織斑一夏の兄が行く   作:ふくろう639

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色んな作品を読んで書いてみたくなったので初投稿です。

更新はかなりゆっくりです。

コメディ多めで書きたいなぁ。


本編
第1話 始まる学園生活


 インフィニット・ストラトス。通称IS。

 

 篠ノ之束が開発した宇宙空間での活動を想定したマルチフォーム・スーツだが、日本に向けて飛来した数えきれない程のミサイルをISが撃ち落とした「白騎士事件」の後、本来の目的とは異なる軍事兵器として世界に広まった。

 

 ISは何故か女性にしか扱えないため、世間の風潮も変わっていき、女尊男卑がISと同じように広まっていった。

 

 

 

 ………とまぁ、何年か前にネットを漁ったら出てきた情報はこんなところだったが、今重要なのは1点のみ。ISは女性にしか扱えない、という点だ。

 

 そう、ISは女性にしか扱えないものだ。そのはずだったのだが───

 

 

「あ、兄貴。周囲の目線が痛いんだけど……」

「おう、俺に言うんじゃねぇよ一夏。慣れろ」

「そんな無茶な……」

 

 

 小声で話したあとに項垂れる弟を横目に、俺は何となく宙を仰ぐ。

 

(ここに来るまでに散々飛んでくる目線にさらされてたもんだが、好奇の目線に変わるだけで居心地は悪くなるもんだなぁ)

 

 隣に座る弟・織斑一夏とその兄であるこの俺・織斑百春は、実質女子高だったISについて勉強する学び舎・IS学園の1年1組の中で、周囲からの好奇の目線を受けながらホームルームの開始を待っていた。

 

 ……どうしてこうなった。

 

 

────────────────────

 

 

 あれは確か、1月だったか2月だったか………冬場だったのは間違いない。一夏の受験日で、早く起きると言っていたのにいつもより少し遅い時間に起きてコートを着ずに抱えて走っていったからな。………あの時に俺が起こしていたら変わっていたのか? 結局やらかしていた気が凄いするが。

 

 その連絡が来たのは放課後。といっても、昼過ぎだ。明日にあるうちの高校入試に向けて準備のため、午後は丸々休校となった。部活なんかはやってるみたいだが、特にない奴は下校だ。それで、荷物をまとめて友人のタツこと龍宮と駄弁りながら廊下を歩いていた時だ。

 

「───で、モモは今日は帰るのかい?」

 

「おう。つかモモで呼ぶときは発音は桃じゃねぇ腿だっていってるだろうがタツ」

 

「分かってはいるんだけど、このやり取りを1日1回はやらないとどうも、ね」

 

「捨てちまえそんなノルマ」

 

「律儀に5年もこんなやり取りを続けてくれるキミにそんなこと言われてもね。何なら別の呼び方でも試してみる? 例えばピ───」

 

「『ピーチ』とか言ってみろ。社会的に抹殺してやる」

 

「…………何をする気だい?」

 

「何もしねぇぞ? 具体的にはいつもの俺のフォローを一切しないだけだ」

 

「それだけはやめてくださいしんでしまいます」

 

「なら、分かるな?」

 

「やっぱり、長年使ってきた呼び名だからね。変えるわけないじゃないか、モモ」

 

「だから発音が違うと言ってるだろうが。つーかイチャつくのを控える考えは無いのか?」

 

「無い。彼女達が可愛いのが悪い」

 

「おう、即答するんじゃねぇよ」

 

 眼鏡を中指でクイッ、と押し上げているタツの脇腹を鞄を担いでいない右腕の肘で軽く小突く。はっはっは、じゃねぇよ。

 

「で、話を戻すけど何の用事があるんだい?」

 

「ああ、俺に中3の弟がいるのは知ってるだろ?」 

 

「確か………一夏くん、だっけ?」

 

「ああ。で、今日は一夏の第一志望の藍越学園の受験日でな。合格の前祝いに焼肉に連れていく約束してんだ」

 

「随分気が早いね。落ちている可能性は考えないのかい?」

 

「やる前から落ちる可能性を考える訳ねぇだろ。それに過去問は合格ライン超えてるし、俺が使ってたノートも渡してある。なら問題無いだろうよ」

 

「モモのノートか。あれは要点押さえてるし、普段からお世話になっている身からすればありがたいことこの上ないね」

 

「タツが家業で忙しいのは分かるが、その分のしわ寄せが俺に来るってのはどういうこった?」

 

「え? 今のうちから僕のフォローに慣れてもらえば、卒業後にうちに来ても即戦力じゃないか」

 

