ダンガンロンパ・コンパチブル   作:こんぱち

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第二章 非日常 捜査編

 カディナ先輩が、死んだ……のか? 本当に?

 ちょっと昨日は元気がなかったけど、初日の自己紹介から強烈な印象を残し、霧生先輩のギャグを気に入ってたり、黒須先輩や僕と卓球したり、日本の学生はみんなで掃除をすることに感心したり、お風呂で一緒にはしゃいだり……と、クラスメートとなる人たちと積極的に交流をはかっていた彼女が、あろうことか、全員の見ている目の前で。

 

 あまりに急なことに、だれもかれも、ただ、ただ立ち尽くしているだけだったが、緊急処置に当たっていた堀津先輩が、カディナ先輩の遺体を横たえて、悲痛な表情のまま両手を合わせた後、

「……すまない。毒物がついてしまったかもしれないから手を洗って来たいが、誰かついてきてくれるか。まさかないだろうとは思うが、『手を洗ったときに証拠隠滅したんだ』となどと後になって言われたくないからな」

 とだけ、伝え、ちょうど側にいた芳賀先輩を伴って厨房へと向かっていく。

「いやはや、また事件が起こっちゃったね! 前回の事件が一昨日だというのに、テンポよく進んでいくね! コロシアイに積極的なのはいいことだ!」

「……モノクマか」

「あれれ? 元気がないね! どうしたの? 誰か亡くなったの? ってそうかそうか! みんなの大切なクラスメートの、準・超高校級のテニスプレーヤーである、カディナ・レオンハートサンが亡くなったんだったよね! そんな重要なことを忘れちゃうなんて、いやーボクってうっかりさん!」

 感情を逆撫でするようなモノクマの言い草にも、食って掛かるような者も誰もいない。

「さて、今回もしばらくの捜査時間を置いた後、誰が殺したのかを明らかにするための学級裁判を開催します! みんなのためにモノクマファイルのデータを電子生徒手帳に送信しておいたから、必ず目を通しておいてね! こっちは忘れてないからちゃんと伝えたよ!」

 そうとだけ告げてモノクマが退出した後、入れ替わりのように堀津先輩と芳賀先輩が戻ってきた。

「……またモノクマが来ていたのか」

「ええ、モノクマファイルに目を通しておけ、とのことです」

「ああ。……また今回も現場に数人残して、捜査に当たっていくか」

「ん、了解。前回と同じで僕、追跡者君、芸人君でいいかな?」

「ああ……それと頼みたいことがある。保健室の薬品棚の調査にも、三人以上で念入りに当たってくれるか?」

 確かに、状況を見るにまず毒殺が考えられる事件だから、そこは慎重に調べておくべきだろう。こうして、また、事件の調査の幕が上がる。

 

 調査開始!

 ……さて、まずはモノクマファイルから見ていくとするか。

 

『モノクマファイル2

 被害者は準・超高校級のテニスプレーヤー、カディナ・レオンハート。

 死体発見現場は食堂。

 死亡推定時刻は11時50分。死因は窒息死。

 体表に発疹あり』

 

 ……本当に、カディナ先輩はみんなの見ている前で、亡くなってしまったのか。しかも死因が窒息死、だって? 呼吸ができなくなってというのか!? ……それはどれほど苦しかったのだろう。

 

 コトダマ 『モノクマファイル2』を手に入れました。

 

 それと、生徒名簿か。今回も何らかの手掛かりになるかもしれないから、記憶していこう。

 

 コトダマ 『生徒名簿&モノクマ劇場』を手に入れました。

 

 おや、もう一つ追加されている条目がある? これは……『毒に関するルール』?

