エグゼコレクションたーのしー! と遊んでいたら5月中旬になってました。
本来ならもう少し早く投稿できたと思うんですが………仕方ないね。
今回は繋ぎ回です。
昨日のアリーナでの出来事が既に生徒間に広がっているようで、実はただでさえ少なかったラウラへの接触が皆無に等しくなっている。だが、ラウラの事に関しては入学当初のセシリアの事もあるのであんまり気にしてない。何かきっかけがあれば打ち解けるだろ。
今気にしているのは、アリーナでの出来事と同じように昨日から広まっているある噂だ。朝食を済ませようと向かった食堂で聞いて目頭を押さえ、更に済ませた後の教室でもそれを聞いた俺は思わず頭を抱えた。
『ねぇ、聞いたあの噂?』
『聞いた聞いた! これはもう気合入れるしかないでしょ!』
『だよね! 今度のタッグマッチトーナメントで優勝したら織斑兄弟と付き合えるんでしょ!? ならもうするしかないよね、優勝!』
『流石に本人達と組むのはダメらしいけど頑張らないとね!』
………………と、何故かそんな噂が広まっている。内容は聞く度に違う部分があるが、聞いた話を統合すると『タッグマッチトーナメントで優勝したら織斑兄弟のどちらかと付き合える』という噂だった。
昨日の生徒会ではそんな話は微塵も無かったし、積み上がっていた書類にもそんな内容は無かったはずだ。全く持って原因不明である。
「………なぁんであんな噂が広がってるんだろうなぁ? なぁ、箒?」
「ナ、ナンデデショウネ………?」
だが、俺と同じように教室で箒も頭を抱えていた。優勝すれば一夏と付き合えるからテンションは高くなる筈なのにだ。これは何か知ってるな? というか元凶か? と俺の席に呼びつけた所だ。
「そうか、箒も知らないか………ってなるか。流石の俺でも分かるわ」
目の前にいる箒は、俺から顔を逸らして冷や汗を流し言葉もぎこちなく………と、いくら嘘が下手な俺でも分かるぐらいに箒が嘘をついてると分かった。案外傍から見た俺の嘘もこんな感じなのかもしれない。
「で、ですよね………………いや、私もこうなるとは思わなかったんだ!」
「おう、キリキリ吐け。俺に直接確認しに来る奴まで現れてんだ。内容によってお仕置きのレベルが変わるから覚悟しろ」
「………ちなみに、そのお仕置きのレベルとは?」
「例の名前を呼んではいけない訳でもない人に流す写真の内容が変わる」
「しゃ………!? なんでそんなものが!?」
「一応あの人からお前の事を頼まれてるからな。定期報告の一環として送ってるぞ? 週一くらいで」
「意外と頻度が多い!? いや、だが百春さんが撮っていた写真にも限りがあるし食事や教室移動がほとんどだ。そこまでの内容のものは撮ってないはず!」
「ところがどっこい。新聞部の黛から仕入れてるんだなぁこれが。俺の手元にどんなのがあるかというと、剣道部での写真を始め、クラスメートや部活仲間とスキンシップを取っているシーン等々………」
例えばこんなの、と携帯に入っている写真を見せた。そこには黛から仕入れた箒の写真データが開かれており、どんなものかと言えば箒の着替中に部活仲間に後ろから胸を鷲掴みされている写真だ。尚、黛が何故こんな写真を撮っていたのかは不明である。
あと、箒が言っていたように俺も写真を撮ってたりする。普段取れない一夏の学園生活が撮れるなら撮るしかないだろ? 一夏のためにも。
「な、なんでこんなものが………!? というか何で携帯に入れてるんだ!?」
「そりゃこういう時にお前を脅………もとい強請る為だな。元々は一夏に照れ隠しで木刀振るうのがエスカレートした時用だったが今回役に立った」
「だ、誰が照れ隠しか! それと言い直しても意味が変わっていない!」
「それで、どうする? 話すか? 話さないか?」
「話すから! しっかりとある事ない事話すからそれだけはどうか勘弁してくれ!」
「いや、ある事だけ話せ?」
無い事を話されたら容赦なくメールに写真データを添付して送信ボタンを押すしかないんだが?
ちょっと耳を、と箒が言うので耳を寄せる。そんなに知られたくない内容なら写真についても加減すべきか?