「おう、卒業後にもフォローさせる気満々か。まぁ、お前のとこはデカいし、進路としては有りだけどよ。今日のとこはとりあえずこれで帰───っと、噂をすれば」

 

 胸ポケットに入れていた携帯が振動する。取り出して確認してみれば、一夏からの電話だった。学校が終わったらすぐに帰ると伝えていたはずだが……

 

「おう、一夏。どうした、何かあっ───」

 

『助けてくれ兄貴!』

 

 電話に出た瞬間に、食い気味に一夏の大きな叫びが耳を貫く。思わず遠ざけた右手が隣のタツにあたりかけるが、まぁタツだからいいか。一夏は声からしてかなり切羽詰まっているらしい。

 

「何があった。マスゴミか? カツアゲか? それとも───」

 

『マスコミとIS企業の人! 千冬姉にも連絡してあるんだけどまだこっち来なくて、政府の人がちょっと離れた隙に控室に押し寄せてきてもうどうしていいか分かんないんだよ!』

 

 前にあったことを並べる最中に一夏からの回答が返ってくる。うちに押しかけてきたマスゴミとか、買い物中に俺とちょっと離れた隙に一夏が不良にカツアゲされてたとか、他にもあったんだが1番最初に挙げたマスゴミがヒットしたようですぐに帰ってきた。

 

 そうかそうか、マスゴミとIS企業か。姉貴……一夏のいう千冬姉こと織斑千冬がISの世界大会であるモンドグロッソに出てた時ぶりだろうから何年ぶりだ? 迷惑を考えず押しかけてくるバカ共や、俺や一夏への金銭的なサポートを餌に契約を取ろうとするバカ共とか例を挙げればキリがない。まともな人はアポを取ってから訪ねてきて、マスコミは記事にする際にもこっちに確認を取ってから世に送りだしてくれるし、企業の人も穏便な交渉をしてくれるのにな。ちなみにバカ共は姉貴に断られた後どこからかリークされた情報によって失脚したとかなんとか。どこのウサギさんの仕業だろうなー。

 

 しっかし、政府の人が離れた隙に押し寄せてくるあたり、マスゴミはまだまだいるみたいだな。政府が出張ってきてるんだから、報道も何もできる訳が───ん?

 

「ちょっと待て一夏。なんで政府の人が出てくる? 姉貴がモンドグロッソで優勝した時でも来なかっただろ」

 

『え!? いや、それは、その………』

 

「……たぶんこれだよモモ。現在のトップニュースだ」

 

 一夏から煮え切らない返答が来た後に隣のタツから携帯の画面を見せられた。検索サイトのトップページにある最新ニュース一覧には似たようなタイトルが並んでいた。

 

『世界初! IS男性操縦者現る!』

『世界初の男性操縦者はあの織斑千冬の弟!?』

『《生中継》IS男性操縦者へ突撃インタビュー!』

 

 

「…………おう、一夏」

 

『な、なんだ兄貴……?』

 

「───1から10までしっかりはっきりきっちり説明しやがれ!」

 

 滅多に大声を出さない俺ではあるが、思わず怒鳴り散らしたのは悪くないと思う。

 

 

────────────────────

 

 

 その後、タツと別れて一夏から話を聞きながら校門まで行くと姉貴がタクシーを止めて待っていたので合流。何でも一夏から電話が来た時に、俺にもマスゴミが群がる事を危惧して合流しに来たとか。こういう判断は流石だ。

 

 一夏の話をまとめると、藍越学園と間違えてIS学園の受験会場に着いてしまい、そのまま会場の中へ。それで会場にあったISに何となく触ってみたら起動してしまった、ということらしい。思わず姉貴とため息ついちまったよ。語感は似てるが、志望校の受験会場間違えるんじゃねぇよ。

 

「……………らくん」

 

 それで、あれよあれよと流されてIS学園の受験会場にある職員用の控室で一夏は待機。控室はいくつもあってバカ共は特定できてなかったらしいが、運悪く政府の人が出てくるところを見つかって、警備員が部屋の外で何とか抑えているところで俺に助けを求めたらしい。昔から何か困った時はアドバイスを求めてきてたから、今回もアドバイスが欲しかったんだろう。

 

「………りむ……ん」

 

 到着した俺と姉貴を交えて、政府の人と今後の会話をしている最中『もしかしたら兄の方も?』という流れになり、ISに触れ(させられ)たら俺も動かしてしまった。

 

 一夏は「俺だけじゃなかった!」って喜んでたが、姉貴は頭を抱えていた。そりゃそうだ。男がISを動かしたってだけでも前代未聞なのに、一人目が末の弟で次いで現れた二人目がもう一人の弟とか、この後の事を考えると胃に穴が空きかねない。……今度、胃薬とちょっとお高い酒のつまみでも差し入れよう。しばらく自由な買い物も出来なかったしな。

