Together   作:地球の星

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ステージ8:約束しよう

(ここではしばらくの間、リュウちゃんのモノローグ形式でストーリーが進みます。)

 

 翌日の朝。カーノさんとルシアさんは、仕事のためにノルカちゃんを置いて一足先に未来の世界に帰っていきました。

 でもそれを見届けたボクの表情は晴れやかでした。

 というのも、未来の世界に行くということは、別れを意味するものではなくなったからです。

 現に彼らは去り際に笑顔でこう言い残してくれました。

「リュウ君。この世界では本当にお世話になりました。君とギー君が僕達の世界に来た時には、家族として迎えてあげるから、これからもよろしくお願いします。」

「ノルカ、お母さん達は先に帰ってしまうけれど、心配しなくていいからね。でも今日中に病院で診察を受けさせたいから、それに間に合うように帰ってきてね。」

 昨日は悲しげな顔で、もう2度と会えなくなってしまうような言い方をしてきたのが、まるで嘘のようでした。

 これもディースさんがボクたちの願いをかなえてくれて、500年後と今の世界をつなぐ次元のヒズミ(そう言うと何か縁起が悪そうなので、ボクたちは単にトンネルと言うことにしました。)を開けたままにしてくれたおかげです。

 さらに、カーノさんに「家族として迎えてあげる」と言ってもらえたことは印象に残りました。

 というのも、勇者として語り継がれるよりも、家族として迎えられる方がボクとしては嬉しかったからです。

 

 ディースさんはノルカちゃんの両親を送った後、再びここに戻ってきて、モグさんがどこにいるのかという質問をしてきました。

 最初はなぜだろうと不思議に思いましたが、理由はトンネルの近くに住むための穴を掘ってもらうためでした。

 お父さんとお母さんが彼の住む場所を教えると、ディースさんは早速瞬間移動していきました。

 後で聞いた話ですが、彼女はモグさんを連れてトンネルの近くに瞬間移動をすると、彼に早速穴を掘ってもらいました。

 それが済むと、今度は彼を連れて500年後の世界に行き、そちらの世界でも穴を掘ってもらったそうです。

 そしてディースさんはこれからそこで過ごしながら、定期的にトンネルをチェックし、地震が来たりした場合には、すぐに補修をするそうです。

 多分これからは双方の世界を行ったり来たりしながら、トンネルがふさがらないようにする日々を送ることになるでしょう。

 何かと苦労の多い(でも何も起きなければ退屈な)日々になりそうですが、それでもボクたちのためにこうしてくれたわけですから、本当に感謝をしています。この恩は忘れません。

 

 お父さんは元気です。

 ボク、ギーちゃん、ノルカちゃんが、さらに言うならカーノさんとルシアさんが明るく過ごしていられるのも、お父さんが単身で500年後の世界に行き、ディースさんを説得してくれたおかげです。

 ボクはそのことは口に出しませんが、心の中では本当に感謝しています。

 

