頭文字D 〜公道のハヤブサ〜   作:Many56

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どうも、またしても執筆ペースがガタ落ちしているMany56です。
大まかな流れやあらすじは決まっていても、エピソードの繋ぎが上手くいかないんですよね。
さて、とうとうエンペラーが秋名に殴り込んできます。
結果は如何に?


Act.26 秋名襲来

 

 

 

妙義山

 

その日、エンペラーとナイトキッズの交流戦が行われていた。

勝負は上りの1本。

先行するのは清次のエボⅣで、それを中里のR32が追いかける展開となっている。

 

(まだだ、まだ終わっちゃいねえ。勝負はこれからなんだ!)

 

中里はランエボを追いかけようと、さらにアクセルを踏み込んでいく。

 

(俺が止めないで、誰がアイツらを止めるんだ!)

 

しかし、その入れ込み過ぎた気持ちがミスを生む。

ブレーキングの開始が僅かに遅れ、そのままR32はアウトに膨らんでいく。

 

「しまっ……‼︎」

 

そして岩壁に火花と『グシャッ』という鈍い音を散らしながら激突して停止した。

 

「クッソォ‼︎」

 

 

麓の駐車場

 

「約束通り、ステッカーを貰おうか」

 

庄司がチームステッカーを渡すと、またしても半分に切り裂かれて逆さまにエボⅣのウイングに貼り付けられる。

 

「俺のエボⅣのウイングが、半分に切り裂いた群馬エリアのチームのステッカーで埋め尽くされる日も近いな」

 

「テメエらいい気になってんじゃねえぞ! まだまだ群馬には、速い走り屋は山ほどいるんだ‼︎」

 

庄司はそう言い返すが、反応は芳しくなかった。

 

「フッ、負けたヤツが何を言っても虚しいだけだぜ」

 

「クッ……!」

 

「清次、さっさと撤収するぞ」

 

「そうだな、京一。ああ、そうそう。お前ら全員、エンペラーのステッカーを見たら無条件に道譲るんだな」

 

そう言い残して、ランエボ軍団は去って行った。

 

 

 

●●●

 

 

 

翌日

GSゼネラル

 

「ナイトキッズがやられた、例のランエボチームに‼︎」

 

池谷先輩がそう言ってきた。

 

「マジっすか、それ⁉︎」

 

「大マジだよ、イツキ。朝からどこに行ってもその噂で持ちきりなんだ。中里のR32が壁に刺さってかなりのダメージを受けたらしい……」

 

健二先輩がさらに話を続ける。

 

「ナイトキッズがやられたとなると、結構ヤバいですね……」

 

「悲惨だなぁ。ナイトキッズってこの頃ボロボロっすね。ちょっと気の毒になってきますよ」

 

「ランエボチームは、この1ヶ月で群馬エリア全域を総ナメにするつもりらしい。アイツら、絶対秋名にも来るぞ!」

 

「ど、どうするんすか来たら⁉︎」

 

「どうするもこうするも、やるしかねえだろ! 幸いにも、隼人がインプレッサ持ってるから、互角の勝負が出来るはずだ。お前に秋名の走り屋達のメンツがかかってるから、頼むぜ隼人!」

 

池谷先輩が真剣な表情で言ってきたが、断る訳がない。

 

「言われなくてもやりますよ。安心して下さい、完膚なきまで捻り潰してやるますから!」

 

「という訳だ。拓海、お前を名指しでバトルを挑んでくるかもしれないけど、シカトしてても構わないぜ。お前は正式なスピードスターズのメンバーって訳でもないしな」

 

「ああ、インプレッサ乗ってる隼人とあそこまで戦えたとはいえ、それでもランエボの相手はシャレにならないから。軽量コンパクトなボディをターボと四駆で完全武装した、公道において最強クラスの車だからな」

 

池谷先輩と健二先輩がそう言うが、拓海は違った。

 

「俺、逃げたくないです」

 

「「「‼︎」」」

 

「俺もバトルしてみたいですよ、そいつらと」

 

やれやれ、ほんの2ヶ月前まで車はおろか走る事にさえ興味の無かった拓海が、今ではすっかり走り屋だな。

拓海とランエボがバトルしたらどうなるのか楽しみだ。

 