 

1、Aが毒『甲』をBに無理やり摂取させ死亡した場合、クロはAとみなす。

2、Aが毒『甲』をBに渡し、Bが自ら摂取し死亡した場合、クロはAとみなす。

3、Aが毒『甲』をBに渡し、さらにBがCに渡してCが摂取し死亡した場合、毒であることに関して知っていたか知らなかったかを問わず、クロはBとみなす。

4、Aが毒『甲』を、Bに毒『乙』をそれぞれCに渡し、Cがそれらを交互に摂取し死亡した場合、致死量とみなされる量を摂取した時点で、直前にとっていたものを渡した人物をクロとみなす

5、AがBに毒『甲』を渡し、Bがそれを致死量とみなされる分以上を摂取した後で、Cがさらに毒『甲』を渡した場合であっても、クロはBとみなす。

 

 ずいぶんとまあごちゃごちゃ長々と書いてあるなあ。しかも甲とか乙とか出てきて、なんだか契約書みたいだ。

 

 コトダマ 『毒に関するルール1~5』を手に入れました。

 

 そして、パーティーに出た料理と席順、取り分けるもの位置。これも大事な要素かもしれない。何かに描いておこう。ソバが一人一つ。これには羽月先輩が作った巾着がのっていた。コップも一人一つ、サラダと菓子盆とジュースの入ったピッチャーはたしか4人ごとに1つ置かれていた。サラダには大ぶりのエビのほか、シーフードが入っていた。菓子盆のお菓子は個包装のものばかりで、ジュースはオレンジを絞ったもののようだった。そして、誕生日席の勝先輩のところにシュラスコがあって取って回していくようなスタイルだったか。

 

【挿絵表示】

 

 

 コトダマ 『パーティーに出た料理』を手に入れました。

 

 コトダマ 『パーティーの席順』を手に入れました。

 

 さて、自分も保健室の薬品棚を確認しに行かなくてはな、と足を運ぶと、すでに岸和田先輩、瀬戸先輩、竹枡先輩が三人がかりでリストと見比べて棚卸し作業に当たっていた。

「琴間くんも来たんだ……まあここは一番押さえておかなきゃならない場所だしね」

 と岸和田先輩が声をかけてくる。

「なにか、手掛かりになりそうなものはありましたか?」

「……モノクマファイルによるとカディナさんは窒息死で、体表に発疹あり、とのことだったよね。……近い症状が出る毒は見つけたんだけど」

 といって、リストを取り出してそのうちの一画を指さす。そこには、

『モノモノチッソクン効果・気道閉塞、赤斑 発症までの時間・数分から数十分』

 と書かれていた。気道が閉塞されて呼吸ができずに酸素が取り込めなくなったら、結果窒息死してしまうだろうし、赤い斑点が浮かんできたら発疹と診断するだろうから、確かにこれが有力だろう。……しっかしこれもまたなんてネーミングだよ。

 

 コトダマ 『モノモノチッソクン』を手に入れました。

 

「……でもね、このモノモノチッソクンの数はリストに載ってる数から減ってなかったんだ。前の事件と同じように少しだけ抜き取られてたとかもなし。それどころか、他の薬に関しても前の事件の『モノコロリン』が一回分抜き取られている以外は、完全にリストと一致してるんだ」

「それじゃあ、リスト自体を入れ替えられた、とかは……」

「それはないっすね。リストを一緒に作った琴間チャンなら知ってると思うっすけど、瑞倉チャン、手書きでリストを作った上に拇印を押してるんすよ。僕、前回も薬品棚の調査にしたんすけど、変えられてるようには見えないっす。さすがに筆跡も指紋も完璧に真似した上でまるっとすり替えた、とかは難しいんじゃないっすかね」

 と、瀬戸先輩も補足してくる。

 

 コトダマ 『リストと薬品棚の状況』を手に入れました。

 

 そもそも自分は『窒息死』の定義を正確には把握していない。中学生の僕の頭でも、医学書か何かで調べれば何かしら気づくことがあるかもしれない、と図書室へ足を運ぶ。そこでは、羽月先輩が何やら本を開いていた。タイトルは……『世界の歩き方』?

「あ、琴間君。……あまり調査に関係ないかもしれないけど、カディナさんの故郷のノヴォセリック王国ってどんなところかな、って思って読んでたんだ。……これ読んで落ち着いたら、ちゃんと捜査に戻るから」

 僕が近づいてきたことに気付くと、羽月先輩は言い訳するように、そう述べた。……開いたその本のページに、ノヴォセリック王国を紹介する記事が載っている。

(おや?)

