3週間も投稿が空いてしまいました……。
リアルが忙しくなってきたのと、モチベの低下が原因ですね。
早く次進めないと……。
さて、今回はレッドサンズ対エンペラーです!
ハチロクがエンジンブローして、そのまま停止した。
俺はすぐに車を止めて、止まったハチロクの方に向かう。
「おい拓海、大丈夫か⁉︎」
「あ、ああ。俺は大丈夫だ。けど、ハチロクが……」
ハチロクのボンネットからはもくもくと白い煙が上がっており、ボンネットやフェンダーの上には煤やオイルらしきものも飛び散っている。
すると、先行していた須藤が戻ってきた。
「レースの世界ならエンジンブローは負けなんだが、初めに言った通り俺はバトルしたつもりはない。現実がよく分かっただろう、その車はもう寿命なのさ」
「………」
拓海は何も言い返さず、ただ呆然としている。
「完全にエンジン終わっているだろう。この機会に、ハチロクは潰して別の車に乗り換えたらどうだ? いくら速くコーナーを曲がるテクニックがあっても、速い車と遅い車の差は歴然としている。俺と競い合える車に乗り換えるまで、勝負はお預けだ」
須藤はそう言い残して去って行った。
須藤を見送った後、俺はハチロクのボンネットを開いた。
「あのさ、お前んとこの工場で直せないかな? 俺のバイト代全部出すし、何か手伝うからさ」
「……ダメだな、コレはもう直せないと思う。お金の問題とかじゃなくて、エンジンブロックに大穴開いちまってる。この4A-Gエンジンは完全に死んでしまった」
「そんな……!」
「もう一度動かすには、丸々エンジン積み替える他ねえな」
「……!」
顔見なくたって分かる。
俺には計り知れないほどのショックを受けているだろう。
どれだけキツい事か……。
そう考えていたら、下からトラックらしきエンジン音が上がってきた。
レッカーである。
運転席には、拓海の親父さんが座っていた。
「よお」
「お、親父……!」
親父さんは、ハチロクのエンジンを覗く。
そしてボンネットを閉める。
やっぱり、ダメだな……。
「親父、俺……」
「話は後だ、先にやる事やっちまうぞ。車をコイツに載っけるから手伝え」
そして、ハチロクをレッカーに載せる。
「でも、どうして親父がここに?」
「……まあ、なんとなくだ」
「なんとなく?」
「ああ。それよか拓海、エンジン壊れたの自分のせいだと思ってねえか?」
「……!」
「勘違いするな、偶々お前が乗ってただけだ。お前のせいなんかじゃねえ」
親父さんがそう言うと、拓海の目からうっすらと涙が溢れた。
「それじゃあ帰るぞ拓海。悪いな、手伝ってくれて」
「いえ……」
周囲は悲壮感がとにかく漂っていた。
そして、ハチロクを載せたレッカーで2人は帰って行った。
エンペラーの連中もプラクティスを終えた様子だし、俺も帰るとするか。
赤城の次に、ヤツらは再び秋名に乗り込んでくる。
絶対に負けねえ……‼︎
そう心に誓って俺も帰宅した。
家に帰ると、俺は早速親父に直談判した。
「なあ親父、俺のインプレッサ弄ってくれないか?」
「……どうした、血相変えて?」
「今、群馬エリアにエンペラーっていうランエボだけの走り屋チームが乗り込んできてるんだ。もうすぐ、アイツらとやり合う事になる。だから、その前に車を強化したいんだ!」
「そうか……」
そう言って、親父はタバコを吹かし始めた。
「ダメか?」
「……いや、そろそろ言ってくる頃合いだと思ってたからな。ついて来い」
