東方のタイムトライアルイベントで全然タイム縮められない(涙)
さて、今回は交流戦前半です。
内容は原作と対して変わってないかな?
群馬県道33号線
伊香保秋名道路料金所跡
今日俺は、夜の秋名山に来ている。
池谷先輩や健二先輩も一緒だ。
ここに来た理由は、もちろん峠を攻め込むためだ。
交流戦の下り代表をやる以上、万全を期したいからね。
「すいませんね、付き合ってもらっちゃって」
「別に構わないさ。レッドサンズの相手を引き受けてくれたんだから、このくらいするのは当然だろ」
「いくらカートで経験を積んだ隼人でも、あの高橋啓介を倒すのは難しいだろうからな。俺達も、微力だが力を貸すぜ」
「ありがとうございます」
先輩達には、昨日高橋啓介に勝った事は伝えていない。
勝ったといっても、割とギリギリなところあったからね。
勝ったという事実があっても、たとえそれが圧勝だったとしても、次も勝てるとは限らないし、交流戦で勝てなければ意味がない。
何より、変に期待させて負けてしまったら悪いからな。
とは言っても、十中八九俺が勝つだろう。
だが負ける可能性は否定出来ないから、やはり油断しない方がいい。
「ああ、そうそう。今日も出没してるらしいぜ、高橋啓介。知り合いが、黄色のRX-7が峠を登っていくのを見たってさ」
「やれやれ、あんなに熱心に走られちゃあな……。参っちまうよ」
やはりか。
昨日のアレと拓海の一件が相当悔しかったようで、かなり秋名を走り込んでいるようだ。
スキが無くなって、余計に倒しづらくなる。
こちとら車にもまだ完全には慣れてないってのに、勘弁して欲しい限りだ。
まあ、テクニックの差でゴリ押しできるとは思うけど。
「それじゃあ、ぼちぼち練習始めますか」
そして、俺は料金所跡を出発した。
アクセル全開で加速していき、第1コーナーへと突っ込んでいく。
ブレーキングとシフトダウンで一気に減速し、高速でコーナーを突っ切って行く。
そして、ガードレールギリギリまで寄せてから四駆のトラクションで加速する。
ふむ、もう少し速くても曲がれるかな。
思っていたよりもタイヤが食いつく。
コーナリングの限界速度は、結構高いみたいだ。
それにライン取りも若干甘い。
もう少しインに寄せられる筈だ。
そんな事を考えながら、次のコーナー、さらに次のコーナーを曲がって行く。
まだまだ車の制御が甘いなと思い知らされる。
なんでこれであの時FDを抜けたんだろ?
コーナーを抜けてストレートに入ると、前から別の車が上がってくるのが見えた。
そして、その車と高速でニアミスする。
一瞬しか見えなかったが、黄色のFDだった。
間違いなく高橋啓介だろう。
なんとなく睨まれた気がする、怖い。
その後もコーナーを次々と抜けていき、麓までたどり着く。
そして頂上の料金所跡へと戻り、また峠を下って行く。
この流れを3、4回繰り返した後、また頂上へと戻って行った。
「どうだ?」
「いやあ、やっぱりサーキットとかとは全然違いますね。暗いわ狭いわ勾配あるわ、何よりいつ対向車が来るか分からない。車には慣れてきましたけど、ところどころで精神的なブレーキがかかっている感じがしますね」
「そうか、やはり難しいな」
「まあ、無理もないか。まだ峠道の経験浅いのに、俺達よりよっぽど速く走っているんだから、それでもすごいよ」
「ああ、隼人がカートで積んだ経験は凄まじい。けれど、レッドサンズは強敵だ。いくら隼人でも、厳しいバトルになると思う。土曜の交流戦まで、時間はない。とにかく、やれるだけやろう。今度は、実際にタイム測ってみるか」
「ええ」
そんな風に、俺達は練習を続けた。
あっさりスピードスターズのコースレコードを塗り替えたり、ブレーキングやコーナーワークのアドバイスを池谷先輩にしたりして、やれるだけの事をやりまくった。
仕事を早めに上がった池谷はとある住宅街へとやって来ていた。
「これが、店長の言っていた下り最速のハチロク……。間違いない、あの時見たヤツだ」
(暗くてよく分かんなかったけど、前期型トレノのGT-APEXか。見た目はほとんどノーマル。いくら下りで馬力の差が小さくなるとはいえ、こんなのが高橋啓介のFDをちぎれるとは思えないが……)