……その中に、『バロンゾ』というどこかで聞いたような単語があった。そう言えば、勝先輩に何か食べられないものはある? って尋ねられた時に、カディナ先輩は『バロンゾ』と答えていたな。……もしかしたら。

「……羽月先輩、もしかしたら、それ、なにかの証拠になるかもしれません。……裁判にも持ち込まれたほうがよろしいかと」

「そう? なら読み終わったら鞄の中に入れておくよ」

「ところで、医学書が置いてある場所ってどこかわかりますか?」

 それなら、と羽月先輩が差した方向に、まさに『医学薬学』という書架があったので、礼を言ってそこから一冊、抜き取って読んでみるが……

「まったくわからない……」

 そう、ただの中学二年生の僕には専門的な医学書なんて読めるはずはなかった。それでもなんとか意をつかむと、次のような表現になるということが分かった。

 『呼吸が阻害されることによって、血液中の空気交換ができず血中酸素濃度が低下し、内臓等重要組織が機能不全を起こすこと』

 

 コトダマ 『バロンゾ』を手に入れました。

 

 コトダマ 『世界の歩き方』を手に入れました。

 

 コトダマ 『窒息』を手に入れました。

 

 事件が起きたのが食堂だったので、すぐ隣の厨房には捜査開始時点で何人か入っていったので後回しにしておいたが、自分も見ておいたほうが良いだろう、と足を運ぶと、手岡先輩と芳賀先輩が辞書をもって、冷蔵庫を調べていた。

「先輩方はなにを調べているんですか?」

「ああ、これはやな、食材として追加された魚の中に、毒になるようなものがないか調べとったんや」

「追加されてた時に一通り確認したけど、カワハギとソウシハギみたいな良く似た魚なのに毒性があるようなこともあるし、きちんと確認しておこうと思って……手遅れ、だったのかもしれないけど」

「でもま、図鑑と見比べてじっくり調べてみたけど、この中に毒のある魚はなさそうや、ってことに気付けたからリョーコの見立ては正しかった、ってことがわかったんや」

「……カディナが亡くなってるのにこんなこと言うのは不謹慎かもしれないけど、あたしのミスでこうなったわけじゃなくて、ちょっとホッとしてる」

 実際、手岡先輩は胸をなでおろしているような表情をしていた。ない、とわかったことは大きな収穫だ。これも覚えておこう。

 

 コトダマ『図鑑との比較結果』を手に入れました。

 

「一応、写真にもとっておこか……って、あれ?」

 そう言ってポケットからスマホを取り出した芳賀先輩だったが、スマホの側面を探りながらまごついている。

「ってこれカムルンのスマホやった。横にカメラボタンがないタイプやな」

 ん? 瑞倉先輩のスマホは芳賀先輩が持ってるのか。そういえば、昨日羽月先輩と絵を描いていたときに『デカから借りた』って言ってたな。……これも聞いておいたほうが良いだろう。

「芳賀先輩、確認しておきたいんですが、……亡くなられた瑞倉先輩の荷物は堀津先輩が、福添先輩の荷物は岸和田先輩が受け取った。そしてその後、絵を描くために、芳賀先輩はお二人のスマホを借りた。だから瑞倉先輩と福添先輩のスマホは今、芳賀先輩が持っている、という認識でよろしいですか?」

「うん、そやで」

 実際に物がどういう経緯をたどって、今どこにあるかを確認するために長々とした感じになってしまった僕の質問を、芳賀先輩は五文字で返して肯定したのだった。

 

 コトダマ『瑞倉先輩の荷物』を手に入れました。

 

 コトダマ『福添先輩の荷物』を手に入れました。

 

 コトダマ『瑞倉先輩のスマホ』を手に入れました。

 

 コトダマ『福添先輩のスマホ』を手に入れました。

 

 さて、厨房はお二方が調べてくれているみたいだしここはいったん出ていくか、と思ったときに、なんとなく目についたのは、大鍋。それの中を覗いてみると、羽月先輩が作ったと思しき大量のおでんの巾着が入っていた。……二日目の朝から作ってて、パーティーの時のソバにも入ってたけど、こんなに作っていたのか。それにしても、『中身色々巾着にしてみるかな』と言っていたが、どれも外から見たら全く同じに見えるから、中に何が入ってるかわからないぞ。……そういえば二日目の昼は、この中からカラシたっぷりの奴を引いてしまったな。

