頭文字D 〜公道のハヤブサ〜   作:Many56

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どうも、Many56です。
2週間も空いてすみません。
これから先、しばらく投稿期間が空くことが続くと思うのでご了承下さい。(2週間とか当たり前かと)
さて、いよいよ隼人君対インパクトブルーが始まりました。
初めてのコースでのバトル、結果はどうなるのでしょうか。


Act.13 青い衝撃(中編)

 

 

 

ゆっくりとスタートしていき、1つ目のコーナーを抜けた瞬間、シルエイティとインプレッサの2台は一気に加速して全開走行へと移った。

右へ左へとコーナーが乱立する碓氷のコーナーを、2台はターボ過給を含んだエンジン音と共に次々と抜けていく。

 

(うおっ、速い!)

 

それが隼人の率直な感想だった。

碓氷は秋名以上に暗く、ブラインドも多い。

本来ならば制限速度30km/hから40km/hのところを、このバトルでは100km/hオーバーで駆け抜けていくのだからとてつもない度胸がいる。

そこを軽々と走れるのだから、シルエイティを駆る真子がどれほど凄まじいのかよく分かるだろう。

だが、それに食いついていくのが隼人のインプレッサだ。

シルエイティがアクセルを踏み込めば、インプレッサもそれに追随してアクセルを踏む。

シルエイティがブレーキングすれば、同じタイミングでインプレッサもブレーキングする。

そして、直後のコーナーをどちらもそのまま四輪ドリフトで駆け抜けていく。

 

(正直、思っていた以上にヤバい。けれど、あっちがやれてるんだから、こっちだってやれる。ライン取りからブレーキの開始とリリース、ハンドルの舵角、アクセルの踏み具合、1つ1つコピーすれば必ず行ける。行くぜインプ!)

 

そうして、シルエイティの走りを寸分違わず再現していく。

一方のシルエイティも完璧な走りを見せる。

 

「次の左はインベタ、グリップね!」

 

「オッケー!」

 

真子は相棒である紗雪の指示通り、最速の走りをしていく。

 

「さすが、上手いよ真子!」

 

その直後、紗雪の目にとある物が写る。

 

「障害物あるよ。イン側に寄せて」

 

すぐに真子は右へとハンドルを切り、コーナーへと差し掛かる。

僅かにテンポが遅れたものの、インプレッサも同じラインを描いてコーナーを抜ける。

 

(危っねえ。一瞬遅れてたらヤバかったな)

 

「中々やるじゃない。やっぱり並の走り屋じゃないね。キッチリ食いついてくる」

 

「むしろそうでないと困るわ。先の楽しみがなくなっちゃうものね」

 

「さーて、どこまでついてこられるかしら。私達の本気は、まだまだこんなもんじゃないよ!」

 

シルエイティはさらにペースを上げていく。

もちろん、隼人のインプレッサもそれに合わせてペースを上げる。

 

(思っていたより怖えな。コースを知らないせいで、相手のツッコミのスピードがちゃんと予測できない。予測できないせいで動きが合わせづらい。合わせづらいからコピーも完璧じゃない。しかも、駆動方式の違いが挙動に大きく差を与えるせいもある。DCCDでそれなりに挙動は寄せているとは思うけど、それでもダメだな。これなら先行取っておくべきだったか? いや、先行じゃあもっと分が悪い戦いになってた。アンダー出しまくって置いてかれるよりかは遥かにマシだ。もっと集中するんだ。全部キッチリ完璧にコピーするつもりで走るんだ!)

 

隼人はそう意気込んで、シルエイティ食らいついていく。

 

「さすが、“秋名のハヤブサ”って呼ばれるだけのことはあるわ。そう簡単にちぎらせてはくれないわね」

 

「ええ。でも、これからよ。右かと思ったら左の碓氷の変則コーナーの恐ろしさはね。ちゃんとついてこられるかしら⁉︎」

 

「次は右。狭いよ!」

 

「オッケー!」

 

紗雪の指示に合わせて、しっかりヒール・アンド・トゥを決めてドリフトしながらコーナーを抜けていく。

 

(クソッ、やっぱ速え! けど、同じ走りをすれば離されない。離されてたまるか!)