そう考えながら、とうふ屋の中へと入った。
「チワーッス。あのー、すいませーん! 聞こえてますか⁉︎」
「はいはい、聞こえてるよ。ちょっと待ってな」
そう言って、奥から店主が現れる。
パッと見は、ただの中年の男性だった。
「いらっしゃい。何にします?」
(この人が、秋名の下り最速の走り屋? ただのとうふ屋の親父にしか見えないが……)
「おーい、お客さん?」
「ん、ああ、ええと……厚揚げ下さい」
「はい、まいどあり」
そう言って、店主は棚から厚揚げを取り出し袋に詰める。
「あの、すいません。俺、池谷って者なんですけど。秋名スピードスターズっていう走り屋のチームやってます! 実はちょっと変わった噂を聞いてここにやって来たんですよ」
「……」
「で、その噂がどういう内容かって言うと……秋名の下り最速は、ハチロクに乗ってるとうふ屋の親父だって言うんですよ!」
「……どこの誰が言ったか知らねえが、それは俺じゃない」
「しらばっくれないで下さい! 群馬中探したって、ハチロクで配達をするとうふ屋なんて、ここ以外絶対ない!」
「困るんだよなあ、今仕事中なんだからさ」
「ヒマそうじゃないですか! 他に客いないし」
「うぐっ……。失礼だな、アンタ。言いにくい事をズバッと……」
「すいません、ちょっと俺も焦っていて」
そこから、池谷は事情を説明した。
赤城レッドサンズから挑戦を受けている事。
しかし、相手は強敵で太刀打ちできないという事を。
「確かに、赤城は昔からレベルが高かったからな。んで、俺にどうしろと言うんだ?」
「藤原さん、俺と俺の後輩に、秋名の攻め方を教えてくれませんか? 交流戦は、俺が上り担当で俺の後輩、中島隼人っていうんですけど、そいつが下り担当なんです。隼人は昔カートをやっていて、ドラテクは俺らよりも、ずっと上なんです。上手くいけば、下りであの高橋啓介を倒せるかもしれない。けど、アイツは車を最近買ったばかりで、峠にも慣れていなくて、ちょっと厳しいと思うんです。だから……!」
「気持ちは分かるが、そいつは無理な注文だな。ドラテクってのは2、3日でどうにかなるもんじゃない。どうすれば車が思い通りに動いてくれるのか、トコトン考えてトコトン走り込むしかない。俺なんざ、現役で走っていた頃は夢の中でも秋名の峠を攻めていたさ。テクニックってのはそういうモンだ。誰かに教えられて身につくようなモンじゃねえ。自分で作り上げるモンだ」
「そう……ですか」
「悪かったな。力になれなくて」
そして、池谷は項垂れながら帰って行った。
交流戦当日
今日、秋名山には多くのギャラリーが集まっている。
どうも、レッドサンズが集めたらしい。
もちろん大半がレッドサンズ目当てである。
「うわあ、こんな多くのギャラリーの前で走るのか。気が滅入りそうだぜ。しかも、碓氷や妙義のチームのステッカーも見つけた」
「確か、高橋兄弟って高崎にあるデカい病院の院長の息子らしいぜ」
「やっぱり金持ちは凄えな。ドラテクの上手さなんて、どれだけタイヤとガソリン無駄にしたかで決まるようなモンだからな」
「俺なんか、ガソリン代を捻出するだけでも凄え苦労しているってのにな……」
ギャラリーがそんな会話をしている。
俺が到着した頃には、スピードスターズのメンバーは、重苦しい空気になっていた。
「よく来てくれたな、隼人。来てくれないんじゃないかと、少し心配になったよ」
「来ない訳ないでしょう? 俺自身戦ってみたいと思っていましたからね」
「ん、インプのリアフェンダーに貼ってあるこのステッカーは?」
健二先輩が気づいた。
今の俺のインプには、猛禽類のシルエットをした赤いステッカーが貼られている。
「パーソナルマークみたいなもんですよ。カートにも、似たようなステッカー貼ってたんです。隼人って名前なんで、ハヤブサをモチーフに」
「へえ、そうだったのか」
「拓海とイツキを来てくれたのか」
「当然っすよ! あの高橋兄弟のドラテクも気になりますし、何より池谷先輩と隼人が走るんですからね。これは絶対応援しないと!」
「そうか、ありがとう。ん?」
池谷先輩がイツキに礼を言った後、ある事に気づいた。
