織斑一夏の兄が行く   作:ふくろう639

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お待たせいたしました。続きです。

年末年始から引っ越しは辛かった・・・
ようやく落ち着いたので投稿です。

気づけば評価バーに色が・・・評価ありがとうございます!
これからもチマチマと頑張っていきます。


第6話 決闘のその後

~???~

 

 あの子は少し前から見かけていた。

 

 気付いたら道場の陰でひたすらに筋トレをしていたその子は私の友人の弟らしい。友人ともう1人の弟が道場で剣に励んでいる間、いつも同じ場所で筋トレしていた。だけど、弟が2人もいるなんて聞いたことなかったんだけどな。

 

 剣を習いに来るわけでもないのに、ただただ身体を鍛えているのが気になったのか、それとも他の何かが琴線に触れたのか。それはもう覚えてないけれど、気付けばその子が筋トレしていたら縁側に座って眺めているのが習慣になっていた。

 

 そんな事を続けていたある日、腕立て伏せをしていたその子にふと聞いてみた。

 

『いつも同じようなトレーニングしてるけどさ、楽しい?』

 

『………楽しさは求めてない』

 

『ふーん。楽しくないのに続けるんだ。少なくとも道場でやってる子達は楽しんでるだろうけど』

 

『………関係ない』

 

『ま、確かに関係無いね。君にも私にも向こうにも。けどさ、家の敷地内でやってる以上、多少は教えてくれてもいいんじゃない?』

 

『………力がいるんだ』

 

『それって何で?』

 

『………………………』

 

『ねぇ。君は何でそんなに力を求めるの?』

 

『………強くならなきゃ、力がなきゃ、誰も助けられない、守れないんだ。だから──』

 

 力がいる、顔を上げてそう言ったその子の目は私を見ているようで見ていなかった。その目には見覚えがある。私が周囲を見る目だ。ただの背景、興味もない、どうでもいい。そんな感情が見てとれる目をしていた。

 

 私が周囲にするのはともかく、この子がこんな目をするのが何故か気になった。その子の姉に聞いてみたけど、開口一番に、

 

『お前が他人を気にするとは………明日は槍でも降るのか?』

 

 とか言うもんだから自分で調べる事にした。私だって気にすることはあるよ! 今まで無かっただけで。

 

 そうして調べた結果………その理由が分かった。

 

 当時住んでいたアパートで火事があって、その時に母親を失っていたらしい。母親は大人ならどかせる程度の大きさの瓦礫に挟まれた状態で発見されたようだ。

 

 あの子は、恐らく瓦礫に挟まれた母親を助けられずに逃げるしか無かった。力があれば助けられた事実があったからこそ、家族を守れるように力を求めているんだろう。

 

『あいつが気になったなら、そのまま気にしてくれないか? お前と同じで友人がいないからな。学校でも入ったばかりなのに浮いているらしい』

 

 私にも友達くらいいるよ! 目の前に! って言ったら溜め息つかれた。もう少し交友範囲広げろって? 余計なお世話だよ!

 

 それからだ。私がその子………ももくんとよく話すようになったのは。

 

 

────────────────────

 

 

「昨日の結果、クラス代表は織斑弟が務めることとなった」

 

『『『「異議なーし」』』』

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ千冬姉!」

 

 クラス代表決定戦の翌日のホームルーム。昨日の結果から、一夏に決まったが、その本人から待ったがかかった。

 

スパァンッ

 

「織斑先生だ。で、何だ?」

 

「昨日勝てなかったのに何で俺になったんだ!?」

 

「他の2人が辞退したからだ。だな? オルコット、織斑兄」

 

 姉貴がそう言うと、オルコットが立ち上がった。

 

「はい。昨日の試合を通して、如何に自分が未熟であったかを思い知りました。そのような私が代表になる訳には行きません。それと」

 

 前に出たオルコットがクラスメートに向けて、頭を下げた。あのプライドの塊みたいなやつが、まさかやるとは。

 

「先週の私の発言、並びにこの一週間の皆さんへの対応を謝罪させていただきます。誠に申し訳ありませんでした」

 

