頭文字D 〜公道のハヤブサ〜   作:Many56

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どうも、MR-2作ったら予想以上に速くて驚いてるMany56です。
ちょっとピーキーな挙動しますけど間違いなくテクニカル最強格の1台だと思います。
特に八方ヶ原はそのピーキーっ気が返ってハマってる感じですね。
頑張って使いこなせるようにします。
さて、隼人と涼介とのバトルが終わり、間もなく拓海と涼介のバトルが始まろうとしています!


Act.22 もう1つのバトル

 

 

 

秋名山

ダウンヒルゴール地点

 

目の前を白いインプレッサが駆け抜けていく。

 

「さすがは隼人だな」

 

バトルの結果を見て、青年はそう呟いた。

 

「峠で会えるのが楽しみだ」

 

 

 

●●●

 

 

 

夏休みが明けて、2学期が始まった。

始業式などもひと通り終えて、また屋上にていつもの3人で雑談になった。

 

「いやー、今年の夏はインパクトがあったよー!」

 

そう言うのはイツキだ。

 

「インパクトって、何が?」

 

相変わらずのボケ発言をする拓海。

 

「何がって、お前と隼人の事だよ! 2人があの高橋啓介を秋名でちぎった所からだったよな。そして今や、秋名を代表する群馬トップクラスの走り屋なんだから! 高橋啓介を破った後、拓海はナイトキッズの中里のR32、庄司のEG6とのガムテープデスマッチに勝っちまうだろ? そんでもって、隼人は碓氷で真子ちゃんのシルエイティに長野でトップクラスの走り屋の文乃さんのカプチーノにも勝利して、何よりこの前の高橋涼介戦はシビれまくったよ! 最早、アレは伝説だな……‼︎」

 

興奮して早口になるイツキ。

俺のはほとんどギリギリだったけど……。

 

「次は、拓海だな」

 

「え、俺?」

 

「高橋涼介戦の事さ。そういや、中里のR32とバトルした時にお前の後ろにベッタリ張り付いていたけど、どう思ってんだ?」

 

率直に聞いてみた。

 

「速いよな、かなり。あの時はGT-Rを追いかけるので精一杯だったけど、後から思い出すとメチャクチャ気になるんだよな。今まで会ったどんな相手よりも速い……!」

 

「なるほどね」

 

コイツ自身も、高橋涼介のヤバさは感じていたか。

 

「んで、そんな凄い走り屋から挑戦されている訳だが、勝てそうか?」

 

イツキが拓海にそう聞く。

 

「あの人は本物だからな、だから結構ワクワクしてる。今度のバトルが楽しみだよ」

 

「……拓海、この夏で本当に変わったな」

 

イツキがポツリと呟いた。

 

 

 

●●●

 

 

 

GSゼネラル

 

バイトも終わり、帰る時間となった。

そんな時、池谷先輩が話しかけてきた。

 

「隼人、ちょっといいか?」

 

「どうしたんですか、池谷先輩?」

 

「頼みがあるんだけど、俺のS13で秋名を攻めてくれないか?」

 

「え?」

 

「お前の走りを見て、何か参考にならないかと思ってさ」

 

「ああ、なるほど。確かにそういうのはした事無かったですもんね」

 

「それじゃあ今日の夜、秋名の山頂で待ってるからな」

 

そして夜になり、秋名山で池谷先輩と合流する。

俺がS13の運転席(ドライバーシート)に乗り、助手席(ナビシート)には池谷先輩が座り、出発する。

 

「それで先輩、リクエストとかあります?」

 

「そうだな、それじゃあブレーキングドリフトを頼む。サイドブレーキのドリフトは大分コツが分かってきたし、ステップアップの準備のためにお前のブレーキングドリフトを見せて欲しい」

 

「分かりました」

 

そして俺はアクセルを底まで踏み込む。

シルビアのCA18エンジンは唸りを上げて、加速していく。

 

「おいおい、いきなり行くのか?」

 

「いや、どういう挙動するのかちょっと確かめるだけです」

 

「その割には結構加速していくな。っていうか、いくらなんでもスピード速すぎるだろ!」

 

いや、そうかな?