 

 

●●●

 

 

 

その日の夜

 

群馬にあるとある駐車場にエンペラーのメンバーが勢揃いしていた。

 

「この調子だと、サイドパネルのスペースはすぐになくなるな」

 

「群馬のヤツらは、骨なしだな。ゲームだと思えばそれなりに楽しめるが、そろそろ手応えのあるヤツとバトルしたいもんだぜ。京一、次の標的はどこだ?」

 

「明日の夜に秋名に乗り込むぞ、相手は“秋名のハチロク”だ」

 

「オイオイ、つまんねえ事言うなよな。何でハチロクなんだ?」

 

「清次がそう言うなら、俺がやっても良いぜ」

 

「はあ?」

 

京一の発言を聞いて、周囲のメンバーは騒つく。

 

「京一さん自ら、何で?」

 

「最終的な標的はレッドサンズの高橋涼介だったんだがな。だが、それを負かした“秋名のハヤブサ”が1番の難敵だと思っている。“秋名のハチロク”を撃破して、次に高橋涼介、そして最後に“秋名のハヤブサ”だ! 昨日下見をして来たが、かなり勾配がキツイコースだった。軽い俺のエボⅢの方が楽だろう」

 

「冗談だろ、俺にやらせてくれよ京一。どんなコースだろうと、俺が負ける訳ねえだろ? 俺が勝てないのは、唯一お前のエボⅢだけなんだからよ! たかがハチロク相手に、エンペラーのエースが出る事はないぜ。だから、やるなら俺だ‼︎」

 

 

 

●●●

 

 

 

翌週

秋名山

 

ついに、エンペラーが秋名に乗り込んできた。

下の方から、ぞろぞろとランエボが車列を為して上がってくる。

 

「あの先頭にいる白いエボⅣが、妙義山で中里を破った相手らしい。聞いたところによると、かなり速いらしいぞ」

 

健二先輩が教えてくれた。

そしてスタート地点でランエボの車列は止まり、ドライバー達が車から降りてきた。

先頭のエボⅣのドライバーと、その後ろの黒いエボⅢのドライバーには見覚えがあった。

 

「あの2人、この前秋名湖で会った連中じゃないか?」

 

「ああ、そうだよ。絶対間違いない!」

 

タオルを巻いた男が、前に立って話しかけてきた。

 

「スピードスターズだな? 俺達はエンペラー、チームリーダーをしている須藤だ。事前に連絡したと思うが、“秋名のハチロク”と下りでバトルさせてもらいたい。俺達が勝った場合、お前らのチームのステッカーを貰う」

 

「ステッカー?」

 

「どうするつもりなんですかね?」

 

「さあ……」

 

「別に構わないが……」

 

スピードスターズのメンバーからは疑問の声が上がるが、別に渡しても構わないという結論に至った。

 

「おし分かった。いいだろう!」

 

拓海とやる分には構わないが、俺とはどうなんだろう?

 

「あのさ、ちょっといいかな?」

 

そう聞いてみた。

 

「お前は確か、秋名湖で1度会ったな」

 

「そこにあるインプレッサが俺の車なんだけど、俺とはやらないのか?」

 

須藤が俺の車の方を見てピンときたようだ。

 

「そうか、お前が“秋名のハヤブサ”だったか。お前は涼介を倒した後、もう1度ここに来るからその時だ」

 

そういうことか。

実質的に、俺は群馬最速の走り屋って事になってる。

それに俺の車は、ランエボのライバルとも呼べるインプレッサだ。

だから、最後の最後に俺を持ってくるって訳か。

 

「なるほどね、そういう事なら文句はないよ」

 

「それじゃあ、早速始めるとしよう。俺達には時間がないからな。ハチロクを出してくれ」

 

「そっちは誰が走るんだ?」

 

「俺が走る」

 

そう言って前に出てきたのは、エボⅣのドライバーだ。

確か、須藤からは清次って呼ばれていたっけ。

清次はエボⅣに乗り込んで、スタートラインに車を並べる。

 

「それじゃあ頼んだぜ、拓海!」

 

池谷先輩に拓海は頷くと、ハチロクに乗り込んでエボⅣの隣に車を並べた。

 

