頭文字D 〜公道のハヤブサ〜   作:Many56

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どうも、Many56です。
最近ピッコマで、以前から気になってた「賢者の弟子を名乗る賢者(コミカライズ版)」を読み始めたんですけど、面白いですね。
もうすぐアニメ放送なんで楽しみです。
さて、設定除くとこれが10話目なんでちょっと嬉しいです。
EG6対ハチロクをお楽しみ下さい。


Act.10 拓海の怒りとデスマッチ

 

 

 

土曜日

GSゼネラル

 

赤いシビックの走り屋、庄司慎吾がバトルを指定してきた日だ。

池谷先輩が踏み止まるよう説得を試みたが、やはりダメだった。

そして現在、先輩達はその事について話し合っていた。

 

「何、拓海がガムテープデスマッチを⁉︎ いくらなんでもマズイだろ!」

 

「ああ。アイツ、イツキがやられてキレちまったみたいなんだ。気持ちは分かるけど、やっぱり無謀としか思えない」

 

「今日、土曜日じゃんか。拓海はどうしてるんだ?」

 

「今日はバイト休んでるよ。仕事終わったら、また説得しに行かないとな。健二、お前も手伝ってくれないか?」

 

「ああ、もちろんだ。拓海が事故って大怪我なんてしたら、シャレじゃ済まないからな」

 

「隼人、お前も手伝ってくれないか?」

 

「……そうしたいとは思ってるんですけどね、アイツの性格からして説得なんて逆効果だと思いますよ。むしろ走らせるべきなんじゃないか、とさえ思っていますね……」

 

「は、隼人?」

 

「おいおい、お前なら分かるだろ。普通に考えてヤバすぎるって!」

 

()()()()ヤバいっていうのは重々承知していますよ。でも、拓海の走りは()()()()()()んですよ?」

 

「「‼︎」」

 

「池谷先輩も健二先輩も体感したじゃないですか、拓海の走りの異常さを。拓海に対して常識がどこまで通用するのか、アイツならどうにかしてしまうんじゃないか、どうしてもそう思ってしまうんですよ」

 

「隼人……」

 

「でも、やっぱり危険ですよね……」

 

「そ、そうだな。仕事上がったら、説得しに行くか」

 

 

 

秋名山

 

ここに来る少し前に拓海の家に寄ったのだが、アイツは不在だった。

とりあえず池谷先輩が親父さんにも説得してもらうよう頼んだけど、止められるかな?

まあ、無理だったら諦める他ない。

そして現在、秋名の峠には多くのギャラリーが集まっている。

どうやら、相手側が集めたらしい。

 

「うわぁ……。結構集まってるぜ」

 

「あんまりギャラリーが多いと困るな。俺達はあくまで、拓海の説得に来てるんだからな」

 

EG6の方は既に来ている。

あとは拓海のハチロクが来るかどうかだが……。

 

「来たぞ、“秋名のハチロク”だ!」

 

その声と同時に、4A-Gのエキゾーストが聞こえたきた。

そしてスタートラインで停まり、拓海が降りてきた。

その様子を見る限り、やっぱりやめる気はないみたいだな。

だが、そんな事はお構いなしにすぐに先輩2人が駆け寄って説得し始めた。

 

「拓海、今からでも遅くない。こんな馬鹿げたバトルはやめるんだ!」

 

「なんでですか? 俺、あんなヤツに負けるなんて死んでも嫌なんですけど」

 

「相手はFFのEG6だぞ? ステアリングの舵角が大きく制限されるこのルールじゃ断然FFが有利だし、相手は練習しているに決まってる! 何より、ワンミスした瞬間死ぬかもしれないんだぞ⁉︎」

 

「おいおい、まさかとは思うが今更逃げようとかいう相談してる訳ねえよな?」

 

そう煽ってくるのは相手の庄司慎吾だ。

 

「池谷先輩、俺逃げるつもりないですから」

 

先輩2人は拓海が珍しく発している気迫に押されてたじろいでいる。

 

「拓海、本当にやめるつもりはないんだな?」

 

「ああ」

 

拓海は俺の質問にも迷いなく答えた。

 

「はぁ〜……。池谷先輩、もう諦めた方がいいかと」

 

「だ、だけどよ……」

 

「俺がコイツらの後ろを追いかけて、このバトルを見届けます。こうすれば、何かあってもすぐ対応出来ますし」

 

「……分かった、そうしてくれ」

 

その後、2人はそれぞれ右手とステアリングをガムテープで固定された。

俺はハチロクとEG6の後ろにインプを並べて、すぐに出られるようにする。

準備は整った。

もう止める事は出来ない。

このバトルを、最後まで見届けるだけだ。

 

 

 

●●●

 

 

 

「先に行けよ、ハチロク」

 