俺としてはこれでも7割いってないんだが……。

そんな事を考えていると、コーナーが見えてくる。

ブレーキングして、そのままリアを流してコーナリングしていく。

 

「のわぁぁぁぁ!」

 

それと同時に、池谷先輩の叫び声が秋名山に木霊した。

 

 

 

●●●

 

 

 

数分前

文太は立花を連れて、秋名山の展望台に来ていた。

 

「そうか、今度の土曜にバトルか」

 

「ああ。高橋涼介のRX-7対“秋名のハチロク”ときたら、また週末峠は祭りだな。化けたよな、お前の息子」

 

タバコを吹かしながら立花がそう言った。

 

「アイツ、最近走りが変わった」

 

「?」

 

「前はただ上手いってだけだったが、この頃は速い走りをするようになってきた。1つデカい壁を越えた、中々良い傾向になってる」

 

「何で分かるんだ? 走りを実際に見た訳じゃないんだろう?」

 

「タイヤだよ。溝の減り具合を見てれば分かる」

 

「そうか。それで文太、お前は最初から全部計算づくでやってたのか?」

 

「何の事だ?」

 

「拓海にとうふの配達やらせた理由さ。とうふが傷むからコップの水を溢さず走れとか、本当は荷重移動の基本を拓海に叩き込むためだったんじゃないのか?」

 

「さあ、どうだったかな? 最初はとうふの方が大事だった気がするな」

 

「だが、拓海は筋が良かった。そこからドラテク仕込む方向に切り替えたって所か?」

 

「まあ、そうなるかな。途中から、アイツの進歩に合わせてサスやブレーキ、ミッションなんかをいじり出したからな。俺好みの方向にアイツの走りが向かっていくよう仕向けたのは認めるよ」

 

「お前の目的は何だ。拓海にドラテクの英才教育を施して、何企んでんだ?」

 

「別に大した狙いなんてねえよ。拓海が上手くなっていくのを見るのが面白いだけさ。いつかはアイツは俺を越えて、やりたい事をやり出す。俺に出来なかった事をやってくれれば、それで良い」

 

そんな話をしていると、下から一際やかましいエンジン音を響かせた車が上がってきて、そのままハチロクの隣に停まった。

 

「誰のソアラかと思ったらお前か、パワーバカ」

 

「誰がパワーバカだ、このドリフトバカ」

 

隼人の父親である悟だった。

 

「祐一まで連れて、何しにきたんだ?」

 

「世間話と、ついでにハチロクのシェイクダウンだな」

 

「って事は、どこかいじったのか?」

 

「ま、ちょいと足回りをだな」

 

「ほーん」

 

「テメエこそ何しに来たんだ?」

 

文太が悟に聞き返す。

 

「ソアラ動かしに来たんだよ。うちのガキが車買ったせいで運転するヤツいなくなったんだ。しょうがねえから、俺自身の手で運転しなきゃいけない訳だ」

 

2人の隣に行きつつ、そう答えた。

 

「ソイツはご苦労なこったな」

 

「そういや、登ってくるとき凄えエンジン音だったが、今そのソアラ何馬力まで上げてんだ?」

 

聞いたのは立花だ。

 

「ああ、390馬力まで上げたかな」

 

「さ、390馬力⁉︎ 前のでも330馬力くらいだっただろ。とんでもねえな」

 

「さすがはパワーバカ」

 

「だから誰がパワーバカだ。そういうお前も、結構いじってんだろ、そのハチロク。どうせエンジンと見た目以外はエゲツない事になってんじゃねえのか?」

 

「けっ、テメエのソアラと同じにすんな」

 

そんな話をしていると、上の方からスキール音が響いてきた。

 

「誰だか知らねえが、良い音させてんな。さてと、それじゃあ俺達もいじった足回りのチェックに行くか!」

 

「お、おう。だが、多少の手加減はしてくれよ」

 

立花はそう言うと、上の手すりとドアの取ってを握りしめた。

 

