頭文字D 〜公道のハヤブサ〜   作:Many56

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どうも、頭文字DACにVABが実装されて狂喜乱舞してるMany56です。
走ってみましたが、体感としては直線番長っ気はありますけどR32とかより曲がりやすいかなって思ってます。慣れれば強いかな。
さて、妙義でのバトルも終わり高橋涼介とのバトルまであと少し。
その頃隼人は、そして周囲の人々はどうするのでしょうか?



Act.20 前夜祭

 

 

 

レッドサンズとナイトキッズの交流戦の翌日

GSゼネラル

 

今日も今日とてバイトである。

そんな中、池谷先輩、健二先輩、イツキの3人組が集まって話をしていた。

 

   ともかく、これで拓海も隼人も雨の日でも速いって事が分かったな」

 

「ああ、疾風にも久々に会えて良い日だったぜ」

 

「拓海のヤツ、だんだん走り屋らしくなってきましたね。今回のバトルだって、自分でS14の挑戦受けましたし。色ボケの方も解消されたみたいで、一安心っすよ」

 

「それにしてもイツキ、お前つくづくオイシイ体験したよな。雨のダウンヒルバトルでハチロクの助手席(ナビシート)に乗せてもらえるなんてな!」

 

「そりゃあ、もう死ぬほど怖かったっすよ‼︎ なぜか助手席(ナビシート)じゃなくて、後部席(リアシート)に座らされたんですけどね」

 

「「⁇」」

 

後部席(リアシート)だって?」

 

「なんでだ?」

 

池谷先輩と健二先輩の頭上にクエスチョンマークが浮かんでる。

 

「さあ。拓海も、ハッキリとした意味があった訳じゃないみたいなんすよね」

 

その直後、健二先輩の頭のクエスチョンマークが電球に変わる。

 

「あ、分かったぞ。拓海がイツキを後部席(リアシート)に乗せた理由!」

 

「どんな理由なんだ、健二?」

 

「それはだな……気が散るからだよ。だって、イツキみたいにコーナー抜ける度にギャーギャー騒ぐの隣に乗ってたら、いくら拓海でも集中切れて上手く走れなくなっちまうからな」

 

「あははは、その通りだな!」

 

スタンドの中に笑い声が響く。

 

「そんな簡単じゃないと思いますよ、池谷先輩」

 

とりあえず給油作業が終わったので、俺も3人組の話に混ざる事にした。

 

「そりゃどういう意味だ、隼人?」

 

「まあ、ギャーギャー騒ぐイツキを隣に乗せたくなかったってのもあるのかもしれませんけど、それ以上に重心を少しでも後ろに寄せたかったんだと思いますよ。そうすりゃあ、駆動軸のトラクションを少しは稼ぎやすくなりますからね。頭じゃなくて、感覚的にその方が良いって思ったんじゃないですか?」

 

「「「おお」」」

 

「確かにそっちの方が辻褄が合うな」

 

「さすがは隼人」

 

やれやれ。昨日のバトルは俺もアイツも勝ったけど、どこまで行ってもアイツに勝てる気がしねえな。

 

バイトを終えて家へと帰宅するのだが、今日はイツキのハチゴーに乗せてもらってきた。

なんでかって?

昨日のバトルでインプレッサがだいぶ汚れてしまったから、その状態では走らせたくなかったのだ。

という訳で、洗車用具を物置から引っ張り出してインプレッサを洗う。

いやはや、自分の車を洗うのってこんなにも気持ちいいものなのか。

さて、あと数日で高橋涼介とのバトルの日だ。

一緒に頑張ろうぜ、インプレッサ。

 

 

 

●●●

 

 

 

翌日

 

スタンドに、健二がやってきた。

 

「よお、面白いモノが手に入ったぜ!」

 

「面白いモノ?」

 

「ああ、高橋涼介のバトルのビデオだよ!」

 

早速、スタンドにあるテレビで映像を見ることになった。

 

「うわあ、本当に高橋涼介映ってるじゃないっすか! しかも、今より若くないですか?」

 

「コイツは、3年前のバトルのビデオさ」

 

「へえ、よく手に入ったな健二」

 

「ああ、手に入れるのに結構苦労したぜ。熱心なマニアが、何回かに分けて撮ったらしいんだ」

 

そしてさらに映像は進み、高橋涼介が他の走り屋とバトルしているところまでいく。

 

「うわっ、スッゲー!」

 

「あんな速度と角度でコーナーに突っ込んでいくなんて、まさに神業だな!」

 

「こりゃたまんないっすね!」

 

