織斑一夏の兄が行く   作:ふくろう639

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1話だけじゃ物足りないのでもう一話投稿です。


2話書き上げるのに約2ヶ月………
次の投稿はいつになるやら………


第2話 騒がしい学園生活初日

 IS学園と言うだけあって、ISに関する授業のコマ数が多い。ISそのものへの理解、装備、法律エトセトラエトセトラ……と学ぶ内容が多い為か、初日から授業が始まった。

 

「………というわけで、ISにはパイロットをサポートするための様々な機能が搭載されています」

 

 一時間目の教師は山田先生。HRの時とは違ってしっかりと先生らしく授業をしている。一度集中したらしっかりするタイプなんだろうけど、こういうタイプは集中してる時に失言するんだよなぁ、俺みたいに。

 

「はい、ではここまでで何か質問はありますか?」

 

 と山田先生が聞いてくるが、自宅謹慎中にもらった参考書のお陰もあって特にない。内容が脱線したりするが授業内容は分かりやすいし、解説が載っているページも教えてくれたりと、授業としてはとても良い。母校の先生に見習って欲しいもんだ。

 

「……え、えーと、大丈夫でしょうか? 織斑くん達も大丈夫ですか?」

 

「大丈夫ですよ山田先生。とても分かりやすいですから」

 

 えっ、と隣から声がする。おう一夏。俺が敬語使ってるのがそんなにおかしいか。目上の人間には敬語くらい使うに決まってんだろ。俺をなんだと思ってるんだお前は。

 

「ありがとうございます、百春くん。では一夏くんの方はどうですか?」

 

「………分かりません」

 

「ど、どこが分からないですか?」

 

「………ほぼ全部、分からない所が分かりません!」

 

ガタタタタタタッ!

 

 一夏の自己紹介以上にクラスメイトがずっこけたな。今回は俺もさすがにずっこけた。ていうか、さっきの反応はあれだな? 俺の敬語じゃなくて、授業がとても分かりやすいって言葉に対しての反応だな?

 

「おい織斑弟。ちなみにだが、入学前に渡した参考書は目を通したか? 兄と違って机の上に出してないみたいだが」

 

 教室入口横で授業を見守っていた姉貴が動いた。俺も気になってたんだよな。参考書には用語集も付いてるから授業受ける時には重宝するんだが………

 

「ふ、古い電話帳と間違えて捨てました」

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者!」

 

スパァンッ

 

 小気味良く出席簿の音が響き渡る。確かに厚みは同じ位だが、さすがに間違えて捨てるのは………ん? 待てよ?

 

「………おう、一夏。1つ質問………というか確認なんだが」

 

「? 何だよ兄貴」

 

「参考書を捨てたのは、大掃除してた時じゃないよな?」

 

 そう聞くと、一夏の様子が一変する。血の気が引いて、冷や汗がダラダラと流れ始める。一夏は答えて無いが、もはや答えを言ったようなもんだ。

 

「? 織斑兄、大掃除とは?」

 

「あぁ。姉k……織斑先生は知らないか。俺もやっていた、という事しか知らないんだが、自宅謹慎中に一夏が年末の大掃除以上の掃除をしていてな。あれは確か謹慎が開始してから少し経った頃………参考書が届いた翌日じゃなかったか、一夏?」

 

「ハ、ハイ……………ソウデス…………」

 

 ふぅー、と思わず姉貴とため息をつく。俺は丸めたノートを、姉貴は再び出席簿を構え、

 

「「……貰って早々捨てる奴があるかこの愚弟!」」

 

スパパァアンッ!