 発言は恐らく一夏との口論。一週間の対応はあれだな。俺も昨日煽るのに言ったが、仲良くするどころか見下したり馬鹿にする発言が多かった。それを謝罪する、ってんだから大分見方が変わったんだろう。

 

「一夏さん、そして改めてお兄さんにも謝罪いたします。申し訳ありませんでした」

 

 改めて、というのは昨日の夕飯の後ににオルコットが謝りに来たからだ。部屋は姉貴に聞いたらしい。

 

 オルコットの表情からして、廊下で話す内容でも無さそうだから部屋の中へ案内した。楯無は家業の手伝いとかで遅くなると言ってたから他のやつに聞かれる心配はない。

 

 そうして色々な話をした。親を侮辱するような発言と男だからと噛み付いてきたことへの謝罪、何故そのような言動を取ったのか………世間話を交えながら聞いていた。途中、何故か一夏の好みについて聞かれたが、これはあれだろう。本人は謝罪の品を渡す為と否定していたが………一夏も罪作りな男だ。

 

「いや、俺も悪かったよ。売り言葉に買い言葉で。兄貴は?」

 

「昨日謝ってもらってるから俺はもう気にしてない。お前らは?」

 

『私らも大丈夫かなー』

 

『確かに対応にイラッとしたけど、お兄さんほどじゃないし』

 

『むしろ威嚇してた猫が懐いてくれた感じがするよね今』

 

『『『わかる』』』

 

「あれはクラスの共通認識でしたの!?」

 

 まさか、試合前に煽るつもりでいった子猫が実は共通認識だったのは知らなかった。いや、いつもの奴らなら敢えてからかうつもりで言った可能性もあるな。

 

「………ではオルコットは席に戻れ。という訳でオルコットは辞退。織斑兄も『どうせなら一夏にやらせたい』という理由で辞退した。まぁ、生徒会に所属するのだからどちらにしろ辞退せざるを得なかったが」

 

「そういうことだ一夏。せっかくの機会だから経験を────ちょっと待て姉貴」

 

 何か今俺の知らない話が出なかったか?

 

スパァンッ

 

「織斑先生だ。で、どうした」

 

「俺が生徒会に所属する、って何だ?」

 

「? だから、お前が生徒会に副会長として所属する、という話だ。更識から聞いているぞ? 生徒会に副会長がいないという話を聞いて、高校でやっていたから自分で良ければ力になると言ったそうじゃないか。必要な書類は処理しておいたからな。励めよ」

 

 ………あの時のあいつの表情はこういうことか。

 

 昨日の虚さんの話からして、タツとは違う意味で楯無は仕事をしない。つまり、高校の時にあった、

 

『………なんだ、この紙の山』

 

『いつものよ。龍久は1、2週間くらい来れないらしいから、その分の代理書類とか色々だそうよ』

 

『………おい、締切が今日までのやつもあるんだが』

 

『あんたならそれくらい処理できるでしょ』

 

『………タツの印鑑じゃなくて会長印が必要なんだが?』

 

『それは………どうしようもないわね』

 

 という状況が甦るってのか? ふ、ふふふ、

 

「ふざけんな楯無ィィィィイイッ!」

 

 本人の許可なく勝手に所属させるやつがあるか! さすがのタツでもやらなかったぞ! どうせ自分の代わりに書類を処理させる気だろうが!

 

 直後、姉貴にやかましいと出席簿で叩かれたが、思わず叫んだ事は仕方ないと思う。

 

 

────────────────────

 

 

「………ということが今朝あってな。さっき軽く折檻してた」

 

「なるほど、だからか………御愁傷様」

 

 放課後も過ぎた夜。食堂の席で俺とタツは俺が居なくなってからの高校や、学園の様子などの雑談をしていた。隣の席には楯無もいるが、額を机につけた体勢で置物と化しているから会話には混ざっていない。時折もぞもぞと動いているのを見る限り話は聞いてるようだ。

 

 本来ならこの時間に部外者はいられないんだろうが、いつの間にかうちのクラスのやつがクラス代表が決定したことのお祝いということで食堂を貸し切ったらしく、楯無経由で多少融通を効かせてもらった。姉貴は頭が痛そうだったが………今度の差し入れに頭痛薬も足すか。

 

