ダンガンロンパ・コンパチブル   作:こんぱち

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コトダマ一覧

『モノクマファイル2』

『生徒名簿&モノクマ劇場』

『毒に関するルール1~5』

『パーティーに出た料理』

『パーティーの席順』

『モノモノチッソクン』

『リストと薬品棚の状況』

『バロンゾ』

『世界の歩き方』

『窒息』

『図鑑との比較結果』

『瑞倉先輩の荷物』

『福添先輩の荷物』

『瑞倉先輩のスマホ』

『福添先輩のスマホ』

『羽月先輩の巾着』

『クーラーボックス』

『勝先輩の証言』

『パーティー準備割り当て』


第二章 非日常 裁判編

「それでは、皆さまに割り当てられた席についてください!」

 

 と正面に鎮座するモノクマの指示。再びここに来ることになってしまった。……しかも、赤くバッテンの付けられた遺影が二つ、増えている。……福添先輩の遺影のバッテンは両手を模したような形だ……これはオシオキによって両腕をワイヤーでちぎり飛ばされて、恐らく出血多量で亡くなった福添先輩への当てつけのつもりなのだろうか。そしてさらにもう一つ増えたカディナ先輩の遺影にはテニスラケットのような意匠で作られたバッテンだ……彼女らの才能を冒涜してやろうという悪意をひしひしと感じる。

 

「まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう! 学級裁判の結果はお前らの投票により決定されます! 正しいクロを指摘できればクロだけがオシオキ! だけど、もし間違った人物をクロとした場合は、クロ以外の全員がオシオキされ、クロは晴れて卒業となりまーす! それでは議論を開始してください!」

 

 モノクマが、そう宣言し、二度目の学級裁判が開始されてしまった。

 

 

ノンストップ議論開始!

 

竹枡「でも……何から話せばいいのー?」

岸和田「まずモノクマファイルに書かれていることから確認しようか……」

堀津「亡くなったのはカディナ・レオンハート……」

竹枡「死亡時刻は11時50分……本当に私たちの目の前で亡くなっちゃったんだよね。なんで、どうしてこんなことに」

瀬戸「窒息と発疹、症状としては……薬品棚にあった『モノモノチッソクン』ってのが近いみたいっすけどね……」

霧生「だったらその毒を盛られたからだろう!」

 

琴間「それは違います!」『リストと薬品棚の状況』→『その毒を盛られた』

 

 

BREAK!

 

琴間「三人の先輩方が薬品棚とリストを調べていたのですが、『モノモノチッソクン』の数はリストを作った最初の時点から減ってないんですよ。他のあらゆる薬も、先日僕と羽月先輩が持っていった『モノコロリン』もリスト通り。記入なしで少しだけ抜き取られていた、というのもない。そうですよね? 岸和田先輩、瀬戸先輩、竹枡先輩」

岸和田「う、うん……堀津くんの指示通り、ここはすごく大事だと思って三人がかりでちゃんと調べたから間違いないよ」

瀬戸「薬品棚から持ち出された毒がない、ってことは……食材の方っすかね。すごく珍しい魚もあったから、フグみたいに毒を持つ魚もあったのかも。そういえばあのサラダ、エビのほかに魚もいろいろ入ってたっすよね」

 

琴間「それは違います!」『毒を持つ魚』→『図鑑との比較結果』

 

 

BREAK!

 

琴間「いえ、確かにあまりなじみのない魚もありましたが……図鑑によると、あの中に毒を持つ魚はいなかったんですよ。そうですよね、芳賀先輩」

芳賀「うん。『準・超高校級の図書委員』としてこの手の調べものにはお手のもんやし、リョーコと一緒に見比べたしで間違いないで」

琴間「ですので、この事件には毒は使われてないんです」

 

手岡「かかりつつあるのにバラしちゃうんじゃない!?」 反論!