 一方のお母さんはというと、その後もボクが未来の世界に行くことを止めようとしてきました。

 正直、ボクは

「もう別れを気にしなくてもいいから。」

「これが最後の別れじゃないから。」

「せいぜい隣町に出かけるようなものだから。」

「会いたくなったらいつでも戻ってこられるから。」

 と言って、色々説得しましたが、それでもなかなか納得してくれません。

 お母さんの主張としては

「私はあなたのことを本当に愛しているのよ。離れたくなんてないの。」

「あなたは私よりもその子の方を選んでしまうのね。」

「将来、私のもとを巣立っていく時は来ると思っていたけれど、それがこんなに早く来てしまうなんて。」

「あなたはいつか、向こうの世界の人として生きていくことになるかもしれないのよ。」

 といった感じです。

 ボクだけでなくお父さんも気が付いたことですが、お母さんは過保護というか、親バカというか、そんな一面があるようです。

 正直、1人では説得できない状況でしたが、そこにお父さんが加勢してくれたおかげで、ようやくボクは未来の世界に行くことができるようになりました。

 それでもお母さんは今朝、カーノさんとルシアさんがノルカちゃんを連れて未来に帰ろうとした時には、

「せめて私の気持ちの整理ができるまでは息子と一緒にいさせてください。」

 の一点張りでした。

 さらに、後述のギーちゃんの事情もあって、彼も朝イチで未来へ行くことができなくなったため、ノルカちゃんはどうすればいいのか決断をしなければならなくなりました。

 その結果、彼女はボクとギーちゃんと一緒にいたいという素振りを見せたため、カーノさんとルシアさんは2人で先に帰るということになったわけです。

 お母さんと、それからお父さんと離れるのは確かにボクにとっても辛いことだけれど、今度戻ってきた時、お母さんにはもっと成長していてほしいです。

 

 ギーちゃんは、あれからノルカちゃんの両親に加えて、本当にお母さんにも別れの心配がなくなったことを報告してくれました。

 考えてみたら、ボクはノルカちゃんにしか報告をしていなかったので、ギーちゃんごめんね。そしてありがとう。

 おかげで、ボクはお母さんに謝った上で、すんなりと仲直りができたよ。

 そんな彼は今朝、おじさんと一緒にキロちゃんを病院に連れていきました。

 おじさんの話では、朝イチで行っても、診察が終わるのは昼近くになるだろうということなので、合流するのはそれからになってしまいました。

 

 さて、ノルカちゃんですが、最初はこれからもボクたちと一緒にいられるという事実が信じられなかったのか、なかなか表情は晴れませんでした。

 でも、ボクはあきらめずに辛抱強く説明を続けました。

 さらには部屋に入ってきた両親の嬉しそうな顔と発言を聞いているうちにようやく信じることができるようになり、段々表情が明るくなっていきました。

 それを見たボクはベッドに座っている彼女の隣に座り、左手で彼女の右手をしっかりと握りました。

 言葉は特にかけていません。黙ったまま、ただ時だけが過ぎていく状況でした。

 それでも言葉なんて無くてもボクは幸せでした。

 きっとノルカちゃんもそうだったに違いありません。

 彼女は自分の頭をボクの左肩に乗せて、寄り添っていてくれました。

 どうか、こんな時がいつまでも続いてくれますように。

 ボクは、お母さんにもう寝るように言われて自分の部屋に行くまで、そう思い続けていました。

 

 翌朝、ボクは目が覚めるとすぐにノルカちゃんの部屋に行きました。

 彼女は横になったままでしたが、すでに目は覚めており、ボクを見るとゆっくりと起き上がってくれました。

 ボクは再び横に並んで座り、一緒の時間を過ごすことにしました。

 この時点でノルカちゃんはヒソヒソ声なら出せるようになっており、耳元でささやく形で会話ができるようになりました。

 ボクが彼女に何度か語りかけていると、彼女は右手の親指を口の横に当て、何かをささやこうとする動作をしました。

(何だろう?何か伝えたいことでもあるのかな?)

 ボクは自分の左耳をゆっくりと彼女の顔に近づけ、伝えたいことを聞こうとしました。

 すると、ノルカちゃんは素早く右手を自分の顔から離し、次の瞬間、ボクの左ほおには何か柔らかいものが音を立てながら当たる感触が走りました。

(えっ?ええっ?これって、もしかして!?)

 思いもよらないことを経験したボクは思わず左手で自分の左ほおを抑えました。

「ちょ、ちょっと!ノルカちゃん!今のって!?」

 ボクはすっかり動揺しながらそう言うと、顔を真っ赤にしながら、いや、顔だけじゃない。体中を真っ赤にしながらスクッと立ち上がり、しばらくパニックになってしまいました。

 数秒後、ようやく正気を取り戻したボクは、まだ顔を真っ赤にしたままノルカちゃんを見ました。

 すると彼女は右手で自分の顔を隠し、真っ赤になりながら1人で盛り上がっていました。

 もしまともに声を出せるとしたら、彼女は「キャーーーッ!!やっちゃったーーーっ!!」と言っていたでしょう。

 予想もしていなかったことが起きてしまい、まだ動揺が静まらないボクでしたが、それでもすごく嬉しかったです。

 多分、こんなにボクのことを想ってくれる女の子には、これから2度と出会うことはないでしょう。

 だからこそ、口に出しては言わないけれど、いつまでも一緒にいようねと、心の中で彼女にそっと語りかけました。

 

