魔人族の女はオルクス大迷宮にて勇者たちを追い詰めていた。
一言命じれば従えた魔物たちが彼らの命を奪う。
そんな状況で一人の男が現れた。
『いやー間に合ってよかった』
『僕っていつもアニメのクライマックスを見逃すからさ』
『また今回も間に合わないかと思ったよ』
『これは日ごろの行いのおかげかな?』
女にとって訳が分からない事を言いながら、南雲ハジメは姿を見せた。
声を発するまでその男が近づいていることに気づけなかったことが女のは不気味に思えた。
『気配を無かったことするのって結構効果があるんだね』
『あんなの漫画の世界だけの話だと思ってたよ』
ハジメがクラスメイトに近づくと彼らの傷が一瞬で消えていく。
何の素振りもなく起こるそれを魔人族は理解できない。
『さて、はっきり言うけど僕は君の敵だ』
『僕はいつどんな時どんな状況であろうとも』
『正義の味方でも強い者の味方でもなくて』
『弱いものの味方をするって決めてるんだ』
『それが女の子ともなればなおさらね』
そう言ってハジメは魔人族の前に立ちはだかる。
「むしろ女どもの方が覚悟が決まってる分強く見えるけどね」
もっとも強かったのは勇者である男だったが、人殺しを躊躇って勝っていたはずの状況から敗北する要因となったのだ。魔人族はその思いで口にした言葉だった。
『覚悟が決まってて強い?』
『親友がいなかったら真っ先に心が折れているあの子が?』
『君って人を見る目がないんだね』
『そのうちろくでもない男に騙されて都合のいい女として扱われる未来が見えるよ』
魔人族は恋人を侮辱する言葉に怒りがこみ上げる。
『あ、ごめーん。図星だった?』
『僕っていつも本当の事を言って相手を怒らせちゃうからさ』
『どうか寛大な心で無かったことにしてよ』
もはや限界だった。怒りに任せて皆殺しの命令を魔物達に下す。
次の瞬間だった。魔物達の姿が消え去ったのは。
「は?」
思わず呆ける魔人族。
『僕を前にして余りにも隙だらけだったからさ』
『ここにいる魔物達の存在』
『全部無かったことにしちゃった』
その言葉に魔人族の理解が追いつかない。
それどころか、新たに現れた人間がいた。
見覚えのある顔だ。それもそのはず。
彼らは自分が殺したはずの兵士達だったからだ。
『別に大したことはしてないよ』
『僕は唯魔物達の存在を』
『兵士達の死を』
『無かったことにしただけなんだから』
何を言っている、あの男は何を言っているんだ。
魔人族はハジメの言葉が理解できなかった。
『それじゃあ改めて』
『全てを無かったことにする』
『それが僕の大嘘憑きだ』
エヒトはハジメのそれを食らってしまった。
「僕の
「却本作り」
「相手の肉体・精神・技術・頭脳・才能を」
「全部僕と同じにする力だ」
「この世界の誰よりも弱い存在である僕とね」
「だから君は他人の体を奪う事も、ましてや魂だけで存在することも出来ない」
「そんなこと僕には出来ないんだから」
その言葉の通り、エヒトは己が消滅するのを防ぐことが出来なかった。
『本当なら君を僕と同じ過負荷になってもらいたかったんだけど』
『結局それは叶わなかったな』
消えていくエヒトを見ながらハジメは一言口にする。
『また勝てなかった』