タイシンと究極バカ   作:かわだ

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遅くなってすみません!



五話

  五話

 

 

 トレセン学園の廊下を歩く。

 

 

 俺は悩みに頭を抱えていた。

 

 

『ひびけ ふぁーんふぁーれ!』

 

 

 ダンスだ。

 

 タイシンのダンスレッスンをどうしたものかと悩み続けていた……。

 

 メイクデビューしちまったし、レースに出ないという選択肢はない。かといって、勝者の舞台を汚すわけにもいかない。

 

 レッスン講師を付けられないか頼んでみたものの、一か月はスケジュールが空かないそうだ。

 

 

「う~~む」

 

 

 唸って顎に手を添えて歩いていると、

 

 

「あ、タイシンのトレーナーさん!」

 

 

 聞きなれた元気な声が目の前から飛んできた。

 

 

「よお、チケット」

 

 

 瞼を開けると意外な二人が現れた。

 

 

「と、ゴールドシップ?」

 

 

 芦毛のウマ娘がそこには居た。

 

 

「さっき廊下であって話してたんだー」

 

 

 元気に笑うチケット。その横でゴルシは顔をしかめる。

 じっくりと俺の瞳の奥を覗いて。

 

 

「なあ、トレーナー。悩みあんだろ?」

 

「————!」

 

 

 彼女は的確に心の内を言い当てた。

 

 

「鋭すぎるぞ、お前……」

「ゴルシちゃんは顔色見れば大抵のことは分かるんだよ」

「え、なになになんの話?」

 

 

 鋭いゴルシと鈍感なチケット。

 

 俺だけでは八方塞がりなこの問題。二人に相談したら何かが変わる気がする。

 そんな直感を信じて、俺は彼女らに打ち明けた。

 

  ◇

 

 

 今日はオフだった。

 

 

 レースの疲れをしっかりとって、明日からの練習に備えろ。ってあいつは言ったけど。アタシは学園の廊下を歩いている。

 

 

「自主練しないと……」

 

 

 ウイニングライブ。もう失敗できない。

 

 

 意気込んで、練習場へ向かう。

 

 静かな廊下。この時間は予約なくダンスの練習をできるはずだ。

 

 誰かが居たらいやだなぁと不安に思ったが、そんな必要はなかった。

 メイクデビューを控えた、もしくは終えたウマ娘はレースに全力をかけているのか廊下は閑散としていた。

 

 

 そもそも自主練しなくて良いレベルになってるか……。

 

 

「よし……!」

 

 

 拳を作って気合を入れ、

 

 

 頑張るぞ……。

 

 

 心の中で誓って、大きな防音扉を開けた……!

 

 

『俺の愛馬がッ!!!!』

 

 

 パタン——。

 

 閉じた。

 

 

「…………」

 

 

 とても、とっても嫌なものが見えた。

 R15Gつきそうなくらい、えぐいものが見えた。

 

 そっと、もう一度扉を開ける。

 

 

『うまぴょい うまぴょい!!!!』

 

 

 閉じた。

 

 

 野太い声の大男が見えた。

 

 

 それも最悪だ。

 

 ライブ用の衣装を着て、踊ってる。

 

 めっちゃぎちぎちのサイズちっさい服着てる。

 

 地獄絵図って、絶対あーゆーのだって……。

 

 吐きそう……。

 

 

 そっと覗く。

 

 

「そんなんじゃ、教え子の気持ちなんざわかんぇぞ!」

「うまぴょい うまぴょい!」

 

 

 ゴールドシップがメガホン持って指導してる……。

 

 遠くを見たらチケットがサイリウムを振っていた。

 

 

 力が完全に抜けて扉に背中を預けて座り込んだ。

 

 若干漏れてくる歌声と曲。

 

 

「はぁ…………」

 

 

 泣きたい。

 

 

 バカすぎるでしょ…………。

 

 

『さあ盛り上がってきました!』

 

 

 間奏部分に入る。

 

 

「うっしゃああ! 行くぜギターソロ!」

 

「はあ!?」

 

 

 曲まで変わってるし!?