「来たぞ、“秋名のハチロク”だ!」

 

「ハチロクVSエボⅣだ!」

 

「負けんなよ、群馬のダウンヒルスペシャリスト!」

 

周囲のギャラリーから歓声が上がる。

 

「それじゃあ、俺がカウントをやるよ」

 

そう言って健二先輩が2台の前に立とうとしたが、須藤がそれを止めた。

 

「カウントは要らない。エンジンのパワーの低い方が先にスタートして、もう1台がそれに合わせてダッシュする。出遅れる事になるが、それが馬力分のハンデだ。俺達は、ハンディーキャップ方式って呼んでる方法なんだが、それでどうだ?」

 

「拓海はどうなんだ?」

 

「俺は別に構わないぜ」

 

聞いてみると、拓海からそう返ってきた。

 

「よし、それで行こう!」

 

池谷先輩が須藤に返し、俺達はハチロクから離れた。

一方の須藤も清次に何か指示を出してエボⅣから離れた。

そしてバトルが始まった。

 

 

 

●●●

 

 

 

先行するのは、拓海のハチロクだ。

それをエボⅣが追いかけていく。

そして第1コーナーへと入る。

拓海はいつも通り、ギリギリのレイトブレーキングからの四輪ドリフトで駆け抜けていく。

そして、それにエボⅣも食らいついてくる。

 

(いくらコーナーで頑張ったところで、所詮はハチロクだな……)

 

内心悪態を吐きながら清次はハチロクを追いかけていく。

一方で、拓海は清次や須藤と秋名湖で会ったことを思い返していた。

 

(アイツら、ハチロクなんかには負けないって言ってたよな? 勝つか負けるかなんて、やってみなくちゃ分かんねえだろうが!)

 

そして次のコーナーへと突っ込んで行く。

 

(清次は一流のドラテクを持っているが、頭を使う事は苦手だ。それ故に、勝って当たり前の格下相手には油断しやすい。それを引き締めるために、最初は後ろから追いかけて終盤に抜く『シミュレーション3』の指示を出した。しくじるなよ清次、涼介やハヤブサとやる前に躓くんじゃねえぞ!)

 

須藤がそう考えている内にも、バトルは進んで行く。

 

(クソッ、気に入らねえ。ムカついて仕方ねえぜ!)

 

その頃、清次は異様にイラついていた。

 

(冗談じゃねえ……。エボⅣに乗っていて、何で時代遅れでポンコツのハチロクの後ろをチンタラ走ってなきゃならねえんだ? すぐにケツにつっかえて碌にアクセル踏めやしない。フラストレーションが溜まりまくる、俺とエボⅣの辞書に半開(パーシャル)って言葉はねえんだ。どうして『シミュレーション3』なんだ? そこまでするほどの相手じゃねえぞ、京一!)

 

その頃、啓介を始めとしたレッドサンズのメンバーがゴール付近のコーナーに来ていた。

 

「なあ啓介、涼介はこのバトルについて何か言ってたか?」

 

そう聞くのは史浩だ。

 

「いや、特に何も話してなかったぜ。ただ、ギャラリーするならこのコーナーが1番良いって事くらいだな」

 

「しかし、普通に考えて“秋名のハチロク”に勝ち目はないと思いますけどね。今度ばかりは、相手がランエボだからな」

 

「偉そうに言ってんじゃねえよ、ケンタ。普通に考えたら、お前のS14だってハチロクよかずっと速いんだぜ」

 

「うぐ……」

 

「そういじめるなよ、啓介。あのバトルは、ケンタに取って良い経験になったはずだ」

 

「分かってるさ。兄貴は何も言ってはいなかったが俺の読みとしては、この秋名で藤原拓海とやるならばストレートの遅さに焦れて前に出たら負ける。ハヤブサ除いて、そのパターンで皆やられてるのさ。兄貴でさえそうだったんだから」

 

そんな話を啓介がしていた頃、清次は仕掛ける、

 

(秋名のコースじゃ、このストレートが1番長い。抜こうと思えば軽々抜けるが……我慢出来ねえ、行っちまえ!)