 この食堂で行われている簡単なパーティーは1組だけでなく他クラスに加えて他学年もいた。どこの学生でも騒ぐのは好きみたいだな。

 

「もう何度目か忘れたけど、クラス代表決定戦お疲れ様。よく代表候補生に勝てたよね、ホント」

 

「おう。だがあれは今回限りの戦法だな。次やったら普通に負ける」

 

「モモの本来の戦い方は身体能力にモノを言わせたゴリ押しだからね。その種が割れた以上、あとは普通に経験値が多いオルコットさんに軍配が上がるか」

 

「そういうことだ」

 

 オルコット戦での俺の戦法を簡単に説明すれば、ゴリ押すために策に嵌めた、ってとこだな。オルコット本人が言ってた先週の俺の発言はほぼ偶然だが、当日は策に嵌めるために動いていた。

 

 戦い方の情報が無い以上、オルコットが直前の試合から俺の情報を集めるのは当然だろう。相手が素人であろうと負けないために判断材料にするのは、プライドの塊みたいな奴だから分かってたからな。そこで、一夏戦を通して俺が遠距離主体の戦い方と思わせたのがまず1つ。

 

 2つ目は試合開始直前の会話というか口論か。冷静な奴は怒らせて判断力を低下させるのは定石だ。煽って怒らせた上で、最初から全力で来るように挑発すれば乗ってくると思った。

 

 最後に3つ目。これは要因が重なったからこそ出来た策だが、開幕速攻だな。元々はぶっつけ本番で瞬時加速を試す気だったんだが、アリスのお陰で失敗はなかった。弾鋼で一撃必殺が可能だから一気に追い込む事が出来た。行き当たりばったりだったかもしれないが、結果オーライだ。

 

「しかし、最後に殴りに行ったのを見て、あの頃のモモが戻ってきたかと思ったよ。高一の後期から段々と大人しくなっていったからね。懐かしいよ」

 

「………思い出させるんじゃねぇ。ある意味黒歴史なんだぞあれ」

 

『何か面白そうな話が聞こえた!』

 

「引っ込めアリス」

 

『ふぎゅっ』

 

 テーブルの上にホログラムで生えてきたアリスを手の平で叩き潰す。相変わらず当たったかのように反応してるが、今度は俺の手の甲に生えてきた。

 

『いきなり酷いなぁ~。それで、黒歴史って何!? 中2病だった? それとも公衆の面前で恥ずかしいことやっちゃった?』

 

「若気の至り、ってやつかな? 中3で部活を辞めてから、それはもう荒れに荒れてね。辞めた直後の出来事のせいかも知れないけど、懲りずに襲ってくる不良共を叩きのめした結果、付いた渾名が赤鬼とか悪魔とか」

 

『うひゃ~。中2チックな通り名ついてるぅ~』

 

「だから黒歴史なんだよ………」

 

 襲いかかってくる奴らを投げて蹴って殴って関節極めて………頭から血を流してる状態で笑いながらやったのがまずかったんだと思うよ、とその時人質で巻き込まれたジェシカの談。笑顔は本来威嚇の意味だって聞いたのにな。

 

 それに後期から大人しくなったのは生徒会業務で校内環境を整え始めたから襲いかかってくる奴らが減っていっただけだ。断じて尖ってたのが丸くなったとかじゃない。

 

『! いいこと思い付いた! ちょいと変更し──』

 

「おう、何をする気だ一旦止まれ」

 

『いいよー。もう終わったし』

 

 と勝手にISが部分的に展開され、目の前に出てきたのは………機体情報? 特におかしな所は無………おい。

 

「………アリス?」

 

『ふっふっふ。変更してやる、と思った時には既に行動は終わってるんだぜ』

 

「? モモ、何があったんだい?」

 

「………機体名を勝手に変えやがったこのチビ助」

 

「何に?」

 

「………………ディアブロ・リヴァイブ」

 

「ディアブロ………………ブフッ!」

 

 直訳すると、復活の悪魔か? 要するにだ、

 

「人の黒歴史をほじくりかえす奴があるかこのチビ助! しかも変更出来ないようにロックかけやがって!」

 

『別にいーじゃん? せっかくの専用機なんだから固有名付けたって』

 

