ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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5レ前:トレイナーをトレイナーたらしめる要素とも言えるもの

 JRN4号館、屋上。

 僕はここに築かれたラッチを出て、そして開けた。

 

「……やはり《桜銀河》は強力ではあるが、暴力的だな」

「知ってたんですか、この特性」

「ラッチができる前だから、もう20年以上も前になるが、何度かクシー号と同じ場でクィムガンに対応することがあってね」

 

 ラッチの中にいたのは、残る4人のユニットメンバー。そして4人とも、ラチ内にいたはずなのにトレイニングをしていなかった。

 いや、違う。正確に言えば彼らはシールドのエネルギーが尽きて、トレイニング状態を維持できなくなってしまった、と言うべきだろう。

 

「……どうしたらいいんでしょうね、僕」

 

 事の始まりは、こうだ。

 僕があまりにも誤射を恐れている事を気にかけた早乙女さんが、とりあえず1対4で鬼ごっこ形式の模擬戦闘をしてみようと言い出した。

 その結果が、こうである。カンケルノーヴルのトレイニングが一瞬で解けてしまった時から薄々気がついていたけれど、トレイナーのシールド程度ならほぼ一瞬で削りきってしまうのだ。それくらいトレイナーのシールドは貧弱だ。逆説的には、それを長時間当てなければ削る事のできないノリモンのの、なんと頑強なことだろうか。

 

「虹ヶ丘君が見抜いていた通り、できるだけ行動を控えて、そして最後に長時間照射するのがベストだろう」

「でも、その間に他の人がリタイアしたら、ユニット全員出場ですよね?」

「この前みたく最後っ屁ではだめかい?」

 

 早乙女さんはそう提案した。でも。

 

「皆さんがそれで納得していただけるのならいいんですが、個人的には何もやらないのは気がかりで」

「君がそう思うのも解るが、最初の方は私達の動きを見てクィムガン相手の立ち回りだとか、そういうのをきちんと覚えるのもまた重要なことだ」

 

 ちらりと、彼は残る3人の方を見た。

 

「最後に大きな仕事をするんだからアタシはいいと思うけどな」

「俺も北澤に同意だ。実際に受けてみてわかったが、あの威力はむしろ前でやってる最中に撃たれる方が危なっかしくて困る」

 

 これ、たぶん成岩さんの直球な言葉が全てなんだろうなぁ。

 実際自分が前衛だとして、後ろから即死攻撃が飛んでる状態でクィムガンの攻撃も避けながら最良のパフォーマンスを出すことができるかと問われたら、確かに自信はまったく無い。

 ……頭では普通に納得できるけど、でもこうも直接言われると凹むなぁ。

 

「佐倉君はどう思う?」

「今の力借りてるノリモンでカバーできないなら、トランジット」

「急がせたくなる気持ちもわかるが、まだ彼には時期尚早ではないか? 夏合宿の後くらいが限度だと思うがね」

「否定はしないの?」

「その手段は全く誤りではないからな。むしろ、トレイナーをトレイナーたらしめる要素とも言えるものだ」

 

 そう言うと、早乙女さんは僕と北澤さんに話があると声をかけて呼び出した。

 

「これは2人にも言っておこう。ノリモンにはみな得手不得手があって、トランジットによってその得手を比較的自由に組み合わせることができるのがトレイナーの強みなんだ。ノリモンもクィムガンの対応をしていた頃ですら、私をはじめとした一部のトレイナーが最前線に出ていたのはそれが理由だ」

 

 切れる手札は多いほうがいい。彼はそう言いながらチッキケースに手をかけた。中から出てきたのは、おそらく数十枚ほどの大量のチッキ。

 

「ぜんぶ使ってるんですかそれ」

「毎半期使ってるのは流石に20枚くらいさ。後は1年から数年に1回程度だよ」

「この前も6回くらいトランジットしてたよね……」

 

 遠くから撃ってたからよく見えてなかったんだけど、あの時そんなにとっかえひっかえトランジットしてたんだ……。

 ということは、3人が光ってたのはきっとその絡みなんだろうか? いや、でも北澤さんはまだだってことは、少なくとも彼女の場合キールの時点で輝く何かを持ってるんだろう。そもそも僕とクシーさんの《桜銀河》だって派手に光ってるわけだし。

 それにしても。1回の戦場で6度ものトランジットって。もしかして、それが実は普通だったりするのか?

 ちらりとこちらを見た北澤さんと目が合う。どうやら似たようなことを考えているようで、その目には困惑の色。2人揃って目線で説明を要求すれば、早乙女さんは口を開いた。

 

「まぁ、詳しくは来月だな。その頃にはそろそろ北澤君がトランジットを考えてもいい頃だ。その時までに資料は用意しておこう」

「資料って?」

「私の体験も交えたオリジナルだよ。JRNの中でもトランジットトレイニングについてはかなり知識を持っている方だと自負している」

 

 その発言には説得力があった。何せこれだけのチッキを常備していて、なおかつ1回の出動で6回もトランジットトレイニングをしているのに、その知識がないなんてことはありえない。

 ……まぁ、その資料を見ることができるのも来月の話なので、それまでは先輩方の動きや図書館などの本、それにインターン先のベーテクさんたちから知識を蓄えて、そして期待して待っておこう。

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