ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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1レ中:帰省

 2人と別れた後。僕はその足で南多摩への抜けて、電車を乗り継いで新横浜駅のホームに立っていた。

 ホームに滑り込んできた白い車体。乙女の祈りが扉を開き、その電車に乗り込んだ。新横浜から一度小倉まで出てから下関に戻る形なので、かなりの長丁場だ。

 

「5番E、5番E席、と……。あ、すみません」

 

 夏の帰省シーズンなので指定席も満席御礼だ。自分の席を探すと、その隣の通路側には既に東京か品川から乗っていたであろう、帽子を被った方が座っていた。網棚に荷物を入れて一声かけてから、一度出していた机をしまってもらって奥に座る。

 

「こんなにいっぱい走ってるのに、満員なんて」

 

 隣の方が可愛らしい声でそう呟いた。

 

「夏の帰省シーズンですからね」

「話には聞いていたけれど、日本に来るのは初めてで」

 

 彼女は物珍しそうな顔で通路に顔を出し、あたりを見回している。

 駅弁を食べながら帰省先での楽しい予定に思いを馳せる家族連れ。既にアルコールの缶を開け、一杯やっている若い夫婦。車内販売の硬いアイスクリームに苦戦している学生。その全てを、興味深そうに見つめている。もしかして、外国の方だろうか。日本語がアドパスさん以上に流暢だったからそうは感じなかったけど。聞いてみるか。

 

「……失礼、どちらからいらしたんです?」

「イギリス。イングランドの北の方、ダーリントンのちょっと北の、ニュートン・エイクリフって街からね」

「イギリスですか。僕は行ったことはないですね、知り合いなら向こうにいますが」

 

 なんか妙にイギリスとは縁があるなぁ。鉄道が生まれた国でもあるし、一度行ってみたいような気持ちもある。

 

「どの街?」

「確か、ダービーって言ったかな。ついこの間から他の知り合い連れて一時帰国中なんですよ」

「あぁ! ミッドランドの。あの、もしかしてなのだけれど。その方ってもしかして、イノベイテック号だったり……?」

「……ご存じなのですか」

 

 いや、あれだけ暴れりゃ話題にはなるか。そう思って話をよくよく聞いてみれば、どうも今向こうでは一番ホットな日本のノリモンが彼なのだとか。

 え、本国ゆえのレールレースの人気ぶりもあるのだろうけれど、そこまで行ってるのか。大変そう……。

 

 それから僕達は世間話や日本やイギリスの文化の話を長くしていた。こういう偶然の出会いで長話が始まるのも、長距離列車の醍醐味のひとつなのだろう。これもなにかの縁と、お互いの端末でパシャリと写真を撮った。

 列車は名古屋を過ぎ、新大阪を過ぎて西へと向かう。新横浜を出た時には満席だったこの列車も、このあたりに入るとぽつぽつと空席がみられるようになってきた。隣の方が降りるのはまだまだ先のようで、どうもお互いに長い旅路である。

 

「でも、久々に父親に会えるので、そう思うと長い旅路でも大丈夫かなって思えるんです」

「そういうものなのね。……あれ、お父様だけ? お母様は」

「母は、僕が幼いうちに他界してしまったので。あまり記憶にも残ってないんです」

「あら……ごめんなさい」

 

 なので母の記憶はあまり残っていない。

 代わりと言ってはなんだけど、それから父は男手1つで僕を15まで育ててくれた。それ以降は全寮制のスクールに通うことになったけど、毎月仕送りも少なくない額してくれていたので、本当に感謝してもしきれない。

 

「そういう貴女にもご家族がいらっしゃるんでしょう?」

「似たようなものよ。両親はとうにこの世にはいないし、一人っ子だからきょうだいもいない。日本に来たのも、たまたま知り合いに呼ばれただけ。……これでお互い様ね」

 

 そう言葉を交わしてから、少し気まずくなって、会話はめっきりと減ってしまった。その方は僕の降りる1つ手前の停車駅、徳山で降りていった。

 それから少しして、僕も網棚から荷物を取り出して小倉駅のホームに降り立った。ホームで少しストレッチをして乗り換え改札を通り、かしわうどんを啜ってから下関行きの電車に乗りこむ。

 電車が動き出して、2駅。そこからさらに響灘を眺める汽車に乗り換えて40分ほど揺られると、汽車は終点の小串という駅に辿りついたのだった。

 

 改札を出て、辺りを見回す。

 ――いた。

 

「お帰り、真也。大きくなったな」

「ただいま、父さん。そっちも元気そうで」

 

 それから父さんの車に乗り込んで、僕は実家へと帰りついたのだった。

 


 

「長旅ご苦労様でした」

「いいや、いいの。この次元に受肉したのも久しぶりだし、こうやって進歩した乗り物に乗ってるのってたのしいからね」

 

 Cyclopedが徳山で降りた2日後。彼女の用事が済んで下松駅に戻ったところで、スタァインザラブは予定通り彼女を出迎えた。

 

「思いもしなかったな。まさかCycloped様がこの次元に直接来ていただなんて」

「言ったよね? 時が来れば必ず戻ってみせるって」

「そんな半世紀以上も前のことを今更言われても困るよ。そもそもCycloped様が成ってからまだ2世紀も経ってないのに」

「うぐ。仕方ないじゃん、他のいくつかの次元の面倒も見たりで忙しかったんだから。……でも、それらの次元で成功した術がある」

「おぉ、それはそれは」

 

 彼女達は、そんな話をしながらやってきた電車に吸い込まれていったのだった。

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