あんまり喋ることがないというか…。
ネタはあるんですけど個人的なことなので…
というわけで代わりにちょっとしたトリビア?を。
シャチっていうのはやっぱり賢いのでちゃんと甘えて来るんです。じゃれててやりすぎるとちゃんと謝ってきたりもしますよ。シャチにはシャチなりに和解のルールがあるのでもし海で足を引っ張られても下手に暴れるのはオススメ出来ません。これはイタズラ好きなイルカでも同じですね。嫌がるとちゃんと分かってくれます。
それでは本編どうぞ!
土曜日の朝、天気が凄くいい。
今日の午後、少し瞳と話でもしようかなと思いつつ、家の中にある器具で軽く身体を整える。
部分獣化、体内獣化。それらを組み合わせて一時的に歯と尾鰭をバシロサウルスにできるか試してみる。これから毎日この姿と向き合おう。昨日の祠堂さんの話でそう決心した。
服を着替えて朝食を作る。トド肉や鯨肉、クマ肉に魚となんとも肉食動物らしい献立に軽くサラダを盛り付ける。
水翔「…よし。いただきます!」
軽く獣化し、服に異常がないか再チェック。過ごせなかった青春を取り戻そうとしているのか、学校へ向かう足は早足だった。
水翔「おはようございます。」
教師「おはようございます。黒田先生。」
職員室に入ると何人かの先生や事務員の人達がいた。
教師「部活ですか?」
水翔「いえ、今日は闘獣士の3人と約束が。…宇崎さんって来てます?」
教師「姿は見てませんが来てると思いますよ?呼びましょうか?」
水翔「いえ、大丈夫です。」
きっと屋上にでも居るのだろう。荷物を持って、屋上へ向かう。
瞳「…何?」
水翔「朝飯、ちゃんと食べてるかは知らんが食べなって、祠堂さんが。」
朝飯と言うには少々カロリーの高いホットケーキ。ハチミツは蓋につくほどかけてある。
瞳「祠堂さんが!?サンキュー!」
蓋を開けると蓋についているハチミツを真っ先に舐め始める。ラーテルはハチミツが好きらしいが、人間らしい理性も無いように見えるこの食べ方、やはり生まれつきの獣人なのだろう。
水翔「祠堂さんからだ。正確には祠堂さんから俺にな。……何かあれば、お前の兄貴ズラをしろだとさ。黒田 水翔の方で名前が通ってしまっているから宇崎に改名は出来ないが…再従兄ぐらいの血縁関係として有事の際は立ち回れと指示された。つーわけだ。なんかあれば言え。」
瞳「…っ……断る。」
水翔「はぁ?」
瞳「私の家族は祠堂さんだけだ。兄貴なんて要らない。ましてや言い訳の為だけの兄貴なんて尚更な。」
水翔「なら、言い訳の為だけの兄貴じゃなきゃ良いのか?」
瞳「そういう訳じゃねぇよ。祠堂さん以外の家族は要らないっての。」
案の定頑なに祠堂さん意外は信用しないらしい。
水翔「…そうか…。なにはともあれ、もし友達とどっか食いに行ったりするなら言え。お小遣いぐらいはあげれるからさ。」
瞳「…オマエはどう思ってんの?私のこと。」
水翔「獣人になった時から…つってもそこそこ最近だが…ロクな生活なんざしてなかったからな。見守っとけって言われた時も俺の当然の役目だって思ったさ。そーなると……群れの子みてぇな感じで見てるのかもな…。」
瞳「私はシャチじゃねーよ。ま、パンケーキ食いに行く時は遠慮なく金貰うからな。」
水翔「……お前、父の日とか祠堂さんに贈り物した事あるか?」
瞳「はぁ?」
水翔「俺はあるぞ。してないならしてやれ。」
ちょっとしたなんてことないマウント。祠堂さんを本当の父のように慕っている瞳にはかなり効くだろう。
瞳「わ、私だってしてるっての!!ほら、さっさとどっか行けよ!!!」
水翔「はいはい。じゃあな。」
後ろ手に手を振って階段から降りていく。時間を見るとそれなりに話していてもうすぐ11時だ。
瞳「…美味いな……。アイツ、料理できたのか…。父の日の贈り物ってなんだ?」
柔道部や剣道部の声も聞こえるし、応援団の応援練習のの声も聞こえる。
グラウンドも今は陸上競技部が使っている。屋上の瞳の食事は邪魔出来ないし、職員室でやることは特にない。
水泳部もエコーロケーションで調べたところ、隅田先生で事足りそうだ。
水翔「…やるか。」
体育館などの施設の横、ちょっとした広場になっているところで軽くウォームアップ。12時頃には3対1の牙闘をしている可能性もある。油断は出来ない。
ビーグル、アイベックス、タスマニアデビル。チームZとして予選出場予定の3人。彼女らを舐めているつもりは無いが苦戦はしないだろう。むしろ自分の気持ちを切り替えるための踏み台にさせてもらう。
水翔「鯱強襲(オルカアタック)。」
突撃技の鯱強襲。ここから更に多種多様の技に繋げる。これをトドメにしても良いし、繋ぎにしてもいい、自分で編み出した技の中で最もシンプルで最も勝手のいい技。野生から教えられたありのままの技。
???「やる気っすね〜先生?」
水翔「盗み見かい?趣味悪いよ?」
生徒「何があるのか知らねぇっすけど、ちょっくら闘りませんか?」
ガタイのいい男子生徒。ガラが悪いとかではなく、獣人として鍛えようという意思から生まれる挑発的な言動。
水翔「良いけど……水が怖くなっても知らないよ?」
生徒「まさか。んじゃ、行きますよ!!」
特徴的な三日月型の白い毛。大きな体躯。日本におけるヒグマと並ぶ猛獣、月輪熊だ。
月輪熊「月輪肘撃(ムーンエルボー)!!」
三日月のような軌道のエルボー。重心の偏りから次にくる攻撃を予測する。狙いを鼻面に定めてクリック音を発射。
月輪熊「ウグッ…!?」
水翔「惨戟 浮舟斬。」
バチィィィン!!!
