中泉が目覚めた時、ラチ内には静寂だけが広がっていた。クィムガンももうそこにはいなかった。
(自滅かな、それとも……)
中泉は視界の隅に捉えていた。Sバーストによりもたらされる噴炎に向かって伸びる一筋の光を。
無駄なことを。そんなことをしても、この圧倒的な量を誇る噴炎には敵わないのに。彼はその時は確かにそう考えていた。だが。
(もしかしたら、
ラチ内を見渡せば、数人のトレイナーが倒れている。つい先程まで彼自身がそうであったように。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……。ここにいない4人は出場できたんだよね? 他の6人はぼくも入れてみーんな、耐えられなかったか。とりあえず、全員ラッチコアまで運ぼ」
クィムガンがいなくなっていて幸運だった。中泉は心の底からそう思った。
シールドが割れ、トレイニングが解けてしまったトレイナーが6人集まったところで、クィムガンには叶うはずもない。ましてや、Sバーストをしたものであればなおさら。その先にあるのは、
(トレイニングは……まだ、無理か。なら、それほど時間は経ってない)
中泉は1人ずつ背負って倒れている同僚をラッチコアまで運んだ。シールドが効いていたのか、誰一人とて外傷がある様子はない。
とりあえずは、良かった。全員を運び終えてそう一息ついたところで、彼は違和感に気がついた。
(どうして、
だが、山根の姿は中泉が再び360度見回しても、ラチ内には見当たらなかった。
ラチ内のうち、少なくともエキステーションの地面は平坦だ。死角など存在しない。動かなくても全体を見回すことができるよう、
(ならば、彼は
「ラチ際から撃って、ぼくが呑まれた後に出場した?」
少なくとも、今の中泉にそれを確かめる術はない。誰かラチ外から入ってきてくれれば情報を共有できるのだが。
彼のその望みが果たされるのに、然程時間は要さなかった。少しして、1人のトレイナーが入場し、中泉の元へとやってきた。
「お疲れさまです。よく皆さんご無事で」
「まぁ、ぼくが目覚めた時には全て終わっていたよ。確認したいんだけど、ぼくが退避を告げてからラチ外に出たのは何人だい?」
「えっと、3人で……!」
救援にきたトレイナーも、そう答えた瞬間に指を何かを察して手の指を折った。
「10人、ラチ内にはいたんですよね?」
「うん」
「
「やっぱり、キミもそう思うよね? こんなんだから、このラッチは
「承知!」
★
気がつけば、僕は1人色を失った世界に立っていた。
腕や足を見れば、トレイニングは解けている。どうやら博打には失敗してしまったみたいだ。
どこまでも続く、真っ暗闇の世界。一歩踏み出してみても、本当に進んでいるのかの確証すら持てないし、その先に地面があるのかすらわからない。そもそも、今立っているのだって、確かに足元には何らかの感触があるような気はするけれど、ここに本当に地面はあるのだろうか? そして、この空間が広がっているのか、壁があるのかすらも。
昨日見えた世界では、一筋の光が見えていたのに、それすらないのだ。
それはまるで、周りが真っ暗なことを除けばラッチを越えているときのような感覚だ。だけど、その時のような引っ張られている感触もない。
……あれ。
これ、帰れるのか? なんか不安になってきた。そもそもどうやって僕はこの不可思議空間に来たんだっけ?
頬をつねる。痛い。引っ張る。痛い。夢じゃない。夢ならばどれほど良かったか。
「……はぁ」
「おや、またこんなところに」
「誰です?」
反応が戻ってくるなんて予想だにしなかったため息に、反応が戻ってくる。振り返れば、クリーム色の髪のノリモンがそこに立っていた。
「Sバースト。違うか?」
「……!」
「なるほどな、
「あの、あなたは……?」
「安心しな、元の次元には戻してやる。それが母なるCycloped様により定められたオレの役割だ」
そう言うと彼は全身を紫色に光らせて、僕の肩に両手を置いた。
「あの、お名前を伺っても? それに、ここはどこなんです?」
「名乗るほどの者じゃない。……が、お前は何度かここにまたやってきそうな匂いがする。次にまた会うことがあればそのときに教えよう。ま、来ないで済めばお互い良い」
そう答えながら、彼は僕をよくわからない方向へと押した。
「そしてここはどこ、か。難しい質問だな。強いて言えば、
その言葉が聞こえるや否や、僕の視界は真っ白に染まった。