「………………その、昨日の夜に一夏にな。『私がトーナメントで優勝したら付き合ってくれ』と言ったんだ」
「おぉ〜………。それは随分と勇気を出したじゃねぇか。それで?」
「それで、その、話をしたのが一夏の部屋の前だったんだが、たまたま他の生徒が聞いていたらしく………」
「それでそいつが聞き間違えたのか捻じ曲げたのか、『優勝したら織斑兄弟と付き合える』なんて噂が広まった、ってことか?」
「おそらくそういうことに………」
「なるほどな」
箒から耳を離して座りなおす。勇気を出した箒には可哀想だが、運が悪かった。聞き間違えられたのはどうしようもないが、せめて部屋に入って扉を閉めていればここまでの事態にはなってなかっただろうに………
ただ、そのたまたま聞いていた奴、苗字が黛とか言わないか? 話を捻じ曲げて広めるとか、そんな愉快犯が黛以外にいるとは思え………………いや、結構いるな。
「それで百春さん。写真の方は………」
「そうだな………………厳正な審査の結果、箒に非は無いとしてこの写真を流します」
と箒に見せたのは教室での写真。本音が落っことして転がった大きめのチョコレートを頭文字Gと勘違いしたのか箒が一夏にしがみついている写真だ。しがみつかれた一夏が少し顔を赤くしてるのがポイントである。
「な!?」
「ほいポチッとな」
箒の動きが止まった瞬間に素早く操作して束さん宛にメールを送る。本文は書かなかったが、まぁ分かってくれるだろ。
「な、何を勝手に! 送らないんじゃなかったのか!?」
俺の両肩を掴んでゆっさゆっさと箒が揺らして来るが、でもなぁ………
「内容のレベルが変わる、ってだけで送らないとは言ってないんだよなぁ。それに流れてる噂に合わせて『賞品の為に本人達の力を借りてはいけない』ってこの短時間で流すハメになってんだからこれぐらいいいだろ」
「そう言われると………確かにその部分があったのは少し疑問だったんだ。まさか百春さんがこの短時間で流していたとは」
箒は俺だけで噂を流したと思ってるみたいだが、実は本音の力も借りている。教室でも噂を聞いてヤバいと思ってすぐに連絡を取った。あれでも顔が広く、誰にでも気楽に話しかけていけるから噂に情報の追加をするにはうってつけだった。
………まぁ、今度スイーツ食べ放題に連れてく約束をしてしまったが、話し掛けられる鬱陶しさが減るなら安い出費だ。噂を追加するまで何人に確認として話し掛けられてたことか………タッグの申請も合わせてヤバかったんだからな。ホントに。
ピロンッ
「あ、早速返信来たぞ」
「………あの人は、なんと?」
「『今回もイイ写真送ってくれるねぇ〜! この感じだとチョコを虫か何かと勘違いしたのかな? 女の子らしさを出しながらいっくんにボディタッチでアピールするなんてやるねぇ箒ちゃん!』だと」
「………ぁぁぁぁぁあああ!」
恥ずかしさか怒りか何とも言えない感情に襲われたのか、箒が頭を掻き毟っている。頭も激しく動いてるからポニーテールもそれに合わせて大きく動き、クラスメートから何事かと見つめられているのに気付いていないようだ。
「………ふぅ〜………ふぅ………」
「おう、落ち着いたか?」
「な、なんとか………………それよりも百春さん」
「何だ?」
「………………さっきの写真、貰っても?」
「おう、いいぞ。なんなら他の写真も見てみるか? 一夏の写真なら黛から仕入れた分もあって結構あるぞ」
「ぜひ!」
『『『『織斑くんの写真を見れると聞いて!』』』』
「ハウスだ馬鹿共」
『お兄さんにペット扱いしてもらえるだと………? 最高か? おっとよだれが』
「こんな欲望に塗れたペットはいらねぇんだが?」
最後の部分だけ聞こえたのか、案の定わらわらとクラスメートが集まり始め、いつものように騒ぎ始めた。
一夏とシャルルがやってきても終わらず、ホームルームにやってきた姉貴に出席簿を全員叩き込まれるまで続いていた。
「………っていう事が今日はあったな」
「相変わらずモモの回りは賑やかだね。楽しそうでなによりだよ」
時間はあっという間に過ぎて放課後。依頼していたIS装備の最後の物を持ってきたタツと雑談をしていた。最初に装備を持ってきた時と同じように、今は量子変換待ちである。まぁ、作業してくれている人はその時と違うが。
「しかし珍しいよな。今まで装備の納品も定期的なメンテナンスもやりに来てたヒメが急用で来れないのは。なんかあったのか?」
「ちょっと生徒会の方でね。たぶんモモにも協力を頼む事になりそうなんだ」
「それは穏やかじゃねぇな。引き継ぎはとっくに済ませてただろ。それでも俺の力がいるのか?」
「あぁ、違う違う。そういう協力じゃないんだ。言い方を変えると、モモへの依頼かな?」
「依頼? 俺なんかに?」
「そう。詳しい話は依頼する時にするけど、学園と契約書も交わすちゃんとした依頼だよ。僕としては土日にしたい所だけど、たぶん教師陣が平日に、って言うと思うんだよね………」
「ん〜………、まぁトーナメントが終わった後なら大丈夫か………?」
臨海学校も控えているが、それまでの間かそれ以降だったら大丈夫か………。その時の状況次第だな。
「そういえば、今年のトーナメントはタッグマッチに変わったんだって?」
「おう。変わった理由は諸事情あって、としか言えないがな」
「そこは気にしてないよ。去年と今年で内容が違う、なんてよくあることだしね。僕としては、広告塔として生半可な戦いは許さないから頑張ってね、って感じかな」
「あぁ、そっちか。各国のお偉いさんとかが来る予定だしな。企業目線としてはそっちの方が大事か」
「そういうこと。モモの戦績というより試合内容次第でうちのIS装備の宣伝が決まるからね。これでどこかの国から取引の申し出なんかが来たら龍宮グループも世界進出できる。そうしたらこれ以上ない目に見えて分かる実績だ。社内の僕の次期総帥に反対してる輩もいい加減黙らせることができるよ。ふふふ………」
タツは若干俯いた状態で眼鏡のブリッジを中指で押し上げる。光の加減か何かで眼鏡のレンズ全体で光が反射してんだがどうやってんだそれ?