「ああ、思い出した! このバトル、俺もギャラリーしに行ってたぞ‼︎ 懐かしいなあ。高橋涼介が、まだ“赤城の白い彗星”って呼ばれてた頃だ」

 

「くーっ、やっぱりその呼び名はカッコよすぎてゾクゾクしますよ」

 

そう話している最中にも、高橋涼介の超絶テクニックを映した映像が流れていく。

 

「お前達、何やってるんだ?」

 

ビデオに夢中になっている3人に話しかけてきたのは、店長の立花だ。

 

「ああ、すいません店長! おい健二、早くビデオ止めろ」

 

「ああ、いやいやそのままでいい。俺にも見せてくれ」

 

店長も椅子に座り、4人でビデオを視ることになった。

 

「ほほう、コイツが高橋涼介か。こんなに凄えとは思わなかったな。隼人と拓海は、今度こんな凄いヤツとバトルするのか……!」

 

そのビデオを視て、店長も驚嘆する。

 

「ええ!」

 

「今度のバトルは、今まで以上の数のギャラリーが秋名に集まるんじゃないですか?」

 

「高橋涼介はもちろんですけど、隼人は“秋名のハヤブサ”として、拓海も“秋名のハチロク”って呼ばれる有名人ですからね」

 

「この夏、突然現れた謎のダウンヒルスペシャリストの2人って、群馬の走り屋の中じゃ凄い話題っすからね! もう、土曜日が待ち遠しいっすよ‼︎」

 

イツキは、特に興奮気味に話す。

 

「先輩達は、どっちが勝つと思いますか?」

 

その質問を聞いた池谷も健二も顔色が悪くなる。

 

「……隼人にも拓海にも悪いんだけど、今回ばかりはさすがに厳しいんじゃないかな。いくらなんでも、相手が悪すぎるよ」

 

「俺も池谷と同じ意見だよ、イツキ。高橋涼介は速い、メチャクチャ速いんだ」

 

「そ、そんなに速いんすか……?」

 

恐る恐るイツキが聞いてくる。

 

「ああ、3年前の時点でも群を抜いて速かった。そして、そこからさらに腕を磨いているに違いない。何しろ峠のバトルはもちろん、サーキットやジムカーナの競技会でも連戦連勝だ。コースレコードを何度も塗り替えて、いまだ1度も負けた事がない。アイツの不敗神話は、まだ破られた事がないのさ」

 

池谷がそう答える。

 

「しかも、まだ本気で走ったバトルはないって噂だ」

 

「ええ!」

 

「ああ。どんな相手が来ても、持てる力の半分だけで勝つって言われてる。だから、高橋涼介が本気で走っている姿を見たヤツはいないって噂だ」

 

そう池谷が答えたところで、ビデオの映像は途切れた。

 

「特に、拓海に関しては最後までついていければ上出来なんじゃないかな? 隼人のコピー能力とインプの性能なら、最後まで食いついて行く事くらいは出来るだろうけど、勝てるかどうかは怪しいところだな」

 

「ああ、アイツはまさに別格だからな」

 

「そ、そんな!」

 

「やれやれ、またお前達のマイナス思考が始まったな。もっと楽観的に考えてもいいんじゃないか?」

 

「でも、高橋涼介は今まであの2人がバトルしてきた相手とは比べ物にならないくらいの相手ですよ。レベルの高いレッドサンズの中でもカリスマ的存在で、弟の啓介や中里のレベルじゃないんです……」

 

「隼人でも、10回やって2、3回勝てれば良い方じゃないですかね?」

 

その意見を聞いて、イツキはぐうの音も出なくなってしまった。

 

 

 

●●●

 

 

 

とあるファミレスにて

 

そこには、レッドサンズのメンバーである啓介、ケンタ、史浩が集まっていた。

 

「涼介に、またプロのレーシングチームから誘いが来てたぜ」

 

「さすがは涼介さん! 早くこの事を涼介さんに伝えないとな!」

 

史浩の言葉にケンタは興奮する。

だが、涼介の弟である啓介の反応は意外なものだった。

 

「そんな事しても意味ないぜ。どうせアニキは断る」

 

「え、なんでですか啓介さん! もしかして、大学の医者の勉強との両立が難しいんですか⁉︎」

 

「そんな訳ないだろ。アニキなら、そのくらいやろうと思えば楽勝さ」

 

「じゃあどうして! 涼介さんを誘ってるチームって、日本国内において名門中の名門ですよ。プロのドライバーになって、表舞台に出て、注目浴びて、走り屋なら誰もが憧れるサクセスストーリーじゃないですか!」

