ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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16レ中:基準

 結論から言えば、最後までフラグを取り続けたのは北澤さんだった。

 そもそも、一歩も動かずにフラグを取り続けていたので、彼女に疲労が殆どなかったのだ。その上あの触手の反応は早く、他の遠隔確保勢をなぎ倒しての勝利をもぎ取ったのであった。

 

「勝ってきたよ!」

「お疲れ様です」

「おめでと」

 

 ……ただ、その北澤さんはこの通りまだ元気に溢れているんだけど。残りの2人は。

 

「……もう歳だな」

「上は莫迦なのか? 流石にまたこれやるとはよ」

 

 午後はずっと休んでいたはずの早乙女さんは疲労が抜けきっておらず、足取りが重いのが見てわかるほどだ。

 善戦して60回以上フル加速をする羽目になった成岩さんは文句を言う元気しか残っておらず倒れている。こっちは明日にはケロッとしてそうだけど。

 

「つーか北澤、お前のあの技は何なんだよ」

「審判が何も言わなかったからセーフでしょ?」

「その基準本当に良くねえな……」

 

 ちなみに北澤さんの他にも遠隔でフラグを取りに行ったトレイナーはけっこういて、回数を重ねる毎にむしろ増えていく形だった。

 鎖付きの錨を投げたり、風を起こしてぶっ飛ばしたり――この人は他のフラグも飛ばしてしまったので失格になっていたが――、様々なフラグの回収手段が講じられていたのだ。

 どの競技でも割とルールの根幹から揺るがすような戦法を取ったところで、審判は本当に止めもしないし減点もない。個人的には、スワンボートレースで潮流や風を操るのは失格になっても文句は言えないと思うんだけど、これですらお咎めなしだ。

 もうここまでくると、さぁ。

 ちらりと、佐倉さんの方を見る。

 

「何? 私の顔に、何かついてる?」

「なんでもないです」

 

 逆にどうして佐倉さんは失格なんか取ってきたのかが気になっただけで。他意はない。

 ビーチフラッグスでも失格が出ていたけれど、アレはどう見ても度の過ぎたわかりやすい直接的な妨害だったし。

 そんなことを考えながら、僕は疲れ果てている成岩さんを背負って部屋に戻った。

 


 

「ただいま戻りました」

「あぁお帰り、シャワァ」

 

 スタァインザラブは、その抱える部下とともに戻ってきたライスシャワァを出迎えた。

 

「どうだった? 長崎は。始まりの地は」

「今月も相変わらぬ様子です。ですが、書類に纏めた通り興味深い出会いがありました」

「……ふぅん?」

 

 スタァインザラブは首を傾げた。

 

「誰と会ってきたんだい?」

「JRN理事長、トシマ号。乙女ノ鼻で偶然出会いまして」

「へぇ、あの()()()と」

 

 その反応に、部屋の中が少しざわついた。

 恐る恐る、ジュゥンブライドが口を開く。

 

「その言い方、スタァ様、JRNにコネが?」

「まぁ、古い関係だけどね。ノリモンに成ってからは直接は会ってないし、そもそも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んじゃないかな」

「じゃあ無理か……」

「妾も彼女の、JRNの指針を訊ねましたが、協力を仰ぐのは恐らくは無理でしょう」

「それに、奴ら隠してるもんね、ルースの落し子を!」

 

 シャワァは予想外の声に驚いたのか、その声の主の方を向いて、記憶に合致する姿がそこにいたのを確かめてから発した。

 

「貴女も戻っていたのですか、ブゥケ」

「私だけじゃない、リングもね」

「Affirm」

 

 ライスシャワァ、ジュゥンブライド、ブゥケトス、エンゲヰジリングの4者。そして、彼らを束ねるスタァインザラブ。彼らは同じ目的を共有する者たちである。

 ()()()()()()()()()()()、と。

 

「貴女たちが戻ってきているということは、ついにわかったのですね。リロンチの条件が」

「うーん、あと一歩ってところ。必要条件は絞り込めてきたけれど、まだ十分条件が揃いきってない」

「それだけでも大きいね」

「うん、だから共有する。今のところリロンチの必要条件は、トレイニングのできる相性があるということと、お互いにシールドが存在しないことの2つ。暫定的にね」

「なるほど。ですから後者の条件を引き起こしやすいSバーストの後で稀に起きているのですね……」

「そういうこと。だからこそ、私達は1つ目の条件、相性の良い組み合わせを探す手段を考えなきゃいけない。これは変わらないけど、それがトレイニングの可否と同じだってのが分かったのは大きいはずだ」

 

 そうブゥケが報告を終えると、続いてジュンが口を開く。

 

「それなら皆苦労してるみたいで論文もいくつか見つけた。でもよ、結局トレイナーでなければだめなんだったら、トレイナーの数が少なすぎだろ。そうなると全てのノリモンを救うことはできなくね?」

「そこは安心していいよ、ジュン。トレイナーでなくたって、仮にトレイナーになったとしたらトレイニングができる組み合わせであればいけるっぽいから」

「なら大丈夫か」

 

 ジュンはスタァに目線を投げかけ、判断を求めた。

 

「うんうん、そこまで分かれば今は十分だよ。……それでリング。ルースの落し子は、予想通りの所にいたかい?」

「あぁ。やはり新小平に反応はあった」

「そうか。……待っていてね、ココマ姉さん。時が来たその暁には、ボクが必ず助け出すから」

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