頭文字D 〜公道のハヤブサ〜   作:Many56

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どうも、最近Youtubeで無料公開されてるダンボール戦機シリーズにハマってるMany56です。
久しぶりに3DS開いてプレイしている始末ですよw
それはそうと、アレってもうテレビ放送から10年くらい経ってるんですよね、時の流れって末恐ろしい……!
さて、いよいよ須藤VS隼人、ランエボVSインプレッサです。
結果は如何に⁉︎


Act.30 公道の戦闘機(ハヤブサ)

 

 

 

とうとう、エンペラーとのバトルの日がやってきた。

ランエボとの対決である。

絶対負ける訳にはいかないし、負けるはずがない。

 

「んじゃ、行ってくる」

 

「おう、行ってこい」

 

そして俺は、自宅出てEJ20のエンジンサウンドを奏でながら秋名に向かった。

秋名の麓まで来ると、ゴール前の駐車場が埋まっていた。

周囲は不安と期待で入り混じっているのがよく分かる。

大丈夫、負けやしないさ。

そのまま俺は、頂上のスタート地点に向かった。

 

 

 

●●●

 

 

 

ゴール地点前の駐車場

 

そこではナイトキッズの2人が、“秋名のハヤブサ”が上っていくのを見届けていた。

 

「見たか、毅?」

 

「ああ……。今、ハヤブサが目の前を通り過ぎた瞬間、全身に電気みたいなもんが走った」

 

「とんでもねえオーラだぜ」

 

「今のオーラは、車を意のままに操れるってだけじゃねえ。それを超えた()()を併せ持っていた。今日のアイツ、凄えもん魅せてくれるだろうぜ!」

 

そして少し経ち、中間付近のヘアピンにいる高橋兄弟の目の前を通過していく。

 

「凄え……。目の前をインプレッサが通り過ぎた瞬間、ビリってきた。以前のハヤブサとは別物みたいだ……!」

 

「なるほど……!」

 

「アニキ?」

 

「いや、気にするな」

 

「……そうか」

 

 

 

●●●

 

 

 

俺がスタート地点に到着してしばらくすると、下からランエボ軍団が車列を為して上がってくる。

前にも見たな、この光景。

 

「来たな、エンペラー……!」

 

「隼人頼むぞ、拓海の仇取ってやってくれ‼︎」

 

「分かってます。負けたりしませんから心配しないで下さいよ」

 

そして、俺のインプレッサの横に黒いエボⅢが並べられる。

 

「ほう、かなり弄ってきたようだな」

 

須藤が、俺の車を見てそう言った。

 

「ええ」

 

「それじゃあ、始めようか」

 

「その前に、少し良いですか?」

 

「何だ?」

 

「そこのエボⅣに貼ってある切り裂いたステッカー、俺が勝ったら全部取っ払って下さい。見ていて非常に不愉快だ……!」

 

「……いいだろう」

 

「それからもう一つ、これが本題ですね。ハチロク含めて、どんな車だろうと人の乗ってる車を否定するような発言はやめてもらえますか?」

 

「先がないのだから、そう言うのは当然だろう」

 

「先、ねえ……。それを言い出したら、アンタのエボⅢも俺のインプもすぐに型落ちになって先がなくなりますって。というか、中古の時点ですでに型落ちか」

 

「何が言いたい?」

 

「どんなコースだろうとどんな車だろうと、有利だろうと不利だろうと、結局バトルに勝った方が速いんですよ。拓海は、そういう不利条件を覆して勝ってきました。勝ててる以上、その車を、ハチロクを否定する理由にはならない。例え10年だろうが20年だろうが型遅れでも勝てるのなら現役だし、逆に最新型でも勝てないならガラクタですよ。勝負の世界って、そういうモンでしょ?」

 

「だが、車のポテンシャルは高い方が良い事に変わりはない。お前だって、そう考えてインプレッサに乗っているんじゃないのか?」

 

「違いますよ。確かに条件が良かったってのもありますけど、それ以上にこの車にシンパシーを感じたんです。シンパシーを感じた車が、偶々高性能だっただけです。ハチロクだろうとランエボだろうとインプレッサだろうと、皆好きな車に乗ってバトルする。当然でしょ?」

 

「フッ、そうかよ。お前とは、相いれそうにないな」

 

「でしょうね。俺も合理的なのは大いに結構ですけど、アンタみたいにエゲツないほどの合理主義なのは大嫌いですから」

 

お互い車に乗り込むと、池谷先輩が前に出てカウントを始める。

 