 

「アニキは、プロのレースの世界には興味ないのさ」

 

「余計分からないですよ! それならなんであんなに熱心にジムカーナやサーキットの走行会やってるんですか⁉︎」

 

そう疑問に思うケンタはそう聞いてくる。

 

「……公道(ストリート)だ」

 

公道(ストリート)……?」

 

「アニキは、サーキットよりも自由に思う存分走れる公道(ストリート)の方が魅力的だと考えているのさ。そして、ジムカーナもサーキットも、アニキにとってはプロセス。公道(ストリート)レースを極めるためのな……!」

 

「「‼︎」」

 

その言葉に、2人は何も言えなくなる。

 

「それじゃあ、俺は行く。アニキと赤城山を流す約束があるからな」

 

そう言い残して、啓介はファミレスから立ち去っていった。

その後、啓介は涼介と合流した。

 

「悪いアニキ、帰るの遅くなっちまった」

 

「いや、俺も今家に着いたばかりだ。それじゃあ行くぞ、啓介」

 

そして涼介は啓介をFCに乗せて、一緒に赤城の峠へと向かった。

 

「それで、パワーはどれくらいまで上げたんだ?」

 

「聞いて驚くなよ、啓介。MAXで、およそ280馬力にした」

 

「280馬力だって⁉︎ 元々340馬力あったのに、それじゃあデチューンじゃねえか。わざわざ遅くしてどうするんだよ? そんなので勝てるのか?」

 

「あの2人とバトルして、お前も思い知ったはずだ。峠の下りを制するには、パワーよりもトータルバランスの方が重要だと。速く走るために、あえてパワーを落とす事もある。それが、公道(ストリート)の奥深さというやつだ」

 

「……つまり、それほどの相手って事なのかよ、あの2人は」

 

「……そういう事になるな。今までは、上りでも下りでも総合的に速い車を目指してFCを組んできた。ダウンヒルでも大馬力(ビッグパワー)を振り回せる自信があったからな。だから、今回のデチューンは俺にとっては屈辱さ。プライドをかなぐり捨ててでも、負ける訳にはいかないと感じているんだ」

 

「アニキ……」

 

そして、涼介は全開走行へと突入する。

赤城山のテクニカルなコーナーを、全開の四輪ドリフトで駆け抜けていく。

今までより、ずっとエゲツない速さでだ。

そのコーナリングに、さすがの啓介もうめき声をあげる。

 

「くぅっ、凄えや! パワーを下げたっていうのに、確実にコーナーの脱出速度が上がっている‼︎」

 

「FCのパワーを落とした理由はもう1つある。パワーを活かして、直線でぶち抜いたところで勝ったとは言えない。そんな勝利じゃあ俺は満足出来ない! テクニックにはテクニックで、ドリフトにはドリフトで勝つ‼︎ こんな気分になったのは初めてかもしれん。今の俺は、レッドサンズの高橋涼介ではなく、“赤城の白い彗星”に戻った気分だぜ……‼︎」

 

「アニキ……‼︎」

 

そして、FCは暗闇の赤城山をさらに下って行った。

 

 

 

●●●

 

 

 

金曜日

中島自動車

 

現在、俺は親父の工場でインプレッサの最終チェックをしている。

 

「油温水温ともに問題ナシ、タイヤの溝も大丈夫」

 

そんな中、親父が話しかけてきた。

 

「よお。明日だろ、バトル」

 

「うん……」

 

「おいおい、表情が硬くないか?」

 

「いやだって、相手かなりの凄腕だぜ。今まで色んなヤツと会ってきたけど、あそこまでヤバい雰囲気持ってる相手は初めて」

 

「へえ、お前がそこまで言うなんてな。まさか、自信ないとか?」

 

「そういう訳でもないけど、それでも緊張するよ」

 

「なら、どんな相手でも確実に抜ける方法を教えてやるよ!」

 

「は?」

 

「“消えるライン”って技さ。コイツはな   

 

そして、親父その技について教えてくれた。

 

「なるほどね。確かに決まればどんな相手でも抜けるわな」

 

「ま、どうしようもなくなったら一か八か試してみろ」

 

「……分かった」

 

 

 

●●●

 

 

土曜日

秋名山

 

ついに、群馬最速と呼ばれる高橋涼介と秋名に突如として現れた新星“秋名のハヤブサ”のダウンヒルバトルの日がやってきた。

秋名山には、群馬中の走り屋がギャラリーとして集まった。

そしてその数は、今まで秋名で行われたバトルの比ではなかった。

 

