ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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13レ後:《クンネナイ》

「さぁ、始めようか。ドロー!」

 

 第5試合、3位決定戦。成岩さんは勢いよくルールのカードを引いた。

 

「来たぜ、このゲームのルールは、『ノーラッチ』!」

 

 成岩さんは引いたカードを掲げる。

 そこに記されていたルールは、『ノーラッチ:ラッチを解いて行う。施設や観戦者に被害を与えてはならない』。

 

「ノーラッチ!?」

「ノーラッチだと!?」

 

 そしてそれを聞きつけた人たちがわらわらと僕達の周りに集まってきた。

 気持ちはわかる。僕だって見るならラッチなしで戦っている様子が見られるやつを見たい。でも、やる側となってはこれだけ集まられるとやりにくい。

 だけど成岩さんはあまり気にはならないようで、意気揚々とトレイニングして、大鎌を構えた。

 

「はじめ!」

「行くぞオオカリベ、《早々来々(サックハヤキタル)》!」

 

 審判の合図から間もなく、猛烈な踏み込みと大鎌の強烈な一撃が、ドラドのトレイナーを襲う。

 一瞬の出来事である。彼のシールドは、哀れにもにわかに刈り取られきってしまった。

 大歓声が成岩さんを包む。

 

「そこまで! 勝者ウルサ!」

 

 ……いや、早くない? 10秒すら経ってない気がするんだけど。

 え、僕はこの空気の中やらなきゃ駄目なのか。しかもノーラッチじゃ《桜銀河》なんてまともに使えやしない。

 

「ほらよ、ステージは作ったから次で決めてこい」

「いやハードル上げないでもらえます? このルール僕は不利対面ですが」

「つべこべ言わずに行ってこい、よ!」

 

 成岩さんに物理的に背中を押され、僕はステージへと上がって、ポラリスのチッキでトレイニングした。

 

「……ほう? いつもの黄色じゃないんだな」

「ノーラッチで周りにこれだけギャラリーがいるのに使える技がありませんからね」

「それがお前の弱点か、いい事を聞いた」

 

 何だよいい事って。

 そもそもこの場で使うつもりはないし、同じJRNだから合宿終われば完全に味方だ。それが「いい事」である要素なんてどこにもない気がする。それとも《桜銀河》をこの場で使わない事自体がいい事なのか……ありそうなのはこっちかな。

 まぁでも、そっちが《桜銀河》にばかり気を取られているならば逆にこっちだって好都合だ。負けるつもりはない。

 僕はコジョウハマを構えて彼に正対した。

 

 そして審判から始まりの合図が出るや否や、彼は一気に後ろに下がって距離を取る。

 ……なるほどね。僕と同じタイプ。距離を取った戦いが得意な感じか。だからこそ、《桜銀河》を強く警戒していた訳だ。

 ならば、距離を詰めるまで。特に足元にレールがないこの状況では、後ろ向きに走る彼に正面から追いつくのはそんなに難しくない。

 軽くコジョウハマを振り回して牽制すれば、彼はその殆どを体勢を変えて躱した。どうもポラリスとトレイニングする前の僕と同じように、近接攻撃を受け流すすべがなく回避する以外ないように見受けられる。

 

「チ、来るなよ化け物が。こんな話聞いてねぇぞ」

「言ってませんからね!」

 

 一応2人種目の方の模擬戦の予選では、シールドを割る過程こそ北澤さんに任せてはいたもののこっちの戦い方を見せていたはずなんだけど、どうも彼の認識からは抜け落ちていたみたいだ。

 なら、早いところやってしまおう。

 

「《レプンケプ》!」

 

 大海を割るかのようにコジョウハマを突き出し、空気を切り裂いて前進。そしてそのまま彼のシールドに突き刺す。

 何かしらのアクションがあるだろう。その予想とは裏腹に、彼は何も回避行動をしなかった。《レプンケプ》はそのまま通り、彼のシールドを削る。

 だけど、そこで安堵したのがまずかった。

 

 ガシリ。

 

 彼の手は、しっかりとコジョウハマの峰を力強く掴む。

 ――抜けない! なら!

 

「へっ、かかったな。肉を斬らせて、骨を断ぁつ!」

「《クンネナイ》」

「《ズームカノン》! ……てうぉ」

 

 コジョウハマを掴んだ彼ごと跳び上がる。すると彼は足場を失ってバランスを崩し、撃たんとしていたエネルギー弾は見当違いの斜め上の方へと飛んでゆく。

 そして、上空でコジョウハマから手を離し、彼を踏んづけて蹴り落とす。何か下から聞こえるけれど、聞こえない、聞こえない。

 僕が地面へと戻ってきたときも、彼は地面に埋まっていたままだった。

 

「じゃ、これは返してもらいます」

 

 声をかけるも、気絶してしまっているのか反応がない。コジョウハマを回収し、彼のシールドを丁寧に叩き割ってから、流石に心配なので地面から引っこ抜いた。

 そして、僕を歓声が包んだ。

 


 

「ごめんなさい、佐倉さんの出番、なくしてしまいました」

「別に、謝ることじゃない。……ほら、成岩も、何か言ったげて」

「あぁ」

 

 待っていた2人の下に戻れば、成岩さんの様子が明らかにおかしかった。

 ずっと頭を抱えて、ぶつぶつとつぶやき続けている。

 

「どうかしましたか、成岩さん」

「どういうことだ? ほぼ全部前衛じゃないか」

「……問題でも?」

「前の戦い方と、全然違うじゃねえか」

「つまり、《桜銀河》を撃たずに、撃とうともせずに終わったことですか?」

 

 そこを責められても。

 確かに、今までは使わなかったことは殆どなかったけれど。そう思って続ける言葉を探す。

 

「いいえ、今日の結果は当然のものです」

「何が当然だよ、知らねえ動きばっかしやがって。お前いつ飛べるようになった、お前いつポラリスの技を使えるようになった?」

「合宿前から《ハイブリッド・アクセラレーション》は使ってますよね?」

「そうじゃねえよ。そもそもそれは元々べーテクの技だろうが。見逃さなかったぞ、跳び上がる時の青い光を。アレは何だ?」

「何って、《クンネナイ》ですが」

「少なくとも俺は初めて見たし初めてその技の名前を聞いたぞ。それ、()()使()()()()()()()()()()()?」

 

 そりゃ、《クンネナイ》は……あれ?

 言われてみれば。合宿前に《クンネナイ》を使った事はなかった気がする。

 じゃあどうして、僕は《クンネナイ》を使うと()()()()ってことがわかっていたんだ? 逆説的に、僕はこの技をずーっと前から知っていたはず。

 

 ……あれ?

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