低い姿勢から放つ尾撃。サマーソルトキックの要領で振り抜かれた扇のように開いた尾鰭が強かにみぞおみ、そして下顎を強打する。
月輪熊「げぁっ…!?」
ドサッ…
水翔「陸地で良かったね。水中なら身体分断してたよ?なーんてね。先生で良ければ何時でも付き合うよ。」
月輪熊「参りました。ありがとうございました。」
やっぱり潔も礼儀も良い。悪い生徒では無かった。
水翔「1分か…。」
あと50分もこんなことをしていても意味は無い。
学校近くの自販機で飲み物を買って飲んだ。
飲んでいる間、ずっと尾鰭の先端で全体重を支えてバランストレーニングをしていたが。
水翔「時間か。」
腕をまくり、ボタンを緩めて大きく息を吸う。
水翔「やあ、待たせたかな?」
純「いいえ!むしろピッタリです!」
祐「…やる気は十分みたいっスね。」
ハイジ「本当にやるの〜…?」
なんとまぁ自由な3人だ。しかし、個人でも実力はあるだろう。彼女らが連携を取れるようになったらまた勝負したい。
水翔「さて、始める前にちょっと物理の問題ね。日本だったら戦国時代、要は中世に使われていた槍。突くのと叩くの、どっちが強いと思う?」
ハイジ「そりゃ槍なんだから突く方が強いんじゃ?」
水翔「日本の槍だと突けば100kg程度の力が、叩くと1t近くの力が生まれるんだ。ハルバードって武器だとわかりやすいかもね。」
純「それがどうしたんですか?」
水翔「もうひとつ、歴史というか雑学に近いかな。シャチって北海道の言葉だとなんて呼ばれてるか知ってる?」
祐「はぁ?そんままシャチじゃねぇの?」
水翔「正解は「沖の神」。アイヌ民族の自然信仰から来たものだね。」
ハイジ「一体何が言いたいんです?」
水翔「何、簡単だよ。」
思い切り地面を踏みしめ、背鰭、尾鰭、手鰭を伸ばす。背鰭はより鋭く、尾鰭はより大きく、手鰭はもはや振袖のように。歯は牙となり、剣のように。顔の中で見えない砲弾を撃ち出す大砲が作られる。
水翔「シャチは生きていく中で自然と効果的な打撃の与え方を理解し、世代を超えて継承する。その様をこの国の人は神になぞらえた。でも、外国はそうじゃない。「冥界の魔物」それを学名とするほど自然を支配しようとした文明から恐れられた。」
ドンッ!
もう一歩大きく踏み込む。可能な限りの体内獣化。余裕を持たせておいた服が少しキツくなる。
水翔「シャチは群れで狩りをする。単体でも十分な強さだけど、それでも群れるのは群れの強さを知っているから。でも遊びは違う。他の生物を玩具にして遊ぶことだってある。玩具になりたくないなら…本気で来い!!」
ガチィ!!