「そっちも相変わらずギスギスしてんなぁ。ってか龍宮ってまだ世界企業じゃなかったのか」
「メインは部品開発だからね。日本と若干規格が違ったりするし、対応しようとなると生産速度が追い付かないんだよ。海外に工場建てようとしても技術者も必要になるから国内の工場が大変になるしさ。家電なんかの自社製品も出してはいるけどそれも国内向けで規格が違うから、意外と海外と取引はしてないんだよね」
「けどIS装備はISにインストールさえ出来れば使えるから海外でも問題なし、ってことか」
「そう。簡単なメンテナンスとかならマニュアルで済むし、最悪技術者を出張させるだけで済むからね」
「………よし。お兄さん、龍宮さん、終わったよ」
今まで俺達に背を向けて作業をしていた人が振り返る。今回はヒメではなく、あいつと違って水色の髪と眼鏡が特徴で、毎日顔を見る奴と顔がよく似ている彼女に作業をお願いしていた。ヒメと違って壁でもない。
「ありがとう更識さん。助かったよ」
「ううん。こっちも作業の息抜きができたから」
そう。ヒメに代わって量子変換の作業をしてくれていたのは簪だ。『ヒメが急用で行けなくなったから日を改めてもいいかい?』なんて電話がタツからあり、次の予定日がトーナメント間近だったからそれならとオファーしてみたら受けてくれたのが簪だった。
最初はアリスにぶん投げようかと思ったが、どうしても人的作業が必要になるようで、投げる事が出来なかった。まぁ、簪とタツにちょっとした用もあったからちょうど良かった。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、僕からしたらうちの仕事を手伝わせてしまった形だからね。何か要望があったら遠慮なく言ってね、モモに。なるべく要望に応えるから、モモが」
「お前に言われるのは癪だが、まぁ俺が頼んだ訳だしな。作業の人手が欲しい………はたまに手伝ってるから意味ないか。まぁ、授業で分からなかった所を教えて欲しいでも、買い物の荷物持ちをしてほしいでも、ある程度の要望なら応えるから。………おっと、下手に遠慮はするなよ? したらこの前遊びに行った時みたく本音と引きずり出しに行くからな?」
「うっ………でも………」
もしかしたらと思って釘を刺したが、案の定図星のようで簪にちょっと顔を背けられた。性格からかもしれないが、どうも簪は自分の意見をあまり出そうとしないんだよなぁ。
「俺が言えた義理じゃないかもしれんが、もっと我儘というかなんというか………欲張りに行っていいんだぞ? 本音なんか楯無と虚さんにパフェを奢るときにしれっと自分も要求してたからな? 今日も手伝った礼に『スイーツ食べ放題に行きたい』だったし。それぐらい図々しく行け」
「本音のそれはさすがに図々し過ぎるよ………………ごめんねお兄さん」
「気にするな。それで、どうだ?」
「うん………………ちょっと考えてみる」
「おう、そうしろ」
そう言いながら簪の頭を撫で回す。初めて会った頃に比べて表情も少し増えてきた気がする。思い詰めなくなった良い証拠だな。
「………さすがは我が校が誇る副会長。女子にさり気なくボディタッチして拒絶されないとは………一部生徒から未だにアニキと呼ばれるだけはある」
「アニキ言うな。あいつらが言ってるのはそういう意味じゃねぇだろ。というか量子変換終わってんだから仕事しろ次期総帥」
っていうかまだあいつらそう呼んでるのか? いい加減その呼び方をやめろと高校を離れる時にあれだけ語り合ったというのに足りなかったか………………肉体言語。
「確認作業くらいなら会話しながらでも充分可能だよ。後はモモに説明するだけだ」
「そりゃ失礼。それで? 今回の装備は?」
「まぁ、まずは順番に行こう。更識さんも自分が何を量子変換してたのか気になるだろうしね」
本来だったら部外者ということで退室してもらってる所だが、作業してもらった事もあるし簪にも教える方向でいる。タツには許可を取っているし、倉持技研とは違う技術を見る事で本人のIS開発にも何か役立つだろう。
ということで2人でタツから資料を受け取っていざ説明。
「まずはこれ、弾鋼。最初に渡した弾鋼はこっちで回収してバージョンアップしたものに変えて、ついでにもう一丁足させてもらったよ。所で聞きたいんだけど、何で回収した弾鋼に付けた覚えのないカメラが付いてるんだい?」
「いや、最初から付いてたぞ?」
〈ももくんが受け取る前にマスターに頼んで付けておいてもらってたからね! ふんすふんす! 今回のやつにも付けてもらえるように今度頼んどかないとな〜〉
世界中が探している絶賛失踪中の束さんの来校が確定した瞬間────いや、簪の手を借りて自分で付ければ大丈夫か………? あ、でもカメラの調達があるから駄目だ。結局来校が確定した瞬間である。
「………これ、どこか変わったの?」
「変わったのは主に中身だね。バージョンアップ内容はこちら」
と性能試験だろう映像をタツに見せられる。
映像では弾鋼の弾倉を横に引き出されて空間が作られると、そこに直方体を曲げたような、弧を描いている厚みのある長い物を挿し込まれた。そうして引き金を引くと今までの弾鋼ではあり得ない速度で弾丸が発射され続けていた。
「ということで、弾鋼のガワはそのままに、マガジンを挿すことによってアサルトライフルのように撃てるようにしたよ」
「おう、今度はヘヴィボウガンか?」
この大きさの銃での発射速度、どう考えても某狩りゲーの機関龍弾だ。俺が使ってたのはガンランスではなくヘヴィボウガンだった………? いや、ガンランスでもなかったんだが。
「失礼な。ヘヴィボウガンじゃないよ。弾種は変えられないし、リロード方法も違うし、爆発する杭も撃てるようになった」
「いやガンランスじゃねぇかどこ改造してんだ」
「まぁ、爆発する杭といっても弾の大きさ的にはニードルガンみたいなものだけどね。今回、弾倉を左右に引き出せるように改造したんだけど、弾鋼内部の構成を見直した影響で若干スペースに空きができたんだよね。だから仕込んじゃった」
確かに資料にも載っている。弾倉の下が空いたのか、パッと見分かりづらいが弾鋼の内側側面に追加されたような形になってるな。大きさ的にもタツの言ってた通りだが、この分じゃ射程は殆ど無いな。実質ガンランスの杭と運用が変わらなさそうだ。
「仕込んじゃった、ってそんなISの装備を玩具みたいに………」
「簪。今の『仕込んじゃった』は『面白そうだからやっちゃった』っていう意味じゃない。正しく言うなら多分『技術者が勝手に仕込んじゃった』だ。というか」