 

「いってぇっ!!」

 

 前から出席簿、後ろからノートの挟み撃ちが一夏の頭に炸裂した。

 

「織斑弟。参考書を再発行してやるから、一週間で覚えろ」

 

「いっ……!? さ、さすがに一週間は………」

 

「私がやれと言ったらやれ。返事は、はいorYESだ。返事は?」

 

「は、はい………やります………」

 

 流石は姉貴。有無を言わさない迫力で一夏を黙らせた。中身を見てない一夏は知らないだろうが、参考書で覚える要点はそこまで多くない。覚える要点は小難しいが、図解やら例やらが多めなのでやる気次第でどうにかなる。冊子の4~5分の1程度は用語集で埋まってるしな。

 

「おう、一夏。そういえば何で捨てちまった時すぐに言わなかったんだ? いくら俺でも助けを求められないと助けないぞ?」

 

「いや……忙しそうにしてたから声を掛けづらくて」

 

「飯時とかタイミングはあっただろうに………ま、頑張るんだな」

 

 はぁー、と長いため息を一夏がつく。まぁ、こればっかりは一夏の自業自得だ。諦めてもらう他ない。

 

 あ、そうそう。

 

「ちなみに俺のフォローは無しだぞ一夏」

 

「嘘だろ!? 助けてくれよ兄貴!」

 

「言うのが遅い。覚える内容が山程、ってわけでもないし、参考書の件は俺のフォロー無しでやるんだな」

 

「(参考書の内容はかなりあったはずだが………?)織斑兄弟、そこまでにしておけ。山田先生、授業を中断してしまい申し訳ない。再開してください」

 

「あっ、はい。分かりました。では皆さん次のページを捲ってください。次は………」

 

 こうして、記念すべきIS学園最初の授業は過ぎていった。

 

 

────────────────────

 

 

 そんな一時間目が終わった後の休憩時間。

 

「相変わらずだな、一夏、百春さん」

 

「「ん?」」

 

 一夏とさっきの授業の復習をしてると女子が話しかけてきた。髪をポニーテールで結び、凛とした雰囲気の女子。写真では何度か見てたが、実際に見ると大きくなったな。どことは言わないが。

 

「おう。久しぶりだな、箒」

 

「え!? 箒!? 本当に?」

 

「ああ。お前達の幼馴染みの篠ノ之箒だ。久しぶりだな、二人とも」

 

 幼馴染みの篠ノ之箒。一夏が小4の時に箒が転校してしまうまで、家族ぐるみでの付き合いをしていた。実家は剣道場で一夏と姉貴はそこで剣道を学んでた。俺はというと剣の才が二人に比べて無かったのと、剣を振るうのが性に合わなかったから基礎体力を付ける鍛練以外は箒の姉に絡まれ……もとい、よく喋っていた。

 

「ところで百春さん。何故一目見て私だと?」

 

 ………まぁ、聞くよなそりゃ。しばらく会ってないはずなのに初見で気づくんだから。あまり言わない方が色々と良かった気がするが………

 

「………おう、とりあえずこいつを見てくれ」

 

 携帯を取り出して、読めば分かる文章が書かれたメールを開いて箒に見せる。一夏も箒の横から携帯を覗き込む。開いたメールには一年前の日付で、

 

 

From:ウサギさん

添付:汗かき箒ちゃん.jpg

本文:さっき話してた箒ちゃんがこれだよ!

   汗を流しても可愛いなんて流石私の箒ちゃんだよね!

 

 

 文章を読み終わったあたりで、二人揃ってなんとも言えないような、げんなりした表情に変わった。画像も文章の後に表示されていて、明らかに盗撮されているアングルの画像を見て、ウサギさんが普段から何をしているかを察したようだ。

 

「…………この、ウサギさん、というのは」

 

「…………文章で分かるだろ箒。名前を呼んではいけない……という訳でもないが例のあの人だ」

 

「…………兄貴、連絡取ってたのか?」

 

「…………いつも向こうから来るんだ。中学に上がって携帯買った瞬間に電話帳に登録されたのはさすがにビックリした」

 

「行方をくらませて世界各国が探してる人が一体何をしているんだ…………ちなみに、最後に連絡来たのはいつですか?」

 

「1週間前」

 

「「すっごい最近」」

 

 ウサギさんからの連絡の内容としてはIS学園に箒ちゃんも行くからよろしくね、っていうのが主であとは他愛ない雑談だった。いつも俺が部屋で暇してる時に限ってかかってくるから長電話になりがちになるのが困ったもんだが、雑談する分には楽しいから問題ない。向こうも楽しそうだしな。

 