「それじゃあカウント始めるぞ! 10秒前……9……8……7……6……5……4……3……2……1……GO‼︎」

 

そして、ランエボとのバトルが始まった。

 

 

 

●●●

 

 

 

先行するのはインプレッサ、それをエボⅢが追いかけていく。

そしていきなり第1コーナーへと入る。

最小限のブレーキングから高速ドリフトで一気に抜けていく。

 

(さすがだな、涼介を倒しただけの事はある。それに、まだまだ本気を出してはいないな)

 

どちらもまだ、本気ではない。

お互い、切先を合わせた小競り合いの様な状況だ。

しかし、それでもギャラリーを沸かすには十分だった。

 

「凄え、どっちも速え!」

 

「お互い4WDだってのに、あんなドリフトが出来るのかよ!」

 

第1コーナーを立ち上がり、すぐに次のコーナーへと入る。

 

(やっぱり速いな、キッチリ食いついてくる。けど、そこまでヤバい雰囲気は無い。高橋涼介や拓海を相手にしていた時の方がよっぽどエグかった)

 

そのまま気にせず次のヘアピンを抜けていき、次のコーナーへと突入する。

 

(恐ろしいテクニックだぜ。このコーナーを流しっぱなしで抜けるとはな。4WDとは思えないほどクイックな運動性能だ。だが、俺からは逃げられない)

 

さらにプレッシャーをかけていく須藤。

そして、2連続ヘアピンに入る。

須藤はエボⅢのノーズを差し込み、1つ目のヘアピンを抜ける。

 

「まさかあのエボⅢ、ここで仕掛けるのか!」

 

馬力(パワー)の差が小さい分立ち上がり加速で差を詰めにくいが、ここのストレートの長さなら十分だ)

 

そのまま2台とも立ち上がり、エボがコーナー手前でインプレッサと並ぶ。

誰もがインプレッサが抜かれると思いかけた瞬間、ツッコミでエボⅢが遅れる。

そのままインプレッサはドリフト走行に移り、エボⅢのラインをブロックして流れるように立ち上がる。

 

(なんだ、俺のミスか? 僅かにインプレッサのツッコミがさっきより速かったように思えたが……)

 

そして、スケートリンク前のストレートに入る。

 

(何故だろうか、ここで抜いておかないとヤバい気がする……。普通はもうしばらく後ろから様子見に徹するべきなんだが、ここで前に出ておかないと負けるような……。フッ、俺らしくもない。勘で動くのは性に合わんし、俺のテクニックとこのエボIIIで離される事なんてあり得ない。もう少し様子を見よう)

 

そう判断して、須藤は少し引く。

それが、完全な判断ミスとも気付かずに。

そしてその頃、涼介が啓介に聞いていた。

 

「なあアニキ、ハヤブサのヤツ車を弄って来ていたけど、今回のバトルはどっちが勝つと思ってるんだ?」

 

「啓介は気付かなかったのか、インプレッサが漂わせていたオーラに?」

 

「確かに、俺やアニキとバトルした時なんかとは比べ物にならないくらいビリってきたが……」

 

「それが分かるなら、答えは簡単じゃないか」

 

その瞬間、啓介も気付く。

 

「って事は、まさか……!」

 

「ああ。この勝負、ハヤブサが圧勝する」

 

コース最長のストレートを抜けて、コーナーが見えると同時に隼人が勝負を仕掛ける。

 

(さあ、ここからは全開走行だ。ついて来れるかな、須藤京一‼︎)

 

直後、須藤の目の前からインプレッサが残像を残して消える。

 

(な、何が起こった!)

 

すぐに須藤も全開走行へと移る。

しかし、コーナーを抜けた直後インプレッサとの差が確実に開いていた。

さらに、またしてもインプレッサが残像を残して消える。

 

(な、何なんだあの速さは……‼︎)

 

そしてコーナーを抜ける度に差が開き、インプレッサがコーナーへと入る度に離される。

あっという間に高速コーナーのセクションを抜けて、涼介と啓介がいるヘアピンをインプレッサが抜けていく。

 

「な、何なんだ今のコーナリングは‼︎」

 

その速さに、啓介も驚嘆する。

 

「中島隼人の全開と、進化したインプレッサが今のスピードを生んでいるのさ」

 

直後、須藤のエボⅢも抜けていく。

 

「京一のヤツ、完全に想定外といった様子だな」

 