「とうとうこの日がやってきたな」

 

「ああ、来週の高橋涼介対“秋名のハチロク”のダウンヒルバトルも含めれば、事実上の群馬最速決定戦だ」

 

峠のあちこちに、群馬の名だたる走り屋チームのステッカーが貼られた車があった。

そして、その様子を眺めながらスピードスターズのステッカーを貼ったS13が秋名の峠を登っていく。

池谷と健二だった。

 

「やっぱり、とんでもない数のギャラリーが集まってんな」

 

「俺が隼人の立場だったら、膝がガクガクになって逃げ出したくなるよ。こんな大勢のギャラリーの前で走るなんて考えたら、正気じゃいられなくなる」

 

そしてそのまま走り続けて頂上のスタート地点に到着する。

もちろん、そこにも大勢のギャラリーがいた。

その様子に、池谷も健二もたじろぐ。

2人が到着してから数分、パンダカラーのハチロクが麓の駐車場の前を通過した。

 

「おい、見ろよ!」

 

「“秋名のハチロク”だ!」

 

「やっぱり見に来るよな、何せ来週高橋涼介とバトルするのはアイツなんだから」

 

「2週ぶっ続けに豪華なバトルだよな!」

 

そして、それとほぼ同時に麓の駐車場に黒のJZX100型チェイサーが入ってきた。

 

「おい起きろ。秋名に着いたぞ」

 

ドライバーの男が、隣で寝ている青年を叩き起こす。

 

「ん、着いた?」

 

「ああ。まさかここまでグッスリとはな」

 

「ははは。なんかごめんな、親父。それじゃあ、場所取りに行こうか」

 

そして、2人は車を降りてギャラリー出来る場所に向かった。

その後、ハチロクもスタート地点に到着する。

降りてきたのは、拓海とイツキだ。

 

「隼人のヤツ、まだ来てないんだな」

 

「珍しいよな、アイツって普段はそれなりに早く来るのに」

 

そんな2人はそんな会話をしつつ、先に来た先輩2人と合流する。

そこからさらに数分、大勢の車がスタート地点に到着する。

先行するのは白のFC3SがRX-7で、黄色のFD3S型RX-7がそれに続く。

その後ろにも、同じステッカーを貼った車が次々と現れる。

高橋涼介率いる赤城レッドサンズだ。

その登場に、周囲のギャラリーのボルテージも上がる。

 

「来た、高橋兄弟の登場だ!」

 

「涼介様ぁ‼︎」

 

周囲から声援が上がる。

 

「隼人のヤツ、まだですかね」

 

「なんというか、興奮と息苦しさが峠中に入り混じってる。そんな感じがするよ」

 

イツキと池谷がそんな話をしている最中、高橋兄弟も話をしていた。

 

「啓介、以前から考えていたんだが、公道(ストリート)で負ける時が来たら俺は走り屋を引退する」

 

「え? 何だよいきなり。やめてくれよ、そんな冗談。アニキが負ける訳ねえだろ」

 

涼介の言葉に啓介はそう返すが、涼介は本気だった。

 

「最前線を退いて、今までとは違った形で関東最速プロジェクトを推進するんだ」

 

「そんな……! アニキが辞めちまったら、レッドサンズはどうなるんだよ?」

 

「お前がいるじゃないか、啓介」

 

「俺は……俺はまだアニキの足下にも及ばないぜ。ここ一番ってところは、アニキが走ってくれなきゃ絶対ダメなんだ」

 

自信なさげに啓介はそう言う。

 

「フッ……。コイツにはいつか抜かれるな、そう俺に思わせた走り屋は過去に3人しかいない。1人目は啓介、お前だ」

 

「俺が……⁉︎」

 

「そして2人目は……」

 

涼介の視線の先には、1台の車があった。

 

「“秋名のハチロク”……か」

 

「ああ、そして最後に……」

 

涼介がその言葉を口にしようとした瞬間、下からエンジン音が聞こえてきた。

水平対向エンジン独特の、ボクサーサウンドである。

暗闇から姿を現したのは、白い車体に赤いハヤブサのステッカーをリアフェンダーに貼ったGC8型インプレッサWRX、“秋名のハヤブサ”だった。

 

「心配するな。今はまだ、負けるつもりは無い」

 

涼介は上着を脱いで、啓介にそれを渡した。

 

「今日は本気の全開バトル、楽しい夜になりそうだぜ」

 

その後、FCの隣にインプレッサが並べられる。

群馬最大級のバトルが、今まさに始まろうとしていた。

 

 

 




次回、高橋涼介戦です‼︎
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