 

「いや、そうだからって毒が使われてないなんて考えられない! どう考えてもあの異様な急変は毒によるものでしょ!」

 いきなりの手岡先輩の割り込み。……たしかに、カディナ先輩のあのような惨状を見て『毒が使われていない』というのはにわかには受け入れがたいことだというのは理解できる。

「でも事実として、薬品棚からは毒になるようなものが持ち出されてないのです」

 実際、そう説明する自分ですら違和感がある。

「いや、減ってないのは『リストをつくった最初の時点から』って言ったよね? だったらそれ以前に持ち出されたんだよ! だから初日に冠と一緒にリストを作った恵那樹が怪しい! 席が正面だったこともあるし、毒が使われてないという方向に議論を進めようとしたっていうのもあるし!」

 いきなり疑いの矛先を向けられ、動転してしまう。確かに瑞倉先輩と一緒に薬品棚の確認したことは事実なのだが……

「ですが、僕は瑞倉先輩が完成させたリストと実物を比較しただけで、作業自体にはほとんど関わっていないんですよ! リストの筆跡も指紋も、瑞倉先輩のものじゃないですか!」

「でも、それだけじゃ作業に参加してないっていう証明にはならないよね?」

 僕の反論に対してもさらに反論を重ねてくる手岡先輩。どうにか疑いを晴らせるようなものはないだろうか……そうだ、もしかしたらあれに入っているかもしれない

 

「これで証明できる!」→『瑞倉先輩のスマホ』

そしてそれを持っている人は→芳賀 愛

 

「芳賀先輩……先日図書室で『カムルンはあまり自分の写真を残さない人みたいやった』とかおっしゃっていましたよね。つまり瑞倉先輩のスマホ内のアルバムを見た、ってことですよね?」

「あ、ああ、みたで」

「瑞倉先輩、リストを作成した後に、そのリストを写真に収めていたんですよ。もしかしたら、それより前にも薬品棚の初期状態を収めた写真がありませんでしたか?」

「そういやそんなのがあったな。ちょっと待ってな」

 と言って胸ポケットからスマホを取り出して探していく芳賀先輩。僕が注文した写真があるだけでなく、ちょうど今そのスマホを持ってきてくれていたことは好都合だ。

「これやな。画面もあまり大きくないから見えづらいかもしれへんけど……」

 と言って、スマホを掲げて全員に見えやすいようにゆっくりと動かしながら見せていく。そこには薬品棚の写真と、14:00という表示があった。これはたしか初日、会議室で現況をみんなで確認した後にいったん解散した時間すぐだ。

「それと……こんなのも」

 そう言って芳賀先輩が見せてきた写真は、保健室のドアを開けて今まさに中に入ろうとしている僕の写真と17:25という時刻だ。……このような写真が盗み撮りのようにおさめられていたことには気づかなかったが、証拠が重要になるこの場ではむしろありがたい。そしてリストの写真を撮ったのが17:30。

「つまり、瑞倉先輩は14時に一人で作業を開始して、リストを完成させた後に僕が17時25分にやってきたので撮ったのです。……恐らく、薬品棚のものが使われた時のための証拠に。だから、僕にリストを作る前に毒をくすねるタイミングはなかったんです」

 説明しながら、瑞倉先輩の先見に感心する……と同時に、不自然な印象を頭のどこかに、引っかかるように感じていた。

「そうだったんだね……疑って、本当にごめんね。恵那樹」

 そう謝罪する手岡先輩。それと、

「ってことはさぁ、つまり、だいぶ長い時間一人で保健室で作業していた幸運君のほうは薬品棚のものを簡単にちょろまかすことができた、ってことだよね」

 と指摘する一目先輩。

「そんな、まさか亡くなった瑞倉クンが……」

「でも実際その可能性を追求してみなきゃダメでしょ?」

「それは……その通りっすけど……」

「大体さあ、幸運君は行動はなーんかちぐはぐな感じなんだよ。リストを作ったり写真を撮ったりって、こんなにも用心深いのに、福祉委員さんに殺された状況が不用心過ぎるんだよ。案外幸運君の方でも誰かを、例えば部屋に招き入れた福祉委員さんとかを、殺すチャンスを狙ってたところを逆手にとられてたりしてね」

 そう、一目先輩の弁にも一理ある。麻雀牌とマットなんていうそこそこの大きさの荷物(それこそ刃渡りの長い牛刀包丁を隠せるぐらいのサイズの)を警戒せずに、福添先輩を部屋に招き入れたこと、自分がリストを作ったのに睡眠薬を盛られている可能性も考えずに勧められた飲み物を飲んでしまったこと……確かに気にはなるが……。

「今は瑞倉に疑いを向けるときではない。見つけなければならないのは……この事件の、クロだ」

「そうだけど、幸運君が毒をちょろまかしてたとしたら、そこからさらに誰かか持ち出してる可能性だって出てくるんだからさ、ここははっきりとさせておかなきゃならないよね」

