頭文字D 〜公道のハヤブサ〜   作:Many56

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どうも、頭文字DACにて東方Projectコラボが始まって狂喜しているMany56です。
とりあえず、1番欲しいのはBGM『Grip & Break down !!』ですね!
さて、31話目です。お楽しみ下さい!


Act.31 Eight-Six Re:Birth(前編)

 

 

 

前橋市のとある自動車工場

 

“秋名のハヤブサ”とエンペラーのバトルが終わり、そこから帰宅した青年がいた。

 

「ただいま」

 

そこには、黒いチェイサーをメンテナンスしている、青年の父親がいた。

 

「帰ってきたか。それで、どうだった?」

 

「いやー、かなり面白いモン見れたよ。まあ、隼人にあの程度のランエボなんかに負けてもらっちゃ困るけどな」

 

「そうか。ああそうそう、こっちに来い。見せたい物がある」

 

少年の父親は、ガレージの奥に入っていく。

そこには、真紅のセダンが停められていた。

だが、ただのセダンではなかった。

ボンネットは黒いドライカーボンのものに、ウィングも純正からGTウイングに付け替えられている。

チューニングの施された、ランサーエボリューションⅣであったのだ。

 

「おお、来たのか!」

 

「ああ。明日にはセッティングを済ませておく」

 

「ありがと、親父!」

 

 

 

●●●

 

 

 

エンペラーとのバトルから一夜明け、俺が須藤に圧勝した事は群馬中で話題になっていた。

まあ、同じターボと4WDの組み合わせでなおかつホームコース。

しかも相手はランエボで、個人的にあまり好きなタイプの人間じゃなかった。

このくらいやらないとメンツが立たない。

さて、現在俺は秋名を走り込んでる最中だ。

いくらエンペラーに勝ったといえど、また県外のチームが攻め込んでくるかも知れない。

少しでも走っておかないとな。

それにしても、だいぶ時間も遅くなってきた。

最後に1本下ったら帰るとしよう。

休み終えて、そこからまた秋名を下り始めた。

それにしても、このインプレッサは本当に速くなった。

軽量化にエンジン出力の微増、そして何より足回りの大幅なセッティングの変更。

これだけでここまで速くなるなんてな。

それにしても、拓海のハチロクの方はどうなったかな?

そんな事を考えて走っていると、目の前のガードレールが明るくなる。

インプレッサのヘッドライトの物じゃない。

どうも対向車が来ているみたいだ。

そしてその姿が見え、そのまま視界から対向車は消えていく。

今まで聞いたことがないような、甲高いエキゾーストを奏でながら。

そしてその車は、白と黒のツートンカラーにリトラクタブルヘッドライトだった。

紛れもない、ハチロクトレノだったのだ。

 

 

翌日

とあるファミレス

 

今日は池谷先輩や拓海達と一緒にお茶しに来てた。

それにしても、昨日見たハチロクが頭から離れない。

今まで親父に連れられて行った走行会や工場とかでハチロクを見る機会は何度かあったが、それらとはエキゾーストがまるで別物だった。

どうしても気になるので、拓海に聞いてみた。

 

「なあ拓海、お前んとこのハチロクって今どうなってるんだ?」

 

「さあ、俺は知らねえよ。親父がどこかに持って行ったっきりでさ」

 

「朝の配達はどうしてるんだ?」

 

「親父が持ってきたボロい軽を使ってるよ」

 

「そっか……」

 

「隼人、どうしてそんな事聞くんだ?」

 

池谷先輩が聞いてきた。

 

「昨日の事なんですけど、実は秋名走り込んだ帰りにハチロク見たんですよ。それも、3ドアで白黒のパンダトレノ」

 

「「「何ィ?」」」

 

「何かの間違いとかじゃないのか。俺、何も聞いてないぜ?」

 

「いやでもさ、お前んとこと完全に同型のハチロクだったんだって」

 

「きっと違うと思うけどな……」

 

「まあ確かに、ナンバーとかとうふ屋のステッカー貼ってあるかとかまでは分かんなかったから断定は出来ないけどさ、そういう感じの雰囲気漂ってたんだよな」

 

確かに断定は出来ないが、あそこまで条件揃ってると、偶然には思えないんだよな。

 

「でも直ってるんなら、今頃戻ってきてると思うけど」

 

それもそうか……。

 

「じゃあまさか、今頃どっかの解体屋でスクラップにされてたり……」

 

「そんな事になってたら俺は泣くぞ!」

 

健二先輩に池谷先輩がまーたネガティブ思考始めたよ。

 

「それはないと思いますよ。親父、エンジン積み替えるって言ってたんで」

 

「それ本当か? どんなエンジン載せるんだ?」

 

食い気味に聞く池谷先輩。

 

「今更あの車にどノーマルの4A-G載せるってのは考えられないし、いよいよターボとかかな?」

 

うーむ、あの親父さんがそんな簡単に想像つくことやるかな?