 

 立ち上がって、閉じた扉を睨みつけた。

 

 

『シャッフルダンス! コサックダンス! ニッコリ笑顔で拳をドンッ!』

 

 

「ちょっと、何してんの!?」

 

 

 驚きすぎて、思いっきりこじ開けた。

 

 

「うおわっ、タイシン!?」

 

 

 ひらひら服のトレーナーに指差をさす。

 

「その服キモイから今すぐ脱いで!」

 

 

「おいおい、大胆だなぁ……」

 

 へらへら笑うゴールドシップを睨んだ。

 

 

「うっさい、アンタがこのバカ洗脳したね?」

「教える者は教わる者の気持ちを知らなければならない。それを気づかせてやっただけさ」

 

 

 へへんと指で鼻をはじいた。

 

 

「…………はぁ」

 

 

 倒れそうなくらいのため息。

 

 

「ねぇ、アタシだって自主練くらいできるから着替えてきて」

「どうして? 俺は分かったんだ。ゴルシの言う通りだ! 俺はお前らの立場に立つべきだったんだ!」

「その通り!」

 

「ゴルシ!」

「トレーナー!」

 

 ガシ——ッ!

 

 トレーナーはゴルシと腕と腕を組んでニッコリ笑った。

 

「…………」

 

 プチン——。

 

 

 自分の中の何かがぶちぎれて……。

 

 

「ぶふぉっ——!?」

「ごばあっ——!?」

 

 気づいたら二つの影が空に舞って落っこちた。

 

 

「「どうしてだ……?」」

 

 

 起き上がらず真顔で驚くバカども。

 

「「俺たちの作戦は完璧だったはずだ……!」」

 

 

 ガンッ——。

 

 顔の横に足を突き刺して見下す。

 

 

「着・替・え・て・き・て!」

 

 

「うっす!」

 

 

 流石に恐怖でトレーナーの顔が曇る。啓礼して逃げ去った。

 

 

「んじゃ、ゴルシちゃんも帰るとするぜ……じゃな!」

 

 

 ビシッと二本指を立てて消えてった。

 

 

 

 

「はぁ……。朝からどっと疲れた。とんだ地獄……」

 

「や、やあタイシン」

 

 

 頭を抱えていると何故か静かだったチケットが寄ってきた。

 

 

「すごい気迫だったよ~~」

 

「あいつらがバカすぎただけ」

 

「でもでも、トレーナーさんたちはタイシンの為を思ってやったんだよ?」

 

「あのね、チケット……。いつもなら感謝するけど、あれは許容できないから」

 

 

 脳裏に残り続ける地獄絵図……。首を振ってデリート。

 

 コイツに合ったら言いたいことがあったんだ。

 

 

「チケット。アンタもメイクデビューしたんだってね」

「——!」

 

 

 気迫を感じ取ったのか、真剣な面持ちに変わる。

 

 

「うん。タイシンもだよね」

 

 

 頷いて、答える。

 

 

「アンタには負けないから」

 

「私も負ける気はないよ」

 

 

 彼女の瞳に雷が奔る。でも、とニッコリ笑って。

 

 

「タイシンはダンス頑張らないとね!」

 

「うっ……」

 

 

 相変わらず痛いところを無邪気についてくるな……。

 

 怯んでいると不意に、ピロン——。チケットのスマホから着信音が鳴った。

 

 

「あ、いけない。トレーナーさんから呼び出した!」

「アンタの?」

「うん。ごめん、私行くね!」

 

 

 そう言って、チケットは嵐の如く走り去っていった。

 

 

「…………」

 

 

 そういえな、アイツのトレーナーにあったことないな……。

 

 

「あ……」

 

 

 ひとりになったことに気付いた。

 

 誰にも邪魔されない無音の部屋。

 

 

「うん」

 

 

 頷いて、アタシも練習開始!

 

 

 と、意気込んだ途端——。

 

 

「タイシイイイイン!!」

 

 

 叫びながらバカが返ってきた。

 

 

 

 ◇

 

 

 更衣室にて。

 

 

「ふむ……」

 

 

 踊ってみて分かったが、大変だな。ダンス。

 

 

 ゴルシやチケットに教えてもらっても思うように動かない。

 

 

 体で覚えて無心でもできるようにならなきゃいけない。

 

 

「大変だ」

 

 

 ダンスを習得するには、基本的な身体能力と体の柔らかさが要求される。

 

 あと、動きを大きく見せるために腰に力を入れたり云々。

 

 

 色々と聞いたが、最終的には

 

「反復練習あるのみ。だな」

 

 この結論にたどり着く。

 

 

 動画みて練習かねぇ……。

 

 

 頭を掻いて、一つの疑問にぶち当たる。

 

 

「あいつ、今日オフにしたのに練習場に……」

 

 

 まじめだなぁ。

 

 

 休む時に休まんと体の前に精神が壊れちまうって。

 

 

 気晴らしという名目も兼ねて、どこか連れてってやりたい。

 

 

 タイシンの趣味はチケットから聞かされていた。ゲームが好きらしい。スマホゲーやらアーケードやら。

 

 

 本人は気晴らしにやってる。と言っていたが、絶対嘘だ。負けず嫌いのアイツが本気出さないわけない。

 

 

 それなら、楽しめて気晴らしになるいい場所があるじゃねぇか。

 

 

「よっし!」

 

 

 ゲーセン行くか!