「………オホン。さて一夏。久しぶりに会ったのだし、少し二人で話さないか?」

 

「え? 俺はいいけど兄貴は……」

 

「おう、俺は気にせず行ってこい一夏。お前の方が仲が良いんだ。積もる話でもあるんだろうよ」

 

「分かった。なら行こうぜ箒」

 

「ああ。とりあえず屋上にでも行こうか一夏」

 

「時間には気を付けろよ二人とも」

 

 直前の話の空気を切って、箒が一夏を連れて教室を出ていった。引っ越す前から一夏に抱いていた箒の恋心は変わらないようで、チラッと見えた横顔は少し嬉しそうだった。

 

 話すくらいなら廊下でも……と思っていた俺だが、二人を見送った時に箒が屋上を選んだ理由がよく分かった。

 

 開けられた教室の扉と廊下側の窓から多くの女子が教室内を見ていた。例えるなら、噂の転校生が転校してきた時の一目見ようと群がる他クラス他学年の生徒ってところか…………まさしくそれじゃねえか。女子校にやってきた男子生徒、なんてそれだけで話のネタだ。あの調子だと、チャイムが鳴るまでいるんじゃねえか?

 

 関わってこないで見てるだけの視線は無視するに限るので、暇潰しに次の授業の教科書でも見ようと顔を前に戻す。

 

「じーーーーーーーーー」

 

「うぉっ」

 

 正面に顔を向けたら、机に顎を乗せてこっちを見てる女子がいてビックリした。一夏達を見送ってる間しか視線を外してないのにいつの間に現れたんだ、とか思ったが何より自分の口でじー、って言ってるのにビックリした。俺の友人の中でも口でじー、なんて言うやつなんていない…………いや、いるな、言いそうな奴が3人ほど。

 

「初めまして~。私は布仏本音~。よろしくね~」

 

「お、おう。よろしく」

 

 視線が合ったら、立ち上がって女子が自己紹介してきた。喋り方とか顔とか雰囲気とか……のほほんとしてる、というのがしっくりくる特徴だな。

 

「でね、ちょっとおりむにーに聞きたい事があって~」

 

「おりむにー?」

 

「おりむーのおにーちゃんだからおりむにー。良い名前でしょ~?」

 

 えーと、察するに一夏が「おりむー」で俺がその兄だから「おりむにー」って事か? 名字の方であだ名が付けられたのは初めてだな。

 

「で、何が聞きたいんだ?」

 

「おりむーとおりむにーが二人とも織斑だから呼び方どうしよう、ってみんなが悩んでるから本人に聞こうかなーって思って」

 

 みんな? と周囲を見回してみると確かにこちらを伺っているのが何人かいる。声をどうかけようか、ってところで布仏が代表で来た感じか。

 

「しっかし呼び方ねぇ……別に名前でも何でも良いんじゃねぇか? 前の学校じゃそんな感じで呼ばれてたし」

 

『じゃあ、お兄さん!』

 

『それならお兄ちゃん!』

 

『ここはお兄様でしょ!』

 

「おう、一人目以外まともに呼ぶ気が無いのかお前ら」

 

 周囲で伺ってた奴らが呼び方が分かった途端に一気にこっちに来た。どんだけ話したかったんだお前ら。

 

『ちょっと待ってみんな。百春さんをお兄ちゃんと呼ぶということは、織斑くんは実質弟なのでは?』

 

『『『天才か?』』』

 

「ただの馬鹿だろ」

 

『つまり、織斑くんから姉呼びして貰えるということか………!』

 

『お姉ちゃん? 姉上? いや、織斑先生を呼んでいるような呼び方の場合も………?』

 

『これは是非とも百春さんをお兄ちゃん呼びしなければ!』

 

『『『よろしくね、お兄ちゃん!』』』

 

「いい加減にしろよ馬鹿共……!」

 

 その後、ギャーギャー騒ぎながら話した結果、俺のことは百春さんかお兄さんで呼ぶように脅し……もとい説得した。何で休憩時間に疲れるんだ………?