歯を噛み鳴らすと鋭い音が鳴った。
祐「…アイツは犀を簡単に倒した。尾鰭に打たれると確実に負けるぞ…。」
純「それなら…全部避ける!!」
ハイジ「も〜やだよ〜…。でも…勝てなきゃ上には行けない!」
水翔「さぁ、牙闘、開始だ!!!」
岡島「黒田はん、やりすぎは良くなか…。」
瞳「大丈夫だって。ちゃんとわきまえてるだろーし。」
岡島「しかし……。」
瞳「アイツ負けたらめっちゃ高いパンケーキ屋連れて行かせてやるんだ〜♪」
岡島「…ハチミツ、これで拭けばよか。」
瞳「サンキュー。」
ビーグルの速さ、タスマニアデビルの牙、アイベックスの角。それら全てにあえて触れる。エコーロケーションと組み合わせることで重心移動と最も威力の出せる点を割り出せる。
タスマニアデビルの唸り声が効かないのも分かっている。聴力が無い訳では無い。むしろ、アルゼンチンのシャチの群れはオタリアの鳴き声を聞いて狩りをする。ただ、原始的恐怖を思い起こさせる声も心に余裕を持たせれば怯むことはそうそうない。
ドガッ!
祐「カハッ……!」
純「祐ちゃん!?」
祐「背鰭も攻撃手段って訳か…。」
水翔「ご名答。組み付かれにくくなるし物は使いようってことだね。」
ハイジ「ってことは…真上なら!」
水翔「残念、それは不正解。」
宙返りをして膝と尾鰭でアイベックスを撃ち落とす。着地の反動を利用してストンプ。
ハイジ「あっぶな!」
ズドンッッ!!!
踏み込んだ足が少し地面に沈む。その足を軸に尾鰭で周りを薙ぎ払い、3人に距離を取らせる。
水翔「打戟!!」
打戟で巻き上げた砂がアイベックスとビーグルの視界を遮る。息を軽く吸って止める。そして解放。圧力へと変わった人には聞こえない音が前2人を吹き飛ばす。
ドッ!
純「うっそ〜!?」
ハイジ「よっ!」
散々飛ばされて慣れてきたのか着地も受け身も隙が少なくなっている。
ガルルル……
耳元で聞こえる唸り声、タスマニアデビルだ。確かにこれだけ近ければ嫌でも聞こえるが恐らくこれは距離を詰めたというアピール。振り向かせてダメージの通りがいい腹側に1発ぶち込むつもりらしい。
祐「これならどうよ!?」
振り向きを狙った攻撃──ではなく金的攻撃だ。剥き出しの内臓なのだからそれなりにダメージは通るだろう。ただ、それは陸生の哺乳類の雄に対してだ。
祐「…え?無い?」
水翔「爬虫類もそうだが…クジラやイルカの類は水中での抵抗を減らすために水泳に必要でない器官はある程度体内に格納してある。もちろんシャチも。セイウチとかは知らないけどね。」
パァァン!
蹴ってきたタスマニアデビルの足を両足で挟んで逃げられなくし、お返しにこちらも尾鰭で同じ場所を打つ。
祐「いっ………てぇ……!」
足を離すと少々ふらつくが直ぐに立ち直る。
純「祐ちゃん!」
祐「いってて……本当に倒せんのかよ…。」
そろそろ3人とも限界だろう。食事をしているか分からないしこれ以上続ければ職員室に戻った時何か言われそうだ。さすがに切り上げたほうが……
ガッッ!
ハイジ「でりゃぁぁぁぁ!!!!」
アイベックスが角で持ち上げようとしている。
水翔「そう簡単には投げられないよ!」
角を抑え込み、投げられないように固定する。無理に投げようとすれば腰が折れるだろう。
祐「オラァ!」
タスマニアデビルも爪と牙で攻撃してくる。見上げた根性だ。
ハイジ「純!!!」
2人が黒田先生の動きを封じ込めてくれた。ここで決めなきゃ王者になんてなれない。
純「(猟噛!!!!)」
水翔「ハッ!」
先生の口から小さく息が漏れる。反射的に身体を横に投げると足を何かが掠める感覚。
純「今なら!」
もう一度挑戦。不規則に動きながら近づいて喉笛を狙って噛み付く。ツルリとした舌触り。他の2人と目が合った。
上手い具合に連携も取れたようだ。これが予選でも出来れば良いのだが、まあ、上手くはいかないだろう。
そのままの首を噛まれるのはゴメンなので獣化させてダメージを抑える。
そろそろ終わりにしてもいいだろう。
水翔「おぉ〜…考えたね。それじゃ……!」
3人が身体に組み付いている状態だが足はフリー。地面を踏み込んで高く飛び上がる。昼食ついでなのだろう、何人かの生徒が牙闘を観ている。
純「はんてふかほれ(何ですかこれ)!?」
水翔「飛ぶぞ!捕まっとけ!」
身体を回して顔を下に。地面にぶつかる直前で音を飛ばして更に上へ身体を吹っ飛ばす。
ドッッッ!!!!!!