「そ、そうだよモモ! ック、キミらしいな、名前じゃないか! プッククブフォッ」

 

「俺はデフォルトネーム派なんだよ! それと笑いすぎだタツ!」

 

 昨日からの短い付き合いだが、今ほどこいつがホログラムであることを憎いと思ったことはない。実体があったなら林檎を潰す勢いで握り締めてやるのに。

 

 

 

 

 笑いが止まらないタツと机に突っ伏したまま笑っていただろう震えていた楯無に拳骨を落としてたんこぶ(アイスクリーム)をプレゼントして落ち着かせた。アリス? 俺にはどうしようもないから束さんに苦情のメール入れといた。普段ならすぐに返信が来るんだが今日は来ないな?

 

「そういえば、昨日から姉貴を絡めて仕事の話をしてたらしいが、その話はどうだったんだ?」

 

「………いてて。あぁ、それなら何とかまとまったよ。ここのお偉いさんが話が分かる人で良かった。流石にうちのテストパイロット扱いは出来なかったけど、学園所属のキミ個人のスポンサーとして契約できた」

 

「スポンサー………ってことはレースカーみたいにISに龍宮のロゴを入れるのか?」

 

「いや、機体自体は学園所有だから装備の方に入れる。今度郵送するから届いたら弾鋼に入れておいてくれ」

 

「おう」

 

「じゃあ、そろそろ僕は失礼するよ。昨日今日の話を本社に報告しておかないといけないしね」

 

 またね、とタツは去っていった。姉貴に延長してもらった時間もそろそろだったし、ちょうど良いタイミングだった。

 

 さて一夏の方に行くか、と立ち上がろうかとしたところで机についた腕を掴まれた。掴んだ主である楯無に顔を向けると机に突っ伏したままだった。気配で立ち上がるのを読んだのかこいつ。

 

「おう、楯無。何だ」

 

「………生徒会室であんなことをしておいて、私を放置する気?」

 

「あれくらいで何言ってんだ。まだ軽い方だぞ? それに生徒会室からここまで運んで来ただろうが」

 

「『あれくらい』!? 私に乱暴しておいて!? お陰で身体の節々が痛いし特に腰が痛くて動けないのに!?」

 

「言い方を考えろこの馬鹿。自分が何言ってんのか理解してんのか?」

 

 周囲はうるさくて聞いてなさそうだが、そんな紛らわしい言い方をしてみろ。万が一面倒な奴が耳に挟んだら──

 

「ここからビッグニュースの気配が! 詳しく!」

 

「ほら面倒そうな奴がってどこから湧いた誰だお前」

 

 タツが座っていた席にいつの間にか着席してメモを取る態勢万全の女生徒がいた。

 

「あぁ、どうも初めまして。新聞部2年の黛薫子です」

 

「これはどうも。1年の織斑百春だ」

 

「で! 今たっちゃんから面白い発言が聞こえたんだけど、何々? 抑えきれないリビドーをたっちゃんにぶちまけちゃった?」

 

「何言ってんだこの馬鹿」

 

 楯無をたっちゃん呼び………かなり親しそうだが、類は友を呼んだのか? 楯無はようやく自分の発言内容を理解したみたいだが、遅いだろうなぁ。

 

「え? おっかしいなぁ、可愛いたっちゃんに対して衝動を抑えきれなくて狼になった、って聞こえたんだけどな?」

 

「お前耳掃除してるか? 一言一句合ってねぇぞ」

 

「たっちゃんが可愛くないと言うのか!」

 

 可愛く無いと言えば怒るだろうし、可愛いと言えば新聞のネタ行き。「面倒な奴だな。それに楯無は可愛いというか美人の分類だろ」。分類違いはどうしろってんだ。

 

「びっ………!?」

 

「ほほーう。これは良い情報をゲットしたかな? で、実際は何があったの?」

 

「ん? あぁ………」

 

 何故かは知らないが話が変わった。答え無くていいから良いが。

 

 しかし、黛は楯無の同類だな。楯無と違って直接からかうタイプじゃなく、場に燃料投下して引っ掻き回すタイプ。こういうのは真面目に対応するか同じように場を引っ掻き回すのが一番だ。

