ダンガンロンパ・コンパチブル   作:こんぱち

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第四章 非日常 捜査編

 羽月聖来先輩。

 率先して自己紹介を始めたり、困惑している僕に状況の説明をしてくれたり、突然の共同生活を送るに当たって誰かに負担が偏らない様に自分から働きかけてくれたり、積極的にみんなと関わって来た、小柄な見た目とは裏腹にお姉さんのような存在だった羽月先輩。

 

 瀬戸政直先輩。

 いきなり監禁されてコロシアイを強制されるような状況で自分も混乱しているであろうに、動揺のひどい他の人を優先し、散髪や美容ケアをして、落ち着くようにはからってくれた、見た目通りの大人びた存在だった瀬戸先輩。

 

 ……そんな二人が、ちょうど同じように、その全身を無数の槍に貫かれ、大量に血液を垂れ流して絶命している。昨日、まさに昨日、三人も、岸和田先輩も手岡先輩も堀津先輩も、亡くなったばかりだというのに、なんでこうも立て続けに。

 

「校則違反だからって、大切な大切な友達が亡くなって、はいサヨウナラ、サヨウナラ、っていうのはなんというか、イカニモ寂しいよね」

 打ちひしがれている僕らなど、どこ吹く風といった調子で、あいかわらずモノクマは底抜けに明るい口調で続けていく。

「だからねだからね、今回は、二人が犯した校則違反の内容について当ててもらう、っていうのにするよ! これは学級裁判じゃないから、外しても特にオシオキはないし、正解したらこちらからごほうびをあげる予定だから、みんなでがんばって捜査してね!」

「……で、拒否権は?」

「ん? そんなものはキミたちにはないよ? ないんだよ?」

 一目先輩の質問に、キョトンとしたような顔で返すモノクマ。

「モノクマファイルは送っておいたから参照してね! それと今回も亡くなった子の部屋には入れるようにしておいたから、それじゃあね!」

 そんなモノクマを、僕はただぼうぜんと見送ることしかできなかった。他の先輩方も、瀬戸先輩の遺体の側にひざまずいて嗚咽をこぼしている竹枡先輩、無言のまま羽月先輩の傍らにたたずむ芳賀先輩と留守居さん、なにかぶつぶつと言いながら廊下の片隅にうずくまって遺体を見ないようにしている黒須先輩、僕と同じようにダストルームの入り口でただただ佇んでいる勝先輩……そして。

「さて、じゃあ調査をしようかね」

 ……事ここに及んでもあいかわらず、飄々としている風の一目先輩。僕も打ちひしがれている場合ではない、今回はオシオキなしとはいえ、真相を究明するために動かなくては、とまずは電子生徒手帳に送られてきたモノクマファイルに目を通す。

 

『モノクマファイル5

 死亡者は 準・超高校級の美容師、瀬戸政直。

 死体発見現場はダストルーム。

 死亡推定時刻は午後9時45分前後。

 死因は全身を槍で貫かれたことによる出血性ショック』

 

『モノクマファイル6

 死亡者は準・超高校級の絵本作家、羽月聖来。

 死体発見現場はダストルーム前の廊下。

 死亡推定時刻は午後9時50分前後。

 死因は全身を槍で貫かれたことによる出血性ショック』

 

 ああ、またしても、二人、亡くなってしまったんだなあ……と痛感する。しかし、5分程度の差とはいえ瀬戸先輩のほうが先に亡くなったのか。これは覚えておいたほうがいいかもしれない。

 

 コトダマ『モノクマファイル5』を手に入れました

 コトダマ『モノクマファイル6』を手に入れました。

 

 そして……モノクマが校則違反による制裁と明言している以上、やはり今回は校則にも、もう一度目を通しておくべきだろう。と電子生徒手帳を立ち上げる。

 