「………うん。お察しの通りジェシカ発案だよ。『空きができた? なら仕込み武器デスネ! 弾が切れたと思って接近してきた所にズドン! 隠し武器はロマンデース!』っていう言葉に技術者が乗っちゃって………」
「ま た あ い つ か」
あいつのせいで俺の装備はまともではなくなってる気がする。まぁ、そのおかげで今まで対応できてたのもあるんだが、まともな装備が欲しい。
「さて、気を取り直して………次は爪鉄か。まず、肩に副腕を生やしながら手足に装備できるようにパーツと予備を追加したよ」
「これって、装備そのものじゃなくてそれを構成するパーツを追加してたの?」
「そうだよ更識さん。モモの使い方によっては壊れやすいからね。この前の戦闘データみたく副腕で押さえながら龍撃砲! なんてやったらさすがに関節部分が壊れるからさ。パーツごとに用意しておいて壊れた部分だけを交換する、いざという時の予備だよ」
(なるほど。パーツを用意しておいて必要に応じて組み上げる………良い案かも)
「それにしてはパーツが多くないか? 予備抜いても腕がもう1本分くらいあるが………というか使わないパーツもないかこれ?」
「それは爪鉄の新機構に使うんだよ。用途は押さえ用かな。新機構の映像はこれ」
とタツに見せられた映像で新機構を確認する。いや、確認したんだが………
「………いやタツ、お前これどう使えってんだ? ISのスラスター出力の強さ知ってるか? まともに使えるとでも思ってんの?」
「もちろん知ってるよ。それを踏まえてのこれだ」
「………簪、どう思う?」
「う〜ん………………資料の耐久性を見る限りだと、ワンアクションは保つ、かな? 2回目は絶対無理」
「ほらイケるって」
「ほらイケるって、じゃないが? 使い捨てじゃねぇか。しかもこれで押さえて龍撃砲やるとしたら片手撃ちになるんだが? というか弾鋼と爪鉄の合体はどうした?」
「………はぁ。さっきから質問ばっかだね、モモ」
「お前のせいだよ!」
「お兄さん、まぁまぁ………」
今まで比較的まともだった爪鉄にまで色物機能付けやがって。お前の会社が色物装備しか作らないと認識されても知らないぞ。
「早速答えていくけど、さっきの質問は同時に解決するんだよ。副腕時の爪鉄の手の部分を別パーツに付け替えることによって、弾鋼との合体が可能になった。要は肩に砲台が生やせるんだ。勿論、各部の調整もしてるから弾鋼を押さえる手はいらないよ?」
と副腕の先に弾鋼が合体している映像が流された。元々の腕の可動域に合わせて弾鋼も動かせるようで、正面を向いたままでも後方に向けて撃てたりもするようだ。
「ん〜………とりあえず爪鉄の新機構で相手を押さえたまま肩の弾鋼で龍撃砲を撃てる、ってことでいいのか?」
「そういうこと。それに、相手を押さえながら龍撃砲なんてそう何回もすることじゃないし、するもんじゃない。使い捨てぐらいにしておかないと君が何回やるか分かったもんじゃないからね」
「………………」
「沈黙は肯定と受け取るよ? あ、そうそう。やろうと思えば自分の腕で弾鋼を構えたまま副腕でも弾鋼を構えることもできるよ? やったねモモ。火力が増えるよ」
「おいやめろ。そのネタはやめるんだ」
「あ、2人とも知ってるんだそのネタ」
だが、火力が増えるというのは意外といいな。あと、やろうと思えば2丁拳銃みたいに振り回せるかもしれない。交互に撃てれば立ち回りも変えられるし。
「さて、とうとう新装備の説明だね。名称は
「おう、名称はネタ切れか? 今まで金属系の名前だったのに今回は道具じゃねぇか」
「ごめんねモモ。最後に『がね』って付く単語だとこれくらいしか思い浮かばなかったんだ………」
「いや普通に名前をつけろよ」
「たがね………?」
「簪、簡単に説明するとだな、槌と一緒に使って金属を加工する道具を鏨というんだよ。まぁ、道具の意味はまったく装備に関係無いんだろうがな………」
改めて新装備という盾鉄を見る。見た目は丸みを持たせた鏃のような見た目で盾と言ったらこの形、というようないたって普通の盾だな。大きさは約2m………俺の身長より少し大きいのか。ISを展開してると全体を覆えるからちょうど良い大きさになりそうだ。
セットの剣の方はというと、これまた普通の見た目だ。強いて言うなら柄がやけに長いというくらいか? しかし、この剣の形はどこかで見たような………………?
「それでタツ。これにはどんなトンチキ機能が付いてんだ?」
「トンチキ言わないでくれるかい? せめてトンデモと言ってくれ」
「さして変わらんだろうが。それに弾鋼と爪鉄という前科がある奴が何を言う。それで? 何が付いてるんだ? パイルバンカーか? 砲撃機能か? それとも盾の一部分を引っ張ったらモーニングスターにでも変形するのか?」
「お兄さんそれなんて才牙? さすがにそんな機能は付いてないでしょ」
「だよな。流石にモーニングスターに変形はしないよなぁ」
「さすがモモ。ちょっとおしい」
「「えっ、おしいの?」」
「これも映像の用意はあるけど実際にやってみた方がいいかもね。という訳でモモ、ISに乗ってくれるかい?」
思わず簪と顔を見合わせていたが、ハリーハリーとタツが急かすので持っていた資料はタツに渡し、ISを展開して更に盾鉄も展開した。とりあえず、右手に盾を左手に剣を装備している。………攻守は逆転しないぞ。
実際に持ったから分かったが、やはり盾の大きさはちょうど良かった。ISを展開している時は足に下駄を履いたように高さが上がるからな。重さ自体は弾鋼より少し軽い程度か。それでも重量はあるみたいだが。
「それで、どうしろと?」
「うん。盾の上部に隙間があると思うんだけど、そこはちょうど剣が入るようになってるんだ。ちょっと入れてみてもらえるかい?」
言われて見てみると確かに隙間が空いていた。盾を持っている右手を少し下げ、そこに剣を挿し込んでみると、刃の部分が綺麗に入って盾から柄と刃が少し飛び出すような形になっている。もしこの隙間が鞘だったらサイズが合ってないな。
「まさか『盾に剣をしまえる』とかISに要らない機能じゃねぇよな?」
「違うよ。それで、そこからさらに剣が入るんだけどちょっと力を込めてみてくれるかい?」
試しに軽く押し込んでみるが位置は変わらない。更に力を込めるとガチッという音と共に剣の刃の部分が完全に盾に収まった。それと同時に盾が縦に3分割されて両端の部分が外側に展開された。………おっと?
