ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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4レ②:流石に無理があるのでは

 ドラコを始めとした先行隊がラッチに入ってから、数分が経った。

 

「出てこないですね、ドラコもグルスも」

「落ち着こうか。まだ慌てるような時間は経っていないよ」

「そうは言っても、常に最悪を想定して備えるのが一流。その目安は伝えておくべきかと思われますが」

「そこはたしかに佐倉君の言う通りかもしれないね。20分だ。20分経ったら出てこなくても動こうか」

 

 まぁ大丈夫だと思うがね、と早乙女さんは続ける。根拠を聞いてみれば、ドラコ・ユニットは実力者の集っているユニットだから信用しているのだという。長いことJRNにいる早乙女さんがそういうのならきっとそうなんだろう。

 そして彼の予想通り、入場から10分が経とうとした頃に、グルス・ユニットのメンバーのうち4人が出場してきた。

 

「グルスよりウルサへ、今回のクィムガン、攻撃はそこまで激しくはないんですがとんでもなく固いです。バランスだけで何度も殴っても赤の減りがかなり遅い」

「情報をありがとう。……行くぞ、佐倉君、北澤君、山根君」

 

 トレイニングをしてラチ内に入ると、怒涛の勢いで無線が飛び交っていた。

 

『ドラコバランスよりドラコロケットへ、攻撃準備完了どうぞ』

『ドラコロケットよりドラコノーヴルへ、ドラコバランスの補助ヨロタムどうぞ』

『ドラコノーヴルより、承知』

『ウルサバランスよりドラコロケットへ、ウルサ・ユニット全員入場どうぞ』

『ドラコロケットよりウルサバランスへ、承知』

 

 そしてラッチの真ん中を見てみれば、ちょうど巨大な火球がクィムガンの赤いシールドを直撃していた。ということは、その元にいるのが無線的にドラコのバランスの人なのだろう。

 

 そして。目の前にいるクィムガンは……その……何と形容すべきか適切な表現がちょっとよくわからないけれど、強いて言うならば産廃の山のような異型だ。色々な機械の部品が、到底本来の用途とは思えないようなめちゃくちゃな繋がり方をして、1つの個体を形成しているのだ。サイクロの研究ではノリモンの1形態だと言ってはいたけれど、実際に対面してみると正直な話にわかには信じられない。

 いくつもの触手(でいいのだろうか?)を伸ばして振りかざす中、それをかわしながらドラコの人としれっと混ざっていた成岩さんがシールドを殴り、おそらくはときどきレーザーを発射しているのだろうか。そしてその回避をしながら殴る作業に佐倉さんと北澤さんも加わっていった。

 

『ドラコロケットよりウルサロケットへ、遠距離攻撃と聞いていますが、打てるタイミングになり次第連絡願いますどうぞ』

「ウルサロケットより、承知しました」

 

 うーん、遠距離攻撃かぁ。たしかに《桜銀河》は遠くまで届くものではあるけれど、実際のところ乱戦している中に打ち込むのは問題が多すぎる技だ。

 そんなことを考えている間に、《桜銀河》の溜めが終わる。あんまり期待されてもしょうがないので、一回実際に打って問題点を見てもらった方がいいのかもしれない。

 

「ウルサロケットよりドラコロケットへ、いつでも撃てますどうぞ」

『ドラコロケットよりウルサロケットへ、発射を許可』

 

 《桜銀河》を打つ。桜色の光が黄色いシールドに当たると、クィムガンもそれに負けじとシールドの配色を変えんと黄色の部位を動かす。だけれど、僕はそれを追うことはできなかった。

 

『ドラコロケットよりウルサロケットへ、攻撃を中断したのはどうしてですか、どうぞ』

「ウルサロケットより、そのまま追尾すると巻き込みます」

 

 そう、移動した先へと至るその経路上に、近接攻撃を仕掛ける別のトレイナーがいたからだ。巻き込まないようにするには、ほとんどシールドを削れてもいないのに短時間で攻撃を中断せざるを得ない。

 これが例えば先ほどドラコのバランスの人がやっていた攻撃の場合は、放物線状に攻撃が移動するから間に仲間がいてもそこまで大きな問題はない。上を通せるし、角度と初速を調整すれば理論上通ることができるルートは無数に存在するからだ。しかし《桜銀河》の軌跡は直線。間に仲間がいる場合その仲間に当たってしまうのは避けられない。

 そしてもう一つ問題が露呈した。実は《桜銀河》のシールドに与えられる時間あたりのダメージはそんなに大きくない。長時間継続して攻撃を当て続けることができるので累計が高くみえるだけだ。なのに短時間で攻撃を中断してしまったら? ただの使い勝手の悪い攻撃である。

 ……あれ、この技一本でトレイナーとして活動していくの、流石に無理があるのでは? 帰ったらちょっとクシーさんと相談しておいた方がいいかもしれない。

 

『ドラコロケットよりウルサロケットへ。クィムガンに近づき、近距離で打つことは可能ですか、どうぞ』

『ウルサバランスより、まだ近接戦闘を教えていない、無茶をするな』

 

 現場指揮のドラコのリーダーとの間のやり取りに、早乙女さんが割り込んでくる。

 そうは言うけれど。足を引っ張るだけなのは嫌だ。

 

「ウルサロケットより、やってみます」

『ウルサバランスより、無茶だけはするなよ』

 

 クィムガンの周りを走りながらスピードを上げる。早く近づいて早く逃げればリスクは少ないはずだ。そして他のトレイナーの位置や今出ているシールドの動きを考慮すると……。

 

『ウルサノーヴルよりウルサロケットへ、次の周回のホテルデルタからゴルフアルファ、そしてフォクスロットキロへ繋がる線路だ』

 

 何故かこのタイミングで指示が成岩さんから飛んでくる。概ね意味は理解できるし、させようとしていることも解るが、どうしてその僕のやろうとしたことに対して適切な進路を指示できるんだろう? あの人エスパーか何かかな?

 

「ウルサロケットよりウルサノーヴルへ、ホテルデルタに進入、ドラコロケットへ、発射準備完了ですどうぞ」

『ドラコロケットよりウルサロケットへ、発射を許可』

 

 ホテルデルタの線路から、ゴルフアルファの線路に転線しわずかに斜め左前に《桜銀河》を放つと、シールドの黄色い部分はトレイナーのいない左へと逃げ始める。それを追うように左のキロへとつながる線路に入り、近づきながら攻撃を継続。そして真横にシールドを見るところまで追いかけたら、攻撃を止めて反撃が来る前にそのまま逃げる! 完璧なヒット・アンド・アウェイだ。

 だがしかし、現実は厳しい。これでも攻撃を継続できた時間は普通にやったときの2倍超に過ぎなかった。ならばわざわざ理想的なタイミングを突くより、普通に2回《桜銀河》を放つ方が安定的だ。

 なんとも微妙な気持ちになりながら、僕は外周の線路を駆け回っていた。

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