ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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15レ後:原石

 此奴、やりおるな。

 ヒカリエターナルは、ラチ内を駆け回りながら手応えを感じていた。

 英国最速、Advanced Passenger号によりもたらされた厄介事、そしてその後処理に行った先で見つけた原石。彼女を引き込むことができれば、間違いなくレールレースは()()()()()だろう。エターナルはそう考えている。

 

(しばらく訓練を積んで、デビューランは……10月ごろが適正か。ならばカイザーのデビューにぶつけるのも一興)

 

 現在の日本レールレース界には、絶対強者たる【帝国(セントラル)】なる集団がいる。浜松の帝王(キング)ヒカリエターナル、日比津の女帝(エンプレス)ノゾミタキオン、鳥飼の天帝(ロード)ビシャスオサナジミ。同じ路線を走る車に由来する、白い稲妻達だ。

 そして今年、そこに新たなるメンバーが加わろうとしていた。彼の者の名はネオトウカイザー、加減速よし最高速よし曲線通過よしの期待の新星で、既にアマチュアレースにおいて無敗で連勝を重ねている。

 

 だがしかし。【帝国】は()()()()。レールレースファンは長過ぎる一強体制を望んではいない。少なくとも、エターナルの下へと伝わる市井の空気はそう訴えている。

 幸いにもレールレースは公営賭博ではない。オモテのトランジット・トレイニングにより、走るノリモン側が一切関与せずともレース中に外部との秘密通信を行えてしまう関係上、八百長の防止が不可能であるからだ。

 だからこそ、帝王()()()()()()()()()。持続可能なレールレースのために。順位こそ落とさなかったが、辛勝を演じ、力の衰えを演じて、まだ来ぬ世代交代を演じてラストランを行い、プロの世界を去った。それからの彼は、たまに思い出したかのようにアマチュアレースで走ったりしつつも、全国を行脚し素質のある者を積極的にスカウトする役へと回った。後輩が同じ思いをせずに済むよう。

 カイザーにもライバルを充てがうべきだ。そこにこのポーラーエクリプスは()()()()()()。それが彼の考えだった。

 

(カイザーのプロデビューはマススタートでのプロアマ混合のメガループ杯。ならば丁度よい。まだアマチュア枠の募集は始まっていないが、そこで走らせようではないか)

 

「ポラリス」

 

 エターナルは停まってから、隣の線路を走っていたノリモンに呼びかけた。磨けば必ず光るであろう原石へと。

 

「なぁに、エタさん」

「君の走りを、大勢の観客に初めて披露する日が決定した。2か月半後の鉄道の日記念メガループ杯、それまでにルールを覚えてもらう」

「うん!」

 

 ポラリスは元気よく答えた。

 レールレースの大半は、生きた線路を使う以上安全には配慮が必要である上に、設備の損傷は回避しなければならない。故に、ただゴールにたどり着けばいいだけなどという単純なルールではない。

 タブーたる禁則事項だって多々ある。例えば、架線等の設備への接触や閉鎖されていない線路への異線進入、定められた停止位置からの過走などは、どれだけ好成績を残そうと一発でそのレースを失格となってしまういくつかの例だ。

 

「まずはスタート。日本では、同じメロディが2コーラス流れる。この間は動力を動かしてはならないし、微動だにしてはならない」

「うん、1回目で音楽を覚えて、2回目が終わるのと同時に出発するんでしょ?」

「口で言うのは簡単な事。特に君のデビューランたるレースのようなマススタートでは、ここでミスをすると走行妨害を取られかねん」

 

 走行妨害をすれば、審議の末に失格となることがある。故意ではないと認められても重なれば出走停止などの重い処分が下ることになる。ゆえにそれは回避しなければならない。

 特にマススタートの場合、スタート事故は後ろの選手の出発を遅れされることに直結するため、それだけで失格となることは少なくないのだ。

 

「次は最初の1マイルを超えた後。ここからレースは本格的に始まる。そこから先ゴール手前2マイルまでの区間は、複線以上の場合最も右側の線路では追いつかれてはならぬ」

「追いつかれそうになったら?」

「左の線路に戻ることだな。そうせずに3チェーン以上離れていた後ろの選手が2分の1チェーン以内まで近づいた時点で、どれだけの記録を出していようが降着が確定する」

「降着って?」

「追いついてきた選手より先にゴールしても、その後ろの順位となるのだ。勿論悪質な場合はこちらも失格になりうる」

 

 集団の中から抜け出してスプリントをかけるべき時を除いては、1番右の線路には移らない。これが、レールレースでの鉄則。追突が発生した際も、他の線路では後ろが加害と判断されるが、この線路では前が加害と判断され、脱線以上に重い処分が下される。追い抜きもしないのに居座るメリットはあまりない。

 

「わかった。でも、それって右の線路は基本的に空いてるってこと?」

「そうなるな」

()()()()()()()()()()()んだよね?」

 

 何をふざけたことを。エターナルは一度はそう思った。

 だが、この子の脚ならば()()()。そう思わせる走りを、彼女は見せていたのだ。

 

「……面白い。そう解釈したのなら、やってみせるがいい」

 

 こいつは、とんでもないことをしてくれるかもしれないな。エターナルの口元が釣り上がった。

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