「ただいまー。……って、山根君はともかくなんで成岩先輩までぐったりしてるの?」
イギリスとのボイスチャットを終えてからしばらくして、競技から3人が戻ってきた。当然僕達はそのせいで精神的に疲れが出ており、結果として僕は休んでいなかったこと、成岩さんは僕を休ませなかったことを早乙女さんにこってりと叱られる結末となった。
これもぜんぶアドパスさんが悪い……んだけど、流石にこれ以上話を大きくしたくないので二人揃って黙って叱られておくことにした。アドパスさんは戻ってきたときのために覚悟の準備をしておいてほしい。
ただ、体力の回復は認めてもらえたようで、翌日の謎の競技、第15種目・デュエルへの参加は認められることになった。
デュエルとは、定められたルールによる1対1の決闘のことである。この競技では、それを3人一組で行い、2本先取のマッチゲームでのトーナメント形式で行うのだという。
それで、肝心の定められたルールであるが……。
「『山札からカードを1枚引き、そこに記されているもの』……ってこれ、要するに闇鍋じゃねぇか」
「その場での戦術の組み立てが重要。クィムガン対応と同じ」
「そう言われちゃそうなんだがな」
ちなみに、全24のユニットのうち僕達ウルサを含む現時点での暫定上位8ユニットはシードとして第1試合が免除されている。そのため、最初の試合は第1試合を勝ち上がってきたゲミニと戦うことになった。
1番手の成岩さんが山札からルールカードをドローした。そこに書かれていたのは『匍匐前進:移動は全て匍匐前進で行い、試合中は腹部を地面から離してはならない』、ただそれだけである。
ルールを聞いたとき、僕は正直にこう思った。これ
そしてその予感通り、1番手の成岩さんはレンジの長めの大鎌を振り回して一瞬で相手のシールドを叩き割って終了。2番手の僕ももはや言うまでもなく1分足らずで勝利を確定。あまりにもあっけなさすぎる滑り出しとなった。
ちなみに、2本先取なのでこうやって連勝すると3番手の出番が消滅してしまう。そうなったときは、3番手が次の1番手になって残り2人は繰り下がることになっている。
「……つまらん」
「そりゃこのルールじゃ一方的に勝つに決まってますって……」
普通に引いたルールが悪かった。たぶん煙が充満した現場とかを想定しているんだと思うけど、それならそれでフィールドに障害物をおいておくとか、もっとやりようが……いや、それはそれでルールが決まってからじゃ準備が大変か。うーん。
「2人に噛み合ってただけ。普通は匍匐前進はきつい」
「そう言われちゃそうなんだが。俺の場合オオカリベは元から横に振り回すウェポンだし、山根は直進性エグい技があって最早動く必要すらねえしな」
「ん、次のルールに期待」
そう軽く振り返りを終えて、全ての組での第2試合が終わるのを待つ。
この競技、引いたルールによる所要時間の差が恐ろしく大きいようで、時間がかかってしまっているところはなんと1セットではなく1ゲームで1時間を超えてしまっている始末だ。当該ラッチの周りには、まだ終わらないのかと他のユニットのトレイナーも集まり始め、「引きたくねー」「中じゃサレンダーのチキンレースでもやってんじゃないのか」だとか囁きあっている。
一体どんなルールなのかと聞けば、そのユニットメンバーの持つカードには『丸腰:体術のみで行い、ウェポンを使用してはならない』と記されている。……うん、そりゃ時間かかるって。一回《桜銀河》を使わずにクシーさんのシールドを割りに行ったことがあったけど、削れるシールドの量が恐ろしく少なかったと記憶している。なんでそんなルールが山札に入ってるんだ。
そうしてだいぶ待たされてから始められた第3試合のルールは、『目隠し:常に目隠しをして行い、それを外してはならない』がドローされた。
うん、シンプルに難易度が高い。そもそもまともにできるのか怪しい。少なくとも僕は攻撃を当てられる自信も避けられる自信もない。これ、今回の膠着枠なのでは?
そして競技が始まって、目隠しをした佐倉さんを送り出してみれば、予想に反して彼女は3分もしないうちにラッチから出てきたし、続く不安げだった成岩さんですら入ってから5分で出てきた。どうして……。
「そもそもどうやって攻撃を?」
「音でバレバレ」
「オオカリベぶん回しながら動いてたらたまたま当たった」
……なるほど。けっこう対照的な手段で解決していたみたいだ。佐倉さんは相手の場所を割り当てて攻撃を与えていたのに対して、この話じゃたぶん成岩さんは最後まで相手がどこにいたかを認識すらせずに攻撃を通していた感じっぽい。
後で撮影データが届くはずだから見ておこう。参考になるかはわからないけど。
そして、次なる第4試合、準決勝。
僕達ウルサの相手は、またもやドラコだった。
……いや、わかってるよ? そりゃ相手は強豪、そしてこっちも自分達が思っていたよりも強く、強豪に踏み入れている域。全てとは言わないまでも、ほぼ全ての種目で戦うことになるというのは考えるまでもなく当たり前だ。
指定のスペースに向かえば、既にドラコのメンバーは準備を終えている。そして、こちらを確認すると、向こうの1番手である鮫島さんが山札からカードをドローした。