 堀津先輩の注意を受け、簡潔に話すべきことを述べていく一目先輩。

「確かに冠にはチャンスがあったはずだよね……」

「そうじゃなきゃ毒の出どころの説明つかないな……」

「そうだとしたら、誰がそれを手に入れることができたのかな?」

 と瑞倉先輩が薬品の数をごまかした説と、

「瑞倉の部屋は3人で見張りつつ徹底的に調べた。見落としてるとは思えない」

「亡くなった人を疑うのはよそうよ……」

「ごまかそうとしてると仮定したら、その割には……」

 と意見が真っ二つに割れてしまった。……僕は、どちらにつこうか迷って、やはり瑞倉先輩を信じることにした。

「おやおや、ちょうどいい感じに真っ二つに割れてるねえ」

 紛糾してる僕らを尻目に、モノクマが楽しそうな口調で割り込んできた。

「それでは、お待ちかね! 議論スクラムのお時間でーす! 関が動くから落っこちないように気を付けてね!」

 その宣言と同時に、裁判席がウイーン、ガチャンとばかりに変形していき、向かい合って討論することになった。

 

 

議論スクラム開始!

~瑞倉冠は薬品の数をごまかしたか~

 

ごまかした!

手岡・霧生・一目・瀬戸・岸和田・勝

 

ごまかしてない!

堀津・琴間・羽月・芳賀・竹枡・黒須

 

一目「幸運君がちょろまかしたと仮定するなら、さらにそこからちょろまかした人の候補としては、見張りに当たった追跡者君、芸人君、僕になるのかなあ? 福祉委員さんが持っていったとしたら、その荷物を引き受けた記者さんかな?」

羽月「仮定の上にさらに仮定を重ねるより、まずは『実際ちょろまかしたかどうか』、だよ」

 

瀬戸「リストを作ったんだからごまかせたとしたら瑞倉チャンが怪しいのは変わりないっすね」

芳賀「ごまかすつもりならはなっからリストを作らないほうがやりやすかったはずやん」

 

勝「自分から率先して貢献する姿勢を見せることで、信用を得ようとしたのかもしれないね」

黒須「信用を得て薬をごまかすことが目的だったなら、写真とか拇印とか証拠になるものを残し過ぎでしょう」

 

手岡「薬品棚にしか毒はない以上、やっぱり一人きりで作業できた冠は怪しいよ!」

琴間「毒になりうるものは、薬品棚以外にもあるかもしれません」

 

岸和田「亡くなった人の思惑が事件に絡むこともありえるよね……」

竹枡「亡くなってるんだから、さすがにここまで事件に絡むことはないと思うなー」

 

霧生「第一の事件の時に見張りになったけど、瑞倉の部屋に見落としがあったかもしれないな」

堀津「いや、瑞倉の部屋は準・超高校級の追跡者である俺を含む三人も見張りと捜査に当たったんだ。見落としは考えにくい」

 

堀津・琴間・羽月・芳賀・竹枡・黒須

「これが僕たちの答えだ!」

 

 議論の結果、瑞倉先輩への疑いが晴れたのは良いが……

「薬品棚の毒じゃないんなら……カディナの死因になったものは何なんだ?」

 と疑問の声が上がる。……それに対する答えになりそうなものは、ある。あるのだが。

 

ひらめきアナグラム!

 

アレルギー

 

「……それはアレルギーです」

「アレルギー? って特定の食材とかを受け付けない、ってやつだろ? でもカディナは……あんなふうになって、亡く……なったんだぞ。そこまでひどいものがあるのか?」

「そうや。アナフィラキシーショック、咽頭浮腫を生じて気道閉塞から呼吸困難になり、急激な血中酸素濃度の低下を引き起こし、蕁麻疹などの発疹を伴う場合もある。……急性のものでは数分から数十分の間に重篤な状態に陥ることもある。症状と……一致してまう」

 芳賀先輩が、医療用語を混ぜながらもすらすらとそう説明する。さすがは準・超高校級の図書委員、こういった面での知識も持ち合わせているようだ。

 だが……これが真だとすると。

「そうだとしたら、まさか……クロ本人も、自覚なしにカディナにアレルギー物質を渡して……それで結果、殺してしまったかもしれない、ということになるのか?」

 そう。

 そうなのだ。

 今回の事件は、周到に準備された第一の事件とは違って……ほとんど事故のようなもので起きてしまったのだ。

「そういうことになるな。……俺は準・超高校級の追跡者として様々な事件を追ってきた俺だが、これほどまでに『この事件は追いたくない』と思ったのは、始めてだ」

 堀津先輩も、苦虫を噛み潰したような顔をしてそうつぶやいた。……自分も前の裁判ではどこかで、『瑞倉先輩の仇をとるんだ』と、なんとか自分を鼓舞して立ち向かったようなところもあったが、今回はそうではない。不慮の事故を起こしてしまったクラスメートを、殺人犯として追及するのだ……そして、もしかしたら、それは自分なのかもしれない、という疑念を、抱きながら。

 

ノンストップ議論開始!

