最終種目のトーナメント。僕達は、順調に勝ち上がっていた。
……いや、本当に語ることはない。だいたいいくらユニット対抗と言ったところで最終的に立っていた人がいればいいのなら夏合宿前からやることは決まっている。
即ち、《桜銀河》。これをぶっ放せばだいたい勝てる。他の4人も巻き込むけど。
だけど、それすら必要ないことも多々あった。その一番の要因は北澤さんの《ONE》なる技だ。これを一薙ぎするだけで3人のシールドを割り切るなど、単純なキル数でいれば溜めなしですぐに扱える都合上僕の《桜銀河》を普通に上回ってくる。しかもその根本の近くが地味に安全地帯になっているため、味方を巻き込むことがないのも優秀な点だ。
ただ、弱点もあった。
《ONE》を使っている間はどうやら一歩も動けないどころか、それを止めても再び北澤さんが動き出せるようになるまで時間がかかるみたいで、どうも見えている遠距離攻撃を避けることすらできないようだった。
それでも、非常に強力な技であることには変わりはないんだけれど。
「新人が強すぎて辛いぜ……」
「まだ現場で使えるほど熟練してないけど」
「
「まぁね、オトメさんからいろいろ聞いてるし」
聞けばあれをもっと細くしてしなやかに動かしたり、あるいは途中で枝分かれさせたりができる技なのだとか。その他にもけっこう応用が効く技らしい。
「ほへー」
「そういうアンタはどうなの? 《桜銀河》も色々変わったんじゃない?」
「いやアレは応用無理ですって」
手元で向きだけは変えられるけどあとは直進しかない。なんなら出力を自発的に落とす術すら見つかってない。なんなら、クシーさん以外に使い手がいなかったので同じ技を使える他のノリモンに聞くという方法すら使えない。
なので本当に《桜銀河》に関して言えば、情けないことにこの夏合宿を通じて全く変わっていないのが実情だ。
「つってもお前ポラリスの方を……」
「3人とも、おしゃべりはそこまで。そろそろ決勝の時間」
「はーい」
おっと、もうそんな時間か。
決勝の相手は、もちろんドラコだ。配置担当の計らいだろうか、今回はきちんと決勝戦で当たるよう配置されていた。
そして、ここにいる他のユニットの人達もまた、この試合を観戦するのを望んでいるのが、ラッチに入る前からひしひしと伝わってきている。
「待っていたよ。ウルサ諸君」
「氷川。今回は君たちにも本気を出してもらう」
「当然さ。お前の目が見抜いた、既に一人前のトレイナーとしてやっていけるレベルの2人を新人扱いする必要はもう消え失せた」
氷川さんはそう言うと、僕と北澤さんに続けて目を向ける。
「さぁ、はじめよう」
そして僕達は入場し、続けて観戦を希する他のユニットの人達も入場してきた。
……こりゃ、《桜銀河》を使うときはちょっと気をつけなきゃいけないな。
そんなことを考えていると。ふと目の前に光のかいさが3つ並んで現れていることに気がついた。横を見れば、早乙女さんたちが揃ってチッキを掲げている。
「本気で行こう。――駆け抜ける想いよ夢よ希望よ、風も谺も光すらも追い抜かん! ノゾミタキオン号、今このトモに宿れ!」
「あぁ。俺達だって負けてらんねえからな。――旋律響かせし紅き不死鳥よ、姿形変わりてなおその誇りを貫け! スカーレットゾーン号、今このオモテに宿れ!」
「勿論。――世界へ導く果てなき空の道よ、今大地に繋がりてこの鉄路を駆け抜けよ! ナリタスカイ号、今このスターに宿れ!」
ガコン、ガコン、ガコン。先輩方3人が続けざまに改札機へと進入してゲートが閉じた。そして光に包まれて姿を変える。
成岩さんと佐倉さんはキールのノリモンと同じ派閥のノリモンとトランジット・トレイニングする、ダブルシンボルと呼ばれるトランジットで威力を単純に高める作戦のようだ。
「魂に刻まれし山百合の紋章よ、朽ちてなお高貴なるその力を見せよ! スクモ号、このポートに宿れ」
「失われし星の輝きよ、果てしなくなつかしい大地に最後の煌きを! ポーラーエクリプス号、このトモオモテに宿れ」
続けて僕達2人もチッキを取り出してその隣に呼び出した改札機に進入する。光が、僕を包む。そして。
ガガガガガコン!
5つの改札ゲートの扉が同時に開き、トランジット・トレイニングをした僕達ウルサの5人が改札から飛び出した。
その進む先には、待ち構えるように準備万端なドラコの5人が横一列に並んでいる。
僕達はお互いに右手を差し出した。
「ユニット全員がトランジット。流石はトランジットのデパート、早乙女遊馬の率いるユニット」
「褒めても何も出んぞ。トランジットは目的ではない。私達は……全力を以てドラコを倒す。その為の手段に過ぎん」
「やってみろ。ならばこっちは全力でそれを阻止し、逆にお前達のシールドを1つ残らず割り切るまでだ」
「うちのリーダーはあんなこと言ってるけど、まぁまぁゆるりとやりましょうや」
「そう言って油断させようったって無駄だぞ、俺達は本気でいく」
「ありゃ、厳しいねぇ」
「久しぶりに、楽しめそうだナ」
「楽しむ? 貴方達は、苦しむだけ」
「言うじゃねェカ。余計楽しめそうダ」
「この松代、決して譲らないから」
「譲られなくたって、アタシ達は勝ち取るだけ!」
「……できればね。無理だと思うけど」
「少なくとも、それを決めるのは貴女達じゃないでしょ?」
「再び縁が巡り、相見えるか。不思議なものを感じるものだ」
「でも、ここにいるのは前の僕じゃないですよ。明日の僕はもっと強いですから」
「それは。楽しみだ」
そして所定の位置に移動してから、戦いの火蓋は切って落とされたのだった。