8月投稿が目標でしたが、結局9月まで流れてしまいました……。投稿遅れて申し訳ありません。
さて、昨日は頭文字DAC公道最強決定戦2023東海大会が行われました。峠バトロワに参戦して第6試合に出ましたが、結局3位ゴールで1回戦敗退となりました。結構惜しかったんですがね……。
しかし、とても楽しかったです。
それではお待たせしました、34話隼人VS零です!
赤城山
拓海が埼玉県に向かっていた頃、赤城の峠は騒がしくなっていた。
本来、ここに来ることは無い車が来ていたからだ。
「おい、アレ……」
「あのインプ、“秋名のハヤブサ”じゃないか!」
「でも、どうしてこの赤城に?」
ハヤブサは周囲のギャラリーには目もくれず、そのまま頂上へと向かっていく。
そして頂上に着くと、駐車場にいた
赤い車体にリアフェンダーには零と書かれたエボⅣ、すなわち“赤城の零戦”だった。
「来たな、隼人。待ってたぜ」
「おう、待ってなくても良かったんだけどな」
“赤城の零戦”こと、堀三零に対する隼人の返答は冷めたものだった。
「そもそもだ。何だ、コレは?」
「何って、俺の送った果し状か?」
「んな訳あるか、こんなふざけた文面の果し状なんか見たことも聞いたこともねえよ!」
「どこがふざけてるんだ?
「『おーっす、久しぶりだな隼人 (*・ω・)ノ』で始まる果し状なんてあると思うか……!」
「ああ、それは果し状とは別の代物なんだけど」
「同封してんのが問題なんだよ、バカ零!」
まるで漫才のボケとツッコミのようなやり取りを繰り広げる2人。
(((あの2人、一体どういう関係なんだ⁇)))
周囲でそれを見物していた全員がそう思った。
「やれやれ。相変わらずふざけてんな、お前は。ツッコむコッチの身にもなれ!」
「ハハハ。でも、ここに来たのは俺にツッコミ入れるためじゃねえだろ?」
「当然だ。さっさと始めちまおうぜ」
「おう」
あっという間に、周囲の空気が張り詰めた。
「ルールについてだが、先行後追い形式でやろうと思ってる。まずは、地元の俺が先行して引っ張る。それでいいな?」
隼人は静かに頷いた。
「よし。急な頼みで悪いんだが、今からバトルをするから道を開けてくれ!」
驚きつつも周囲はその言葉に反応して峠を開けて、5分もかからずにバトルフィールドが整った。
「最初はゆっくりとスタートを切る。石垣のあたりでハザードを出すから、それがバトルの合図だ」
「分かった。それじゃあ、始めるとしよう」
2人は車に乗りこんで、準備を整える。
2台がゆっくりとスタート地点のストレートを下っていくと同時に、じわりじわりと空気が張り詰めていく。
そしてエボⅣのハザードが点く。
バトル開始の合図だ。
その瞬間、2台は駆動方式とエンジンパワーを活かして一気に加速していく。
その勢いのまま、2台は第1コーナーへと差し掛かる。
「来るぞ、第1コーナー」
「いきなり長いストレートからの低速S字コーナー、どうクリアするんだ?」
直後、2台はほぼ同時にブレーキングからの高速ドリフトで甲高いスキール音を響かせてコーナーリングしていく。
そしてそのまま、けたたましいエンジン音を響かせて立ち上がって行き、すぐさま緩い右へと入る。
「凄え、何てコーナリングだ!」
「あっという間に抜けて行きやがった……」
「どっちもキレキレだぜ!」
ギャラリーは2人の凄まじいテクニックに沸いていた。
その頃隼人は、前を行く“零戦”の走りをコピーしつつ車の分析していた。
(純粋な
緩い右コーナーを抜けた後、スキール音を纏いながら低速ヘアピンへと突っ込んでいく。
「うお、完璧な四輪ドリフト!」
「ハヤブサのヤツ、零戦にべったり張り付いてやがるぜ!」
そのテクニックにまたしてもギャラリーが沸き立つ。
だがしかし、2人にとってこんなものはまだまだ序の口 いや、序の口ですらなかった。
(こんなもんで騒がれちゃ困るんだよな……。バトルはまだ始まってすらいないのだから)
(この1本目は言わば約束稽古。俺の走りを、
そう、2人にとって1本目はバトルでは無いのだった。