 

 

霧生「まさかあの料理の中にそんなものがあったなんて……」

瀬戸「食材の中にエビとか、魚とか、肉とかアレルゲンになりそうなものは何個かあったっすね……」

岸和田「カディナさんは何か食べられない、と言ってた記憶ある人いる?」

黒須「……確か、『バロンゾ』がたくさんは食べられない、って言ってような」

霧生「『バロンゾ』? なんだそりゃ?」

黒須「マカンゴがレメッツォしたときにそれを祝うヘヘンドの席で振舞われる……とにかく、ノヴォセリックの料理らしいよ」

瀬戸「それじゃあ見当もつかないっすね……」

 

琴間「それは、違います……」『世界の歩き方』→「見当もつかない」

 

 

BREAK!

 

琴間「いえ、……羽月先輩が読んでいた本に、ちょうどバロンゾのことが載っていたんです。……バロンゾとは、どのようなものでしたか?」

羽月「タデ科の穀物を製粉して焼いたパンのような物……らしいよ」

勝「タデ科の穀物……今日出したものの中で当てはまるのって、ソバ!? まさかボクがクロ!?」

 

琴間「それは、違います……」『毒に関するルール3』→『ボクがクロ』

 

BREAK!

 

 

琴間「いえ、電子生徒手帳に毒に関するルールが追加されていました……それによると、Aが毒をそうと知らないBに渡して、BがさらにCに渡して、Cが摂取して亡くなった場合のクロは……Bになるんです。だから……そばによるアレルギーでカディナ先輩が命を落としたのだとしたら、ソバを運んだ人になるのです。なので……」

 

 

怪しい人物を指名しろ!

> 羽月 聖来 <

 

「そう……『大盆の載せたソバの丼を一人一人に運んで行った』、羽月聖来先輩……あなたがクロになってしまうんです」

 断腸の思いで、そう犯人の名を告げる。……指摘された羽月先輩は

「……くくく、くくっ」

 と小さく笑ったと思ったら、

「……私は、とても幸運なのかもしれない。いや、本当のクロじゃないみんなもそう。とっても、とっーても、幸運」

 と凛とした口調で、そう言い放ったのだった。……クロと指摘されたことが幸運、だって? 羽月先輩はどうしてしまったんだ? 他の先輩方も、羽月先輩を不気味なものを見るようなまなざしを向けている。

「ああ、誤解しないで。おかしくなっちゃったわけじゃないよ。ちょうどさっき、『世界の歩き方』でバロンゾが載ってるページを開こうとしたときに、別のページで偶然、本当に偶然、見つけたんだよ。こんなものを」

 と言って、羽月先輩はその本を大きく広げてかざして見せた。そこに掲載されていた写真は……

「オレンジ?」

 そう、やや色が薄くて大ぶりかな、という以外は、何の変哲もないオレンジのように見えた。

「これは……厨房にあったオレンジと同じ品種かな?」

「そのようだな。パーティーのために俺も大量に絞ったが……」

 と勝先輩が尋ね、堀津先輩も続ける。

「うん、勝君と堀津君がそういうなら間違いないよね、これは、『ジャバウォックオレンジ』っていう品種らしいんだけど、どこで採れるものなのかとかは大して重要なことじゃないんだ。見てほしいのは、注意点……なんだけど、文字が小さいから読み上げるね」

 そして、一度深呼吸。

「アレルゲンとなる食物と一緒に、短時間で大量に摂取すると重篤なアレルギー反応を誘発する危険性あり。目安としては、体重の50分の1」

 と、ナレーションのように、淡々とそう言って、実際にそう書かれていると証明するために『世界の歩き方』を時計回りに回していった。

 

 

証拠提出『ジャバウォックオレンジ』

 

