 

そう言って、拓海は病室から去って行った。

 

 

 




スッキリしたエピソードからの腹立つエピソードという流れでしたね。
次回、決着です。
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