慎吾は拓海に対して、これみよがしに煽る。

そして、バトルか始まった。

ハチロクはホイールスピンさせて、一気に加速していく。

そして、EG6もそれに続いてスタートしていった。

 

「俺も行くか!」

 

そして、インプレッサも後を追うために加速していった。

 

スタートして、あっという間に第一コーナーが見えてきた。

拓海はいつも通りシフトダウンとブレーキングを決めて、ドリフトしながらコーナーへと進入する。

だかその直後、カウンターを当てられない事に気づく。

このままではオーバーステアでスピンだ。

 

(いったな)

 

「ヤバい! なんとか止まってくれ!」

 

ほくそ笑む慎吾に対し、思わず隼人が叫ぶ。

その瞬間、拓海は固定の甘い3点式シートベルトである事を利用して、腰の位置を下げて腕を引っ張り、強引にカウンターを当てて曲がっていった。

 

(危っねえ……ラッキーだったぜ)

 

そう安堵する拓海。

一方、慎吾は少し悔しそうな顔を浮かべていた。

 

(チッ、上手く立て直したもんだな。だが、この調子なら事故るのは時間の問題だ。いくつコーナーを抜けれるかな)

 

(ふう、危なっかしい。見てるこっちがヒヤヒヤするぜ。さすがに拓海でも、厳しいか……?)

 

隼人が冷や汗をかいている間にも、そのままペースのまま2つ目、3つ目とコーナーを曲がっていく。

そして、スケートリンク前のストレートの手前にある2連続のヘアピンに入った頃だった。

 

(何故だ、何故曲がれる? いきなりでこなせるほど、ガムテープデスマッチは甘くない)

 

「オラオラ、もっと焦りやがれ! もっと攻め込んで事故っちまえよ!」

 

慎吾はそう考えながらハチロクを煽るが、反応は芳しくない。

一方その頃、拓海はこのバトルのコツを掴み始めていた。

 

(行ける……いつもより飛ばせる。そうか、ハンドルに頼らずに曲がった方が速いのか!)

 

そして、そこからハチロクはペースを上げ始め、コーナーを危なげなくクリアしていく。

その様子を見て、隼人も落ち着きを取り戻した。

 

「安定し始めた。やれやれ、心配させやがって。その調子ならこのバトルの形式のコツを掴んだみたいだな」

 

隼人はそう呟きながら、前の2台に付いて行った。

 

(どうなってやがる? 最初の頃はヨタヨタしていたのに、いくらプレッシャーを与えても乱れない。それどころか、どんどん速くなってやがる……!)

 

そのタイミングで、目の前のコーナーの岩壁が明るくなった。

その光はハチロクのものではなく、対向車のものだ。

だが、拓海は全く気にせずに半分の車線で容易く抜けていった。

 

「凄えや。半分の車線だけで華麗な四輪ドリフトをキメやがった! まるでガムテープなんてつけてないみたいだぜ」

 

その頃から、慎吾は拓海のペースについて行くのが辛くなり始めてた。

 

(なんて野郎だ、飛んだ食わせもんだぜ。あそこまでやられちゃまぐれじゃねえな)

 

そして、むしろ開き直って最悪の思考へと走った。

 

「だが、俺は毅のように甘くねえぜ! 勝負ってもんは勝ちゃいいんだよ、どんな手を使ってでもな‼︎」

 

(嫌な気配がする。この進入スピード……まさか!)

 

隼人がそう考えたのも束の間、慎吾は行動に移った。

ガンッ   という鈍い音が響いた。

コーナリング前のターンインをしている最中のハチロクのリアバンパーをプッシュしたのだ。

そのままハチロクは姿勢を崩す。

だが奇跡的に体制を立て直す。

だが、その間EG6が前へと出ていた。

 

「上手く立て直したか、運の良いヤツだぜ。まあ良い。そうなりゃ、このままぶっちぎってやる!」

 

「あの野郎、やりやがった!」

 

慎吾の行為に怒りを見せる隼人。

だが、それ以上にキレていたのはやられた拓海自身だ。

 

「ムカついた、わざとやりやがったな……。テメエみたいなカスには……絶対ぇ負けねえからな‼︎」

 

そして怒りと同時に、ハチロクの4A-Gエンジンが咆哮する。

そして、縁石をまたぐというあり得ない程のインカットを行う。

さらには、ガードレールにぶつけてその勢いで切り返しを行うという、無茶苦茶な走りを始めた。

 

(なんておっかない走りをするんだ……! いつすっ飛んでもおかしくねえ。だが、それなのに安定しているようにも感じるな)

 

隼人はその様子にヒヤヒヤものであったが、感心もしていた。

そして、そんな荒々しい走りをしながら、拓海はハチロクをコントロールし切ってEG6を猛追していった。

 

「嘘だ、何でこのペースに追いつけるんだよ⁉︎ こっちは限界ギリギリだっていうのに‼︎」

 