正直、イツキの意見には疑問が残る。

 

「……俺、あんまり興味ないな」

 

ポツリと、そんな言葉を漏らす拓海。

 

「どうしてだよ? エンジン載せ替えれば、あのハチロク確実に化けるぞ」

 

拓海はハチロクに対してかなりの愛着を持っていた。

絶対喜ぶと思ったんだけど……。

 

「いや、だからその化けるのが俺としては嫌なんだ」

 

「「「⁇」」」

 

「エンジンといえば、車全体で見ても1番重要なところじゃないですか。人間で言ったら、脳みそみたいなモンだと思うんですよ」

 

「……それを言うなら心臓じゃね? 脳みそはドライバーだって」

 

思わずそうツッコミを入れた。

やっぱり、コイツはセンスがちょっと独特だわ。

 

「まあ、心臓なら心臓でもいいけど。とにかく、エンジンを載せ替えるのが嫌なんだ。全然、別の車になっちゃいそうで……」

 

「なるほどね。愛着あるからこそ、別のエンジン乗せたくないって訳か」

 

「まあな……」

 

「でもさ、あのエンジンはもう直らないし、かと言って同じセットアップにした4A-G載せてもテセウスの船だぜ? それに、これから先のバトルで勝ちたいんだったらハチロクの戦闘力アップは必須だと思うぜ」

 

「うーん……」

 

「まあ、それだけ俺達は新しいエンジンが気になってしょうがないのさ」

 

 

 

●●●

 

 

 

数日後

赤城山

 

暗闇に包み込まれた峠道を、2台が甲高いエンジン音を鳴らしながら駆けていく。

前を走っているのはオレンジのS14シルビア、レッドサンズの中村賢太だ。

 

「クッソォ、離れない!」

 

そのすぐ後ろをピッタリとつけているのは、赤いランエボⅣだ。

特徴的なのは、カーボンボンネットにGTウイング、そしてリアフェンダーに漢字の「零」と白い文字のステッカーが貼られている事だ。

 

(なんてヤツだ、この俺についてくるなんて……。まさか、またエンペラーか?)

 

ケンタは全力で振り切ろうとするものの、エボⅣは一向に離れる気配がない。

 

「さすがはレッドサンズの一軍、腕はそれなりに良いね。同レベルの車だったら、ちょっと手を焼いたかも。だが、これじゃまだまだだな。多分、二流のエボ乗りにさえ勝てやしない」

 

エボⅣのドライバーである青年はそう呟くと、フェイントモーションを入れてあっさりインカットしていく。

 

「なっ‼︎」

 

そして勢いを殺さず、キレイなラインを描いて立ち上がっていく。

 

「や、ヤベェ!」

 

「あのエボⅣ何者だ⁉︎」

 

そのまま一気にS14を離しにかかる青年。

ケンタも負けじと追いかけていくが、エボⅣとの差は一向に縮まらない。

そして、いつしかエボⅣは視界から消えてしまっていた。

 

(一体何だったんだ、アイツ?)

 

 

数時間後

藤原とうふ店

 

日がまだ上らない時間、拓海はベッドから起き上がる。

中学の頃から毎日続けている、とうふの配達の時間だ。

顔を洗い、着替えを済ませて玄関先に向かう。

だが、拓海の表情はあまり芳しくない。

今まで楽しんで配達をした事は1度もなかったが、10日ほど前から特に表情は良くない。

 

(ハチロク、早く直らないかな……?)

 

ハチロクがエンジンブローしてしまい、仕方なくレンタカーの軽を使わざるを得なくなっているからだ。

 

「なあ親父、そろそろ寒くなってきたしストーブ出さねえか?」

 

「ダメだ。ダラけてるから寒いんだよ、身体動かせ」

 

そんな他愛もない話をしてる中、外からエンジン音が聞こえてくる。

最近使っていた軽とは違い、どこか聞き覚えがあるような雰囲気を持っていた。

すぐ外に出ると、家の駐車場には5年間毎日乗り続けてきたハチロクが停まっていた。

 

「もしかして直ったのか? ハチロク、もう動くのか?」

 

「何言ってんだ、当たり前だろ? エンジン載せ替えたんだからな。今日からまた、コイツで配達してもらうぜ」

 

それを聞いて、拓海からは思わず笑みが溢れる。

 

「そうそう、お前に言っておく事がある。お前が稼いだ金も車直すのに使った訳だから、これからは半分お前のモンだ」

 

「いいのかよ? だって、俺が壊したんだぜ?」

 

「いいんだよ。お前がミスして壊れたんじゃなくて、たまたまお前が乗ってる時に壊れただけなんだから。スタンドのバイトだけじゃなくて、お前がコイツで毎日とうふを配達して貯めた金も使ってある。それなりに愛着持ってやってもいいじゃねえのか?」