「さぁモモ! 剣の柄を捻りながら強く引っ張るんだ!」
ガシャコンッ!
言われるがままに柄を捻りながら引っ張ると、剣を持つ左手に盾を持っていかれるような感覚に襲われた。なので右手を盾から離し、左手で剣を掲げるように構えた。
「さぁ、それが盾鉄の変形機構。剣と盾を合体変形させることで両手斧になるんだ」
「いやこれチャアクじゃねぇか!」
某狩りゲーに出て来る装備の1つ、盾斧。剣を思い切り差し込んで盾が変形した時点でもしやとは思ったが、実際にこうなるとは思わないだろ普通。弾鋼より再現率高いぞこれ。
「お前は俺をどうしたいんだ? ハンターにでも就職させる気か? 一狩り行かせるのか?」
「ふっ、男はみんな女を狙うハンターだよ、モモ」
「おう、なに『上手いこと言った』みたいな顔してんだ。その女に今引かれてるんだが?」
「何をバカな。そんなことで引かれるはずが………ん? 更識さん、何でモモの後ろに隠れているんだい?」
「………………お気になさらず」
簪、引いているのは分かったから俺の後ろに隠れないでくれるか。あとあまり密着しないでもらえると助かる。何とは言わんが当たってる。
「………モモ。実は盾鉄に関しても謝らなきゃいけないことがあるんだ」
「トンデモ機能付けたことに関してか?」
「そこじゃないよ。実は………………盾鉄にビン機能は再現できていないんだ」
「おう、出来てたらドン引きしてるわ」
神妙な顔をして何を言い出すのかと思ったらこれだ。ちょっと心配して損した。
「けど、属性解放斬りモドキは出来るようになってるはずなんだ」
「矛盾してないか? というか『はず』?」
「うん。前からエネルギーの収束がうまくいかない、っていうのは知ってたと思うけど、つい最近進展してね。エネルギーの収束さえ出来れば斧状態の時に刃の部分にエネルギー状の刃を付けられるはずなんだ。チェンソーみたいにね」
「なんだその途中式は書けないけど答えは分かった数学みたいな進歩は」
それともあれか? ガソリンないのにエンジンを作り上げた、の方が近いか? にしても動作試験とかどうしたんだ。してないとか言わないよな。
「それで、モモにお願いがあるんだけど………」
「このタイミングでとか面倒な気しかしない」
「そう言わずに。もしかしたら気付いたかもしれないけど、盾鉄の剣って一夏くんの雪片弐型と寸分違わない造形をしてるんだ。あ、柄は勿論違うけどね?」
「どっかで見たことあると思ったらそれか………というか、設計図無しによく作り上げたな」
「初めて弾鋼を納品した時の、うさみみに人参のロゴを覚えてるかい? 盾鉄を製作中にあのロゴの荷物が届いて中身がそれだったんだよ。たぶんサポートAIを君に用意してくれた人だと思うんだけど………」
〈マスターだね、間違いないよ。なんなら私の夕飯をかけてもいい〉
〈おう、お前は飯を食べる必要ないだろAIなんだから〉
〈その発言はAI差別だぞ! まぁ、必要ないんだけど〉
「まぁ、それはさておき。それを元にして盾鉄の剣を作り上げた、ってわけだ。もちろん、変形機能もね。なんなら斧状態の内部の剣は変形状態になってる」
「………読めたぞ。盾鉄の剣の代わりに雪片突っ込んでデータ取れ、って言うんだろ」
「さすがモモ! 正確には突っ込んだ状態で零落白夜を起動………ん? どうしたんだいモモ、明らかに、面倒くさそうな顔をして」
顔に出てたか。いやまぁ仕方無いよなぁ。普段だったら適当に一夏に声をかけてやってただろうが、今はタイミングが悪過ぎる。
「あー………今お兄さんと織斑くんはちょっと喧嘩中で………私も本音から軽く聞いただけだから詳しくは分からないんですけど………」
「喧嘩? 珍しい………というか初めてかい? 君達も喧嘩することがあるんだねぇ」
「うるせぇ」
「ま、あまり聞かないでおくけどさ。頭の片隅くらいには置いておいてくれよ?」
「………………………善処する」
「それ、いいえって言ってるような気がモガモガ」
簪、シーッ。
昨日の一件を受けて、姉貴がラウラに下した沙汰は数日間の寮内での謹慎と特別課題だった。食堂は校舎にあるから飯に関してはその都度姉貴が運ぶらしいが、今回はラウラに用があるからと俺が運んでいる。
コンコンッ
「お〜い、ラウラ。夕飯持って来たぞ」
『………ハルか!? 鍵は開いているから、すまんが入ってきてくれ』
「あいよ」
ラウラの許可が下りたので、夕飯を載せたトレイを片手に扉を開ける。部屋の中では姉貴に課されたらしき課題冊子をやっているラウラが机に向かっていた。課題は授業の延長のような内容のようだな。こういう時によくある反省文が課されていないのはおそらく、本人に反省の余地がないからだろうな。
ラウラを聴取した姉貴に話を聞いたが、本人は微塵も悪いとは思っていない。あ、いや、姉貴と俺が出張ってくる羽目になった事については悪いと思っているらしい。つまりはそれだけだ。
鈴とセシリアに関しても、他生徒がいるアリーナでの戦闘も、ラウラからしてみれば必要経費らしい。目的の為ならば手段は選ばない、とまでは行かないみたいだが、そういう考えを持っているとラウラも軍人なのかと思う。俺からしてみれば過去はどうあれただの友人だからな。
………だが、軍人それを抜きにしても考えが殺伐とし過ぎている気がする。鈴とセシリアを叩きのめして『私は強くなっただろう』などと俺がまだドイツにいた頃はそんな事を言わなかったはずだ。俺が鍛えた理由を聞いて、賛同して、自分もそれを目指すと言っていたラウラに何があったのか………