その走りを見て、慎吾は焦りを見せていた。

そして、次のコーナーも限界ギリギリでツッコミを行うが、平然とハチロクは詰めてきた。

それをミラー越しに見て慎吾は衝撃を受ける。

 

「まさか、ステアリングをほとんど使ってないのか? 荷重移動だけで曲がってやがるとでもいうのかよ!」

 

その走りに、完全に恐怖を覚えていた。

そして、次のコーナー手前で明らかにオーバースピードでEG6に寄せてきた。

 

(ま、まさか、さっき俺がやった事をやり返す気か⁉︎)

 

その恐怖心のあまり、慎吾はバランスを崩してコーナーへの進入にアンダーを出した。

それにつけ込むように、拓海は得意の溝走りでEG6を軽々パスした。

後ろから眺めている隼人は、既に心配などしておらず、むしろギャラリーの気分になっていた。

 

(イン側のタイヤを側溝に引っ掛けて、レールの要領で曲がっていきやがった……! 確かにそうすれば、普通ではありえない速度でのコーナリングができる。でも、簡単に出来る芸当じゃない、すげえ技だ。それにしても、相手は度肝抜かれただろうな。今頃、何がなんだか分からなくて、パニクってるだろう)

 

その強烈な走りに、隼人は完全に見入っていた。

一方の慎吾はというと、完全に取り乱していた。

 

「な、なんなんだ、今の? 何でこんな所で抜かれたんだ⁉︎」

 

慎吾が取り乱している間にも、ハチロクはスーパードリフトでコーナーを抜けて行く。

既に慎吾の限界を上回る速さであり、食らいつく事だけでもいっぱいいっぱいという状態に陥っていた。

 

(こっちから仕掛けたガムテープデスマッチなんかで負けたら、俺はチーム内で笑いものにされて再起不能になる。フフフ……引き分けに持ち込んででも、俺のメンツは保ってみせるぜ)

 

慎吾はアクセルを底まで踏み込み、ストレートで一気にハチロクに迫る。

 

(ヤバい、今まで以上に嫌な気配がする。またバンパープッシュか? いや、もうついて行くので精一杯って様子だ。となると、残るは自滅覚悟の特攻しかねえ!)

 

「バトルの結末は……」

 

「逃げろ拓海!」

 

「ダブルクラッシュだぁ‼︎」

 

アクセル全開でEG6がハチロクにツッコミ、そして   

 

 

 

ドギャッ‼︎

 

 

 

鈍い音を立ててガードレールに衝突した。

 

   EG6だけが。

そして、その衝撃で90度回転し、スライドした後さらにガードレールに衝突してさらに回転し、停止した。

一方のハチロクは見事にEG6の体当たりをかわして、そのままコーナーを抜けていった。

後ろから追いかけていたインプも上手くパスして、そのまま停止した。

 

 

 

●●●

 

 

 

今回のバトルは、EG6がクラッシュして走行不能になった事で、拓海の勝利となった。

それはとても喜ばしい事なのだが、問題はEG6の方だ。

ドライバーは大丈夫なのだろうか。

そう考えていると、かなりやつれた様子で車から降りてきた。

 

「思いっきりやっちまったな。フロントバンパーにリアフェンダー、酷い傷だ。ついでに左側のライトも潰れちまってる」

 

「俺のEG6が……」

 

やれやれ。

そうなるんだったら、最初から荒っぽい走り方をしなければいいのに……。

 

「んで、アンタの方は大丈夫なのか? 怪我とかはしてないか?」

 

「……ぶつけた時に、キックバックで右手をやっちまったみたいだな」

 

「そうか……」

 

そんな話をしていると、上から池谷先輩のS13と健二先輩の180が下りてきた。

 

「うわっ、やっちまったのか!」

 

「池谷先輩、どうもコイツ右手をやっちまったみたいなんで、俺はこいつを病院まで送ってきます。だから、車の方をお願いできますか?」

 

「分かった。すぐにレッカーの手配をするよ」

 

「お願いします。そういう訳で乗れ。こんな所で救急車を呼ぶよりずっと早いからさ」

 

「……さすがに、そこまでしてもらう訳にはいかねえな」

 

「無理すんな、痛えんだろ?」

 

「遠慮する事はないさ。こういう時は、お互い様だろ?」

 

「……俺は、アンタらの仲間を事故らせてんだぞ? それに、そっちのアンタもスピンさせちまったし……」

 

「それはそれ、これはこれだ。地元だから、病院の場所知ってるし」

 

「そうそう。だから、ここは俺達に任せろよ」

 

「……すまねえ、恩に着るぜ。それにしても、アイツ凄えな」

 

「ああ、本当に凄いよ。この状況で勝っちまうんだからな」

 

こうして、ナイトキッズのEG6とのバトルは幕を閉じた。

 

 

 




次回、池谷先輩に天使が舞い降ります。
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