 

「そ、そうかな……?」

 

「とにかく、俺はそうするって決めたんだ。つべこべ言ってねえで、さっさと配達に行ってこい」

 

「あ、ああ。分かった」

 

そう促されて、車に乗り込む。

以前とは違い、バケットシートになっている。

 

「なんか妙な感じだな」

 

「バケットシートになって、目線が今までより下がったからだろ。その内慣れて気にならなくなる」

 

文太はそう言って、拓海に水の入った紙コップを渡す。

 

(それだけじゃない。前よりハンドルが重くなってる。それにクラッチも……)

 

だが、それは些細な事だった。

シフトをニュートラルから1速に入れてクラッチを繋いだ瞬間、その違和感がハッキリと拓海に伝わった。

明らかに表情が強張る。

 

(そうなんだよな。クラッチ繋いだ瞬間、違いがハッキリ伝わってくるんだ)

 

文太は拓海を見送りつつ、そう考えた。

一方の拓海は、しばらく渋川の市街地を走り秋名の峠に入る。

そしてそのままワインディングロードを上っていく。

だが、上りはほどほどにしてとうふをホテルに届ける。

そして帰りの下り、いつも通り攻め込んでいく。

いや、いつも通りではない。

異常に速い事は変わらないし、素人目から見れば大した差は感じないだろう。

しかしながら、拓海はその変わり果てたハチロクの挙動に四苦八苦していた。

 

(な、なんだこれ? 全然乗り方分からねえ、走りにくい!)

 

 

 

●●●

 

 

 

GSゼネラル

 

学校が終わり、今日もバイトしにスタンドへ来た。

店の奥では、池谷先輩と健二先輩が話している。

なんだか騒がしそうだ。

 

「どうかしたんですか?」

 

「おお、隼人。いや実はな、最近赤城で赤いランエボが出没してるらしいんだ」

 

そう聞くと、健二先輩が答えてくれた。

 

「赤いランエボ。もしかして、またエンペラーですか?」

 

そう言うと、池谷先輩が否定した。

 

「いや、群馬ナンバーだったそうだからそれは無いと思うぜ」

 

「ほら、エンペラーの連中は全員栃木ナンバーだっただろ?」

 

「なるほど。じゃあ、群馬の走り屋って事ですかね?」

 

「多分な」

 

「そいつエボⅣなんだけど、カーボンボンネットにGTウイングを装備していて、かなり特徴的なんだ。そして何より、リアフェンダーに漢字の『零』ってマークが貼られているらしい」

 

「『零』ですか?」

 

「ああ。とんでもなく速くて、聞いた話じゃレッドサンズの一軍でも歯が立たないんだとさ」

 

「リアフェンダーのマークからついた異名が“赤城の零戦”。まさしく、公道を走る戦闘機だな」

 

リアフェンダーに『零』のマーク、まさか……。

 

「どうした、隼人?」

 

「もしかして、ソイツの事で何か知ってるのか?」

 

「あ、いや、別にそんなのじゃないですよ。単純にインプ乗りとして気になるなって思っただけです」

 

「そうか」

 

知っている訳ではない。

だが、心当たりがある。

カート時代、しばらく俺は連勝を続けていた頃があったのだが、それを止めたヤツだ。

何故なら、ソイツも同じように『零』のマークを貼っていたからだ。

断定はまだ出来ないが、俺としてはそれ以外は考えにくい。

そんな事を考えていると、拓海がやってきた。

 

「あ、拓海」

 

どこかやらせないというか、考え込んでいるというかそんな様子だ。

 

「どうかしたのか?」

 

「その、今朝なんだけど車戻ってきたんだよ」

 

「「「何⁉︎」」」

 

「良かったじゃん!」

 

「それで拓海、お前はもう乗ったのか?」

 

「どうだった?」

 

「どうだったって、ちゃんと動きましたけど」

 

その返答に3人揃ってズッコケる。

 

「あのな拓海、動かなかったら戻ってくる訳ないから。乗った時の感想とかさ、もっとあるだろ」

 

「そうそう、どんなエンジンなんだ?」

 

「どのくらい速くなったんだ?」

 

俺に続いて、池谷先輩と健二先輩が聞き込む。

 

「それがなんですけど……前のエンジンより遅いんじゃないかな? 全然馬力(パワー)出てないんですよ」

 

「「「な、何だって⁉︎」」」

 

それを聞いたのか、店長が店の奥から飛び出してくる。

 

「おい拓海、新しいエンジンに馬力(パワー)無いってどういう事なんだ?」

 

「なんていうか、遅くて乗りにくいんですよ」

 

「う、嘘だろ? 文太はかなり凄えエンジンだって言ってたぜ!」

 

「親父がですか? 俺、あんまり良いとは思わないんですけど……」

 

俺達はその話を聞いて、何も言えなくなってしまった。

 

 

 

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