キリがいいらしき所までペンを動かし終えたラウラがペンを置き俺を見上げた。
「朝も昼も教官だったから夜も教官が来ると思っていたが、ハルが来てくれるとは!」
「お前とは昨日アリーナで会ったっきりだったからな。用もあったし俺が運んできた。どこに置けばいい?」
「ちょっと待てすぐに机を空ける────」
ブンッ ドン! ドサッ…………
そう言ったラウラは腕を振り抜き、机の上に置いてあった課題や筆記用具をすべて勢いよく壁まで飛ばした。
「────さ、置いてくれ」
「いや片付け方が雑過ぎんだろ」
「そんなもの、ハルを待たせてしまう前では瑣末な事だ」
「瑣末じゃねぇよ大事だろうが課題はよ。何で課せられたか忘れたのかお前は」
「………忘れた訳ではない。だが、教官が言いたい事は理解したつもりだ」
「ならいいが、昨日みたいな事はもう起こすんじゃねぇぞ」
「うむ、分かっている。次は周囲を巻き込まないよう織斑一夏だけを襲うとする」
「そうじゃねぇんだよなぁ………まぁいいや。冷める前に夕飯食っちまえ」
「そうしよう。む、メニューはドリアか」
汁物を運ぶのは大変だし運ぶ間に冷めるかも、とドリアをチョイスしたが特に嫌な顔をされなくてよかった。飲み物は悪いがペットボトルで勘弁してくれ。
ラウラがドリアを食べている中、暇なので部屋の中を見回す。
壁際に落ちている諸々はいいとして、部屋はやけに片付いている。ベッドも片方だけシーツが寄っていたりと使用感があるのに、もう片方はそういった感じもない。部屋全体の生活感がどこか薄い気がする。
「………そういや、ルームメートはどうした? ここ2人部屋だろ? 部活とかから戻ってきてないのか?」
「あぁ、それなら私が来て数日で『友人達の部屋に行くから』と言って荷物をまとめて出て行ったぞ。今は私の1人部屋だ」
「おいおい………何かしたわけじゃないだろうな」
「私は何もしていないぞ」
「ホントかぁ?」
「本当だとも。喧嘩も、意見の食い違いも、コミュニケーションも何もしなかったからな」
「おう、それはな、『してる』って言うんだよ」
そりゃ、いきなりやって来た奴がこっちと会話しないでいたら居心地悪くなるわ。むしろ無視されてるのかとも思うわ。
その後も他愛ない雑談をしながら過ごし、ラウラが食べ終えて一息ついた頃。
「さて、飯も終わった所で本題に入るとしようか」
「本題?」
「おう。ラウラ、お前そんなに一夏が許せないか?」
「ッ、当たり前だ!」
ラウラは拳を強く机に叩きつけ、その振動で食べ終わった食器がガチャガチャと音を立てる。
「この際だ。ここだけの話にしておくから、考えてる事全部吐き出せ。それが昨日の一件にも繋がってるんだろ?」
「………なら言わせてもらおう。ハルはあの時、3年前のあの日、『気にしなくていい』などと言っていたが私からしてみれば気にしない方がおかしい! 織斑一夏が逃げたせいで! 弱かったせいで! お前は夢を諦めるハメになったのだぞハル! それを責めて何が悪い!」
「それは結果論だろ。それに、一夏に逃げろと言ったのは俺だぞ? あの時はそうなるとは思わなかった」
「それでもだ! あの時、織斑一夏にハル並の強さがあれば、逃げずに共に立ち向かえるほどの強さがあったなら! ハル1人で相手をすることも無かった! ハルが死にかけることもなかった………! あいつの弱さは、罪だ!」
「それなら、俺の弱さも罪だろう。弟を優先して自分の身すら守れなかった。トラウマから立ち直ることすら出来なかった。………自分の夢を諦めるしか、なかった。一夏と同じだ」
「違う! ハルは弱くない! 織斑一夏とは違う!!」
「あぁ、そうだ。俺は一夏とは違う。俺は一夏じゃないし、逆に一夏も俺じゃない。だから、あいつに俺の強さを求めるのは間違ってる」
「っ! それは………………」
今まで溜め込んでいたものを吐き出し続けていたラウラだが、俺と一夏は違うと指摘された後その勢いが止まった。視線が色々な方向に彷徨っているあたり、自分の口からも出した言葉とあってどう続ければいいのか分からないみたいだな。
まぁ、ラウラからしてみれば織斑千冬、織斑百春と俺達がドイツ軍で世話になっていた時に生身での戦闘が強いと知ったから、その下である織斑一夏も同等もしくは近い強さを持っていると思ってしまったんだろう。
そして、それだけの強さがあれば俺を助けられただろうと憤り、その後にそれ程の強さが無いと知ってその弱さに憤った。こんなところか。
「………………聞かせてくれ、ハル。織斑一夏の強さはどの程度なのだ?」
冷静さを取り戻したのか、ラウラがそんな事を聞いてきた。
「剣については専門外だが、腕だけならこのまま行けば姉貴に迫れるんじゃないか? だがそれだけだ。身体能力は一般人に毛が生えた程度、
「………………そう、か。今でそれなら3年前となればそれよりももっと、か。確かにそれならば逃がすしかないか。もしそれで残って一緒にいたならば、足手まといにしかならない。そうなっていたら本当にハルは、ハハハル、ハル、ハルルハルははははは────」
「ッ、ラウラ!」
ラウラが自身を抱き締めるように腕を回して震え始めた。歯も震えのせいでカチカチカチカチと不規則な音を立てている。
急いでラウラの側に寄ると、ラウラの耳が俺の胸元に当たるように抱き締める。そして泣いている子供をあやすように背中をポン、ポンとゆっくり叩いて落ち着かせていく。
