ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

142 / 306
18レ後:結着

 ――ワァァアァ!

 

 最後に立っていたのは、成岩さんだった。そんな彼を歓声が包む。

 それに応えるかのように、成岩さんはオオカリベを高く掲げた。

 

 それが収まるとすぐ、観戦しにきたトレイナーはにわかに出場してゆき、トレイニングの解けた僕達9人と成岩さん、そして審判兼記録係のノリモンだけが残される。一癖も二癖もある人々やノリモンが集まっているこのJRNだけれど、こういうところは皆さん本当に律儀だ。

 残った全員がラッチコアに集まって審判から正式に結果が言い渡されると、成岩さんはすぐにラッチを開けに向かった。

 

「してやられたね。何だったの、あの変わり身の術は」

 

 そして中泉さんは成岩さんがいなくなるなりすぐに彼の話を始めた。教えてくれるかはともかく、まずは直接聞けばいいのに。

 

「知らんな」

 

 早乙女さんはそう答えた。

 実はこれ、適当にあしらっているわけでもなく、おそらくは本当に知らない可能性の方が高い。なぜなら早乙女さんは、新しく何らかの技を使えるようになったときにはいきなり模擬戦で用いるべきだ、という論理を展開する人だからだ。

 

「……え? 嘘だよね、貴方ウルサのリーダーでしょう?」

「どうして全員の使える技を事細かく把握する必要があるのか?」

「いや、いきなり味方が知らない技を使ったら困惑しない?」

 

 中泉さんは僕達に回答を促した。

 でもなぁ。

 

「しないが」

「しない」

「しませんね」

「しないよ」

「えぇ……」

 

 だって知らない技に困惑してばっかじゃ実際に現場に出たときに致命的なことになりかねないもの。そもそも、クィムガンが知っている技を使ってくるとは限らないのだから。

 これが、早乙女さんが提唱し、僕達に浸透している論理だ。

 

 そして、この論理が浸透しているからこそ、それで困惑が発生する場合には逆説的に余程大変なことだと実感できる。例えば、この前の《クンネナイ》の時の成岩さんのとかがそれだ。

 

「まぁ、確かにクィムガンはそうだし、ぼく達だって見ても困惑はしないよ。でも、それとこれとは話が別じゃないの」

「別ではないと考えているからこそのこの理論なのだが」

「えっじゃあ巻き込まれないようにとかは……?」

「そもそも巻き込みうる段階では()()使()()()()それを控えるべきであって、味方が何かをする必要など存在しない」

「諦めろ中泉、こいつは昔っからそういう奴だ」

「いや彼がそうでもユニットメンバーはそれで、それで……」

 

 彼は僕達3人の顔を見た。

 

「その顔は納得してるんだ……」

「そこまでだ、中泉。あまり他のユニットの事情に首を突っ込むべきじゃない。俺達を超えたユニットなら尚更だ」

「はーいよ。ちぇ、強さの秘密が分かると思ったのに」

 

 それからしばらく他愛もない話をしていると、急にラッチコアとエキステーションの間に光の壁が現れて。それが消えるとその外側には成岩さんが立っている。

 そして、その隣には。

 

「ご苦労であった。この種目の第一位はこのウルサ・ユニットに確定した。そして、これを以て今回の夏合宿の全種目の終了をここに宣言する」

 

 トシマさんが、そこには立っていた。

 


 

 夕食の席。今日は全てのプログラムが終了したこともあり、明日の予備日を挟んでもえ明後日に新小平に戻るだけだ。

 そこで早速、各ユニットに封筒が1つずつ渡される。シードの扱いとかで順次集計していたみたいだし、もう結果が出たのだろうか。

 

「開けるぞ」

 

 早乙女さんが封筒を開けると、その中に入っていたのは、明日の夜8時15分長崎発のeチケットお客様控えが5枚。どうやら帰りは普通に手配してくれていたらしい。

 ……あれ、これだけ? 結果は?

 僕だけでなく、他の4人も困惑して、お互いに顔を見合わせている。話を聞く限りでは、前にウルサが合宿に参加した時にはきちんとこの帰りの交通手段と同時に結果の通知があったとのことだった。

 そんな中で、成岩さんの表情が急にかわった。

 

「あー、思い出した。そういや去年アイツが言ってたな、結果発表自体は戻ってからになったって」

 

 、ここで全体に向けて詳細な順位を発表しないのは、過去にいろいろ面倒が発生したことがあったかららしい。

 まぁそれでも結果自体はすでに確定していて、それによって帰りの交通手段がかわる。これは、全員が同じ手段で移動すると仮に事故などが起きた際に取り返しのつかなくなる事態が予測されることへのリスクヘッジも兼ねられている。

 僕達に充てられた交通手段は羽田への直行便。到着こそ微妙な時間だけれど、過去の傾向的にはおそらく成績は良かったものと推測できる。

 

「あれ、この航空券。1番A、C、D、H、Kの座席番号って、間あいてません?」

「いや、ほらここ。普通席じゃないから番号は飛ぶよ?」

 

 北澤さんは航空券の一部分を指差して言った。同じ飛行機の中では番号を連続させるよりも通路や窓の接する番号を統一させておく方が何かと管理がしやすいらしい。

 それはともかく、上級クラスの座席が充てられているということは、それ相応の成績だったということなのだ。それは大変喜ばしいことだった。

 

「4人とも、よく頑張ってくれた。お疲れ様」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。