 

こちらも全く同じラインを描きながら抜けていく。

そして一気に立ち上がりで加速していく。

どちらもアクセルを抜く気はない。

まさに一進一退のギリギリの状態が続いた。

 

 

 

●●●

 

 

 

スタート地点

そこでは、隼人についてきた4人が話していた。

 

「隼人の奴、『目の前の車と同じ走りをすれば引き離されたりしない』って言ってたな」

 

「ええ、言ってました。ハッキリと」

 

池谷の呟きにイツキが答える。

 

「ちょっと信じられねえよな。凄え単純な発想だ。普通そんな事出来ないってのにさ。アイツの頭、どうなってんだ?」

 

「そんなに難しいんすか、隼人が言ってた事って」

 

拓海がそう言うと、池谷がそれに答える。

 

「ああ。目の前の車の走りをまんま再現するなんて、間違いなく神業だぜ。でも、それが出来たからこそ、今の隼人のテクニックがあるんだろうな。そして、それが絶対的な自信の根拠なんだ」

 

「確かにその通りだけど、相手はこのコースを知り尽くした真子ちゃんのシルエイティだ。当然のように限界ギリギリまで攻め込む訳だから、それと同じ走りをするにはもちろん同じスピードで攻め込む必要がある。この何も知らない碓氷のコーナーをな。寒気がするぜ。考えただけでもゾッとする」

 

「ああ。いくら再現するテクニックがあっても、車が違えば挙動が変わる。そもそも駆動方式自体が違うから、その差が大きい。そんなので完璧に走りを再現し切るのはちょっと難しいと思う。それにコースを知らないというのも、その再現度に影響を与えるはずだ。テクだけじゃなく、度胸も必要だ。1つ間違えた瞬間、お釈迦になりかねない」

 

それが、健二と池谷の考えだった。

 

「そういえば、真子ちゃんのシルエイティの助手席のあの子、一体なんなんだ?」

 

「俺も詳しい事は知らない。ただ、幼馴染の親友らしくてな初心者の頃から走る時はいつも2人で考えながらドラテクを完成させたらしい」

 

「要するに、ラリーでいうところのナビってとこですかね」

 

「そうなると余計不利だな。優秀なナビが隣にいれば、真子ちゃんはドライビングだけに集中すれば良いんだから」

 

 

 

●●●

 

 

 

頂上で池谷達が心配している中でも、隼人はシルエイティに食らいついていた。

相変わらず状況は前にシルエイティ、そのすぐ後ろをインプレッサが追い縋るという展開だ。

だが、少しずつ状況が変わり始めていた。

側から見ても大して分からないだろうが、微妙に違っていた2台の走りが、ピッタリと合い出したのだ。

そしてそれは、もちろん隼人が得意とする走りのコピーによるものだ。

 

(少しづつだけど、このコースのリズムが分かってきた。走り始めた時より、相手の走りを観察するのに集中出来てる。これなら行ける!)

 

一方その頃、真子には焦りが生まれ始めていた。

 

「食いつかれてる、なんで? 紗雪、私乗れてないのかな?」

 

「そんな事ないわ。今日の真子はかなり調子良いよ」

 

「でも、後ろにピッタリつかれてちぎれる気配が……」

 

「アンタはミラー見るのやめな。集中力が途切れて、リズムが乱れるからね。後ろのインプレッサの動きは、私がバッチリチェックしておくから大丈夫。だから、アンタは前向いて走る事に集中して。それに、バトルはまだ始まったばっかり、楽しまなくっちゃね。せっかく最高のバトルをしてるんだから」

 

「分かったわ、紗雪。後ろの事は任せたわね」

 

「そうよ、パートナーを信じなさい。私と真子は、碓氷峠最速のベストコンビなんだからね!」

 

その言葉に安心した真子はアクセルをさらに開けて、自分のベストの走りをすることに集中した。

相棒の紗雪の指示に従って、グリップ走行とドリフト走行を上手く使い分けながら碓氷の狭いコーナーをクリアしていく。

 

「コーナー手前に障害物。かわしてからインを締めて!」

 

「うん!」

 

シルエイティは、アウト側へとラインを振ってからコーナーへと突入する。

インプレッサもそれに追従する。

今度は一瞬たりとも遅れることなく、まるで鏡写しのようにコーナーをクリアしていく。

 

(よし。今の俺、乗れてる。行ける!)