(ここから末尾の表記が変わります。)

 

 ノルカちゃんの両親が未来に帰ってから3時間くらい経った頃、ボクがお父さんを相手に剣術の稽古を、お母さんがノルカちゃんのアドバイスで草笛を吹く練習をしていると、ギーちゃんが家にやってきた。

「リュウちゃん、ノルカちゃん。それからおじさん、おばさん、こんにちは。」

「ギーちゃん、待ってたよ。」

 ボクは真っ先に彼に気付いてそう言うと、剣の稽古を打ち切った。

「ギー君。キロちゃんはどういう診断結果だったんだ?」

 お父さんは少し心配そうな表情で聞いてきた。

「あの、それが…。」

「何だい?」

「彼女は以前から鼻を骨折していて、手術する必要があるって結果が出て…。」

「手術?」

「そう…。」

 ギーちゃんは少し重い表情でそう言うと、キロちゃんがその結果を聞いてかなり動揺していることを打ち明けてくれた。

 さらに彼女は両親に逆らえなかったとはいえ、どんな理由を述べたとしてもノルカちゃんを骨折させてしまったことを今も深く反省していること。

 おじさんから加害者と被害者が直接会ってしまうのは良くないと言われたために、ギーちゃんを通じて謝罪の言葉を伝えるように頼まれたこと。

 キロちゃんの世話はギーちゃんの両親がするから、何も気にせずに3人で未来に行ってこいと言われたことを話してくれた。

「そうか。キロちゃん、相当辛い思いをしているんだね。」

「うん。でもどんなに謝ったってノルカちゃんの手を治すことはできないから、どういう言葉でわびればいいのか分からないようなんだ。」

「そうか…。でも、彼女もケガをしている身だし、とにかく気持ちは分かったよ。時がたてばお互いの傷も治ると思うし、きっとノルカちゃんと分かりあえるよ。」

「そんな時が来るといいけれどね…。」

 キロちゃんの代理での謝罪とはいえ、申し訳なさそうにしゃべるギーちゃんを見て、ボクは彼女のために何かできればと思わずにいられなかった。

 一方、ノルカちゃんはまだ気持ちを整理できないのか、無言でうつむいたままだった。

「じゃあ、3人が未来に行っている間、僕もギリアムと一緒に彼女のケアをすることにしよう。リュウちゃん、それでいいだろう?」

 お父さんは重い空気に包まれていたボクたちを元気付けようと、優しく語りかけてくれた。

「本当に?」

「ああ。ニーナにも協力をお願いする。いいだろう?」

「私もですか?」

「ああ。彼女は肉体的にも精神的にも相当傷ついている。みんなで時間をかけてゆっくりとケアをしなければな。だから君にも協力してほしい。」

「分かりました。ちょっと自信はありませんが、リュウがそう言うのなら。」

 お母さんは不安を感じながらも、お父さんの頼みを受け入れてくれた。

 一方、ギーちゃんはさっきから何か悩んでいるのか、うつむいて黙ってしまっていた。

「ギーちゃん、どうしたの?悩みがあるなら隠さずに話してよ。」

「えっ?ええっと…。ちょっとその、言いにくいことなんだけれどね…。」

 ギーちゃんはボクが促しても、まだ動揺したままだった。

 一体どうしてしまったんだろう?そう思っていると、ノルカちゃんが右手でボクの上着をぐいぐい引っ張ってきた。

「ノルカちゃん、どうしたの?」

 ボクがそう言うと、彼女は「あれを見て。」と言いたげに、右手の人差指である方角を指差した。

(誰かいるのかな?誰だろう?)