親父はそう言うと、工場に入って行った。
そして、何かを覆っているブルーシートをめくった。
そこには、車のパーツ類が置かれていた。
「これって……!」
「全部お前のインプレッサ用だ。早速明日組み上げるぞ!」
翌日
今日も学校到着した後、拓海に会った。
「おはよ」
「うん、おはよ」
「おっはよー、拓海!」
イツキだ、相変わらず鬱陶しいくらい調子の良いヤツだ。
「今日も寝ぼけた顔してんな」
「お前こそ朝からハイテンションすぎるだろ、イツキ」
「だって今日だぜ、レッドサンズとエンペラーとの交流戦!」
その瞬間、少し拓海の顔が暗くなったように見えた。
こりゃ昨日の事思い出してるな。
イツキのヤツ何言い出すか分からないし、なんとかイツキの気を引いとかないと……。
「もう朝からドキドキしっぱなしなんだよ! 今度はさ、隼人も一緒に車1台3人で行こうぜ。だから、お前んとこのハチロク出してくんないか?」
「出すならお前のハチゴーだぜ、イツキ」
拓海が返す前にそう言った。
「ええ、なんでだよ?」
「だってこの前妙義の時はハチロクで行ったんだから、次はお前のハチゴーの番じゃないのか?」
「それもそっか……。アレ、ハチロクじゃないの分かったんだけど隼人のインプレッサじゃダメなのか?」
「ダメ、今日帰ったら弄る予定だから」
「またどこか壊れたのか?」
「んな訳ねえだろ。次またエンペラーが秋名に乗り込んで来るだろうから、その前にセットアップしておくんだよ」
「なるほど、エンペラー戦対策って訳か!」
「そう、つう訳だから今日行けねえわ」
そんな話をしてると、拓海は先に教室に歩き始めた。
「お、おい待てよ拓海!」
イツキがそれを追いかける。
「それにしても、本当に今日のバトルは楽しみだな。2人はどうなると思う?」
「………」
「そうだな……」
「俺の予想では、高橋涼介の勝ちだけどな。エンペラーの須藤って、それほど凄いヤツとは思えないんだよな、車の性能が良いだけでさ」
あ、ヤバい。
「お前、何も分かってないクセにテキトーな事言うな!」
やっぱキレた。
「ハイハイ落ち着けよ、拓海。俺は結構良い勝負になると思うぜ。昨日赤城にプラクティスの様子見に行ったんだけど、須藤のヤツかなり腕良かったぜ。コースのアドバンテージは高橋涼介に、車のアドバンテージは須藤にあって、結果はマジで読めない」
「え、ええ⁉︎」
「あのさ、イツキ。今日、俺も都合悪くなったから赤城に行けねえわ。だから、悪いんだけど池谷先輩達と一緒に言ってくれ」
「ええ、拓海も⁉︎」
まだショックを引きずってるな。
早く立ち直ってくれれば良いけど……。
そして帰宅した後、俺はスタンドに電話した。
『もしもし』
「あ、店長。池谷先輩って今います?」
『ああ、隼人か。ちょっと待ってろ、今変わる』
そして、電話に池谷先輩が出た。
『隼人か、ちょうど良かった。ちょっと聞きたい事があるんだけどさ』
「もしかして、昨日の赤城の事ですか?」
「ああ。その感じだと知ってるのか?』
どうやら池谷先輩達の耳にも届いていたようだ。
「ええ。というか、昨日赤城に行ってたんで全部知ってます」
そして俺は、昨日の事を包み隠さず話した。
『そうか、分かった……。教えてくれてありがとな』
「はい。今日なんですけど、次のエンペラー戦に備えて車弄るつもりなんで赤城に行けません。なんで、応援の方お願いしますね」
『ああ、任せろ!』
そして、電話が切れた。
さてと、それじゃあインプの改装始めるか!