 

 

 高校の頃通ってたからなぁ。ダンスゲーム、DDLとか俺の十八番だぜ!

 

 

「ん……?」

 

 違和感。 音ゲー……。ダンス……。休憩……。

 

 ピースが徐々に集まって、

 

「………あっ!」

 

 完成した。

 

 

「あああああああああっ!」

 

 

 とてつもないベストマッチに気付いて、爆速で着替えて更衣室を後にした。

 

 

  ◆

 

 

「タイシイイイイン!!」

 

 

 ダンスの練習室に幸い残っていた。

 

 

「ゲーセン行こうぜ!」

 

「はあ?」

 

 

 明らかに不快な顔をして睨まれる。

 

 

「ねぇ、遊んでる暇ないでしょ。一刻も早くできるようにしないと」

 

「いいから来てくれ! 行きゃ習得できるんだよ!」

 

 

 まっすぐ言い放つと、肩の力を抜き諦められる。

 

 

「はぁ……。わかった」

 

 

 よし……! こんなすぐ受け入れてもらえるとは思ってなかったが好都合だ。

 

 

「着替えてくるから待ってて」

 

 

 立ち去ろうとする背中を呼び止める。

 

 

「いいや、ジャージのままでいい」

 

「……どういうこと?」

 

 

 

  ◆

 

 

 そして、やってきたゲームセンター。

 

 

 治安は良い大型ゲーセン。5階建ての黒いビルだ。存在感がある。

 

 

「ねぇ。ここでどう練習するの?」

 

 

 来たはいいものの、疑問に顔をしかめるタイシン。

 

 

「それはな、四階に答えがある!」

 

「四階……? アタシよく行ってるけど音ゲーしかないよ?」

 

「やっぱ来てんのか」

 

「いや、違っ……」

 

 

 完全に隠し事がバレて瞳を大きくする子供だ。焦って手を振る。

 

 

「チケットから聞いてたけどな」

 

 

 大きかった瞳は鋭くなる。

 

 

「蹴っ飛ばすよ」

 

「それは勘弁……」

 

 

 顎で目的地を差して、

 

 

「行こうぜ?」

 

 

 その中へ入っていった。

 

 

 

 

 騒音の半端ないフロア。それが音楽ゲーム専用階。

 

 

 響き渡る打鍵音。雑多に流れる爆音の曲。室内は薄暗く、ゲームの液晶が店内を照らしていた。

 

 

 最初に来たときは耳がぶっ壊れるかと思ったが、慣れたらどうってことなくなった。

 

 耳が悪くなるというが、俺の地獄耳は健在なのだ。

 

 

「こっちだ!」

 

 

 声を更にでかくして、届かせる。

 

 

「うん!」

 

 

 タイシンの声もでかくなる。

 

 

 そしてついたのが、

 

 

「これって!」

 

「そうだ!」

 

 

 気づいたようで、俺はにやっと笑う。

 

 

「「ダンエモ!」」

 

 

 タイシンの顔が明るくなる。

 

 驚きと、楽しさで。

 

 

「そっか。この手があったんだ! トレーナー、わかてっるじゃん!」

 

「だろ?」

 

 

 お互いにテンション上がってにかっと笑う。

 

 

 ダンスエモーション。通称ダンエモ。これは音ゲーだが、普通のとは毛色が違う。ボタンを叩いてリズムを取るのではなく、これはガチダンス。俺たちの動きをカメラが判断して得点を稼ぐゲーム。

 

 つまりは、機械の前で完璧なダンスを踊るゲームなのだ。

 

 

「コイツがありゃライブだって完璧に踊れるようになるぜ!」

 

「うん。盲点だった。アタシの趣味とあってるし、完璧だよ。トレーナー!」

 

「うっしゃ、これも俺のおごりだ! 一緒に踊って完璧にすんぞ!」

 

「奢りなら一緒に踊ってあげる」

 

 

 微笑んで、賛同してくた。

 

 よっしゃあ!

 百円投入!

 

 

 選曲もばっちり。ウイニングライブのも収録してる。

 

 

 Make debut! を選択して、DANCE START!!