 そう思いながらその方角をよく見ると、確かに誰かいる。

「ギーちゃん、あの子…。」

 ボクがそう言うと、ギーちゃんもはっとして、においを嗅いだ。

「えっ?まさか?」

 ギーちゃんはそう言って、その方角を見ると、「どうしたの?家にいてって父ちゃんから言われたじゃないか!」と言いだした。

 誰に言っているのかと言えば、そう。キロちゃんだ。どうやら駆け足でこちらに向かってきたのだろう。現に彼女の息はゼイゼイ切れていた。

「ごめんなさい。おじさんからもそう言われたわ。だけど、どうしてもノルカさんに謝りたいの。」

「そんなこと言っても、ノルカちゃんを刺激したらまずいよ。」

「構わないわ。だって、所詮あたしは加害者だから。どんな理由があっても、あたしは加害者。罰を受けるのは当然でしょ。だから、ノルカさんが未来に行く前に、謝りたかったの。」

 キロちゃんは自責の念に耐えられなかったのだろう。本当に申し訳ない表情でノルカちゃんの前に出てきた。

 ボクとギーちゃん、さらにお母さんは2人に距離を取らせようとした。

 しかし、お父さんが「ここはキロちゃんの気持ちを信じよう。」と言ってきたため、結果的に彼女はノルカちゃんの前にまでやってきた。

 それを見て、ノルカちゃんは何歩か後ずさりをした。反省しているとはいえ、相手は加害者なのだから、無理もないだろう。

「ノルカさん、こんなことをしてしまって、本当にごめんなさい。あなたの上に倒れこんでしまったのは、わざとじゃないの。あたし、パパとママに荷物を盗んでこいと言われて、それに逆らえなかったの。でも…、それでも…、あたしはあなたの手を骨折させてしまった。もし許してもらえるなら…。」

 キロちゃんはそう言いながら、自分の右手を差し出してきた。

「この手を骨折させてほしい。これで恨みが晴れるなら、あたしはそれで構わない。本当にごめんなさい。」

 思いもよらない彼女の行動を見て、ボクたちは彼女を止めに入りたくなった。

 しかし、お父さんが両手を突き出し、さらに首を横に振って制止したため、結局はノルカちゃんの判断にゆだねられることになった。

 果たして、彼女はどんな判断をすることになるのだろう。もしも早まった行動を取ってしまったら…。

 ボクは不安を感じながら、ノルカちゃんの顔を見た。

 彼女はどうすればいいのか、気持ちの整理が付かないのだろう。無言のまましばらく考え続けた。

 その間も、キロちゃんは右手を差し出したまま、うつむいて待ち続けていた。

 もしかしたら、その手を折られる時をじっと待っているのかもしれない。ボクにはそんな光景に見えて仕方なかった。

 そして、ついにノルカちゃんも答が出たのだろう。1歩、2歩と前に進んでキロちゃんに手が届くところまでやってくると、自分の右手を差し出してきた。

(一体何をするんだろう。まさか、殴ったりなんかはしないよね。)

 ボクはノルカちゃんが信じられない行動に出てしまわないか、不安で仕方なかった。

 すると、彼女はキロちゃんの手をつかみ、しっかりと握手をした。

 その行為にキロちゃんは驚き、思わず顔を上げてノルカちゃんを見た。

 ノルカちゃんの表情に敵意はない。それどころか、彼女はニッコリと笑ってくれた。

「えっ?どうして?だってあたしは…。」

 握手をされたことが信じられないキロちゃんは、まだ警戒をしながらそう言った。

 するとノルカちゃんはニッコリとほほ笑んだまま手を離し、キロちゃんの耳元で何かをささやいた。

「そんな、『わたしたちは友達。』だなんて。だってあたしは加害者なのに。ノルカさんの荷物を盗もうとして、さらにケガまでさせたのに…。」

 キロちゃんは自分が許してもらえるなんて想像もしていなかったのだろう。言われたことが信じられずにいた。

 でも、ノルカちゃんは優しい表情をしたまま首を横に振り、また耳元でささやいた。

「えっ!?『リュウとギーは友達。だからわたしたちも友達。』って!」

 キロちゃんはまだ驚きを隠せなかった。

「良かったね。今日からノルカちゃんとキロちゃんは友達同士だよ!」

 ギーちゃんはそう言いながら、2人のところにやってきた。

 それを見て、ボクもうれしくなり、彼女たちのところにやってきた。

 そんなボクたち3人の姿を見て、キロちゃんは少しずつ心を開くことができるようになったのか、さっきまで暗かった表情が段々変わり始めた。

 そして、これまでいくら心の中で「助けて」と叫んだところで、その声は誰にも届かず、誰からも気持ちを理解してもらえず、友達もおらず、生きることさえも全てが嫌になっていたことも話してくれた。