「オレンジってそんな危険なもんなんすか!?」

「同じ柑橘系のグレープフルーツとかやって、カルシウム拮抗薬との相互作用が強うて、短時間に一緒にとってはいけない、禁忌となっている組み合わせがあるんや……他の柑橘系にそう言うのがあったって不思議やない!」

「……この本は偽装ではありえないだろうな。そもそも印刷機材がないからな」

 と喧々諤々となる裁判場……まさかあのピッチャーに入ってたジュースが、そのジャバウォックオレンジから作られたものだったのか? だけど……

「でも! 体重の50分の1なんてかなりの量でしょう! カディナ先輩が飲んでたのは、せいぜいコップ一杯半程度だったはずです!」

 ……いけない、羽月先輩も、何も悪意があってそう言っているわけではないのに声を荒げてしまった。これは……カディナ先輩が亡くなる直前に注いで渡したのが僕だったから……『もしかしたら、僕がクロなのかもしれない』という焦りから来ているのか?

「それに関して……これは謝らなくちゃならないんだけど、浴場に行く女子のみんなに渡した飲み物も、このジャバウォックオレンジを昨日のうちに絞っておいたものだったんだよね。だから、パーティーの時の飲んだ分だけじゃなくて、もしカディナさんがお風呂上りに飲んでたとしたら、それ以前にも結構な量、飲んでるんだよね」

 ……と説明を続ける羽月先輩。なんてことをしてくれたんだ!

 いや、さすがにオレンジのような見慣れた食材にいちいち『これはもしかすると、重篤なアレルギー反応を誘発し、アナフィラキシーショックによる死亡事故も起こりえる危険なものかもしれない。食べる前にきちんと調べなくては』なんて警戒の眼差しを向けるような生活をしてたら、何も食べられなくなってしまうか。この件に関して羽月先輩は責められない。……今回はモノクマからの動機提供がなかったと思ったら、このような形で罠を張っていたのかよ。

「そもそも、カディナさんはソバと同じタデ科の穀物から作られた食べ物であるバロンゾが『たくさんは』食べられない、って言ってたんでしょ? たくさんは、ってことは、少しなら大丈夫、ってことだろうから、アレルギーは極めて軽いものだったんじゃないかな? 特にソバなんて強めのアレルギー反応を引き起こす症例の多い食材だから、世界で活動するアスリートである上に日本通のカディナさんならあらかじめ何かしらのチェックを受けててもおかしくないんじゃないかな? その上でちょっとなら大丈夫だろう、ってお風呂上がりにソバを注文したんじゃないかな?」

 にわかに弁を並べ立てる羽月先輩。……彼女も自分が生き残るために必死に知識を動員しているのだろう。

 しかし、彼女の言い分は、ルールに則ったものである、なぜなら……

 

「……これで証明できる」『毒に関するルール4』

 

「これによると……毒物である甲、乙があり、Aが甲を、Bが乙を、それぞれシロに渡し、シロがその甲と乙を交互に摂取した場合、致死量とみなされる量を摂取した時点で、直前にとっていたものを渡した人物をクロと判定する、とあります。ですから、羽月先輩の言うことは正しいんです……」

「だ、だったら、カディナが亡くなる直前にジュースを注いで渡してた琴間がクロなんだろ!?」

 説明に畳みかけるように、霧生先輩が僕を糾弾する。しかし……

 

「……これで証明できる」『毒に関するルール5』

 

「いえ……シロが致死量とみなされる分を摂取した後に、追加で毒物を渡した人物がいても、クロと判定されるのは、『致死量とみなされる分の毒を渡した人物』になる、らしいのです……だから、致死量ちょうどとなる分を渡した人物を探していかないと」

「じゃ、じゃあ、浴場に行った女子! パーティーの前、カディナは浴場でどれだけの量を飲んでいたんだ!?」

 霧生先輩はやけに慌てた様子だ……そうだ、乾杯で飲み干した後に、カディナ先輩にジュースを注いだのは彼だった。……僕らが来た時点でコップにジュースはつがれていたから、もしかしたら乾杯の分もそうなのかもしれない。『パーティー準備割り当て表』でも、食器等の準備は霧生先輩がしたとのことだったし。

「えっと……500mlペットボトル一本だよ。それを全部飲み干してた。あっさりしててスポーツドリンクみたいな口当たりだからぐいっといけちゃったって……そして朝食はコーヒーと羊羹だったから、さらにそれより前にジャバウォックオレンジジュースはとってないはずだよ」