 

 それから二時間ぶっ通しで俺たちは踊り続けた。

 

 

 待ってる人はいないのかと疑問に思うかもしれないが、残念ながらこのゲームは店の隅にひっそりあって人眼につかないのだ。

 

 

 最初はお互いぎこちない動きだったが、二時間も同じ曲やってりゃかなり形になる。

 

 

 画面にお手本が表示されているのでミスがはっきりわかる。それを詰めてく作業。

 

 

 しかし、そんなもの好きが居ると嫌でも視線を集めてしまう。

 

 

「あれ、すごく上手くないか?」

「てか、ウマ娘じゃん」

「踊ってるのライブ以外で見たことねぇ!」

 

 

 そう。ギャラリーができるのだ。

 

 

 かなり完成度が高くなって、評価点も良くなってきた。そろそろ頃合いだな。

 

 

「タイシン。次で決めんぞ」

 

 

 隣のタイシンを見下ろして、挑発的に笑って見せた。

 

 

「上等!」

 

 

 笑い飛ばして、最後の一曲を選択した。

 

 

「響けファンファーレ 届けゴールまで 輝く未来を 君と見たいから」

 

 

 完璧な歌いだし。

 

 

 ダンスと同時に歌も練習したのだ。

 

 

 それに観衆は引き付けられる。

 

 

 踊り、歌い、ジャンプ!

 

 

 もうここはゲーセンじゃない。ライブ会場だ!

 

 

 人目はタイシンにくぎ付けになる。

 

 

「なあ、あの子めっちゃダンス上手くないか?」

「すごいかわいい!」

 

 

 みんなを引き付けるくらい上手いダンスと歌。コイツ、練習したらとことんまでうまくなる。

 

 

 方法を与えりゃ、どこまでも成長するぞ……!

 

 

 ダンスでもそう思わせてくれるなんて、最高だぜ!

 

 

 ノーミスで終盤。

 

 

 ステップを踏んで、腕を振る。

 

 

「いくぜ?」

 

「うん!」

 

 

 最後は二人で息を合わせて!

 

 

「「I believe !! 夢の先まで!!!!」」

 

 

 ばっちり決まった決めポーズ!

 

 

「「「おおおおおおお!!!!」」」

 

 

 ギャラリーが沸き上がる。

 

 拍手に包まれ肩で息をする俺たち。

 

 

 そして画面に映る結果発表。

 

 

『ランクAAA。パーフェクト!』

 

 

 顔を見合わせて、白い歯を出して笑って拳を作る。

 

 

「やったな!」

 

「やった!」

 

 

 拳の裏が重なりあって、壁だったダンスを乗り越えたのだった。

 

 

 

   ◆

 

 

「疲れた~~~~~~」

 

 

 意気消沈。

 

 

 ぐったりとベンチに腰を下ろして、二人してスポドリをがぶ飲みした。

 

 

「まさか、一日でマスターできるとはね」

 

 

 笑ってタイシンがこっちを見た。

 

 

「どうだ? 俺の作戦。完璧だろ?」

 

「それだからバカでも突き放せないってゆーか……」

 

 

 ため息をつかれる。

 

 

「アンタの作戦、やっぱすごいよ。前のレースもそうだった」

 

 

 正拳突きの体幹トレーニング。

 瞬発力を高める急ダッシュ。

 足場の適性を上げる無限もも上げ。

 そして、待つための俺との競争。

 

 

「全部分かったか」

 

 

「うん。だから意味のないことなんてやらせないってわかったから、今回もやってみた。そしたらうまくいった。すごいよアンタは」

 

 

 珍しくべた褒めされる。

 

 

 こっちも、こういうとき言うことが分からずに、

 

 

「お前の呑み込みもスゲけよ。期待以上の結果を出してくれる。すげぇんだよ、お前も」

 

 

 本心で誉め言葉を言うしかないのだ。

 

 

「……そっか」

 

 

 そっと笑ったタイシンは体を揺らして、立ち上がる。

 

 

「ねぇ、トレーナ。アタシの音ゲースキル見せてあげよっか?」

 

 

 趣味を自分から初めて話してくれた瞬間だった。

 

 

 それが、とても嬉しくって、意図せず口端が吊り上がっちまう。

 

 

「いいぜ見てやる。やってみろよ」

 

「ビビらせてやるから!」

 

 

 ニッコリ笑って元気よく俺の手を引っ張った。

 

 

  ◆

 

 

 目で追いきれないくらい早い打鍵と画面。

 

 めちゃくちゃ早いスピードで超高難易度の曲をやっている。

 

 しかもノーミスで。

 

 

 高速の白い粒、ノーツを全て叩ききったのだ。

 

 

 そして、曲が終了しリザルト画面が表示される。

 

 

『RANK S Perfect!!』

 

 

「すごいでしょ?」

 

「すげぇ……」

 

 

 コイツ、うますぎる……。

 