数時間後
拓海は自分の部屋でで横になっていると、外から窓に何かが当てられた。
気になって外を見てみると、家の前にはイツキが来ていた。
「おーい、拓海ぃ!」
「あれ、イツキ。赤城には行かないって言っただろ?」
「いいんだ、俺も行くのやめたから。それでさ、これから秋名を流しに行こうと思ってんだ。付き合わないか?」
そして拓海は、イツキと共に秋名に向かった。
そして秋名の峠を登ってる最中
「拓海、今朝は悪かったな。俺、何も知らなかったからさ」
「別に気にしてねえよ……。それで、その話誰から聞いたんだ?」
「池谷先輩から。学校帰りにスタンドに寄ったんだ」
「池谷先輩達も知ってるのか」
「ああ、結構噂になってるらしいぜ。詳しい話は隼人に聞いたみたいだけど」
「そっか……」
「そうそう、池谷先輩に伝言頼まれてんだ。『昨日のバトル、負けたとは思ってない』って高橋啓介がわざわざスタンドに来て言ったんだって」
「……どういう意味かはよく分かんねえけど、手も足も出なかったんだから、完全な負けさ。多分、秋名でやっても勝てなかったと思う」
「そんなに凄いのか、エンペラーの須藤って。それで、ハチロクの方はどうなんだ?」
「親父や隼人は、エンジン載せ替えるしかないって言ってた」
「ええ!」
「赤城なんて行かなきゃ良かったよ……。つくづく後悔してる」
同時刻
赤城山
そこは、エンペラー対レッドサンズの交流戦を見に来たギャラリーで埋め尽くされていた。
ちらほらと“秋名のハチロク”が負けた事を噂する声も聞こえる。
周囲の空気は、とても重たくなっていた。
しばらくすると、下からぞろぞろと車が上がってきた。
「来たぞ、ランエボ軍団だ!」
「負けんじゃねえぞ、レッドサンズ!」
ギャラリーからそんな声が上がる中、涼介と須藤が対面する。
「今日の交流戦は、俺とお前とのバトルが全てだ!」
「望むところだ。始めようぜ、本物のバトル!」
そして涼介のFCと須藤のエボⅢがスタート地点に並べられて、啓介がスターターとして前に出る。
「それじゃあカウント始めるぞ! 5秒前……4……3……2……1……GO‼︎」
そして、2台は同時にダッシュしてバトルが始まった。
須藤はあえてFCに前を譲り、後追いになる。
そして、第1コーナーへと入っていく。
「うおお、どっちも凄えキレたツッコミだ!」
「でもどうしたんだ? 高橋涼介は、普段は相手を先行させるっていうのに」
「この先、どうなるんだ?」
予想外の展開に、ギャラリーも驚く。
序盤の急勾配で低速なワインディングロードを抜けていく2台。
その頃、須藤は1年前の事を思い返していた。
(お前は、峠には峠のテクニックがあると言った。ならば、そのテクニックとやらを見せてみろ! 1年前の敗北の悔しさ、忘れやしない。お前も分かっているんだろ、今日のバトルは互いの走りに掛ける哲学と信念のぶつかり合いなんだと!)
そしてさらに後ろから須藤はプレッシャーをかけていく。
(それにしても分からない、お前が言っていた峠のテクニックがな。だが、最短距離をカットするライン取りにヒール・アンド・トゥ、そしてゼロカウンターの四輪ドリフト。それらは全て、レーシングテクニックそのものだ。その走りのどこに峠のテクニックがある⁉︎ 速さに拘るなら、結局行き着く先はモータースポーツのテクニックしかない。おれの信念が揺らぐ事は無い‼︎)
バトルは未だ拮抗して動かない。
スタート地点のメンバーにも、それは伝わる。
『涼介さんが快調に飛ばしてます。けど、エボⅢも全く引けを取ってません!』
そして中速セクションに入り、須藤が仕掛けにいく。
(見せてやるぜ、涼介。この1年間の走り込み成果をな!)
