ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

128 / 306
14レ中:どこでもないゾーン

「しっかし余計謎だな、その技の出どころが」

 

 確かに、自分では気づかないうちに使えるようになっていたからあれだけど、そもそも新しい技の生み出し方を知らないのに全く新しいものを得ているというのは、普通に考えておかしい。

 

「山根。戻ったら検査」

「鳥満博士のですか?」

「そう。機器も合宿中に直ってるはず」

 

 そうだった。鳥満博士には悪いけど、ちょっと状況が状況なので利用させてもらおう。

 流石に自分でもわからないのだから、こうやってここであぁだこうだ考えるよりは一旦忘れてから検査に突っ込んで有識者の意見を求めた方がいいのかもしれない。

 

「状況は事前に鳥満博士伝えといてもらえます?」

「勿論。精密にやるから丸一日になるけど、空いてるのって水曜だっけ?」

「俺らのとこのインターンもべーテク出張行ったからコアタイム消えて月金も調整いけるぞ」

「オッケー」

「勝手に空いてることにしないでください」

「ん、他に予定とかあんのか」

「いや、基本的にはないですけど……」

 

 流石にお盆周りになると墓参りを兼ねた帰省とか、スクールの時の同期と再会するとかでポツポツと個別で予定が入ったりしている日もあるけれど、その程度でしかない。

 そもそも休日の予定なんてものは、朝の気分で決めているし、それで十分なのだ。

 

「なので鳥満博士の側の都合で大丈夫です」

「わかった。じゃあ連絡を……」

 

 その時。

 明るく爽やかなシンセサイザーサウンドが、佐倉さんの端末から鳴り響いた。彼女の着信メロディのようだ。

 

「もしもし?」

『…………』

「博士、ちょうどよかった。今こっちからもメッセージ投げようとしたとこ」

『…………』

「彼なら今ここにいる。代わる?」

 

 電話をかけながら、佐倉さんはこっちを見た。

 このタイミングで鳥満博士から僕に伝達事項がある、ってことだろうか。

 

「いや、この部屋にいるのは山根と成岩。……わかった」

 

 そう言うと佐倉さんの目線は成岩さんに移った。

 

「何だよ」

「口外無用、いいね?」

「……だいたいの事情はわかった。席外した方がいいか?」

「私は信用してる。だからそこまではいい」

 

 そう言うと佐倉さんは端末を操作し、スピーカーホンに切り替えて僕達の真ん中に置いた。

 

『あー、あー。聞こえておるかの?』

「ご無沙汰しております」

『その声は山根君じゃな。理事長から活躍は聞いておるよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()も含めてじゃ』

()()()()()()()()()

『それじゃよ』

 

 あー、その話トシマさんからそっちに行ってるのか。なるほど。

 そうだよな、そりゃ鳥満博士は超次元の専門家だ。話が入っていない訳がない。

 

「おい待てや、その話俺は聞いてねえぞ」

「やっぱその日、何かあった?」

 

 ……あれ、僕この話をしていなかったっけ?

 記憶を辿る。確かに、早乙女さんには言ったけど他の3人には言ってなかった。

 

「軽く説明しますと、長崎市街にクィムガン対応に行ったじゃないですか」

「おう、あの日だな」

「その時Sバーストで相打ちしたという事になってるじゃないですか」

「報告書には、そう書いてあった」

『実はの、その時彼は()()()()()()()()()、「どこでもないゾーン」に飛ばされていたのじゃよ。見ていた者が中泉君しかおらんかった故、2人の間で機密にして報告書ではごまかしとったようじゃがの』

「次元の、外側?」

「は? 何いってんだ?」

 

 え、どこでもないゾーンって、そうなの?

 

「別に次元を移動すること自体は不思議じゃない。そもそも、私達は日常的にやってる」

「んなこたぁねえだろ」

「ある。だって、ラチ内は外と別の次元」

「そうなの!?」

 

 確かにエキステーションの存在とかは物理法則的におかしい気はしてたし、ラチ内と外とじゃ連絡つかないしで、なんか不思議だなぁとは思っていたけれど。確かに、それらは別次元だと言われれば納得できるような気もしなくはない。

 

『をほん、それでじゃ、山根君。こちらでも情報は集めとったんじゃが、どうしても本人でなければわからぬ事もあるゆえ』

「何でしょう」

『その「どこでもないゾーン」から、君はどうやってラチ内へと戻ってこれたのかね』

「えーっと、少し待ってもらえますか」

 

 念の為、一旦廊下に出て誰もいないことを確認し、扉の鍵を閉める。

 

「話します、そこで出会ったノリモンに送ってもらいました。ちなみにその『どこでもないゾーン』というのは彼の言葉です」

 

 そう答えた瞬間、空気が凍りついた。

 

「なぁ」

「何です?」

「どこまで本気で言ってるんだ?」

『待ち給え、まずは話を完全に聞いてからじゃ。そのノリモンはなんと?』

「Sバーストでそこに来たのは彼と同じクチだと言うこと、そして五元神の一柱、Cyclopedにより与えられた役割で僕を元の次元に戻す、と。それで僕は、その言葉通りラチ内へと戻ってこれたんです」

『ふむ。……となると、()()()か』

「やはり、とは」

 

 僕だけでなく、同席している2人も唾を飲む音が聞こえる。

 

『従前より極稀に報告されておるSバースト直後の()()()()()()()じゃよ』

「それって、()()()()()()()()()()()()のではなくて?」

『うむ。現在の主流はその論理なのじゃが、私はこれには懐疑的での。予てより()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と仮説を立てておったのじゃが、それと先程の説明に()()()()()()()()よ』

 

 つまり、こういうことか。

 

「僕が『どこでもないゾーン』に飛ばされたのは」

『間違いなく、そのクィムガン共通の何らかではなくSバーストの影響によるものじゃろうな』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。