「でも、ギー君は違った。においであたしの気持ちを理解してくれた。あたしに対して優しく接してくれた。そして、ノルカさんもあたしに友達って言ってくれた。あたし、嬉しかった。ありがとう…。」

 キロちゃんの顔にはやっと笑顔があふれてきた。

「良かったね、キロちゃん。これからは目と目で物が言える。言いたいことが言える。そんな関係になろうね。」

「うん。リュウ君もありがとう。」

 キロちゃんはそう言って、右手を差し出してきた。

 それを見て、ボクも右手を出し、握手をした。

 

 ボク、ギーちゃん、ノルカちゃんは、新しい仲間ができたことを喜んでいた。

 しかし、その喜びも長くは続かない。

 というのも、ノルカちゃんは今日中に未来の世界に帰ってしまうし、キロちゃんはこれから手術を受けるために、こちらの世界の病院に行ってしまう。

 さらにボクとギーちゃんはノルカちゃんと一緒に未来に行くことになっている。

 そのため、4人一緒にいられるのは今だけになってしまう。

 ボクがその話を切り出すと、ギーちゃんの表情が段々曇っていった。

「ギーちゃんどうしたの?」

「リュウちゃん、そのことなんだけれどね…。」

 ギーちゃんは何か言い出しにくいことでもあるようだった。

「どうしたんだよ。ボクたちは言いたいことが言える仲だろ?隠さずに話してよ。」

「じゃ、じゃあ…、話すね。あの…。」

 ギーちゃんはしばらくの間、顔をしかめてうつむいてしまったが、やがて意を決して心の内を話してくれた。

「あの、オイラ…。キロちゃんと一緒にこの世界に残ることにしたんだ!」

「えっ?ギーちゃん!?」

 思いもよらぬ発言を聞き、ボクは驚きを隠せなかった。驚いたのはノルカちゃんも同じだった。

「リュウちゃん、ノルカちゃん、ごめん!オイラだって本当は一緒に行きたい。ディースさんから3人一緒にいられると言われた時は、本当に嬉しかった。それは嘘なんかじゃないんだ。それでも、どうしてもキロちゃんを置いていくことはできなかった。父ちゃんから彼女の面倒はこちらで見ると言われているけれど、やっぱりオイラ、自分で面倒をみたいんだ!本当にごめんっ!」

 ギーちゃんはさっきまでのキロちゃんのように、申し訳なさそうな表情で謝罪した。

 さらに彼は、ボクと離れ離れになるなんて夢にも思っていなかったこと、キロちゃんから「あたしを置いていかないで。」と言われ、悩みに悩んだこと、もし体が2つあればと思ったことを打ち明けてくれた。