 

「……おり…らく…」

 

 というのも、ISを動かしてしまった後、IS学園入学までは家の中で引きこもり生活だった。厳重な警備も付いて、買い物もゴミ捨てすらもやってもらう始末。タツと協力して引き継ぎ用の資料を作ったり、もらったISの参考書をやってたりとやることには事欠かなかったが、外に出れなかったのはキツかった。一夏は手持ち無沙汰になったのか、年末以上の大掃除や凝りに凝った料理を作ってたな。

 

「織斑くん!」

 

「は、はい!」

 

(……ん?)

 

 突然一夏が返事をした所で、ようやくさっきから呼ばれていることに気付いた。俺はその声の主へと顔を向けると、教卓の所に一人の胸が大きいメガネを掛けた女性が立っていた。

 

(クラスメイトか? ……いや、良く見たら制服じゃないな。とすると……先生か? ………え? 若過ぎじゃねぇ?)

 

「あ、あああの、いきなり大きな声を出してごめんね? びっくりしたよねごめんね今みんなに自己紹介やってもらってて、『あ』から始まって次は『お』だから織斑くん……あ、織斑一夏くんの番なんだよね? だから、前に出てやってもらいたいんだけどいいかな?」

 

「わ、分かりました!」

 

 かなり早口で先生らしき人に捲し立てられた一夏がワタワタと教卓の横に立つ。こっちを向いた一夏の顔から察するに緊張してるようだが、流石に自己紹介程度でやらかさないだろ。

 

「え、えぇっと、織斑一夏です! ……………以上です」

 

ガタタッ

 

 前言撤回やらかしたぞこの弟。最前列にいるから人数は分からないが何人かコントのようにずっこけたな。ノリがいいクラスらしい。

 

スパンッ

 

「まともに自己紹介もできんのかこの愚弟は」

 

「げぇっ、呂布!」

 

「誰が三国志最強の武将だ、誰が」

 

 一夏の背後にいきなり現れたのはスーツに身を包み出席簿を携えた姉貴だった。たぶん姉貴がこのクラスの担任で、さっきの人は副担あたりだろうな。ワタワタして慣れてないみたいだったし。しっかし、普通身内がいるクラスの担当にはならないもんだが、男性操縦者っていう例外か?

 

「すまなかったな山田先生。HRを一人で任せてしまって」

 

「い、いえ! 私もこのクラスの副担任ですし! 織斑先生も職員会議お疲れ様でした」

 

「そう言ってもらえると助かる。さて諸君。このクラスの担任の織斑千冬だ。私の仕事は君達新人を1年で使い物になるIS操縦者に育て上げる事だ。私の言う事はよく聞き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らっても構わんが、私の言う事は絶対に聞け。いいな?」

 

 全体的にかなり暴君な挨拶だが、後半については正しい言い方だと思う。本来がどうであれ、兵器として広がっているISを学ぶ以上、実習なんかの事故で万が一が起こらないように注意しておくのは大切な事だ。起きてからじゃあ遅い。

 

『ほ、本物の千冬様よ!』

 

『お目にかかれた所か担任だなんて!』

 

『指導………言う事は絶対………なるほど』

 

 まぁ、頭に残ってるかは知らないが。ワーキャーワーキャー飛び交う黄色い声で頭が痛くなりそうだ。そして最後の奴、何を考え付いた。見ろ姉貴の顔を。あまりの騒ぎっぷりに、鬱陶しそうな顔してんぞ。

 

「まったく……毎年毎年私のクラスにはこういう奴しか来ないのか? それともあれか? 私にこういう奴を押し付けてるのか?」

 

 姉貴がそう呟いている裏でもまだ女子は騒ぎ続けている。罵ってほしい、でも優しくしてほしい、時には躾をしてほしい…………うちのクラスは変態の巣窟か?

 

 おっと、忘れずに一夏のフォローはしておこう。このまま行ったらタイミングを逃しそうだし、この騒ぎ様じゃあ静かになるのも時間がかかりそうだ。

 

「おう、一夏。女性に対してさっきのはまずい。三国志で行くなら貂蝉とかにするべきだ」

 

「ほう。確かにそう言われたら悪い気はしないな。流石に百春はそのあたりを分かって───」

 

「いくら姉貴が一騎当千の鬼武者で、家事が壊滅的で、女子力捨てているとはいえ女性なんだから、こういう公の場では持ち上げとかないと」

 

 ───俺にヘイトを向ける形で。こうしておけばフォロー相手の直前の行動は忘却の彼方へ追いやられる。タツのフォローで学んだというか何度もやった。前にいる姉貴と横の一夏と山田先生にかろうじて聞こえる程度の大きさで話すのも忘れない。

 

「お前が下げているだろうがこの愚弟!!」

 

ゴゴツンッ!!