 

 

────────────────────

 

 

 二時間目の授業も終わり、次の休憩時間。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 やっと休めるかと思ったら、また誰かが話しかけてきた。さっきの休憩時間に飲み損ねたお茶飲んでるからちょっと待ってくれ、と伝わるように手のひらをそいつに向けて立てる。一夏にも伝わったのか、対応し始めた。

 

「ん? 何か用か?」

 

「まぁ! この私が話しかけているのです。それ相応の対応があるのではなくて?」

 

「って言ってもあんたが誰だか知らないし………兄貴知ってる?」

 

 お茶の蓋を閉めながら、話しかけてきた奴に顔を向ける。金髪ロングの外国人……アメリカじゃなさそうだ。ヨーロッパの方か?

 

「………見たことあるな。ちょっと待て思い出す」

 

「すぐに私の名前が出ないのはどうかと思いますが、私は寛大ですので待って差し上げますわ」

 

「………そりゃどーも」

 

 いちいち鼻につく喋り方するなこいつ。話しただけでちょっとイライラしてくる。こんな奴会ったことあるなら確実に覚えているはずだ。ってことは写真か記事か何か……あ。あの雑誌か。確か名前はセシリア……オル……ウォル………そう。

 

「イギリスファッションモデルのセシリア・ウォルナット」

 

「そう! イギリスのファッショ───って違いますわ! イギリス代表候補生のセシリア・オルコットです! それと誰が木の実ですか!」

 

 名前はちょっと惜しかった。

 

「名前に関してはすまん。だが、二年前くらいにファッション雑誌の表紙を飾ってなかったか?」

 

「二年前……? あぁ、確かにちょっとした縁でそのような撮影をしましたわね。というかその雑誌はティーン向けの女性ファッション誌だったと思うのですが、何故男のあなたがご存知なのです? もしやそういう趣味でもお有りで?」

 

 ………「男」の語気が強かったあたり、男嫌いか何なのかは知らないが、こいつは人を貶さないと喋れないのか?

 

「そんなわけあるか。本屋でバイトしてた時に見かけたんだよ」

 

 バイト先は一週間しか持たなかったがな、なんて思いながら答える。俺はバイト運がかなり悪いようで、いくつかやったバイト先は全部不祥事やら何やらで長く持った試しがない。それが連続して起きたもんだから、俺を雇うと店が潰れる、なんて話が広まる始末。とりあえずタツに相談したら、割りのいい短期間のバイトを何度も紹介してくれたから中学生の一夏に極力バイトをさせずに済んだのは良かったがな。千冬姉も兄貴も頑張ってるのに俺だけ何もしないのは我慢できない、なんて何度も言ってくるもんだから新聞配達くらいなら、と姉貴と許可するまでの戦いは今となっては良い思い出だ。

 

「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」

 

「何ですの織斑さん」

 

「代表候補生って何?」

 

ガタタタッ

 

 周囲で会話を聞いてたクラスメイトがまたずっこけた。俺もオルコットももちろんずっこけている。そういえば、一夏の中学時代の通信簿で「やや想像力に欠けている様子が見受けられます」なんて書かれた事があったような………

 

「あ、あなた本気で言ってますの!?」

 

「おう、分からん」

 

「……お兄さん! 弟さんの教育はどうなってますの!?」

 

「……おう、すまん。まさかこれほどとはな………」

 

「ならばよくお聞きなさい! 代表候補生とは、国を代表するIS操縦者として期待された者……つまりはエリートのことですわ! そんなエリートと同じクラスに所属している幸運を感謝なさい!」

 

「「そうか、それはラッキーだな」」

 

「舐めてますのあなた達!?」

 

 そんな事を言われてもなぁ。口だけでエリートなんて自分に自信があるやつなら誰でも言える。タツの関係でエリートにもピンからキリまでいるのを知ってるぞ? 実力も成績も分からん奴にどう反応しろってんだ。

 

「で、そんなエリート様が何の用で? ただ自己紹介しに来たって訳じゃないだろ?」

 

「ええ。お兄さんはマシですが、織斑さんは先程までの授業からどうしてIS学園に入学出来たのか分からないほどのご様子。もし泣いて教えを乞うのであれば、教えて差し上げても構いませんわよ? 入試で唯一教師を倒したエリートであるこの私が」