 

 コトダマ『羽月先輩の巾着』を手に入れました。

 

 それと、もう一つ目についたのが、クーラーボックス。これは確か、浴場に女子のメンバーに、羽月先輩が持たせたものだ。中身を確認すると、500ml程の容量のペットボトルが5本、きれいに空になって入っていた。ちょうど人数分だから、一人一本飲んだんだろうな。

 

 コトダマ『クーラーボックス』を手に入れました。

 

 さて、厨房から出て食堂に至ると、ちょうど勝先輩がカディナ先輩に手を合わせているところだった。……その眼には、涙が浮かんでいる。

 ……体表に発疹あり、ということで、カディナ先輩を直視できるか不安で今まで避けてしまっていたが、せめて拝んでいこう、と勝先輩と入れ替わりになろうとする。

「……カディナサン、ちょっと前まで、いや、ほんとについさっきまで、生きてたのにね。乾杯の後、すぐにソバを食べきって、本当にいい食べっぷりで、ようやく元気が出てきたんだな、って、思った矢先のことだったよね」

 すれ違いざま、勝先輩はそう漏らしたのだった。

 

 コトダマ『勝先輩の証言』を手に入れた。

 

 ……カディナ先輩の、苦しそうな表情、胸を掻きむしるように服をつかんだ両手、美しかった白い肌に斑々と浮かぶ赤黒い発疹。もうそれは、治ることも、動くことも、もはやないのだ。

「……琴間、今回も教えておくことがある。パーティー準備組のそれぞれの担当だ」

 僕が拝み終わった後、堀津先輩がそう切り出し、メモを渡してきた。そこにはこう書かれていた。

 

 ソバ、シュラスコ……勝

 サラダ……一目

 菓子盆……芳賀

 ジュース搾り……堀津

 席決め、飾り付け、巾着、ソバの配膳……羽月

 コップや皿などの食器の準備……霧生

 

 コトダマ 『パーティー準備割り当て』を手に入れました。

 

『ピンポンパンポーン! さてさてそろそろ始めちゃっていいかな。それではみなさん、エレベーターホールの前に集まってくださーい!』

 

 モノクマの声の全体放送が寮内に響き渡る。

 

 ……もうそんなに時間がたってしまっていたのか。心苦しいが、行くしかないんだな。とちょうど食堂で見張りをしていた堀津先輩、霧生先輩、一目先輩と連れ立って向かうことにした。

 

 エレベーターホールでは、すでに僕たちを除く全員が集まっており、お互いに疑心を向けるような、心の奥では信じたいような、色々な感情がグニャグニャと複雑に混ざりあったような表情を浮かべている。

 

 僕たち13人を招き入れるように、エレベーターが開く。誰も言葉を発することなく、一人、また一人と乗り込んでいく。……前回このエレベーターに乗ったときから、一人、減ってしまったんだよな。そして、なんとか生き延びることができたとしても、帰りのこのエレベーターに乗るときには、さらに一人、減ってしまっているんだろうな。

 

 ああ、再び、始まってしまう。もう二度と体験したくないと心の底から思ったあれが。

 

 あの、おぞましい、いや、そのような言葉では言い表せない、一緒に生活しているクラスメートを疑いあう……

 

 命がけの嘘、

 

 命がけの信頼、

 

 命がけの裏切り、

 

 命がけの騙しあい、

 

 命がけの……学級裁判が

 

 

第二章のクロはだれかな?

  • 一目 蔵人
  • 勝 富士山
  • カディナ・レオンハート
  • 岸和田 安美
  • 霧生 雄大
  • 黒須 鈴
  • 琴間 恵那樹
  • 瑞倉 冠
  • 瀬戸 政直
  • 竹枡 紅
  • 手岡 漁子
  • 羽月 聖来
  • 福添 志穂
  • 堀津 圭司
  • 芳賀 愛
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