『各局ー各局ーこちらはプッピスパレイユ、ユニット全員入場しました! 以上こちらはプッピスパレイユー』
プッピス・ユニットの4人が到着し、僕達に加勢した。彼女達の攻撃は遠目から見ても目立つほど派手にキラキラと光っている。おかげで僕の《桜銀河》が目立ちにくくなっているのか、シールドの黄色が逃げる速度が遅くなっているように感じられた。有り難い話だ。
『ウルサノーヴルより各局へ! 緑のシールドの割合にようやく減少の兆候あり、繰り返す、緑のシールドに減少の兆候あり』
そしてもう一つ。ここに来てようやくクィムガンのシールドの比率がゆらぎ始めた。これは残っているシールドのエネルギーの絶対量がかなり削れてきていることを意味する。この長い戦いの終わりが、ようやく見え始めたのだ。
たしかに、いまもう一度《桜銀河》を打ち込んでみれば、シールドが逃げているだけではなく非常にわずか、少しずつではあるが黄色い部分が薄くなって、そして領域が減ったのも視認できた。
ぱしゅん。そして頭上を純白にキラキラと輝く矢が通り抜け、黄色のかわりに回り込んできた緑の領域に突き刺さる。真後ろを振り返れば、大きな弓を構えたトレイナーが1人。
「はろー。あなたが、ウルサロケット?」
「そうですが、何の用です?」
「いや、同じ遠距離型同士顔合わせをしたほうがいいと思ってねー」
いや、その理由はおかしい。
たしかに遠距離攻撃ができるタイミングは限られるから、同時に打つために近寄るのはけっこう効率的だと思う人も少なくない。しかし、現実はまとまることは極めてまれだ。なぜかと言えば、遠距離攻撃というものは――《桜銀河》はそうではないが――往々にして攻撃自体が横にも大きいので、発生源同士が近くにいるとお互い巻き込むおそれが少なくないからだ。
逆に言えば、こうして近寄ってきた事から彼女の攻撃は巻き込みが少ないのだとも推測できる。
「ま、本音を言えばあなたのその光線を近くで見てみたかっただけなんだけどねー」
「そんなに珍しいものでもないと思うんですが」
「綺麗なものは、珍しいものじゃなくても近くで見たいと思わない?」
「前にだけは絶対に入ってこないでくださいよ?」
気持ちはわからなくもないけど、一応今は一般的にはそんなのんきなことを言っていられるほど余裕がある場面ではないと思う。
いくら遠くからの攻撃でクィムガンからの直接の妨害が少ないと言っても、前衛の邪魔にならないタイミングを見計らって、有効になるシールドへと攻撃を当てるのはけっこう神経を尖らせる必要がある。これが一発が重い、例えばそれこそさっきのドラコのバランスの人ののようなものであるなら、そんな事を考えずに前衛を退避させても十分お釣りが戻ってくるのだけど、あいにく僕のはそこまでしてもらう程のものではない。
だからこうやって、前で自らのシールドを追って動き回りながら戦う光る7つの人影と光っていないもう一人の間を縫って、少しずつ黄色を削る他ない。
……あれ? なんでプッピスの人達だけじゃなくてうちのメンバーまで光ってるんだ? おまけに光のうち少なくとも3つと、残る光っていない人影はどう見ても地面から2m以上は上方に飛び上がって動いている。どういうことなの……。
真横ではプッピスのリーダーがスコープを覗きながら何かボソボソと呪文のような言葉を詠唱していて、もう状況がよくわからない。
「なるほどねー。わかったわ。『こちらはプッピスパレイユ。プッピスロケットは攻撃を一旦中止して他の子の補助に回って。以上こちらはプッピスパレイユ』」
「あの、何考えているんですか?」
「何って、一番美しい勝ち筋のチャートを考えてただけよ。そうそう、あなたもしばらく攻撃は控えといてねー」
「いや、なんでですか!?」
プッピスのロケットのトレイナーと僕が攻撃を控えたら、当たり前だけど黄色のシールドは削られずに残る。派閥を超えてトレイニングをしている人がいないのであれば、ロケットのトレイナーしか黄色のシールドを削ることはできないからだ。
「まぁまぁ、見ててって」
彼女はそう言うと双眼鏡を投げてよこしてきた。覗けという意図があるのは誰の目にも明らかだ。無線では、早乙女さんとプッピスのリーダーが作戦について議論しているのが聞こえる。……あ、早乙女さんが折れた。
とりあえず状況だけでも理解しようと双眼鏡を覗けば、ようやくどの人影が誰のものであるかを判別できるようになった。なんとなくそんな気はしていたが、唯一光っていなかったのは成岩さんで、他の光って空を舞っていたのは早乙女さんに佐倉さんとプッピスのうち1人。残る4人は地上で光っている。
……駄目だ。詳細がわかっても意味がわからない。ただ、少しずつじわりじわりとクィムガンのシールドに黄色が増えていくのだけは確かだった。
そして双眼鏡から目を外せば、真横では光る弓矢を射るプッピスパレイユ。この射撃と奥では北澤さんの輝くショートソードが、ついに緑のシールドを貫いて、少なくともこちらから見える範囲では緑のシールドは確認できなくなった。
「さぁ、お待たせ。次はあなたの番。あれだけ大きな的を、狙えないとは言わせないよ!」
見えるシールドは、6割から7割がもう黄色い。
『ウルサパレイユよりウルサバランスへ、ショートソードが折れました』
無線から、北澤さんの報告が聞こえる。間もなくウルサは出場の時を迎えるだろうことは理解できた。でも、その前に!
「《桜銀河》!」
桜色の一筋の光が、黄色のシールドを削り出す。どれだけ配置をずらそうと、片側から過半を占める黄色が見えなくなることは決してない。
『こちらウルサバランス、承知。ウルサノーヴル、ウルササイクロ並び……』
右側から青いシールドが広がってくる。桜色の光が太く広がって、シールドの黄色は加速度的に色が薄れてゆく。そして視界は桜色に染まった。
『いや、ウルサバランスよりウルサロケットへ、黄色はもう無い、攻撃を中止せよ』
そう無線に呼びかけられて《桜銀河》を止めれば、クィムガンの周りのシールドには青と赤、そして紫の3色だけが残っていた。
「お見事! 綺麗なものを見せてくれてありがとうね!」
「……どうして、ここまでお膳立てを?」
「そりゃだって……綺麗なものをより美しく魅せるのに、理由なんて必要ないでしょう?」
そういうプッピスのリーダーさんの笑顔は輝いていた。