 

そして、清次はハチロクの前に出た。

 

「『シミュレーション3』じゃなくたってよ、勝ちゃ文句ねえだろうが京一!」

 

拓海は追い抜いていくエボⅣを眺めるが、あまり焦っている様子はなかった。

 

(おお、速えな。でも、抜かれてヤバい感じはしないな)

 

ハチロクを抜いて少しスッキリした清次は、さらにペースを上げていく。

 

(見たか! だが、格の違いを思い知るのはこれからだ。ハイテンションの全開走りかましてバックミラーから消してやらあ! 見せつけてやるぜ、エボⅣの凄さじゃなくて俺のテクニックの凄さをな‼︎)

 

エボⅣが前に出た事は、スタート地点にいる面々にも伝わった。

 

「清次のヤツがハチロクの前に出た?」

 

「よし、突き放しにかかってるぜ!」

 

「やっぱり、ハチロクなんざ目じゃねえんだよ!」

 

その報告に、エンペラーのメンバーは歓喜する。

無論、対照的にスピードスターズのメンバーの顔色は悪くなる。

 

「やっぱりダメか……」

 

「はあ……」

 

ただ1人を除いて。

 

(見た目通り、脳筋豚野郎で助かったな。アイツはここからさらに引き離そうとするだろうが、拓海はどれだけペースを上げても食いついてくる。振り切ろうとしてもついてくるんだから、攻め込めば攻め込むほどタイヤを減らす事に繋がるだけだ。だから前に出た後は、大きくペースは上げずにタイヤを残すのが正解なんだ)

 

隼人はそう考えていた。

そして、隼人の予測通り清次は完全に墓穴を掘っていた。

 

(ハイスピードで突っ込んで全開で曲がる。ポンコツなFRの低レベルなカニ走りとは次元が違うって事をよく見るんだな。まあ最も、それを見られる距離にいればな話だがな)

 

そう考えてバックミラーを覗くと、そこには2つの光点が写っていた。

ハチロクのヘッドライトの光だった。

 

(何、離れるどころか張り付いてやがるだと? そんなバカな。俺のドリフトについてこれるのか!)

 

清次は少し焦りつつも、すぐに落ち着きを取り戻して次のコーナーへと入っていく。

当然、先程と同じように限界ギリギリのハイスピードのツッコミからの四輪ドリフトでコーナリングしていく。

しかしながら、さも当たり前かのようにハチロクも食いついてくる。

 

(そうか、分かったぜ。俺がムカついていたのは、アクセルを開けられないフラストレーションってだけじゃねえ。もっと大きな理由があったんだ。薄々気付いていたし、認めたくはない。だが、俺の方が……俺の方が、コーナーではハチロクよりも遅いんだ……‼︎)

 

その怒りと悔しさを噛みしめつつも、すぐに切り替える。

 

(それに、振り切れない理由はまだある。1番長いストレートを抜けた後、この秋名でもコーナーの多いセクションに入る。だからパワーの差が出ないんだ。だが、バトルは車の性能とドライバーのテクニックのトータルで決まる。このセクションを抜けた後は長いストレートの高速セクションだ。ランエボ乗りのプライドに賭けて、ブッチ切る!)

 

再び長いストレートが来て、清次はそこでさらに引き離しにかかる。

じわりじわりと、ハチロクとエボⅣの距離が開き始める。

 

(速い、凄え速い車だ……。けど、もうすぐ5連続ヘアピン。そこで溝落とし使って詰めてやる!)

 

差は開いているものの、大きな差にはならずに5連続ヘアピンに突入する。

 

「来たぞ!」

 

「頭はランエボか!」

 

まず、先にエボⅣがヘアピンへと突っ込んで行く。

 

「は、速え!」

 

「まるでWRCのラリーカーだ……!」

 

そして少しすると、遅れてハチロクも突っ込んで来る。

 

「ハチロクはかなり遅れてきたな。ここまで遅れたのは初めてじゃないのか?」

 

「今度ばかりは流石に“秋名のハチロク”でも勝てないのか……?」

 

そうギャラリーがざわつく中、拓海は溝落としを決めて一気にコーナーを抜けていく。

 

「な、なんてスピードだ……!」

 

「一体何したんだ、アイツ……!」

 