1 生徒はこの寮内で共同生活を送りましょう。期限はありません。

2 夜10時から朝6時は夜時間とします。食堂などに入れなくなる施設があるので注意しましょう。

3 就寝は個室で。

4 寮内の調査は自由ですが、立ち入り禁止の区域には入らないようにしましょう。

5 モノクマへの暴力、ドアや設備や備品の破壊、消耗品の無駄遣いは禁止します。

5-2薬品棚の毒や薬を、排水溝や焼却炉に廃棄することを禁じます。

6 禁止行為が発見した場合、罰を受けることがあります。

7 他の生徒(見学生の琴間恵那樹クンも含みます)を殺害した生徒は卒業となります。

8 しかし、殺害したことを他の生徒にバレてはいけません。

9 校則は追加、修正されることがあります。

10 一人の犯人が殺せるのは最大二人までとします。

 

※ 毒に関するルール

1、Aが毒『甲』をBに無理やり摂取させ死亡した場合、クロはAとみなす。

2、Aが毒『甲』をBに渡し、Bが自ら摂取し死亡した場合、クロはAとみなす。

3、Aが毒『甲』をBに渡し、さらにBがCに渡してCが摂取し死亡した場合、毒であることに関して知っていたか知らなかったかを問わず、クロはBとみなす。

4、Aが毒『甲』を、Bに毒『乙』をそれぞれCに渡し、Cがそれらを交互に摂取し死亡した場合、致死量とみなされる量を摂取した時点で、直前にとっていたものを渡した人物をクロとみなす

5、AがBに毒『甲』を渡し、Bがそれを致死量とみなされる分以上を摂取した後で、Cがさらに毒『甲』を渡した場合であっても、クロはBとみなす。

 

 

 ……そういえば今朝、5-2と10が追加されたんだったな。 それと、多分今回は関係なさそうだが、毒に関するルールか。……くそ、どうしてもカディナ先輩と霧生先輩の顔が浮かんでしまう。

 

 コトダマ『校則一覧』を手に入れました。

 コトダマ『毒に関するルール』を手に入れました。

 

 さて、やはりダストルームに遺体がある以上、やはりここは重点的に調べておいたほうがいいだろうと、周囲を見渡す。

「……せと、くん」

 ……もはや返事をすることはない瀬戸先輩の遺体と、顔面蒼白とした竹枡先輩の顔貌が目に留まったが、うろたえている場合ではない。と、部屋最奥の焼却炉へと足を運ぶ。僕は今まで使ったことがなかったが、電子生徒手帳を読み込ませるタッチパネルがついており稼働と停止を切り替えられる仕組みになっているようだ。利用履歴も調べられるようになっており、直近で『稼働 瀬戸政直 午後9時45分』と表示されていた。

 

 コトダマ『焼却炉の利用履歴』を手に入れました。

 

 そうだ、僕が厨房の掃除を終えた後に出たゴミを回収したのは瀬戸先輩だったじゃないか、これもなにか手掛かりになるかもしれない。と、思い出して、ふとひっかかることがあった。……なんで自分は、『掃除を終えて厨房から出て、瀬戸先輩にゴミ袋を渡した時間』を覚えていないんだ? 厨房内にあるはずの時計がちらりとでも目に入っていれば、大まかにでも覚えているはずなのに。

 

 コトダマ『ゴミ回収する瀬戸先輩』を手に入れました。

 コトダマ『時間を覚えていない自分』を手に入れました。

 

それと……タッチパネルの傍らに落ちているのは電子生徒手帳と……、中身の入ったごみ袋? 透明で中身がある程度見えるようになっているが……ハンドクリームの外箱や、髪染めのパッケージなどが入っているようだ。そう言えば瀬戸先輩は勝先輩と手のケアについて話していたり、瑞倉先輩の髪を染めたりしていたな。これは……瀬戸先輩が出したゴミだろうか?