「良かった……人数分しか入れてなかったから、まずないことだとは思ったけど、カディナさんがクーラーボックスから誰の手も経由しないで直接、3本まとめて飲んでいた、なんてことをしてたら、クーラーボックスを浴場組に渡して、かつソバを配膳した私がクロなってたかもしれなかった……」

 岸和田先輩の証言に心底安堵したような羽月先輩と、

「え、じゃ、じゃあコップ一杯が何ミリリットル……だったんだ?」

 さらに顔色を悪くする霧生先輩。

「コップにあるワンポイントを目安に入れると、250ml、だね……」

「じゃ、じゃあ俺が注いだ分は2杯で500ml、1mlで1gと計算すると1㎏! カディナの体重は生徒名簿によると、58㎏だったから、50分の1に行ってない! だから俺はクロはじゃない!」

 勝先輩の証言に心底歓喜したような霧生先輩だ……だが。

「僕が注いだ分も半分ほどしか飲んでませんでしたから、僕の分を足しても50分の1には届いていませんよ!」

「で、でも、50分の1っていうのは目安なんだろ! それより少ない量で発症したかもしれない!」

「少ない量で発症したというなら! 霧生先輩の分で発症したかもしれないじゃないですか!」

「だが琴間! 最後に注いだお前が有力だということも揺るぎない! そしてソバを運んだ羽月も! まだ疑いが晴れたわけじゃない!」

 

「それは違います!」『勝先輩の証言』→『疑いが晴れたわけじゃない』

 

「勝先輩……確か、カディナ先輩が乾杯してすぐ、ソバの麺を食べつくした、っておっしゃってましたよね……」

「う、うん。あまりに良い食べっぷりだったから、ちょっと席は遠かったけど印象に残ってるよ。だからジュースの3杯目以降を飲んだのはその後だね」

「あら、私の疑いを晴らしてくれたんだ? ありがとうね、琴間君」

 僕が霧生先輩の言を論破したことを受けて、羽月先輩がニコリと笑みを浮かべる。こんなときじゃなければ、『かわいらしいなあ』と思わせるような笑顔だ。だが……

「琴間ぁ! 敵に塩を送ってるんじゃねえよ! そいつがカディナにジュースを持たせてなかったらこの事件は起こらなかったかもしれねえんだぞ! そうだ! パーティーに出す飲み物を『このオレンジを絞ったやつにしよう』って言いだしたのも羽月なんだぞ!」

「でもみんなだって賛成したし、パーティーの分を絞ったのは堀津君だよね?」

 明確に、羽月先輩を敵と明言し、霧生先輩が食ってかかってくる。……羽月先輩は、いや、ここにいる全員が、敵であるはずはないのに。

 ……なんでだ。

 なんで……せっかくの楽しいはずのパーティーが、こんな罪の擦り付け合いになってるんだ。

 霧生先輩。

 僕は……自分がクロでないと、確信が持てない。

 だけど……クロでないと、証明しなければいけない。

 そうだ……あの発言がきっかけになるかもしれない。

 

 これで……証明できる。

『うわ体重がすごく落ちちゃってます!』

『ええ、減った分の体重を取り戻さなきゃですからね』

 

「……黒須先輩、手岡先輩、岸和田先輩、竹枡先輩。一つ謝らなければならないことがあります」

「えっ、謝るって、なにを?」

 いきなり水を向けられた先輩方も、今回の学級裁判には相当まいっているようで、困惑した表情を浮かべていたが、その中でも岸和田先輩が僕の発言を受け、すぐに手帳を構えた。こういうところ、さすが『準・超高校級の記者』だな、と思う。

「先輩方がお風呂から上がって着替えている時の会話……盗み聞きする気はなかったんですが、聞こえてしまったんです。そこで漏れ聞こえた内容によると……カディナ先輩、すごく体重を落とされてしまったようですね。……何キロになっていたか、もしくは何キロ落ちていたか……はわかりますか?」

「うん……女子の体重ってすごい興味あるから、覚えてるよ……体重は50㎏だった。間違いなく。……名簿より8㎏も落ちちゃってて、やっぱり学級裁判のあと食べられなかっただけじゃなくて、6日間も監禁されてることそのものがかなりの心労なんだな、って思った」