先輩の視線の先には拓海のハチロクがあり、ドアの部分に“藤原とうふ店(自家用)”と書かれている。
「このハチロク、もしかして……」
「ああ、これは俺の親父の車なんですよ。ちょっと今日、借り出してきたんです」
「親父? お前って、とうふ屋の藤原さんの息子だったのか!」
「ええ。それが、どうかしたんですか?」
「あ、いや。なんでもない」
「まさか、拓海の親父さんがハチロク持っていたなんて、思いもしなかったですよ」
多分池谷先輩は、店長が話していたとうふ屋のハチロクの事を考えていたのだろう。
実際、そのハチロクな訳だし。
しばらくすると、下から車が上がって来た。
それもかなりの台数である。
中には、ロータリーエンジンも混じっている。
「来た、レッドサンズだ!」
健二先輩が叫ぶ。
それと同時に、他のメンバーもドヨドヨとし始めた。
その後、レッドサンズのメンバーが車から降りてくる。
「それじゃあ交流会を始めようか。タイムアタックは予定通り10時から。スタート地点とゴール地点を携帯で繋いで、タイムを測る。ドライバーが安心して攻め込めるように、ブラインドコーナーにはコースマーシャルを立たせて、対向車が来たら腕を回してドライバーに合図するんだ。そういう訳だから、10時まではフリー走行をする。ギャラリーも多い事だし、楽しく走ろう」
「ショータイムの始まりだ」
そして、交流戦が始まった。
「うおー! 来た来た!」
凄まじい速度で、レッドサンズの車がコーナーへと入って行く。
そして、強烈なドリフトをかましてそのまま立ち上がって行く。
その後も次々と車がドリフトであるコーナーを抜けて行く。
「やっぱりレッドサンズは上手いな!」
しばらくレッドサンズの車が抜けた後、独特のエンジンの車が突っ込んで来た。
「これは、ロータリーエンジンサウンド! 高橋兄弟のRX-7だ!」
「まずは高橋啓介のFD!」
前を走っているFDは一瞬左を向いた後、右向きに方向転換してコーナーを高速ドリフトで曲がって行く。
直後、高橋涼介のFCも突っ込んで来る。
「今度は高橋涼介のFC!」
FCはかなり手前でドリフトを開始して、直ドリでそのまま進み、コーナーを高速で駆け抜けて行く。
さらに下った地点で高橋兄弟の2台のRX-7は並び、そのままコーナーへと突っ込んで行く。
そして、そのまま2台ともドリフトでコーナーを曲がって行った。
「凄え、アレが有名なパラレルドリフト! 気持ち悪いくらい息ピッタシだぜ」
秋名山へとやって来た大勢のギャラリーは、そのテクニックに魅了されていた。
そんな中、高橋兄弟の兄、涼介はつまらなそうにしていた。
(こんな物はただのパフォーマンスに過ぎない。タイムを出しに行く時の走りとはまるで別物だ)
一方の弟、啓介はかなり興奮気味だった。
(頂上には、俺を負かした相手……インプレッサとハチロクがいた。面白え事になったぜ! 今日の交流戦で、あの時の雪辱を晴らしてやる!)
そうとも知らずに高橋兄弟のパフォーマンスに盛り上がるギャラリー。
すると、上からエンジン音が聞こえて来る。
「1台下ってくるぞ?」
「この音、水平対向エンジンだ」
「インプレッサだ!」
下って来たのはインプレッサ、隼人である。
(一応は交流なんだ。最初は何も考えずに好きに走ろう。ついでに、コレで最終チェックも終わらせるとしよう)
ヘアピンの前で速度を上げていく。
「お、おい。あれオーバースピードじゃないか⁉︎」
「や、ヤバい!」
慌てたギャラリーだったが、インプレッサがガードレールに突っ込むことはなかった。
手前でフルブレーキングを行い、四輪ドリフトでガードレールスレスレをまるで擦るようにコーナーをクリアしていった。
「な、なんだアレ⁉︎」
「とんでもないブレーキングドリフトだった!」
「もしかして、アレが秋名スピードスターズの代表か?」
「だとしたら、結構面白い事になるぞ!」
そしてさらに夜が更けていき、タイムアタックの時間となった。
次回、レッドサンズとの決戦です!
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