「マジかよ、どっちもエゲツないぜ……!」
「ほとんど互角の勝負じゃねえか……!」
しかしながら、それは周囲からは分からないほどのレベルの高いものだった。
低速コーナーの集まった区間を抜け、中速セクションへ入っていく。
先行する“零戦”の走りを、隼人は鏡写しのようになぞって走り抜けていく。
(ここからは中速セクション。勾配が緩くなり、ストレートが長くなる)
ここぞとばかりに隼人はアクセルを踏み込み、エボⅣとの距離を詰めていく。
(負けねえぞ)
零も負けじとアクセルを踏み込み、加速していく。
ターボエンジンの強い
その勢いのままに、次の左コーナーへと突っ込んでいく。
「なんてツッコミだよ……!」
「あんな速さで曲がる奴なんて、レッドサンズにもそうはいねえんじゃねえか……?」
ギャラリーが沸いてる間に、2台は次の低速ヘアピンを駆け抜けていく。
(さすがは隼人。雰囲気からして、余裕でコピーしてきているな。押さえるべきところを当然のように押さえてくる。カートの頃よりも間違いなく腕を上げてるな)
零は、隼人の成長ぶりに感嘆していた。
しかし、それに動揺することなく丁寧に走り込んでいく。
(やっぱりお前は凄えよ、零。このテクニカルな赤城の峠を、このハイペースで流してやがる。初見でこんなスピード、俺でもそうそう出せるもんじゃない。だが、こんなもんなんて事はない)
同じように、隼人も零の速さに感嘆していたが、まるでへこたれていなかった。
緩い左を抜けて、さらに中速S字コーナーが連続する。
丁寧なライン取りでそれを処理し、直後に現れる2連続ヘアピンも抜けていく。
(ここからは高速セクション。長いストレートとヘアピンが連続する区間だ)
シフトアップし、隼人はじわりじわりと距離を詰めていく。
(後ろからビリビリと
内心で悪態を吐きつつも、零も負けじと加速していく。
(もうこっちは本気のバトルがやりたくてウズウズしてんだ。始めようぜ、
そして、ハードブレーキングからの高速ドリフトでコーナーを処理し、一気に加速していく。
後半はバチバチの勝負になりながらも、ポジション変わらずに2台はゴールした。
「2本目に入るぞ」
「今度は“ハヤブサ”が先行、“零戦”が後追いだな」
2台はゆっくりとスタートし、インプレッサのハザードを合図に全開走行に入る。
同時に、2台は最初のストレートでグイグイと加速していく。
そして、ハードなブレーキングから1本目以上のスピードでS字のコーナリングを決めて、あっという間に立ち上がっていく。
「うそ……だろ……!」
「明らかに1本目より速かったぞ……‼︎」
さらに2つ目3つ目とコーナーを抜けていく。
2台は甲高いスキール音と共に速度をコーナーを抜けられるギリギリまで落とし、旋回を終えると同時にインプレッサのEJ20とエボⅣの4G63が唸り声を上げて立ち上がっていく。
まさしく、公道の
同時刻
正丸峠
駐車場に停められた2台の新旧RX-7の前で、高橋兄弟が赤城からの報告を受けていた。
「何ィ⁉︎ 赤城で“ハヤブサ”と“零戦”がバトルしてるだと!」
『は、はい。さっき2本目が始まったところです。尋常じゃないバトルになってますよ! 今は“ハヤブサ”が先行、“零戦”が後追いになっていて 』
「 ああ、分かった」
啓介は一通り報告を聞いたあと、電話を切った。
「まさか、藤原がハチロク同士のバトルするのと同時に赤城であの2人がバトルしてるとはな……」
「今からでも赤城に戻って、あの2人のバトルを見てえな……」
「だが、戻る頃には2人のバトルは終わっているだろう。埼玉まで来た以上、ここでハチロク同士のバトルを見届けよう」
「そうだな。ところで兄貴、赤城のバトルはどうなると思う?」
現時点では、まだハチロク同士のバトルは始まってすらいなかった。
暇を持て余していた啓介が涼介に聞いてきた。
「さあな。ドライバーの実力と車のスペックは拮抗している。どっちが勝ってもおかしくはないだろう。だが、インプレッサとランエボの車の特性は似ているようで結構違う。だから、そこが差を生むはずだ」
「車の特性?」