 

「………兄貴に教えてもらうから大丈夫だ。それに先生と戦うやつなら俺も倒したし」

 

 オルコットの上から目線の物言いに一夏がブスッとしながら反論する。さすがの一夏でも少し頭に来てるらしい。ただ、最後の一言は余計だぞ。

 

「どういうことですの!? 教師を倒せたのは私だけとはっきり聞きましたわよ!?」

 

「女子の中では、って事なんじゃないか?」

 

「そんな……! お兄さん! あなたはどうでしたの!」

 

「タイムアップの判定勝ち、ってとこだな。勝敗は関係ない、って言われたから、ずっと操縦の練習。実戦に勝る経験無し、ってな」

 

 まぁ、男性操縦者ってだけで入学することが確定してたしな。じゃなきゃ通ってた高校に本人の知らぬ間に転校届が出されてない。

 

キーンコーンカーンコーン…

 

「くっ………覚えておきなさい!」

 

 次の授業のチャイムが鳴り、オルコットが捨て台詞を吐いて去っていった。この時間もまともに休めなかった……

 

「そういえば一夏。お前はどうやって倒したんだ?」

 

「倒したというか……始まってすぐに先生が突っ込んできたから、避けたら壁にぶつかった拍子にダメージ入ったらしいからそれで俺の勝ち」

 

「お前それオルコットに言うなよ?」

 

 相手の自滅での勝利とか倒したとは言わねぇよ一夏………

 

 

────────────────────

 

 

 三時間目が始まり、この時間は山田先生ではなく姉貴が授業を行っていた。

 

「……あぁ、そうだ。このクラスの代表を決めなければな」

 

 少し区切りの良いところで姉貴がそんな言葉を口にした。

 

「クラスの代表というのは、簡単に言ってしまえばクラス委員だ。学年行事の際のクラスの取りまとめや生徒会との打ち合わせ………あと、来週に控えているクラス代表戦などが主な内容だ。クラスの顔とも言える役割だ。自薦他薦は問わない。誰かいるか?」

 

 姉貴の話を聞く限り、普通のクラス委員にIS関係の仕事が追加されたような役だな。IS戦は基本一対一だから、就けるのも一人。一人しかいない以上クラスの顔、と言うのも間違いじゃないな。ただ、その顔がそのクラスの基準になるから生半可な奴は就けないだろう。どこかの国の代表候補生に就いてもらうのが定石なんだろうが、このクラスのことだ。そんなことじゃ選ばない。

 

『はい! 私は織斑くんを推薦します!』

 

『そうだね! せっかく男性操縦者がいるんだし、その方がうちのクラスらしくなる!』

 

『爽やか系のイケメン、使うしかないでしょ!』

 

『待って! なら私はお兄さんを推薦する!』

 

『百春さんなら年上だからその分の経験が有るかも知れないしね!』

 

『けど、年上だよ?』

 

『年上のどこが悪いのか! 同い年より頼りがいがあるでしょ!?』

 

『同い年の男の子と一緒に頑張って行くのがいいんでしょうが!』

 

 まぁ、こうなるよな。他のクラスにはいない男性操縦者をクラスの顔にしようというのは分かる。けどこれ、推薦する理由が年上か同い年の男になりかけてるんだが。

 

「おう、お前ら。推す理由がそんなんでいいのか」

 

『『『私は一向に構わない!』』』

 

「他の奴が構うんだよ馬鹿共。例えば………オルコットを見てみろ。あまりの馬鹿さ加減に口開けたままフリーズしてるじゃねぇか」

 

「………………………ハッ! 私は認めませんわ!」

 

 俺がオルコットを話に混ぜたからか、再起動したオルコットが机を叩きながら立ち上がって叫んだ。

 

「珍しいからという理由でクラスの代表が男など、断じて認めませんわ! この私に、男の下につくなどという屈辱を一年間味わえと言うのですか!」

 

 ………やっぱりこいつ人を貶さないと喋れないのか?