 

「何があった、って………」

 

 

『おう、楯無。用件は分かるな?』

 

『もちろん。いやぁ、頼んでも断られそうだから手を回したのよ。これからよろしくね?』

 

『………トイレは済ませたか? 神への祈りは? 部屋の隅でガタガタ震える準備はOK?』

 

『え、何でそんな怒ってるの………?』

 

『ですからお嬢様、生徒会に勝手に入れるのは止めた方が良いと』

 

『ま、待って、謝るからそんな指を鳴らしながら近づかないで、ね?』

 

『だが、生徒会入りは確定なんだろ?』

 

『………………えへ?』

 

『死ぬがよい』

 

 

「………って事があったくらいか」

 

「『あったくらいか』って死刑宣告してるよね………ちなみに、具体的に何したの?」

 

「コブラツイスト、卍固め、アルゼンチンバックブリーカーに背負い投げからの腕挫十字固め」

 

「それは身体の節々が痛くなる訳ね………んー、見出しは『織斑兄、生徒会長に衝動をぶちまける!?』でいいか」

 

「おう、悪意しか感じられねぇ見出しだな。生徒会権限で発行停止にするぞ?」

 

「フッ、その程度で私のジャーナリズムを抑えられるとでも?」

 

「そうか、新聞部は今年の部費はいらないらしいな。会計の虚さんに連絡を──」

 

「ごめんなさいそれだけはどうか」

 

「分かればいい」

 

 机に両手をついて頭を下げる黛。動作がスムーズなのを見る限り、常習犯だな? それと楯無。副会長が生徒会権限を振りかざしてる、とか呟くな。副会長に任命したのはお前だし、特大ブーメランだぞそれは。

 

「あ、そうだ。見出しで思い出した。さっき弟くんにインタビューして、お兄さんも一緒に集合写真撮ろうとしてたんだった。と、いう訳でちょっと来て?」

 

「おう」

 

 楯無を机に置き去りにして黛と一夏の所へ向かう。薄情者~、とか聞こえたが、無視だ無視。それに一応動けなくなるほどやった覚えは無いぞ。

 

 で、一夏がいるテーブルに来た訳だが、何で一夏を挟んで箒とオルコットが睨み合ってるんだ?

 

「あ! 兄貴も来たか」

 

「おう。で、こいつら何やってんだ?」

 

「箒とセシリアが何でかさっきから睨み合ってるんだよ」

 

「そりゃ見れば分かる。ん? 『セシリア』?」

 

「あぁ。セシリアが仲良くしたいから名前で呼んでくれ、って」

 

 なるほど。一歩前進した、ってことか。箒もうかうかしてられないな。

 

「おう、2人とも。写真撮るらしいから一旦ストップだ」

 

「………む、百春さんか」

 

「なら、仕方ありませんわね」

 

 と、2人は距離を取る。が、目付きは鋭いままで分かりやすくはないがお互いを睨んでいる。

 

「黛、写真は誰を撮るんだ?」

 

(いやぁ~これから新聞のネタには欠かなさそう)………ん、あぁ撮るのは今回戦った3人かな。そうだね………オルコットさんを真ん中にして脇を2人に固めてもらう感じで」

 

 言われた通りに一夏とオルコットの脇を固めようと立ち位置を調整してる間に黛が周囲に視線を送っていることに気付いた。箒を始め、周囲も視線に気付いて移動しているが、この動き方は………

 

「じゃあ撮るよ~。はい、チーズ!」

 

 『はい』の瞬間、周囲の奴らが俺達の回りに集まった。箒もしれっと一夏の後ろに腕を組んで立っているが………もう少し攻めようか? せっかくだし、オルコットも。

 

「えっ」

 

「ちょっ」

 

「なっ」

 

 一夏が真ん中に来るように一夏・箒・オルコットを後ろから抱き寄せる。その瞬間にパシャッとカメラのシャッターが切られた。

 

「………うん、バッチリ。お兄さんグッジョブ!」

 

 サムズアップしてくる黛に俺も同じように返す。グッジョブ、ってことは3人が密着してる画が撮れたんだろう。後で写真の焼き増しを──

 

〈データをもらっといたよ!〉

 