 

 コトダマ『タッチパネル前に落ちていた電子生徒手帳』を手に入れました。

 コトダマ『残されたゴミ袋』を手に入れました。

 

「……なにか手掛かりになるようなものはあったかい?」

 と僕に話しかけてきたのは勝先輩だった。今回は統制をとろうとするような人はおらず、みな困惑しているような状態だったが、彼はその中でも早くに立ち直ったようだった。

 ……って、あれ? よく考えてみるとおかしい。

 厨房を主に使っている勝先輩は清潔を旨として、『まず掃除からだ』と言っていたじゃないか。そんな勝先輩が……あのようにひどく散乱した厨房をそのままにしておくだろうか? これは尋ねてみるべきかもしれない。

「……勝先輩、ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」

「うん、なんだい?」

 口調は穏やかだが、努めて動揺を見せない様に自制している風でもあった。勝先輩は共同生活における食事面を主に担っており、ほぼ全員と良く関わっていた。その中でも一緒に料理をすることもあった羽月先輩、同じ客商売の才能を持つ瀬戸先輩、二人ともども仲が良かったので、さすがにショックは大きいのだろう。

「パーティーのあと、厨房がすごく汚れてたんですけど……」

「すごく? すごくってどれくらい?」

「いやもう『どうしたらこんなに汚すことができるんだ……』ってぐらいです」

「……うーん、パーティーの前にほぼ片付けも済ませちゃってたし、残りは羽月サンがやっておくよ、って言ってたから任せておいたんだけどね……お皿とか片付けるときにちょっとこぼしたりしちゃったのかな?」

 そう答える勝先輩だが、あれは『ちょっとこぼした』っていうレベルじゃなかった。……そんな急に汚れることがあり得るのか?

 

 コトダマ『勝先輩の証言』を手に入れました。

 

 そろそろ他の所も捜査してみるか。今回、残る人を決めずに捜査に入ってしまったが、モノクマが『今回は校則違反による罰則』『オシオキはない』と明言している以上、クロが証拠隠滅を図る可能性は薄いだろうし、……それにここまで人数が減ってしまった以上、現場にばかり人員を裂いてしまったらそれ以外の場所が手薄になってしまうだろう。現状、すでに今話しかけてきた勝先輩と、瀬戸先輩のそばに座り込む竹枡先輩以外は出払っている。

 ……とダストルームから出ると、廊下に横たわる羽月先輩の遺体が目に留まってしまう。

「羽月さん……」

 傍らにいるのは……留守居さんか? 彼女もまた、ここに来てまず面倒を見てくれた羽月先輩の急すぎる死に動揺しているのだろう。……やはり彼女には、ここに来てから羽月先輩とのことをきいておいたほうがいいな。辛い状況に追い打ちをかけるような形になってしまわないよう、言葉を選びながら。

「……留守居、さん。少しお尋ねしたいことがあります」

「えっと、琴間さん、でしたね」

 話しかけると、彼女は長い髪をかきわけて、顔を見据えるようにして向き直ってくれた。

「……ここに来てから、すぐ羽月先輩と一緒に行動する時間がありましたよね? その時なにかお話しされましたか?」

「……落ち着くようにお話ししてもらった後、今私も含めた皆さんの現況……コロシアイ生活や学級裁判について簡単に説明を受けながら、空いている部屋に案内されて、そこで一人でしばらく横になっていました。その部屋は私が最初に帰せられていた着ぐるみの中に一緒に入っていた電子手帳で開く仕組みになっていたそうです」

 と、僕がした質問にしっかりとした口調で返す留守居さん。……すぐに羽月先輩が保健室で僕らと合流したことを考えると、あまり長い時間はいなかったのだろう。

 

 コトダマ『留守居さんの証言』を手に入れました。

 

 さてと、次はどこをどう調べればいいんだろう。と考えながら歩みを進めているうちに、保健室にたどり着いた。毎回重要な手掛かりがないかとまず訪れる場所だったので、習慣づいてしまったのだろうか。

 ……そうだ。校則違反と言えば、今朝竹枡先輩が『モノクマポイズンA』を排水溝に流して捨てたことで追加されたんだったな。それで薬品棚に鍵をかけるようになって、キーボックスとパスワードで管理することになったが、一応今回も確認しておくかと中に入ると、作業机に腰かけている黒須先輩がいた。