「だがよアニキ、なんであそこまで離されるんだ? インプレッサとエボⅢにはそんなに性能差があるのか? それとも、中島と須藤のテクニックにそんなに差があるのか?」

 

予想以上の離れ方に啓介は納得が出来ていなかった。

 

「そうじゃない。馬力ではエボⅢの方が確実に上だろう。それに京一のテクニックはかなりなもの、多少ハヤブサが上回っているだろうがそこまで大きな差はない」

 

「じゃあ、何で?」

 

「重心だ」

 

「重心?」

 

「そうだ。インプレッサは水平対向エンジンの搭載により驚異的な低重心車両となっている。重心が低ければ横Gに強くなり、コーナリング時に外側へ流されなくなるから、コーナーの限界スピードが大幅に上がる。そしてコーナーの限界スピードが高ければ、コーナーへの侵入と脱出も速くなる」

 

「そうか。コーナリングが速ければ、直前のブレーキングも直後の加速も速く出来るのか!」

 

「京一のエボⅢもツッコミと立ち上がりは速いが、コーナーの中間ではどうやってもスピードが少し落ちる。対して、今のインプレッサはさらに軽くなったボディとターボに4WDという組み合わせで、ツッコミも立ち上がりも速いのに、低重心だからスピードも落ちない。オマケに、それを余す事なく活かすセットアップとなっている。そしてそれを操るのが、中島隼人という男だ。その結果、まるでコーナーの入口から出口までワープしたかのように走るのさ」

 

「コーナーを、ワープだって……!」

 

「もちろんそんな事が起こる訳はないが、そのような錯覚をさせてしまう程鋭くキレ良く曲がるんだ。俺でも、今のヤツに食らいつく事さえ難しいだろうな」

 

「マジかよ……!」

 

須藤はなんとか前を走るインプレッサに食いついていたが、それだけで精一杯という様子だった。

 

(完全に誤算だった、ここまで速いとは……!)

 

現在、コース中間にあるロングストレートを2台は駆け抜けている。

そして、須藤は馬力の差を活かして高速コーナーの区間で開いた差をじわりじわりと詰めていた。

しかし、詰め切る前に次のヘアピンが現れる。

インプレッサはブレーキングに入り、またしても須藤の視界から消える。

 

(クソッ! 詰め切る前にコーナーが現れて、その度引き離される‼︎)

 

負けじと須藤もギリギリまで突っ込んでいくが、やはりそれでも離されていく。

 

(どうなっている、得意の低速コーナーでさえ詰められない)

 

秋名に点在する低速のヘアピンを使ったところで詰められない。

しかも、その後に続くのは2つの高速コーナー。

そこであっという間に離される。

たったコーナー2つとはとても思えない離され方であった。

そのままインプレッサは先行して5連続ヘアピンに入っていく。

 

(ここでさらに引き離す!)

 

隼人はさらにペースを上げる。

フルブレーキングしてすぐに四輪ドリフトでヘアピンを抜けて、あっという間に次のヘアピンへと入っていく。

その状況は、頂上にいる池谷達にも伝わっていた。

 

『こ、こちら5連続ヘアピン! 凄え事になってるぞ‼︎』

 

「こちら頂上、どうしたんだ?」

 

『隼人のヤツ、とんでもねえタイム出してるぜ。エボⅢに3秒以上も差もつけてやがる! このまま行けば、秋名のレコードさらに更新しちまう‼︎』

 

「「「……‼︎」」」

 

『でも、それよりヤバいのはインプレッサのコーナリングだ。まるで目が追いつかなかった! コーナーに入った瞬間視界から消えて、気付いた頃にはもう立ち上がってるんだ‼︎』

 

「ま、マジかよ……!」

 

「このまま行けば圧勝じゃねえか……!」

 

『速い車の事を戦闘機に例える事あるけどさ、そんなの生優しいモンだって分かったよ……。今のインプレッサは本物の戦闘機だ。車じゃなくて、公道の戦闘機が走ってるんだ……‼︎」

 

その言葉に全員が絶句する。

聞き耳を立てていたエンペラーのメンバーさえも、その状況に言葉は出なかった。

だが、その事に最もショックを受けていたのは、後ろから追いかけている須藤だった。

 

(追いつけないのか……? 同じハイパワーターボエンジンに4WDなのに……!)

 

どれだけ速く突っ込んでも、どれだけアクセルを踏み込んでも、インプレッサとエボⅢの差は埋まらない。

そして4つ目のヘアピンを抜ける直前、エボⅢのラインが外に膨らむ。

 

(クッ、フロントタイヤの食いつきが……!)

