ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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10レ前:第13種目・リレー

 唐突だけれど、各駅停車と特急、速いのはどちらだろうか?

 そりゃあ特急のほうが速い。多くの人はそういうだろう。

 だが。実際はどうだろうか。隣の線路で各駅停車と特急をヨーイドンで同時に走らせたとき、たいていは各駅停車が先に前へと出ていく。そして、その各駅停車に特急が追いつけるのは、次の駅に向けて各駅停車がブレーキをかけ始めるよりも後だった……なんてことは、珍しくもなんともない、割とよくある現象なのだ。

 

 閑話休題。

 今回のリレーだが、重大な懸念があった。

 車輪が使えるルールなのに、一人あたりの距離が、2.5kmしかないのである! 2.5kmというのは、全体的にキールが特急寄りであるウルサにとっては短すぎる距離だ。最低でも5kmはほしい。

 

「位置について、ヨーイ、ドン!」

 

 海から上がって間もないが、リレーの区の担当の決定のために走る予定の4人で短距離走を行った。

 0からの加速は一番早いのが成岩さんで、続いて佐倉さん、僕、北澤さんの順。最初の一人だけはタブレットを持った状態で停止からのスタートになるから、第1区の担当は成岩さんに決まった。

 そしてそれ以降の3人だけれど、まずタブレットの授受のための減速の不要なアンカーに最高速度の高い僕が、残りの2人はそれぞれ話し合って第2区を佐倉さん、第3区を北澤さんが担当することに。

 

「あの」

「なんだい?」

「僕がアンカーですか?」

「速いからな」

 

 ……まぁ、タブレットを繋いでゴールラインを突き抜けるだけだ、何も難しいことはない。僕はそう自分に言い聞かせながらタブレットを受け取る練習を何度かした。

 

 そして、昼食を挟んで。

 少しだけ腹ごなしの時間をおいてから、リレーのレースは幕を開けた。

 24のトレイナーが横一列に並ぶ中、発車のベルが鳴り響く。一般的な本線でのレースの慣習に習って、このベルの2コーラス目が終わった瞬間がスタートだ。

 

 スタートと同時に、成岩さんは《ハイブリッド・アクセラレーション》で強引に最前へと飛び出た。彼はレース前にこう言っていた。ここまでの経験から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。ごもっともだと思う。

 事実その後ろでは、ドラコのファーストランナーたる氷川さんが既に凍てつくフィールドを作り始めていて、そして憐れにも数名が呑まれている。二人三脚と同じ手なので範囲内でも上手く処理できている人も半分くらいはいるけど。ただ、恐ろしいのはこの凍結は妨害目的ではなく氷川さん自身が走りやすくするためのものであるということ。つまり、他の人が引っかかろう引っかかるまいがが氷川さんにとっては全く関係がなく、その目的が達成されているのである。

 氷を残して、24人は建物の影へと消えていく。……これ、僕はともかく北澤さんの番までに溶けるかなぁ。どうせ佐倉さんがボコボコにしちゃうし、溶けきらなかったら路面が最悪だ。

 

 少し待つと、反対側からファーストランナーが一周して戻ってきた。どうやら成岩さんは逃げ切ることができたみたいで、タブレットを左手に逆手に持って走っている。そして右腕を鉤のように曲げて走り出した佐倉さんの横を通過すれば、タブレットはその佐倉さんの腕に掛かっていた。通過授受だ。

 佐倉さんはこの前と同じように《ホライゾン・レッド》で残っている氷を溶かしながら進んでいく。1つだけ違うのは、車輪が使えるがゆえに轍のように少し連続的に氷が消えていること。とはいえ、それでも走り出しでは足そのものも回すから断続的な氷の消失だけれど。

 そのどうしようもない路面を2番手で追いかけるのは中泉さん。彼は凍結した路面の端で左足を常に滑走させながら右足で凍っていない大地を蹴ってぐんぐんと加速してゆく。

 

「やっぱり味方のは対策してんだな」

 

 戻ってきた成岩さんがそう溢す。そりゃ、対策してなかったら作戦だとかそのあたりの明確なミスでしょ……。

 まぁそれでも、ところどころ佐倉さんが溶かした跡に引っかかって走りにくそうにしているのは、佐倉さんナイスとしか言いようがない。こういう変なことをしてくるユニットと競走しなけりゃならなくなったときは、一番前で誰にも邪魔されずにマイペースで走るのがベストなのだ。最速列車が早朝や深夜の列車に設定されているのと同じように。

 

 そしてタブレットは第3区の北澤さんへと受け渡される。そろそろ僕も準備をしないとな。全てのユニットが第3ランナーへとタブレットを繋いだのを確認してから、僕はテイクオーバーゾーンへと入った。

 隣を見る。ドラコの松代さんが、全身を緑に包んで目を瞑り、鮫島さんの到着を待っている。彼女のキールたるメカマセンゾク号は、レールレースの世界では有名なノリモンだ。その力を借りているのだから、彼女だって間違いなく速いに決まっている。

 成岩さんと佐倉さんが相当稼いでくれたし、北澤さんだってどちらかといえば走るのが速い方だからおそらくここでの授受は一番最初になるだろうけど、ゴールまで逃げ切れるかは怪しい。

 だけど、隣が誰であろうと僕がこれからできること、やることは変わらない。全力を以ってこの2.5kmを駆け抜ける。ただそれだけだ。

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