ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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13レ中:準決勝

『ノーガード:少しでもシールドが削られれば敗北』

 

 鮫島さんが引いたそのカードには、そう記されていた。これは一瞬で終わってしまうタイプのルールの方だ。

 

「またアンタらか。そろそろ、板についてきたナ」

「今日もよろしくお願いします」

「一応言っておくゾ。アンタの実力に敬意を示して、新人扱いはしないからナ」

 

 それから2人揃ってラチ内へと入り、トモオモテのトランジットも済ませて準備が整う。

 そして、中で待っていた審判からスタートの合図が出る。

 

 それと同時に、鮫島さんが突っ込んでくる。ただの突進ではない。彼のオモテには、リーゼントめいてチェーンソーが装着されていた。当たればひとたまりもないだろう。

 それを、どうやって避ければいいのかが、スッと()()()()()()()()()()()()()

 

「《クンネナイ》」

 

 大地を強く蹴り、青い光をまとって僕は跳び上がった。そしてその真下を流れる川のように鮫島さんが通過する。そして着地と同時にトモからウェポンであるナタ、コジョウハマを引き抜いて、未だに背中を見せて減速中の鮫島さんの方へと駆け出した。

 

「頼むよ、《ハイブリッド・アクセラレーション》!」

 

 加速し、その背後にコジョウハマを叩きつける!

 だけど、これでうまく行くほどは甘くはない相手のはず。だから、それを受け止められる想定で、そのための技だってこっちにはある。

 

「甘いナ」

「それはどうでしょう、《シララオイ》」

 

 金属同士がぶつかり合う音が聞こえる。つまり、僕の攻撃は防がれたということ。そして、その瞬間に僕は車軸を駆動軸と切り離し、跳ね返される形で軌道上を後ろ向きに走行して距離を取った。

 

 そろそろ、いけるはず。

 何も掴んでいない左手に力を入れる。

 

「距離さえ取ってしまえば、()()()()()()()っ! 《桜銀河》!」

 

 桜色の光が鮫島さんに伸びる。ここまで来たらもう勝ったも同然なので、しっかりとブレーキをかけて立ち止まってから、僕は《桜銀河》を止めて審判のノリモンに目を向ける。目があった。しかし彼は動かない。

 ――まさか。

 

 コジョウハマを構える。その奥に見えるのは、逆向きの真っ白な円錐台。そしてそれは、微かに潮の香りを漂わせながら、確かにこちらへと近づいていた。

 ――渦潮だ。真っ白に見えたのは、周りの空気を吸い込んで泡立っていたから。そして、泡で光が複雑に屈折してしまえば、その内側には届かない。これを目の前にして、先程まで起きていたことが腑に落ちた。

 光が届かないなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから()()()()()()()()()()()()()()()()し、従って()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 うわ、きっつ……。目の前に迫る渦潮を見ながら、僕は正直にそう思った。なんせ近接攻撃を仕掛けようにも近づけば渦潮に襲われ、シールドは削られる。遠距離攻撃は光線であるがゆえに通ることがない。

 

 ――さて、どうする? 逃げるしかない。幸いにも渦潮の動きは遅いので、逃げ続けることはそこまで難しくはない。でも、逃げてどうする? 逃げたところで、勝ち目はあるのか?

 そう考える間にも、渦潮はじわりじわりとこちらに近づいてくる。いつ渦潮が解かれてもいいように《桜銀河》を左手に溜めながら、ギアを繋げ直して後退し、距離を取り続ける。

 考えろ、考えるんだ。

 

 そう考えながら後ろ向きに走っていたその時、急曲線に入ったかのように体の向きが急に変わる。

 これはつまり、直線の起動が終点を迎え、最外周軌道に入ったと言うこと。このどん詰まりから横に逃げて、渦潮から逃げ切れるのか?

 

「いや、行けるはず。ポラリスのスピードなら!」

 

 でも、後ろ向きでは間に合わない。だから。

 跳躍。ニュートラル。空制。ローテート。逆転機。ユルメ。着地。そしてトップギア。走りながらエンドを交換し、そして強く踏み込んで更に加速する。

 そしてどうやってこちらを見ているのかは知らないけれど、渦潮もまた向きを変えて僕を追い込まんとする。これじゃジリ貧、徐々に不利。フューエルユニットの限界が来て先に動けなくなるのは動きの多いこっちだ。それまでに、あの渦潮を攻略せねば。

 とはいえ、どうすれば渦潮を超えられるのか。そもそも、水の壁の厚さすらわからないのに、どうやって攻略すれば……? まずはそれを……。

 

 その時、ふとヒラメいた。

 上だ。渦潮は、上から眺めるものだ。海の中にダイビングして、渦潮に近づいていく人なんていない。

 僕は再び切り返し、逆に渦潮に向かって走り出し、再び《クンネナイ》で跳び上がった。

 

 その瞬間、()()()()()()()。それと同時にそれは高く伸び、回るスピードも上がったように見えた。それはもはや渦潮と呼べるものではなく、塵旋風に水が巻き上げられてた水柱と形容した方が正しいとも思えるようなもの。

 当然、僕の高さはそれを超えるには足りない。だけど、地面を離れているということは、その先の軌道が決定されてしまったということでもあり。もはや止まることも、それを避けることも能わない。出来たことは、バッテリーやら内燃機関やらを積んでいるこの状況で海水に突っ込むのはまずいと、機関を全停止させてトランジットを解くことくらいだった。

 結果、僕はそのままその水柱に突っ込み、そしてシールドに損害を受けた。僕の負けである。

 

 そして、少し置いて審判から正式に僕の敗北が告げられた。

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