 

隼人は完全にペースに乗っていた。

さらにいくつかコーナーを抜けていくが、全て鏡写しのようにシルエイティが描いたラインをなぞって行く。

まるで離れない事実に、紗雪には焦りが生まれ始めていた。

 

(全く離れる気配がない。これだけのハイペースについてくるなんて、なんて奴なの? 真子は絶好調だっていうのに食いつかれてる。でもそれ以上に、何だか不気味な感じがする。なんと言うかあのインプレッサ、私達と全く同じ走りをしているように感じるわ。まるで、私達の分身が追いかけてきているような……)

 

そんな心境を押し殺しつつ、言い放つ。

 

「真子、もうすぐC-121コーナーだからね。勝負かけるわよ! あそこだけは入り口から出口までめいいっぱい流していくよ。ガツンとかましてやりましょう、この碓氷峠の中で1番難易度の高いコーナーで‼︎」

 

「分かった。そういう事ね、紗雪。見せつけてやろうじゃない、入り口から出口まで振りっぱなしのドリフト。C-121コーナーは、中間部は広いけど出口は極端に狭いせいで、碓氷峠の数あるコーナーの中でもダントツの高難易度。ラインが多いように見えて、実はクリア出来るラインは1つだけ。私と同じスピードで突っ込んで、クリアした奴はまだいないからね」

 

そうして真子は心を決める。

そしてそれを、隼人も感じ取った。

 

(なんか企んでいるな? けど、そう簡単に思い通りにはさせない!)

 

その後、いくつかコーナーを抜けると、そのC-121コーナーが見えてきた。

 

「対向車なし。派手にいくわよ、真子!」

 

「うん!」

 

「GO‼︎」

 

そして、2台とも最小限の荷重移動を済ませて甲高いスキール音と共に超高速でコーナーへと突っ込んでいった。

 

 

 

●●●

 

 

 

時は遡る。

シルエイティとインプレッサがC-121コーナーへと突入する少し前。

コーナーのすぐ横にある駐車場には、地元の走り屋が集まっていた。

 

「なあ、“インパクトブルー”の2人は見たか?」

 

「さあ、今日は見てないな」

 

「見てえなあ、シルエイティのドリフトをよ」

 

「そうだな。特にこのC-121コーナーは絶好の見せ場だもんな」

 

「凄え難しいからな」

 

「難しいなんてもんじゃねえさ。ここを入り口から出口まで振りっぱなしで抜けられれば、碓氷峠じゃ上級者だよ」

 

「碓氷で上級者なら、どこに行ってもトップ取れるだろ」

 

「ああ。初めての奴なんて、このコーナー絶対失敗するからな」

 

「でも、慣れれば出来る奴もいるんだろ?」

 

「何人かはな。だけど、ほぼノーブレーキングの全開ドリフトで突っ込むのは“インパクトブルー”のシルエイティだけさ。何キロくらい出てるのかは知らないが、アレばっかりは誰にも真似出来ねえからな」

 

そんな会話をしていると、上の方からスキール音が響いてきた。

 

「上から誰か下りてくるぞ?」

 

「凄えスキール音だ、攻め込んでくるぞ」

 

そして、彼らの前に2台の車が現れた。

 

「来た!」

 

「青いシルエイティ、“インパクトブルー”だ!」

 

「後ろにもいるぞ?」

 

「バトルしてんのか⁉︎」

 

「インプレッサ、余所者か⁉︎」

 

「おい、全然速度落とさねえぞ!」

 

「まさかあのまま突っ込む気か⁉︎」

 

そして、2台が強烈なスキール音を立て、タイヤの焦げる臭いを撒き散らしながらコーナーへと突入した。

 

「「「突っ込んだ‼︎」」」

 

「知らねえぞ! “インパクトブルー”と同じスピードで突っ込むなんて、とんでもねえ大バカ野郎だ!」

 

「C-121の難しさが分かっちゃいねえ!」

 

「クソ度胸だけでクリア出来るほど、甘いコーナーじゃねえんだぞ!」

 

そんな彼らの心配を他所に、インプレッサがシルエイティと全く同じラインを描きながら、コーナーを駆け抜けていく。

そしてそのままシルエイティに張り付きながら立ち上がっていった。

 