 

「ビビった?」

 

「ビビった……」

 

 

 ふふっと笑うタイシンとあんぐり口を開ける俺。

 

 

 固まった俺を放っておいて、最後の曲を選ぶ。

 

 

 その時、タイシンは顔をしかめた。

 

 

「どうした?」

 

「いや、向かいのプレイヤーとマッチングした」

 

「対決ってわけか」

 

「うん。でもアタシが選んだのは最難関楽曲。相手も上手いんだろうけど、勝つから」

 

 

 自信気な横顔。

 

 

「おう! やってやれ!」

 

 

 それを応援した。

 

 

 

 曲が始まる。

 

 

「すげぇ……」

 

 

 相変わらずの打鍵スピード。ミスの一つもしない技術。

 

 

 うますぎるよな……。

 

 感心して画面を見ると、マッチング相手のスコアが表示されている。

 

 

「え……っ!」

 

 

 相手とタイシン。どちらもスコアが全く同じ。互角の戦いを繰り広げていた。

 

 

「バケモンが二匹いるのかよ……」

 

 

  

 

 終盤まで二人はミスなく進む。

 

 

「ラスト……」

 

 

 タイシンが眉を顰める。

 

 きっとここが苦手なんだろう。

 

 

「勝つ……!」

 

 

 画面を睨む。

 

 

 すると、一瞬でノーツの嵐が降り注ぐ。

 

 

 さばき続ける両者。

 

 

「くっ……!」

 

 

 手と手が接触し、一つノーツを拾いそこなう。

 

 

 そこからはミスの連鎖。

 

 

 方や相手はミスなく進み、

 

 

「…………」

 

 

 ゲーム終了。

 

 

「はぁ……、相手上手いな……」

 

 

 悔しそうに奥歯を噛む。

 

 

 タイシンも良いスコアを出したが、相手が異常だ。トップクラスの実力者に違いない。

 

 

「ここにそんな強い相手が居たなんて……」

 

 

 画面を凝視するタイシン。何も言わずにその姿を見つめていると突然、

 

 

「トレーナーさんすっごい上手いね!」

 

 

 聞きなれた大きな声がこちらまで届いた。

 

 

「「チケット……?」」

 

 

 二人して呟いて、急いで反対側まで走った。

 

 

 そこに現れたのは、

 

 

「涼子……?」

 

 

 見知った顔が二つ、そこにはあった。

 

 

「あれ? タイシン! 奇遇だね!」

 

 

 元気よく手を振るチケット。

 

 

「久しぶりだね」

 

 

 その横で微笑する女。

 

 

「まさか、お前がチケットのトレーナーだったとはな」

 

 

 白髪のショートカット。スーツ姿の身長の高い、俺とタメの女。

 

 

 いくら探してもチケットのトレーナーは分からなかった。コイツがデータ改ざんでもしてたんだろう。俺のPCだけに。

 

 

 昔っからコンピューターに強かった。盲点だったぜ……。

 

 

「君の担当は彼女かい?」

 

 

 タイシンに視線を移す。

 

 

「ああ。そうだ」

 

「なら、今勝負していたのも?」

 

 

 挑発的な視線で笑う。

 

 

「そうだけど?」

 

 

 ふむ、と満足そうに頷いた。

 

 

「喧嘩売ってんの?」

 

 

 タイシンの対抗意識が増加する。

 

 

 その姿をみて口元が歪んだ。

 

 

「ああ。売っているよ。私は君に勝った。だから次は、この子の番だ」

 

 

 チケットの肩を叩く。

 

 

「————!」

 

 

 意味するところが分かってタイシンは涼子を睨んだ。

 

 

 チケットとの勝負。その舞台はゲーセンじゃない。

 

 

「ジュニアG1。ホープフルステークスで勝負しようじゃないか」

 

 

 芝の上だ。

 

 

 彼女は冷たく、熱く、俺たちを睨んだ。

 

「やるからには私も負けないよ!」

 

 チケットも闘志を燃やして宣戦布告。

 

 そんな瞳にうずうずして、対抗心に燃え上がり、相棒に視線を向けた。

 

 

「うん……」

 

 

 こくりと、頷いてお互いの気持ちを固まる。

 

 

 俺たちは、目の前に立ちはだかる二人を睨んで

 

 

「「やってやる!」」

 

 

 喧嘩を買った。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

タイシンのダンスが上手いという原作を少しいじって書いてみました!
わくわく感を味わってもらえたら幸いです。


そして、土曜更新だったのに一時間遅刻です。
すみません。

次回更新もなるべく早く頑張りますのでよろしくお願いします。


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