祐「うっそだろ………。」
ハイジ「高い……!」
水翔「じゃあな〜。」
獣化を完全解除する。ビーグルの牙は抜け、アイベックスの角もするりと外れる。タスマニアデビルの組み付きは対象が小さくなりすぎて空を切る。
もう一度音を飛ばして自分だけ更に上へ。身体を元に戻し完全獣化。
水翔「鯱強襲!!!!」
とてつもない重力加速度の巨体はすぐさま落ちていく3人に追いつき、重くのしかかった。
3人「「「いただきます!」」」
時刻は午後1時半。
ちょっと遅い昼食。
和食洋食中華パンケーキと4種?のリクエストに答えレストランに。
水翔「せめて君も何か言おうか?」
瞳「ひーじゃんへふひ(いーじゃん別に)。」
純「あの〜…お二人の関係は?」
水翔「そりゃもちろん共通の知り合いのいる…」
瞳「多分兄貴。とは言っても遠縁だろうけどな。」
水翔&祐&純「「「…え?」」」
ハイジ「なんで先生まで?」
役としてそうしろとは祠堂さんに言われたことは事実だし、そう考えれば祠堂さんの指示に従ったと言える。だが何故この3人に言う必要があるのだ。
水翔「えっ、いや、その…バラされると思ってなかったというか……マジで?」
瞳「兄貴って言うには似てねぇけどさ〜。飯だってうめぇし別に良いかなって。」
恐らくこれまで祠堂さんと2人だけで構成されていた「家族」に急に人が正式に加わると言われたから突っぱねたんだろうが、瞳が中学生位の頃には祠堂さんの部下として会っていたのでそのことを思い出して指示に従うことにしたんだろう。
瞳「あっ、このパンケーキも良いな。」
純「めっちゃ食べてる……。」
水翔「あ、えーっと…余裕はあるから君たちももっと頼んで良いんだよ?一応…ホラ、公務員だし…言っちゃえばこれって国民の血税だろうから…。」
いや、私立かどうか怪しい高等学校ではあるが。
純「それじゃあ……このビーフハンバーグステーキを…。」
祐「私も肉にするか〜。」
ハイジ「じゃあ私も何か頼みます。」
水翔「あっ、うん。どうぞ……。」
若い女子4人と男性1人。周囲からの視線が少々キツかった。
純「いや〜美味しかったね〜!」
祐「ホント、プロの先輩らってこういうの毎日食ってんのかな〜…。」
実際そうだとしたら羨ましい。それにしても…
純「なんで黒田先生も金網通に?」
水翔「どうする?今すぐ生徒指導ここでしようか?」
純「いえ、結構です……。」
祐ちゃんなんかは前に牙闘に負けたら退学にするなんて言われていたのだからそれだけは避けなくては。
水翔「というわけで、実践練習がしたいのなら基本先生に言いなさい……と言いたいけれど、アレを毎日やる訳にはねぇ……。」
祐「いや、私らも嫌っスよ?毎回毎回潰されてちゃ…。」
純「……うん?人だかり?」
試合中だろうか、人が集まっている。それにしてはリングから離れているような気もするけれど……
水翔「…行ってくる。」
純「ちょっと先生!?」
人混みの中に消えていく先生。聞こえたのは獣人の悲鳴だった。
どうも、構成考えてる方の人です。
いや〜何かと書いてる人に「いや、水翔のモチーフの個体ならその生態はおかしいだろ?」と言われちゃいました。
水翔のモチーフは「スターボード」だったかな?背鰭の折れた2頭の南アフリカのシャチうちの1頭です。
ホオジロザメなんかを一時期その海域で激減させたのだとか…
なので、クジラとかを襲うとか以前に、2匹で行動している「オフショア」という珍しいタイプのシャチなので10〜40頭で群れて魚を食べるようなシャチとは違うみたいです。
書いてる人、結構色んなところに行っててパタゴニアや北海道沖にも行ったりしてるので学者程ではないけれどそれなりに詳しいのかも知れません。それぐらい詳しくないと海獣の健康状態とかって分からないのかもしれませんが。
バシロサウルス、ジゴリーザ、レヴィアタンは絶滅種の海生哺乳類です。ジゴリーザとバシロサウルスは似てるんですがバシロサウルスの方が大きいです。レヴィアタンはめっちゃ歯のでかいマッコウクジラって感じ。
今の海生生物って、サメとかも含めて地球全体が暖かい海にかなり覆われていた時期と比べると小さいのだとか。
寒くなると体温の維持が難しくなるようなので。メガロドンとかそうですね。
クジラとかは今のコククジラみたいなのも痛そうなんですが、生存圏が広い分、シャチとかは今より大きい個体がいてもおかしくないそう。実際、流氷に閉じ込められたシャチなんかも居たのでかなり昔から姿形変わってないのかも?
2人ともガッツリの専門家とかでは無いのでシャチ以外もなんか変かもしれませんが、良ければこれからも読んでいただけたらなと思います。