 

 姉貴が持っていた出席簿をほぼ手加減なく脳天に振り下ろされ、衝撃に耐えきれずに額を机に叩きつけられる。しかも横じゃなく縦で出席簿振り下ろしたぞこの教師。俺じゃなく一夏だったら気絶してるぞこの痛みは。

 

 姉貴の大声に加えて何かがぶつかる音が響いたからか、クラスが静まり返る。こんな事をやらなくても静かになってほしいもんだがなぁ。

 

「ち、千冬姉? いくらなんでもやり過ぎなんじゃ」

 

スパンッ

 

「織斑先生、だ。学校なんだからな。それにこいつはこれも折り込み済みの行動だから自業自得だ。それと」

 

スパンッ

 

「百春。第一回のモンドグロッソの時にお前のせいで優勝するまでの間『鬼武者』の異名で呼ばれることになったのは許してないからな」

 

(((あの異名ってそうだったんだ……)))

 

「…………鬼武者は俺じゃなくてマスゴミのせいだって何度も言っただろ」

 

 俺がマスコミ嫌いになった原因の1つ、織斑家での呼び名は鬼武者事件。道案内をしてたら試合開始に間に合わず、スタジアム入口のモニターで観戦後に色々インタビューされた中で、

 

『現代の女武者ですね!』

 

 と答えたらインタビュー映像・音声を編集されて「鬼武者ですね!」と地上波で流されたという事件である。答えた後に、女の人に言う言葉じゃなかったなー、と思っていた矢先にテレビで流れて思いっきり凹んだ。一夏に慰められるくらい凹んだ。そして、泣きっ面に蜂とばかりに、その最中にキレた姉貴がやってきて説教開始。その時の精神状況と見たことのないほどキレた姉の顔。誰だって泣く。俺だって泣いた。巻き込まれた一夏も泣いた。覗き見していたウサギさんも泣いた(後日知った)。

 

「何度も聞かなくとも理解している。だが、理解はしても許しはしない。そら、机に伏してないでさっさと自己紹介を終わらせろ。次はお前の番だろう」

 

 させたのはどこの誰だよまったく、などと言ったらまた出席簿が飛んでくるから大人しく前に出る。しっかし、自己紹介ねぇ。好物・趣味・コメント、ってところを押さえておけばとりあえずいいだろ。なんで一夏はやらかしたんだか。

 

「織斑百春だ。好きな物はコーヒーで趣味はトレーニング。そこの一夏の兄で、織斑先生の弟に当たる。年は17で本来なら高3なんだが、ISについてはずぶの素人なんで1年のクラスになった。力と体力はあるから男手が必要な時は気軽に声をかけてくれ。以上、今後ともよろしくな」

 

 案の定、教室がザワザワと騒がしくなる。顔はテレビで見たことあるやつもいるみたいだが、年齢までは知らなかったようだな。

 

『弟さんとは違う織斑先生のような鋭い目付き……!』

 

『同級生なのに年上? 最高か?』

 

『男手………手伝い………お礼………閃いた!』

 

 なるほど、大体分かった。このクラスは問題児しかいねぇな? …………誰が問題児だ。そして最後の奴、通報するぞ姉貴に。

 

「兄貴はよく出来るな。俺なんか緊張して頭の中真っ白になったのに」

 

「慣れだよ慣れ。視線も人前に立つのも慣れればどうとでもなるもんだ。声は出てたから、後は内容だけだぞ一夏」

 

「自己紹介が終わったなら席に戻れ織斑兄」

 

 いきなりよそよそしく……というか、さっきの名前呼びの方が例外か。いくら身内とはいえ、学校である以上公私は分けるんだろう。姉貴に言われたので席に着く。

 

「自己紹介をしてもらっていたが、どこぞの兄弟のせいで時間を浪費してしまったのでHRはこれで終了だ。残りは個別に済ませておけ。小休憩を挟んだ後に一時間目の授業を開始する」

 

 こうして、俺のIS学園での日々が幕を開けた。

 




TOPICS:鬼武者
なかなか良い異名を考えつかなかったテレビ局が、百春へのインタビューで思いついて広めてしまった千冬の異名。優勝すればブリュンヒルデに上書きされる、と千冬は試合を進めていったが、その試合での鬼の如き迫力によってしっくりくる異名になってしまった。


本文に入れられないちょっとした説明はここで行っていくつもりです。
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