「んじゃ、俺はそれをケツから眺めさせてもらうぜ」

 

そして、ハチロクとソアラが秋名の峠を降り始めた。

 

 

同時刻

 

ライムグリーンのS13が、秋名の峠を下っていく。

池谷では出来ない速さを隼人は生み出していた。

 

(凄え、イツキから聞いた通りだ。隼人のヤツ、インプレッサ以外に乗っても速い! ハチゴーだろうとシルビアだろうと関係なしに。でも、どこか安心出来る。上手いヤツの隣は飛ばしても怖くないって聞いた事あるけど、本当なんだな……)

 

そのテクニックに、池谷は舌を巻いていた。

 

「なるほど、大体分かりましたよ、このS13の乗り方。それじゃあ、ちょっと本気で行きますよ」

 

「行きますよって、じゃあ今までのは⁉︎」

 

「だから、挙動の確認ですよ」

 

隼人は涼しい顔して答えると、さらにアクセルを踏み込む。

 

「っ‼︎」

 

そして先程よりもさらに速いスピードで侵入していき、高速四輪ドリフトへと移る。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

池谷が隼人のドリフトに悶絶していた頃、同じく悶絶していた者がいた。

文太のハチロクの助手席(ナビシート)に座っている立花だ。

 

(来た来た来たぁ! すんげぇ侵入スピード‼︎)

 

そしてフルブレーキングからのドリフトに移る。

後ろから見ていた悟も、そのドリフトには感嘆していた。

 

(やっぱアイツはドリフトバカだ……!)

 

だが、立花はそんな呑気では無かった。

 

(こりゃたまらん、横Gが斜め後ろから来る!)

 

ただでさえ悶絶もののドリフトなのに、運転している文太はさらにエゲツない事をやり出す。

両手をハンドルから離したのだ。

 

「どわぁぁぁぁぁ! 文太テメエ、何やってんだ‼︎」

 

「いや、ちょっとタバコ」

 

「た、タバコだとぉ⁉︎ どど、ドリフトの真っ最中だろうがぁぁぁ‼︎」

 

そんやり取りの間にも、ハチロクはドリフト走行を続ける。

そしてじわりじわりとガードレールに寄っていく。

 

(も、もうダメだぁ!)

 

立花はそう思ったが、ハチロクはグリップ走行に戻ってコーナーを脱出していく。

 

「うーむ、まあいっか」

 

文太はそう言ってハンドルを握り直した。

 

「はあ……」

 

汗ビッショリになってため息をつく立花。

 

「変わらねえな、あのエゲツないコーナリング。今でもついていくので精一杯だ」

 

そのテクに呆れ果てる悟。

しかし2人に、休まる暇など無かった。

 

「さあて、本気で行くか!」

 

「何⁉︎」

 

そしてハチロクはさらに加速していく。

 

「あのバカペース上げやがった!」

 

「お前な、昔から変わってないにも程があるぞ! 降ろしてくれぇー‼︎」

 

そして秋名山に、立花の悲鳴が木霊した。

 

 

 

●●●

 

 

 

麓の駐車場

 

「やれやれ、酷い目にあったよ……」

 

そう呟くのは池谷先輩だ。

 

「……すんません、ちょっと調子こきました」

 

「いや、いいんだ。元々頼んだのは俺だからな」

 

「とりあえず、俺なんか飲み物買ってきます。コーヒーでいいですか?」

 

「ん、ああ。じゃあ頼む」

 

それでもちょっとなんかやりすぎた気がするので、詫び代わりに飲み物買ってきた。

コーヒーを飲んでいる間に、先輩が聞いてきた。

 

「なあ、隼人。お前は今回のバトル、どっちが勝つと思う?」

 

池谷先輩が神妙な顔をして聞いてきた。

 

「そうですね……」

 

「俺には、ちょっと難しいと思う。お前が勝てたから、勝ち目がないとは思っていない。けど、それでも高橋涼介は速い。だから……」

 

「俺は、拓海だと思いますけど」

 