 

無理にインプレッサに追いつこうとした結果、フロントタイヤを酷使し続けてあっという間にタレてしまったのだ。

京一らしからぬミスだが、彼にとって“秋名のハヤブサ”の速さはそれだけ大きなショックを与えていたのだ。

5連続ヘアピンを抜けても差は縮まらない。

最後のヘアピンを抜けてコース終盤の長いストレートに差し掛かるが、すでにどうやっても追いつく事は不可能なほど、大きな差になっていた。

 

(置いていかれる焦りを抑えて、ペースを上げないべきだったか? いや、タイヤのグリップを残せていたとしても、こんな差を埋められる訳がない。完膚なきまでの大敗北だ……)

 

その後もインプレッサは先を走り続けて、とんでもないレコードタイムでゴールラインを横切る。

エボⅢとのタイム差は、なんと5秒という圧勝振りだった。

 

 

 

●●●

 

 

 

ふう、終わった終わった……。

……フフフ、フハハ、フハハハハハ!

大勝利である、完膚なきまで叩き潰してやったぜ‼︎

いやホントにアイツらメッチャ腹立つクソ共だったからな。

いやー、スッキリしたぜ!

戻ったらアイツらにどんな顔してやろうかな?

ターボエンジンと4WDの組み合わせに頼ってるだけなザコ共の屈辱的なツラが楽しみである。

おっと、その前に見ておかなければならない場所がある。

俺は車を降りて、フロントタイヤの溝を確認した。

計算通りだ、キッチリ使い切ってる。

そんな事をしていると、後ろから話しかけてくる男がいた。

須藤である。

 

「何ですか? まさか、もう一度バトルしろとか言わないでしょうね?」

 

「そんな事言う訳ないだろ、俺の完敗だ……」

 

「んじゃ、戻ったら早速エボⅣに貼ってあるステッカー全部剥がしてもらいましょうか」

 

「分かっている。だが、その前に聞きたいことがある」

 

その目は真剣そのものだ。

まあ、コイツも公道での速さを追求してるヤツだ。

走りに対しては真剣そのものなのは当たり前か。

 

「どうしてここまで差が付いた? 同じハイパワーターボエンジンと4WDの組み合わせだと言うのに……。お前はどうしてあそこまでの走りが出来た?」

 

「その質問に答えるには、まず聞かなきゃいけない事があります。どうしてエボⅢという車を選んだんですか?」

 

「そんなの決まっている。俺の信念では、速さを追求するならターボと4WDの組み合わせは必須だからな」

 

「それだけですか?」

 

「……あとは、それなりにチューニングの幅もあって安かったから……だな」

 

「なるほど、そうですか。じゃあ、俺に勝てないのは当然ですよ」

 

「?」

 

「俺が聞きたかったのは、その車が本当に好きかどうかですよ。それこそ、その車で走っていて事故に遭っても後悔しないほどにね。暗くて狭くて、オマケに対向車が来る可能性もある夜の峠を100km/h(キロ)オーバーで走る以上、いつ事故に遭ってもおかしくない。自分が死ぬかもしれないし、例え死ななかったとしても誰かを死なせてしまうかもしれない。そんな事が起きてもコイツなら後悔しない。そう思えるほど車に愛着を持ってはいないんじゃないですか?」

 

「それは……」

 

須藤は口籠って、何も言い返せない。

 

「車への愛着というのは、速さを追求する上でとても重要なだと思います。車に愛着があれば、自然と深く車の事を知ろうとする。車を深く知る事は、速く走りつつ安全マージンを残す方法を考えるのに役立ちます。そして何より、心置きなく限界ギリギリのところまで踏み込めるようになります」

 

「!」

 

「もちろん、車の細かな違いやドライバーのテクニックも影響してはいるでしょうけど、1番大きいのはやはりそこなんじゃないですかね」

 

「なるほど、愛着か……。普通、そんな物が勝負を分けるなんて考えないぜ」

 

「でしょうね。でも、公道はクローズドサーキットとかとは違って、何が起きてもおかしくない。サーキットやジムカーナといったモータースポーツではあり得ない事が起こり得るんですよ。今や型遅れと呼ばれるハチロクが、ランエボと張り合っちゃったりね」

 

「………」

 

「聞きたい事はそれだけですか?」

 

「……ああ」

 

「んじゃ、俺はこれで失礼します」

 

俺はそのまま車に乗り込んで、スタート地点に戻って行った。

 

 

 




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高評価して頂きありがとうございます!
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