「す、凄え……!」

 

「クリアしていきやがった……!」

 

「信じられねえ」

 

「なんて奴なんだ……」

 

「一体何者なんだ、あのインプレッサ?」

 

 

 

●●●

 

 

 

C-121コーナーを抜けた直後だった。

全く離れる事なく、インプレッサがコーナーを抜けてきた事に“インパクトブルー”の2人は驚いていた。

 

「えっ?」

 

「そんな……馬鹿な?」

 

ただでさえ狭くて難易度の高い碓氷峠を自分達“インパクトブルー”の全力に食らいていくだけでもとんでもない芸当だと言うのに、最も難易度の高いC-121コーナーを1発で、それも自分達と同じスピードで抜けて来たというのがあまりに考えられなかったのだ。

特に、紗雪の動揺はかなりのものだった。

 

(嘘……でしょ? 信じられないんだけど。超限界スピードからの四輪ドリフトをこのコーナーでやるなんて。間違いなく最高難易度なのに……。慣れている真子でさえ、立ち上がりでベストラインを僅かに外すほどだったのに、初めてで成功させるなんて。やっぱり気のせいじゃなかった。アイツ、私達の走りを再現しながら追いかけて来ているんだわ。こんなの、勝てっこない……。想像以上の怪物を、バトルの相手に選んでしまった)

 

紗雪が呆然としている間にも、シルエイティは峠を駆け抜けていき、すぐに次のコーナーへと突っ込む。

 

「ちょっと、違う! ここはそんなに大きく振っちゃダメ!」

 

「ええ⁉︎ ちょっと紗雪、そういう事はもっと早く言いなさいよ!」

 

その瞬間、シルエイティの走りが僅かに乱れる。

 

(さっきのコーナー抜けたあたりかな、走りが少し乱れ始めてる。後ろからずっと張り付いているから、プレッシャー感じているのかな?)

 

「どうしちゃったの、紗雪? ボヤッとしないで。いつものあなたらしくないわよ」

 

「……分かんないの、真子? 後ろのインプレッサ、トンデモないバケモノだよ。私達の走りを、ほぼ完璧にコピーしてきているわ。今の私達に、手に負える相手じゃなかったのよ……」

 

「何よ? いつもは強気な事言ってるくせに。まだ負けって決まった訳じゃないのに、諦めるの? そんなのイヤだよ!」

 

「そりゃ、そうだけど……」

 

「もういいわ、紗雪がそんな弱虫だったなんて思わなかった。紗雪なんかには、もう頼らない!」

 

「!」

 

「あのインプレッサが速いのは始めから分かっていた事でしょ? でもね、これが最後のバトルだって決めた以上私達のベストを出し切らないと終われないでしょ! それなのに怖気付いちゃって、今の紗雪は最低だよ。助手席に置いてある、文字通りのお荷物だよ!」

 

「に、荷物⁉︎」

 

「ええそうよ。出力重量比(パワーウェイトレシオ)を悪くするだけの重り(バラスト)だよ!」

 

「私が重り(バラスト)とは何よ! ナイスバディだけどデブじゃないわよ、デブじゃ‼︎」

 

「だって、49kg(キロ)のハンデじゃない!」

 

「47kg(キロ)よ‼︎ 全く、ハンドル握ると性格変わるんだから」

 

そして、2人とも気持ちを切り替える。

 

「さあ、行くわよ真子! 死ぬ気で攻め込みなさいよ‼︎」

 

「そう来なくっちゃ‼︎」

 

「次のコーナー、イン側の岩にぶつけるくらいの気合いで切り込んで!」

 

「オッケー‼︎」

 

そして真子は注文通り、クリッピングポイントでフロントバンパーを擦り付けるようにコーナリングしていく。

C-121コーナーを抜けてから、シルエイティの走りはさらに鋭さを増していた。

 

(走りの乱れが無くなった……開き直ってきたか)

 

シルエイティの様子から隼人はそう感じ取った。

 

(残りのコーナーが少なくなってきた。でも、最後まで気は抜かない。攻めて攻めて攻めまくる。悔いだけは残さない。だって、碓氷峠最速のプライドがあるもの!)

 

真子はそう心に決めて、アクセルを踏み込んだ。

 

 

 




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次回、インパクトブルー戦決着です!
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