エボⅢは驚異的な加速をし、アウト側から鼻先を差し込んでいく。
そして、インとアウトが入れ替わる次のコーナーでFCを抜き去った。
その場で見ていたナイトキッズの中里と庄司も驚嘆していた。
「見事にカウンターアタックが決まっちまったぜ……!」
「コーナー抜けた瞬間、グイと前に出るあのトラクション。どうやっても二駆には真似出来ねえ」
「全くだ。駆動システムの差からくる、絶対的な性能差だ。これは、高橋涼介にとって苦しいバトルになったな」
「もう一度前に出るチャンスがあるかどうか、絶望的だな……!」
その頃、須藤はスッキリした気分で走れていた。
(モヤモヤしていたコンプレックスが吹っ切れた。カリスマなんて、俺は認めない。そんな迷信めいたものも白日の元に曝け出してしまえば、それは結局テクニックの積み重ねでしかない。それさえ吹っ切れば、涼介なんて怖くはない。この分野では、俺の方が絶対上だからな!)
アフターファイアを吐き出して、エボⅢはコーナーを抜けていく。
それを懸命に涼介は追いかける。
(良い車に仕上げたな、京一。4WDとは思えないほどよく曲がる足に、どこからでも加速する。クルッと曲がってドカンと立ち上がる。加速ではどうやっても追いつけない。改めて見ると、恐ろしい戦闘力だぜ……! だが、昨日の時点で分かっていた事だ)
そして、限界ギリギリまで踏み込んでいく。
フロントバンパーをガードレールに掠めつつ、外側ギリギリのラインを通して立ち上がっていく。
「うわあ! あの涼介さんがガードレール擦ったぞ‼︎」
「この局面でミスしたのか?」
「いや、そうじゃない。そこまで攻め込まないと、あのエボⅢについていけないんだ……!」
それはタイムが示していた。
「このまま行くと、赤城のコースレコードを確実に塗り替える事になるだろう」
その状況は、頂上のメンバーにも伝えられる。
『依然としてエボⅢが先行してます!』
「了解」
「ランエボのスピードは、全く衰えていない。このままやられちゃうんじゃ……」
「心配するな。確かに須藤は速い、だがアニキなら須藤の本当の実力を把握出来てるはずだ。だから、俺はアニキを信じるぜ!」
そしてその頃、涼介は既に須藤の弱点に気付き始めていた。
(ミスファイアリングシステムと四駆の恩恵は大きいな。低速コーナーからの加速ではどうやっても置いてかれる。だが、高速コーナーではつけ入る隙はある。それに……やはりな!)
無論、須藤もそれをなんとなく感じ取っていた。
(ラインを変えて攻め込んでくる様子はない。まさか勝負を投げた? いや、ありえない。必ずどこかで仕掛けてくる。絶対有利な立場なのに、どこか追い詰められた気分だ。まだ涼介に対するコンプレックスが残っているのか? 落ち着け、勝てばそんな物は消えてなくなる。まだタイヤに余力はある。どこからでも来い!)
最終コーナーのすぐ手前で、池谷と健二もギャラリーに来ていた。
「ヤバいな、高橋涼介のヤツ大苦戦だ」
「苦戦どころか、敗色濃厚って感じだな。やっぱり、もう隼人に賭けるしかねえのかな……」
そんな中、2台が突っ込んで来る。
(突破口は、右のブラインドコーナーだ!)
そして、涼介は仕掛けに行く。
(京一、お前は右サイドへの恐怖心を克服出来ていない。ハッキリ言ってしまえば、右コーナーが下手クソって事だ‼︎)
FCは外側から入り込んで、エボⅢのラインに被せていく。
(クソッ! これじゃあ四駆のトラクションも、ミスファイアリングリステムも、パワーも活かせねえ!)
「凄え、FCが頭抑えたまま立ち上がっていく!」
「行け、行け、行ってくれ‼︎」
そのままFCが再び前に出て最終コーナーへと入る。
「よっしゃ、逆転!」
「そのまま行ってくれ!」
そして、FCが先にゴールラインを横切った。
こうして高橋涼介が勝利を収め、レッドサンズとエンペラーの交流戦は幕を閉じた。