 ボクも正直、ギーちゃんと離れ離れになるなんて、この瞬間まで夢にも思ったことがなかった。

 だから、なかなかこの現実を受け止められずにいた。

 そんな中、ずっとかたわらで見守るばかりだったお父さんがボクとギーちゃんのところにやってきた。

「ギー君。君にもガールフレンドができたんだね。良かったじゃないか。彼女の面倒をしっかり見てやってくれよ。」

 そう言うお父さんの表情はにこやかだった。

「リュウちゃん、ギーちゃん。これもきっといい経験になりますよ。お互いのことを再認識するには、いい機会ですよ。」

 お母さんもそう言って、ボクたちのところに来てくれた。

 そう言ってくれることは確かに嬉しかった。

 でも、ボクには何だか込み上げるものがあった。

 何でだろう。2度と会えなくなるわけじゃないのに。せいぜい隣町に行くようなものなのに。それでも、込み上げるものがあった。

 それはギーちゃんも同じだった。

「リュウちゃん、本当にごめん…。」

「いいんだ。ボクたちはいつまでも仲のいい友達だから。」

「うん。いつまでも友達だ。キロちゃんが元気になったら、一緒に会いに行くよ。」

「待ってるよ。ボクもノルカちゃんのケガが治ったら、一緒にこちらに来たいと思っているから。」

「じゃあ、リュウちゃん。約束として指きりしよう。」

「いいよ。」

 ボクとギーちゃんはそう言って、指きりをした。

 それを見たノルカちゃんは、キロちゃんのところに歩み寄って、彼女も指きりを求めてきた。

 キロちゃんは最初こそ戸惑っていたが、ノルカちゃんの笑顔やボクたちの姿を見て、やがて小指を出し、2人で指きりをした。

 

 ボクたちは、お父さんとお母さんも含めて、6人でこの時間を満喫していた。

 すると突然、ディースさんがテレポートでこの場所に姿を現してきた。

 あまりに唐突だったため、ボクたちはみんな驚いてしまった。

「おお、君達。ノルカちゃんの両親から伝言だよ。」

「ディース、何だ?伝言って。」(お父さん)

「彼らの話では、かかりつけのお医者さんが午後に急用ができたそうだ。つまり午前中で診察を終えてしまうそうだから、ノルカちゃんにはもう帰っておいでということだ。」

「ええっ?もう?」(ボク)

「ああ、そうだ。急ですまないが、みんなで一緒にいられるのはここまでだ。さあ、行こう。」

 ディースさんは急いでいるのだろう。ボクたちに早く行くように説得をしてきた。

 本当はもう少しギーちゃんたちと一緒にいたい。でも、時間がない。ボクの心の中には一気に寂しさが込み上げてきた。

 それはノルカちゃんも同じだろう。彼女も別れを惜しんでいるようだった。

 それでもボクたち2人がギーちゃんたちに背を向けて、ディースさんのところに歩み寄っていった時だった。突然、背後から

「待って!リュウちゃん、ノルカちゃん!」

 と言う声がした。

「何?ギーちゃん。」

「離れ離れになる前に、もう一度手をつないで輪になろう!」

 ギーちゃんの提案を聞いて、ボクはとっさにディースさんの顔を見た。

「そうかい。じゃあ、少しだけ時間をやるよ。その代わり、その後は一気に瞬間移動を繰り返してノルカちゃんの家の前まで行くよ。そこではルシアさんが待機しているはずだから、すぐに病院に向けて出発するからね。」

 彼女は渋々ながらも承諾をしてくれた。

「ありがとう。」

 ボクはそう言うと、早速左手でノルカちゃんの右手を握った。

 ギーちゃんはボクたちのところにやってくると、ノルカちゃんの左肩に自分の右手を置いた。

 昨日は3人だったから、ここでボクが右手でギーちゃんの左手を握っていた。

 でも、今は4人だ。だからボクはここでキロちゃんの顔を見て、

「さあ、君もおいで。ボクたちの輪の中に入ろうよ。」

 と声をかけ、右手を差し出した。

「いいの?」

「もちろん!ボクたちは友達だから。」

「キロちゃん、オイラたちの輪の中に入ろう。」

 ギーちゃんもそう言って、左手を差し出した。

 キロちゃんは本当にいいの?と言いたげな表情でボクたちを見た後、ノルカちゃんを見た。

 彼女は言葉こそ発しない代わりに、ニッコリとほほ笑んでくれた。

 それを見て、キロちゃんは「うん。」と言い、左手でボクの右手を、右手でギーちゃんの左手を握ってくれた。

 こうして輪になった4人は、みんなでニッコリとほほ笑み合った。

(約束しよう。ボクたちはいつまでも仲のいい友達でいると。)

 ボクは心の中でみんなにそう語りかけた。

 その様子をお父さん、お母さん、ディースさんは優しい目で見守っていた。

 

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