 ………頼む手間が無くなったが、どうやったのかは聞かないでおこう。

 

「み、皆さん!? いえ、そんなことよりもお兄さん!?」

 

 スリーショットのトリミング具合であわよくばツーショットを狙っていたらしいオルコットが驚いている。集合写真のようになるかと思いきや後ろから抱き締められて一夏に密着する事になったからな。

 

「せっかくの学園生活なんだ。思い出に残る写真とかある方がいいだろ?」

 

「それはそうですが!」

 

「そ、そうだぞ百春さん! やるにしても限度というものがある!」

 

「(後で写真データをやろう)」

 

「だが、良い思い出になるな。ありがとう百春さん」

 

「ありがとうございますお義兄さん!」

 

「おう、見事な手のひら返し。………今『お兄さん』の文字がおかしくなかったか?」

 

「気のせいですわ」

 

「何!? なら私も百春さんの事をお義兄さんと!」

 

「おう待て箒。お前が言うとシャレになら──」

 

〈ウサギさんから着信だよ?〉

 

『後で折り返すとメール返しとけ』

 

「ふむふむ。将を射んとすればまず馬を射よ、ってことね」

 

「黛はそのペンを一旦止めようか?」

 

『『『なるほどよろしくお義兄さん!』』』

 

「いい加減にしろこの馬鹿共………!」

 

 姉貴が時間だいつまで騒いでいる、と止めに来るまで、この馬鹿騒ぎは続いた。

 

 

 

~おまけ~

 

 

 昨日のセシリアの身の上話の後。

 

「………なるほど、な。父親といい、両親を亡くしてから近づいてきた野郎共といい、録な男に会ってなかったわけか」

 

「………はい」

 

「謝罪は受け取った。理由も共感できた。もうそこまで落ち込む必要もないんだが、まだ何かあるのか?」

 

「まだ何か、ってあれだけ怒っていて文句の1つもありませんの!?」

 

「無いな。それに、もうお前は変わろうとしてる。こうして謝りに来たことがその証拠だろ。強いて言うなら、次があったら俺流折檻コースを受けてもらうからそのつもりでな?」

 

「はい! ………と、ところでその、弟さんについてなのですが」

 

「一夏? あいつも多分謝ったら許してくれるぞ?」

 

「そうではなくて、どういったものが好みとか教えていただきたく………」

 

「好み? ………ふぅん? なるほど? そういうことか」

 

「そのニヤニヤを止めてください!」

 

「まぁ、確かにお前からしたら一夏は男という概念を崩したからな。そういう思いを持つか。思い人の好きなモノは知りたいな?」

 

「これは違うのです! これは………そう! お詫びの品を渡すのにどういったものが好みなのか知っておく必要が──」

 

「目の前にいる一番怒らせた俺は聞かれてないが?」

 

「うぐっ」

 

 後日、百春は高いコーヒー豆を貰った。




TOPICS:ディアブロ・リヴァイブ
 フランスのデュノア社製ラファール・リヴァイブを百春の専用機にした機体。黒地に赤紫で模様が描かれている以外は特に見た目に変わりはない。装備は龍宮グループのものを搭載しており、サポート用のAIがインストールされている。


一夏のヒロインレースにセシリアが参加しました。
百春のヒロインはどうしよう・・・今のところ3人がレースに出走予定ですが増やすか増やさないかどうするか。増やしても書ききれるか不安なんですよね。

あ、ヒロインタグは全員登場してから足そうかと思います。誰が参戦するかお楽しみに。

前回を試しに第三者視点で書いたのと忙しくて中々進まなかった結果、百春視点での書き方が分からなくなるという弊害ががが・・・毎日ちょっとずつやるのは大事ですね。

あと、楯無がポンコツ気味かな? と思ったので一応作者の考えをば。
一夏はからかいやすさ◎+年上の余裕、ということだと思うのですが、百春はからかいやすさ△+向こうが年上、ということで思ったようにからかえずポンコツになる、という考えです。からかおうとして怪しい言動をした結果、悪化して帰ってくるからポンコツ気味になるという・・・ポンコツ気味な年上キャラは良くないか?

次回も気長にお待ちください。
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