「ああ。まず同じ4WDと言っても、前後のトルク配分が違う。インプレッサは30:70のFR寄りの配分に対して、エボⅣは50:50でFFよりの挙動になっている。さらに、エンジンの特性もまるっきり違う。インプレッサのEJ20は高回転域まで回してパワーを得るが、エボⅣの4G63は下からでもしっかりトルクが出る。実際、2台のエンジンは同じ
「となると、コーナーからの立ち上がり、特に低速コーナーはエボⅣの方が有利って事だな」
「ああ。それに対して、コーナーへのツッコミはインプレッサの方が速いだろう。エボⅣの1350kgに対してインプレッサは1220kgと130kgほど軽い。さらに、トルク配分がリア寄りな分フロントのグリップをブレーキに使いやすくなっているから尚更な」
「ブレーキング勝負なら、インプレッサの方に分があるってことだな。となると、旋回性能はどうなんだ?」
「旋回性能に関しては、ほぼ互角だろう。インプレッサには水平対向エンジンによる低重心という自然力学的な強み、エボⅣにはAYCによる左右の駆動バランスの電子制御という工学的な強みがある」
「物理と電子か……。原理は違うが、どちらも高い旋回性能を持っているな」
「ああ。このバトル勝敗は、俺にも想像がつかん」
涼介の想像通り、バトルは完全に拮抗状態になっていた。
2本目でも3本目でも決着が着かず、遂には4本目に入ろうとしていた。
「4本目だな」
「ああ、これは長期戦になるぞ……」
前後が入れ替わり、インプレッサが先行になる。
2台ともスタートし、峠の闇夜に消えていく。
緩い右から左のヘアピンを抜けて、一気に立ち上がる。
立ち上がる瞬間、一瞬インプレッサが姿勢を乱す。
(流石に、3本目にもなるとタイヤがキツくなってきたな。けど、それは後ろにいる
本数を重ねてタイヤも摩耗してきているにも関わらず、2台とも走りに一切精細さを欠いておらず、むしろ更に走りの精度が上がっているようにさえ見えた。
(やっぱ痺れるぜ、お前とのバトルは。いろは坂で須藤とかいうエボⅢのドライバーとやったが、アイツは腕があっても当たり前の
(リアからビリビリと
((だが、勝つのは俺だ‼︎))
互いに、モチベーションを糧に集中力を高めていく。
ギリギリのバトルの中で、更に走りが高まっていく。
赤城山は、今まさに2人の熱が支配していた。
この場にいる全ての人間が、このバトルが終わって欲しくないと感じていた。
しかしながら、呆気なくバトルの終わりを告げるものだ。
タイヤも精神力も摩耗している。
にも関わらず、タイムはまるで落ちる事を知らない。
既に2台の走りに、マージンなど全くなかった。
ほんの少し小突くだけで、あっという間に姿勢を乱しかねない走りになっていたのだ。
互いに極限の走りを維持して峠を走り抜けて、遂に最終コーナーへと入る。
その瞬間、最終コーナー先の岸壁が僅かに明るくなる。
この土壇場で、対向車が来ていたのだ。
隼人は、咄嗟にラインを左へと寄せる。
それに呼応して、零もラインを変える。
しかし、その判断はコンマ数秒遅かった。
ランエボの姿勢が安定しないまま、コーナーへと侵入してしまう。
対向車との衝突は免れたものの、摩耗した精神とタイヤではそれが限界だった。
リアスライドが抑えきれずに、エボⅣはスピンしてしまう。
そして、その瞬間インプレッサがゴールラインを切ったのだった。
「ふぅー……。まさか、あのタイミングで対向車が来るなんてね」
エボⅣにもたれかけ、どこかやつれた表情をした零が言った。
互いに全てを出し切った。
しかしながら、どこか不完全燃焼でもあった。
「まあ、今回のところはお前の勝ちだな、隼人」
「一応、そうなるな……。だがこの勝負は、どこか勝った気がしないな」
「はは、俺もお前の立場ならそう思うかもな。だが、お前は対向車に対して完璧に対応して、俺はそれが出来なかった。お前の勝ちであることに変わりはないから、胸を張ってくれ」
こうして、俺の最強にして最高の
次回、ハチロクVSハチロクです。
MFゴースト放送開始まであと2週間!