 

「第一、このような役職には実力ある者がやるべきなのです! それならばイギリス代表候補生である私がやるのが当然というものですわ! わざわざこんな極東の文化も劣るような島国に来ることでさえ屈辱で───」

 

「………イギリスだって大差ないだろ。世界一不味い飯何年覇者だよ」 

 

 とうとう一夏がキレた。俺も一夏がキレてなかったらキレてたかもしれん。

 

「我が祖国を侮辱するのですか!」

 

「先にそっちが馬鹿にしたんだろうが!」

 

「落ち着けお前ら。今は一応授業中なんだからもう少し静かにしろ」

 

 今俺がやるべきなのは落ち着かせることだな。言った通り授業中だし、このまま放っておいたら取っ組み合いは無いだろうがエスカレートするだろうし、何より姉貴の雷が落ちる。年上なんだから止めろ、という理不尽な理由で俺にも。

 

「でも兄貴!」

 

「でももストねぇ。気持ちは分かるがここで一旦納め───」

 

「あなたもあなたです! 休み時間の事といい、弟さんの教育はどうなってますの! まったく、親の顔が見てみたいですわ」

 

「………親が、何だって?」

 

 何か、スルーできない事が言われたような気がするなぁ………?

 

「あ、兄貴………?」

 

「あら、聞こえませんでしたの? あなたの親は一体どのような教育をされてるのかと───」

 

「止まれ百春!」

 

 気付いた時にはオルコットまであと一歩の所で手を開いた右腕を突き出した状態で止まっていた。前に進もうと身体を動かしても、誰かに組み付かれているからか前に進まない。

 

 どいつもこいつも親が何だ。親がいないから何だってんだ!

 

「落ち着け百春!」

 

「放してくれよ姉貴。ただちょっとオルコットの胸ぐらを掴み上げるだけだからよ………!」

 

「お前が掴み上げるだけで終わるわけないだろう! 頼むから落ち着いてくれ………」

 

 何度か身体を前に進ませようとしたが、姉貴に組み付かれて微妙にしか進まない。一歩先にいたオルコットは気付けば距離を取っていて、この状態では届かないだろう。ここまでか。

 

 フーッ、フーッ、と息を吐きながら落ち着こうとするが、駄目だ。怒りが収まらない。

 

「………織斑先生。ちょっと頭冷やしてくる。クラスの奴らも落ち着かないだろうからな」

 

「………分かった。次の授業が始まるまでに戻ってこい」

 

 身内贔屓のような許可を貰い教室を出る。トイレの水道で物理的に冷やしてから屋上にでも行くか。誰も来ないだろう。

 

 頭が冷え、三時間目が終わった頃に教室に戻ると、クラス代表決定戦を行うことを聞かされた。覚悟しろよオルコット。代表候補生だろうと叩きのめすからな?

 

 

 

~百春が教室を出た後~

 

「ち、千冬姉………兄貴どうしちゃったんだ?」

 

「お前は知らなくていいことだ。それと」

 

スパン

 

「織斑先生、だ」

 

「は、はい………」

 

「ま、まったく………男にしてはまともだと思っていたのですが、怒りにまかせて暴力を振るおうなんて、野蛮にも程が───」

 

「いい加減にしろよオルコット。さっきの織斑兄は明らかにお前が原因だ。感情的になっていたお前が、織斑兄に対して言えた義理ではないぞ」

 

「は、はい………」

 

「………さて、話を戻そう。クラス代表については、織斑兄弟とオルコットの三人が候補になっている。よってクラス代表決定戦を来週の月曜日の放課後、第三アリーナにて行うこととする。織斑兄弟とオルコットは準備をしておけ」

 




TOPICS:参考書
 IS学園に入学することになった百春と一夏に渡されたISに関する参考書。百春は「覚えることは多くない」と言っていたが、ウサギさんとの会話で若干知識が付いており、その分覚えることは少なかった。一夏からしてみれば覚える内容がたっぷりなので、「兄貴の嘘つき!」と思いながら参考書を覚える羽目になる。


千冬と百春は知っていて、一夏は知らない事情とは……
※織斑家は原作とは異なっております。
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