「そ、それじゃぴったりじゃねえか……ちょっとでもジュースの量がずれてたらもうわからねえじゃねえか……」

 ……いや、確か、ジュースの量は、ちょっとどころじゃなくずれていた。

 だって……

「コップは『ワンポイントを目安に入れると』250mlだったんです……、霧生先輩、乾杯で飲み干した後のカディナ先輩のコップに『なみなみと』注いでいましたよね……体重の50分の1の量を摂取させたのは……間違いなく霧生先輩に、なってしまうんです」

「え……」

 一度、そんな風に呆けたように声をあげた後は、怒涛のようだった。

「い、いや! 勝が見落としていたソバの麺が何本かカディナの丼の中に残ってたかもしれねーじゃねーか! それにジュースの致死量が目安だということには変わりない! 琴間だってまだ容疑が晴れたと言えねーんだからな!! それに! 緊急処置でカディナの口に指を突っ込んだ堀津! それが逆にとどめになってた可能性だってあるじゃねーか! かなり強引に喉の奥までガッてやってたよな! それで窒息したのかもしれねーだろ! 俺はクロじゃない! 俺はクロじゃないんだ!! カディナを、殺してなんか、いない! いないんだ!」

 そう、にわかに堀津先輩までをも巻き込んで自己弁護をしだす霧生先輩。……逆の立場だったら、自分もそうしていたかもしれない。だが……この事件を終わらせなくては、と、事件を最初から振り返ってみることにした。

 

 

クライマックス推理!

 

 ACT1

 事件が始まってたのは……今日の朝からだったんです。浴場に向かうメンバーに、羽月先輩がクーラーボックスに入れたジャバウォックオレンジを絞ったジュースを持たせたんです。それは全く悪意なく行われたものですが……それは薄くとも確かな毒だったのです。風呂上りに……カディナ先輩はそれを500ml、飲んでしまったのです。

 

 ACT2 

 カディナ先輩を含む僕ら浴場組の裏で、パーティー準備組は昼に向け支度をしていたんです。浴場組が思いのほか長風呂してしまったことで、それは僕らが来る前にほぼ完了してしまっていたんです。……クロが、全員のコップにジャバウォックオレンジジュースを注ぐことも含めて。

 

 ACT3

 乾杯の後、一気呵成にソバを食したカディナ先輩。……まさかそれが、自分を死に導く毒の一種であることに気付かずに、それを平らげてしまったのです。そしてその後、致死量の毒となる分のジャバウォックオレンジジュースを注いでしまったのは……。

 

 Final

『準・超高校級の芸人』霧生雄大先輩……

 それは……あなたなんです。

 

 一回目の学級裁判のような、周到な殺意、悪意、攪乱……そういった作為がないだけに、事件のまとめは案外短かった。……だからってそんなことは、なんの救いになるというのだ?

「さーて、そろそろ決まったかな! それではお待ちかねの投票ターイム!」

 モノクマがそう急かしてくる。

「俺は! クロじゃない! 誰だよ! カディナを殺したのは! 前回福添がカディナにしたみたいに俺を陥れようとしている奴がいるんだろ! 許せねえ! 出て来いよ!」

 それでもなお、もはや霧生先輩は錯乱状態といってもいいほどに、ただただ喚いている。……当たり前か、福添先輩がされたような凄惨な処刑が、まもなく自分の身に降りかかってしまうのだから。……福添先輩と違って、全くの悪意がないというのに。

 かくいう自分も、どこかで『本当に霧生先輩はクロじゃなくて、霧生先輩が言っていたように羽月先輩か堀津先輩あたりが真のクロで、誤答でオシオキを受けるかもしれない』という恐怖や、『実は本当のクロは自分で、先輩方を皆殺しにする結果になってしまうかもしれない』という恐怖がどこかにある。

 それでも僕が叫びだしてないのは、『全員で懸命に推理してたどり着いた答えなんだから、正解しているはずだ』という、根拠というにはあまりにも細い希望的観測のようなもので、心を、精神を、支えているからなんだろう。

「おやおやぁ、まだ押してない人もいるよ! 早くしないとダメだよ! あと10数える間にボタンを押さなかったら、校則違反でオシオキだからね! じゅーう、きゅーう、はーち、なーな」

「うわ……ああああああああああああ!!!!!!!!!」

 そう叫び声をあげた霧生先輩が電子生徒手帳を押すと……

「よしっ! これで出そろったね! それでは! 結果はっぴょーう!」

 と楽し気にそう宣言するのだった。

 

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