「ふぁーあ」
「夜ふかし、良くない」
なぜか徹夜していた成岩さんの手を引きながら、僕達は競技会場へと向かっている。
今日行われるのは第16種目の玉入れだ。始まってしまえば5分で終わるので半分休養日みたいなもので、だからこそ成岩さんも無理をしたんだと思う。
実際、競技が始まってしまえば、あとは正確に射撃ができる僕と佐倉さんが投げ続けて残りの4人は玉を集めてくるだけ。結果、1分ほど残して玉は全て籠に収まり、残りの時間に暇になる程であった。似たようなユニットもいくつかあったので、たぶん同率で1位になると思う。レギュレーション設定が間違ってるんじゃないかな……。
そしてそれが終われば、まだ午前中だというのに今日はもうフリーだ。
「おい山根、ちょっと付き合え」
「はい?」
……が、部屋に戻るや否や成岩さんに捕まった。昼寝するんじゃないんですか?
「何、昨日も言ったが少し気になったことがあってだな」
「はぁ」
「昨晩、記録映像を見返して確認したが、お前が件の《クンネナイ》を使ったのは、少なくともこの合宿の中では
「……え?」
「そしてポラリスと一緒にああだこうだしてるのも知ってるし、
どういうことって、そこにそういう事実があるならそういう事なんだろう。
使ったのはその時が初めてで、どうすればいいのかを僕が知っていた、ただそれだけだ。
「……お前、自分がだいぶ無茶な事を言ってるって気づいてるか?」
「わかってますよ、おかしいことくらい。それがポラリスに近しい者がすでに生み出していた技ならば、使わなくともすでに誰かが使っているから初めてでも要領が良ければ使いこなしえます」
「だが今回は違うぞ、明らかにポラリスの技だ。少なくとも、べーテクは《クンネナイ》という技に覚えがないそうだ」
わかっている。だからこそ、わからない。
僕は一体どこで《クンネナイ》の存在を、《クンネナイ》を使うとどうなるかを知った?
「……俺から言わせてもらうと、怪しいタイミングが2つある。1つはこの前クィムガンが出た時だ。だが、お前の反応的にそこで編み出したという訳ではなさそうだな」
「あの時は普通に《桜銀河》でやってましたね」
「ならもう片方だな。お前、あの朝海岸で何やってたんだ?」
「何って、走ってましたが」
「俺が見かけた時は立ち止まって海を見てたぞ」
「何か気になるものが見えた気がしたんです」
ちょっと記憶がぼやけている。海岸で走っていて、
「怪しいな。怒らないから正直に言ってほしい、本当は俺達に黙って……」
「ちょっと待って。その時、彼のチッキは部屋」
「……あぁ、そうだったな。だからこそ心配になったんだった、じゃあ違うか」
結局、心当たりは全て消えて振り出しに戻ってしまった。そう3人で頭を抱える中で、ピコンと成岩さんの端末に通知が入る。
「おっ……、やっぱりか」
「誰から?」
「ポラリス」
成岩さんはその端末を僕達の真ん中に置いた。
そこには、ポラリスとの個別チャットが映されている。
「わからんからポラリスにも聞いてみたら、この通り。山根が先にウェヌスから引き出したことが裏付けられた」
そのやりとりの内容。それは、成岩さんがポラリスに《クンネナイ》のことを聞いて、そして彼女もそれを知らなかったというものだった。
そして今また、さらにメッセージが追加される。
『わっすごい! ポラリス、お空飛んでる!』
どうやら向こうで《クンネナイ》を試しに使っているようだ。
本当にこの技、どこから降ってきたものなんだ?
というか、そもそも。
「……そういえばなんですけど、物凄く今更なこと聞いていいですかね」
「何?」
「新しい技を会得するのって、どうやってるんです?」
「知らないでやってたの?」
いや、だって。
そもそも僕が技を能動的に会得した経験、既存の《桜銀河》と《ハイブリッド・アクセラレーション》をトレースしたときくらいだし。
その時はその技の動きをしながら技の名前を叫ぶという、事情を知らずに傍から見たら距離を取りたくなるような方法だったのを覚えている。
「《ハイブリッド・アクセラレーション》を教えた時のことを覚えてるな? 基本はあれと同じさ」
「トレイニングしてる子が
「その技の名前はどうやって知るんです?」
「フッと頭の中に浮かび上がってくる。それを一度口に出せば、技と名前が繋がる」
「なるほど?」
わかるような、わからないような。
これはトレイニングそのものでもそうなんだけれど、ウェヌスまわりは名前を口に出して発声することがトリガーとなって力を得ることが多い。やっぱりウェヌスってよくわからないな……。
「つーかクシー号から教わってなかったのか?」
「それは、ほら。彼女《桜銀河》一本ですし」
「「あー」」
そう答えると、2人は若干哀れみを含んだ目で僕を見た。
……やめて!