「大丈夫、大丈夫だラウラ。俺の心臓は動いてるから」
「あ、あぁ、そうだな………動いてる。ちゃんと、動いてる」
ラウラはそう言いながらも、逃さないように、縋り付くように俺の服を掴んだまま離そうとしなかった。中腰で抱き締めた体勢のままはさすがに少し辛いものがある。ラウラを抱え上げて空いた椅子に座り、俺の膝上にラウラを座らせた。
(………お前もまだトラウマが残っていたのか)
ラウラにとって俺は、最初の友人であり数少ない理解者だったのだ、と前に本人から聞いている。例の一件があった当時、ラウラが孤立していた事情も相まってドイツの路地裏で倒れていた俺が心肺停止状態だった事から、ラウラは俺を失いかけた事がトラウマになっている。具体的に言えば『心臓が動いていない』事がトラウマだ。………あれからそこそこ経っているが、ラウラのトラウマはまだ消えそうにないらしいな。
この分だと、学園に来て初めて会った時も、ベッドに潜り込んで来た時も、俺の胸元に飛び込んで来るのは本人の『もし心臓が動いていなかったら』という不安からの行動だろう。
〈いや、普通に身体動いてるし反応してるし生きてるじゃん。足もあるんだし幽霊じゃないんだよ?〉
〈アリスの言うことは最もなんだがな………俺も何度かそう言ったんだが、結局聞きやしなかった〉
現にモンドグロッソ後のドイツでの生活ではしょっちゅう俺にくっついていた。歩く時は俺の手首で脈を確認しながら歩き、たまに夜に俺の部屋に忍び込んでは俺の胸元に頭を置いて寝る。そんな生活が続いていたもんだから、俺が先にドイツから帰る時にラウラと一悶着あったのはある意味良い思い出である。
「………………落ち着いたか?」
「いや、まだだ。あと十時間ほど」
「おう、それだけ軽口叩けるなら落ち着いたな」
その体勢のままどれだけ経ったのか。それは分からないが声をかけたら暗に『このまま朝まで』とか抜かしてきたからもう落ち着いたな?
じゃあ座ってた椅子に戻るかとラウラを引き剥がし………引き剥が………引き………いやどんだけしがみついてんだ!? 痛みが無い程度に力を入れても俺とラウラの間に手が入りそうな隙間すら空かない。………仕方ない。話が終わるまでこのままでいるか。まだ本題に入ってすらいないからな。
「ラウラ」
「ハルの言おうとしていることは分かっている。だが………………それでも、私は織斑一夏を許せない。もう八つ当たりのようなものだろうが、それでも」
こうなったらもう、ラウラと一夏を気の済むまで戦わせるしかないか。そうしないと、またラウラが溜め込んで爆発して昨日のような事が起きかねない。
だが、それはちょうどいいな。
「………それで、これが本題だったのか?」
「いや? 本題はここから。本題を話す前にラウラが抱えているものを知っておきたかったからな」
抱えていたものを知る事ができ、それが元になっていた怒りを多少発散してしまったがそれでも残る一夏への戦意。偶然にも今ここで怒りを発散した事で、試合の時に怒りで暴走する事はほぼ無くなっただろう。あまりに一夏へ怒りを抱いているようなら話を終えていたが、これなら大丈夫だ。
「ラウラ、今度タッグマッチトーナメントあるよな?」
「? あぁ、あるな。それが?」
「俺とタッグを組むつもりはないか?」
「………………なに?」
「ちょっと諸事情あって一夏と喧嘩中でな。トーナメントで決着つけようか、ってなってるんだが一夏のタッグはシャルル・デュノア。生半可なパートナーじゃ勝つのは難しい」
「………なるほど。そこで私か」
「おう。個人の強さも必要だが、タッグマッチはいかにパートナーと息を合わせられるかだ。お前なら付き合いが長いから息も合わせやすいし強さも申し分ない。タッグの申請をまだしていないなら、組まないか?」
「いいだろう。私も元々ハルと組みたいところではあった。それに余計なものが付いているが、織斑一夏と戦えるなら良い機会だ。だが、1つ条件がある」
「条件? お前がそんな事を言うのは珍しいな。なんだ?」
「ハル、今日はここで寝ろ」
「………チョット何ヲ言ッテルカ分カラナイ」
「む? 分かりづらかったか? 今晩は私の抱き枕になれと言っているのだ。この部屋で、私のベッドで」
聞き間違いであって欲しかったがそんな事はなかった。しかもしっかりと指定されて認識の違いによる逃げ場を塞がれた。
いいや、まだ修正が効くかもしれないと淡い期待を抱きながら口を開く。
「あー、ラウラ? 何でそんな事を?」
「何でも何も、ハルの部屋に初めて侵入してから一度も一緒に寝れていないからだ。ドアにはチェーンが付けられ鍵も変えられ、窓も二重ロックとなり天井裏や通風口もハルの部屋へ続く道だけを塞がれている始末………おのれ生徒会長そこまでして私をハルと寝させない気か、と思っていたからな。またとないチャンスだ」
「何それ知らない」
ドアチェーンは俺が付けたからいいとして、鍵? いや知らないんだが? 持ってる鍵を新しくした覚えもないぞ? 窓の鍵についてはまぁ確かに言われてみれば増えてた気がするな。というか天井裏とか通風口が通れないって通ろうとしたのか? しかも塞がれてるって通られる事を予想してたのか?
楯無、お前俺が知らない間に何してんの? 俺の部屋の防犯はどうなってんの?
そしてラウラ、それらを知ってるって事は全部試したの? どれだけ侵入しようとしてんの?