俺は、ネガティブ思考に陥ってる池谷先輩を吹き飛ばすように言ってやった。

 

「え?」

 

「確かに高橋涼介は速い、ドチャクソに速いです」

 

「ドチャクソ……」

 

「でも、なんで言ったらいいかな……。その速さは、多くの凄いモノを持っているから実現できる速さなんですけど、探せば他に持っている人を見つけ出せるモノばかりだと思うんですよ。でも拓海の速さは、拓海だけが持っているモノがなければ実現出来ない、そんな感じがするんです」

 

拓海は、拓海しか持っていないモノがあるからこそ速い。

誰にも真似できない、たった1つのモノがあるからこそなんだ。

現に、俺はアイツの走りを後ろから見て、さらには横乗りも経験しているのにも関わらず走りの完全再現が出来ていない。

普通だったら9割以上再現出来ていてもおかしくないにも関わらず、未だ5割程度しか出来ていない。

それこそ、アイツが唯一無二のモノを持っている証拠である。

 

「だから、俺は拓海が勝つと思うんです。苦しいバトルにはなるでしょうけど、最後に前に出ているのはハチロクですよ」

 

「隼人……そこまで言い切れるなんてな。お前がそう言うのなら、俺も拓海を信じる事にするよ」

 

 

 

●●●

 

 

 

土曜日

 

ついに、“秋名のハチロク”対高橋涼介のバトルの日がやってきた。

先週と同様に、群馬中の走り屋が秋名に集まっていた。

 

「とうとう来たな、この日が」

 

「秋名の2連戦の2つ目のバトル、“秋名のハチロク”対高橋涼介だ」

 

「“秋名のハヤブサ”は高橋涼介に勝ったけど、“秋名のハチロク”はどうなんだろうな」

 

「そうだな。でも、“秋名のハヤブサ”の時と同様に激戦になるのは間違いないだろうぜ」

 

ギャラリーからそんな話が聞こえて来る。

 

「今日も凄えギャラリーだな。胃が痛くなりそうだぜ」

 

180で頂上に向かいつつその様子を眺めている健二がそう言った。

 

「だが、やると決まった以上拓海を信じよう。隼人が勝てたんだから、拓海にだって十分勝ち目はある」

 

隣にそう言う池谷がいる。

 

「そうは言っても、厳しいのは変わらないだろ? 隼人だって、最後の最後まで分からないギリギリのバトルだったんだからさ」

 

そうこうしている内に、スタート地点に到着する。

そこはすでに、多くのギャラリーで沸き立っていた。

 

 

 

●●●

 

 

 

俺は拓海の家に来ていた。

 

「どうも、拓海いますか?」

 

そう言うと親父さんじゃなくて拓海が出てきた。

 

「あれ、隼人じゃん。どうしてここに?」

 

「秋名に行く前に、お前に少し話したい事があってさ」

 

「話したい事?」

 

「ああ。相手の高橋涼介なんだけどさ、多分加速で勝っていようとお前の後ろにつくと思う」

 

「え、前についた方が有利じゃねえのか?」

 

「いや、実力がある程度拮抗してたら後ろに回った方が有利なんだよな。まあ、バトルすればこの意味が分かる」

 

「……?」

 

俺の話を聞いてポカンとする拓海。

 

「んで、重要なのはここから。恐らく途中でお前は抜かれる」

 

「え!」

 

「けど、抜かれても諦めたりすんなよ? しぶとくついていけば、必ずチャンスが来る。それを掴めば、お前の勝ちだ」

 

「……抜かれたら、引き離されるんじゃねえのか? だって、相手の方が速いから抜かれるんだからさ」

 

「ただ単に速けりゃ抜けるってもんじゃねえのさ。さっきも言った通り、バトルしてみれば分かる」

 

「……⁇」

 

またしてもポカンとなる拓海。

 

「まあ、これらは全て俺の読み通りになれば、なんだけどな。さてと、それじゃあそろそろ時間になるし、秋名に行こうぜ」

 

そして、俺達は秋名山へと向かった。

 

 

 




次回、拓海VS涼介です!
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