そのコーナリングスピードに、ギャラリーは唖然とする。

その次も、さらに次も、拓海は溝落としで抜けていく。

 

(流石にキツイぜ。だが、この5連続ヘアピンはどんな車でもスピードがガクッと落ちる。ロスは最小限にしたし、ハチロクに追い上げられるような事は……)

 

そう清次が考えた瞬間、バックミラーが眩しくなる。

ハチロクが、すぐ後ろに来ていたのだ。

 

「な、そんなバカな……!」

 

(屈辱だぜ。俺のテクニックと、ランエボのパワーでも振り切れないだと……。野郎、ふざけてんじゃねえ‼︎)

 

ヒートアップした清次は、振り切ろうとさらにコーナーへの侵入スピードを上げる。

だが、それでもハチロクを振り切る事は叶わない。

そして、だんだんとエボⅣのフロントタイヤから悲鳴のようなスキール音が上がるようになる。

 

頂上にも、コース終盤に入った事が伝えられる。

 

「拓海のヤツ、まだエボⅣに張り付いているらしい!」

 

「マジかよ……。流石に、振り切られると思ったが」

 

健二の言葉に驚きを隠せない池谷達。

 

「そろそろ、エボⅣのタイヤがタレる頃ですね」

 

「「「え?」」」

 

「アイツはどんなハイペースにもついて来ます。まるで、磁石に引き寄せられるようにね。だからいくらペースを上げた所で意味はなく、むしろタイヤを消耗させる事に繋がります。拓海の前に出たら、ペースを保ちつつタイヤを温存する事が大切です。俺はタイヤを温存したから、途中で抜かれはしたけど最後にもう1度仕掛ける事が出来ました。一方、あのエボⅣは無理に振り切ろうとした」

 

「じゃ、じゃあ……!」

 

「ええ。このバトル、勝てますよ」

 

まさしく隼人の読み通りになっていた。

 

(クソッ、フロントがタレてきやがった。だがイラつくな、慌てるな。このまま前に出させなきゃ勝ちじゃねえか。圧倒的に優位な立場なんだ、少しくらいコーナリングが速くたってコーナーで抜く事は出来ないんだ、ストレートは断然俺の方が速いからな!)

 

焦る気持ちを抑えつつ、エボⅣはコーナーへと突っ込んで行く。

 

(しかし、ハチロクがここまで走れるとは考えてなかったな。ダウンヒルはディープだぜ……!)

 

コーナーで詰めても立ち上がりですぐ差が開く現実に、拓海にも焦りが生まれていた。

 

(なんて速い車なんだ……! このままじゃ、前に出られない。こうなったら溝落としパート2、立ち上がり重視の溝落としを使うしかない!)

 

ハチロクはキッチリとエボⅣに張り付いて行く。

 

(ブレーキングからツッコミにかけては差を詰めてくる。だがそれは、コッチのフロントがタレてきたせいもある。所詮はハチロク、立ち上がり加速はノロい。この勝負、勝った!)

 

しかし、拓海は勝負を諦めてなかった。

 

(次のコーナーを、立ち上がり重視の溝落としを使って差を詰めて、その次の道幅の広いコーナーで仕掛けるしかない。限界ギリギリのスピードで溝に上手く落とせるか、1発勝負だ!)

 

そしてそのコーナーへと入る。

手前のコーナーでタイヤを溝に落として突っ込んでいき、立ち上がりで一気にエボⅣと並ぶ。

 

「な、何だそりゃ!」

 

そして道幅が広くなり、そこから2台同時にコーナーへと入る。

 

「終わりだな……」

 

その光景を見て、啓介はそう呟いた。

 

「何故だ? 解体屋寸前のポンコツのくせにその速さは何なんだ!」

 

清次は差を埋めようとするも、フロントが流れてスピードを維持出来ない。

そしてそのままコーナーの出口でハチロクが前に出て、最終コーナーを抜けてゴールラインを切った。

こうして、“秋名のハチロク”VSエンペラーのバトルはハチロクの勝利に終わった。

 

 

 




ご精読ありがとうございます。
今回は拓海のバトルでした。
隼人のバトルは、もう少し先になりますのでお楽しみに。
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