「………………それならラウラの部屋じゃなくても俺の部屋に来れば」
「そっちに行けばまた生徒会長が騒ぐだろう。最悪追い出されかねん。私が行けないのならハルがこちらに来るしかあるまい」
どうするハル? とラウラが俺の顔を覗き込むように見上げながら問い掛けてくる。
これはもう修正が効かねぇな………俺に残された選択肢はこの話を無かった事にして別のパートナーを探すか、この条件を飲んでラウラと組むか2つに1つ。
「………………………楯無には事情を説明するからな」
結局の所、俺が折れるしかない。翌朝については窓から外に出ていつものように過ごしてる体をすればいけるはず。なんなら制服もこっちに持って来れば………明日楯無に会った時がとてつもなく面倒だが背に腹は代えられない。
「よし! そうと決まれば就寝準備だな! 部屋で支度を済ませてこいハル。一緒にシャワーを浴びるぞ」
「ブッ!? いきなり何を言うんだお前は!?」
「何を言う。ドイツにいた頃は一緒に浴びることもあっただろう」
「あの時と状況が違うだろうが! あれは浴室内でぶっ倒れたら困るからってんで医者に言われて手伝ってたのを忘れたか!?」
「忘れてはいないが最初の数回だけだったし、その後は倒れてもすぐ対応出来るように扉の前にいただけだからな。一緒に仲の良い友人同士は背中の流し合いをするとクラリッサから聞いて、ぜひやろうと」
「おのれクラリッサまたしても………!」
「それに、ハルの頼みを受けるんだ。これくらい許容範囲ではないか?」
「ぐぬぅ………………!」
この後、シャワーを浴びてラウラのベッドで2人仲良く寝た訳だが、翌朝楯無の機嫌がなかなか治らず苦労する羽目になったのは余談だ。
………シャワーはどうしたのか? 察しろ。断れるとでも?
〜おまけ〜
装備更新後。
「お兄さんの作業も終わったことだし、私は自分の作業に戻るね」
「今日はありがとう更識さん。とても助かったよ」
「本当にな。タツも言ってたが、何か要望があったら遠慮なく言えよ? 可能な限り応えるからな」
「あはは………お手柔らかに………」
「………おっと、忘れるところだった。タツ、お前の名刺一枚もらえるか? あとあったらヒメのも」
「名刺? 別にいいけど………はいこれとこれ」
「サンキュ。ほい、簪」
「え、私?」
「『もう無理1人で作れない』ってなったらタツに連絡すれば龍宮グループが喜んで開発を手伝うだろうし、『他の人の意見も聞きたい』ってなったらヒメに連絡しろ。俺の名前を出せば話くらいは聞いてくれる筈だ」
「? モモ、どういうことだい?」
「倉持技研が一夏のIS開発したせいで簪のが頓挫したから、自分で引き取って作ってんだよこいつは。まぁ、こうなったのは倉持技研のせいだが、いざという時の窓口くらい紹介してもいいだろ」
「うちとしては二つ返事で受けさせてもらうけど………もしかして今日彼女に頼んだのはオフじゃない仕事上での顔合わせもあったのかい?」
「そういうこと。選択肢はあるに越したことはないからな」
「今のところ選ぶ予定はないけど………ありがとう、お兄さん。なら、さっきの──」
「だからといって要望を言わなくて良くなった訳じゃないからな?」
「………やっぱり?」
〜おまけ2〜
翌日生徒会室にて。
ムスーッ
「あー、楯無。何度も説明したが、そういう事情であってな、別に副会長が率先して不純異性交友に走ったとかじゃない。だからそう頬を膨らませられても」
「ムッスーッ!」
「いや自分で言うn「はい石畳追加ー!」いってぇッ!」
「いや〜、まさかはるはるがおしおきされる光景を見る日が来るとは………」
「そうね本音。ただ、あれだけ抱えてもまったく辛そうに見えないあたり百春さんらしいというかなんというか………お嬢様、その辺にしてさしあげては? まだまだ山となっている書類を片付けないといけませんし」
「………そうだけど。そうだけど!」
「そうだよ〜。いくら昨日いつも起きててくれてるはるはるのために早く帰ったのに別の部屋で寝るなんて言われてふてくされたからって、おしおきという名のやつあたりなんてそろそろやめてあげようよ〜」
「あっちょっと本音ちゃんそれは」
「………………楯無?」
「いや、いやいやいや違うのよ百春くん! 確かにサプライズ気味に早く帰ったのにいなくてちょっと待ったらラウラちゃんの所で寝るなんて言われて不貞腐れたのは確かだけどやつあたりなんてそんな」
「楯無、代われ」
「待って待って待って! やつあたりのつもりなんて無かったのよ! ただ『わざわざラウラちゃんの所に泊まりに行くなんて百春くんはもしかしてロリコン………?』とか『いつも私が受けてるおしおきを百春くんにも与えたいな〜』とか思ったくらいで」
「代 わ れ」
「あっはい」
TOPICS:盾鉄
雪片弐型と同型の剣と大きな盾のセット装備。盾に剣を差し込み変形させる事によって両手斧モードへと変形する。要はチャアク。ビン機能はないが何故か属性解放斬りモドキが搭載されている模様。見た目イメージはMHWの調査団盾斧。
というわけで第16話でした。
そろそろ次の戦闘があるということで百春の装備更新をしました。
弾鋼と爪鉄のアップグレードに加えて盾鉄の追加。ディアブロ・リバイブの装備更新はこれが最後ですかね。予定が変わらなければ。
新装備としてチャアクを追加しましたが、他にも候補武器がありました。
GEシリーズのブーストハンマーが脳裏をよぎりましたが、IS自体にブースターというかスラスターが付いているので特徴が要らなくなりボツ。
DMC5のキャバリエーレは良いんじゃないかと思いましたがISでバイクに乗らないのでボツ。ただDMC要素は何か追加したかったので爪鉄の新機構として追加しました。登場をお楽しみに。
ラウラとの会話については相変わらず伏せられている百春の過去よりうんぬんかんぬん。百春の過去を書く時にばらまいてるもの全部回収できるんやろか………未来の私にぶん投げます。
次回からの戦闘回は久しぶりに第三者視点で書いてみようかと思っていますので、今回より投稿が遅くなるかもしれません。
ではでは、次回も気長にお待ちください。