「……黒須先輩」

「ひぃっ!」

 僕が背後から話しかけると、彼女は怯えたような声を上げながら振り返る。

「……ああ、琴間君か。ごめんね変な声上げちゃって」

 僕の姿を認めると、やや安心したような声を上げる。

「いえ。こちらこそ驚かせてすみません。ですが、ここで何をされてたんです?」

「……今回薬品棚に鍵をかけたけど、やっぱりここが気になっちゃって。棚の外に出してる常備薬みたいなものもあるし。……でもやっぱり、なくなってるものはなかった」

 と説明をする黒須先輩。つまり、今朝選別した以降、薬品棚にあったものは持ち出されていない、と考えていいだろう。

 

 コトダマ『黒須先輩の証言』を手に入れました。

 

 それと……やはり、事件の当事者となってしまった二人の部屋に関しても調べておくべきだろう、黒須先輩にそう告げて寄宿舎へと向かい、まずは羽月先輩の部屋へと入る。

「……ああ、えなきん。来たか」

 扉が開いて入ってきたのに気付いた芳賀先輩が話しかけてきた。特に羽月先輩と仲の良かった彼女、いつもの陽気な雰囲気とはうってかわって神妙な表情を浮かべている。

「ちょっとこれ、見て欲しいんやけど……」

 と言って差し出されたのは、手のりサイズの箱。パッケージには『凝固剤』と書かれている。天ぷらとかフライとか油を大量に使う料理の後に出る廃油とかを捨てるのに使うやつかな? 特にモノクマとかの意匠もあしらわれてるわけじゃない、市販のと同じものだ。

「これがどうしたんですか?」

「ああ、こういうもんがあるんは厨房の備品としてあるんは知っとったんやけど、これって主に厨房で使うもんやろ? なんで部屋にあるんやろな、って気になってな」

 ……確かにわざわざ部屋に持ってきて使うような用途はぱっとは思い浮かばない。これも記憶しておいたほうがいいかもしれない。

 

 コトダマ『芳賀先輩の証言』を手に入れました。

 コトダマ『凝固剤』を手に入れました。

 

 さて、次は……瀬戸先輩の部屋か。と、重い足を引きずるようにして向かい、扉を開く。

「ああ。来たね予備学科志望君」

 と話しかけてきた先客は一目先輩だった。

「結論から先に言っておくと、この部屋は掃除でもしたばかりのようにきれい、って事の他は特に変わった点はないみたいだね。逆に言えば、掃除をする必要があったのかもしれないけど、どっちだろ?」

 と聞く前から話し始める彼。確かに言う通り、一見しただけでもきれいにしてある部屋だと分かる。

 

 コトダマ『一目先輩の証言』を手に入れました。 

 

「……しっかしさあ、変なことするよね」

「変なこと?」

 とおうむ返しに聞き返す。

「僕たちに自主的にコロシアイさせることに意味があるのか、裁判で犯人を明らかにすることに目的があるのか、と思ってたら、今回は校則違反です、裁判もないですって言うんだからさ」

 

『ピンポンパンポーン! さてさてそろそろはじめちゃおう! お馴染みのエレベーターの前に集まってくださーい!」

 

 と、急にアナウンスが入る。

「あれ、もうなんだ。僕はここぐらいしか捜査できてないけど、まあ今回も予備学科志望君がうまいこと立ち回って情報集めててくれてるかな?」

「ええ、まあ……一通り回りましたけど」

「そっかそっか。頼りにしてるよ」

 と言って、先だって部屋から出ていってしまったので、僕もそれを追い、エレベーターを目指す。到着は僕らが一番乗りだった。

「……瀬戸くん」

「……どうなってしまうんでしょう」

「……また誰かを疑わなきゃならないんだよね」

「……しっかりしなきゃ」

「やるしかないんやな……」

 一人、また一人と集まってきて、エレベーターに乗り込む。一人、留守居さんが増えたというのに、こんなに広く感じるのだなあ。

 

 ……今回はオシオキはない、とはいえ、コロシアイを仕組んだ奴らのことだ。一筋縄でいくはずはない。

 今までにない形で、始まる。

 信頼、 

 裏切り、

 騙しあい、

 ……の、学級裁判が。

 

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