ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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2レ中:同調

「佐倉さん、ちょっと北澤さんの誤解を解くの手伝ってくださいよ、そこで大笑いしてる人全く役に立たなくて」

「まず、どういう状況?」

 

 佐倉さんはそう言いながらも僕と北澤さんとの間に割って入って、強制的に距離を取らせた。

 

「彼が恥ずかしくて言いたくもないようなことをポラリスちゃんにしたと聞いて、詰めているところですわ」

「だから誤解だって言ってるでしょ、そもそも僕はどちらかといえば被害者側なんだってば」

「じゃあどうしてポラリスちゃんは恥ずかしがるんですの?」

「恥ず……なるほど、理解した。なんの話をしてるのか。まず結論から言う、山根は悪くない。恥ずかしがってるのは、ポラリスの若さ故の過ちだから」

 

 佐倉さんはそう言うとポラリスを抱き上げて膝の上に乗せ、長机の椅子にかけた。その隣にはようやく笑いを抑えられた様子の成岩さんが座り、僕達2人に続くよう促す。

 

「ポラリスがこんなんだから俺がかわりに言おう」

「やめて!」

「悪いなポラリス、言わなきゃこの場はおさまらん。それに、だ。ここにいてあの事を知らねえのは北澤だけ、その北澤もお前の事を案じて怒るような奴だ、理解はしてくれる」

「そうかな……そうかも……?」

 

 ポラリスは両の手で自分の頭を指さしながら目を回している。

 それで言いくるめられるんだったらなんでさっきそれをしてくれなかったのさ。

 

「で、結局なにがあったわけ?」

「簡単に言えばポラリスが山根につきまとい行為をしてたってだけだ」

 

 つきまとい……うん、簡単に言えばそうか。流石にJRNの外ではベーテクさんの監視があったのかそういうことはしてこなかったけど。

 そう考えていると、黙りこくっていたポラリスが顔をオーバーヒートさせながら当時の心情を曝け出した。

 

「だって、真也にポラリスの大事になってもらえるってわかったら、急に真也をポラリスでいっぱいにしたくなっちゃって、それから真也のことしか考えられなくなっちゃったんだもん」

 

 そういやその時のポラリスの心情聞くのはこれが初めてか。いや、想像以上怖いことを言っているというか、あの時そんなこと考えてたんだな……。

 

「ノリモンは、模倣子を他者に植えつけることで世代交代を起こすとされてる。それができていないと無意識下でも認識していると、それがかなう存在に強い執着心を見せる。こんな風に」

「えっと……つまり、ポラリスが()()で山根君が()()だったってこと?」

 

 北澤さんは真顔でそう問うた。

 あの。もっと言い方とかあるでしょ。その表現をするってことは、だよ?

 それに気がついてしまったのか、机の向こうの2人は表情が若干引きつっている。おそらく流石に何も知らないピュアなポラリスはニコニコとしているが。

 

「まぁ、そんな感じでだいたいあってるな。あの時の山根は……まぁ、俺から見ても気の毒なほど精神を消耗してた」

 

 あの時はどうしてポラリスがあんなことになっていたのか知らなかったからね……。

 

「トレイナーがノリモンの模倣子を強く受け取る行為、それがトレイニング。だから、その状況は山根がポラリスとトレイニングした時点で落ち着いた、よね?」

「実際落ち着いたな、あの後」

「なるほどね……。ごめん、山根君。アタシの勘違いだったみたい」

「わかってくれたならいいよ……」

 

 なんかまだ朝なのにどっと疲れが出てきた気がする。早乙女さんが来るまで一眠りするか……。

 

「すまない、遅くなった」

 

 そう思った瞬間、図ったかのように早乙女さんにが出勤してきた。寝る時間は消えた。

 まぁいっか、体は元気だし。たぶん活動始まったらこの疲れは消える気がしてきた。

 

 そして、いつも通りに今日の活動が始まった。

 今日は全体での戦闘訓練……というわけではなく、基礎的なところを練り上げるものだ。その内容は、移動中に先導する早乙女さんの口から明かされた。

 

「さて、山根君。せっかくここにポーラーエクリプス号がいるのだから、君にはトレイナーとしての仕事を叩き込む。具体的には、まずは並走をしてもらうよ」

 

 並走。それは真横にぴったりとくっつけて文字通り並んで走ること。簡単なように見えて、お互いの走る癖を熟知していなければできない高度なものだ。

 それができるのであれば、自然と同調度も高くなり、トレイナー側からはノリモンの力を強く引き出せるというもの。逆にノリモンの側は、生まれつきの人型を操る動きを間近で見ることができるのでより動きが洗練される。その組み合わせでの訓練ができるのならば、最も基礎的で効果の高いものの1つなのだ。

 

「着いたな。まずはここを……そうだな、3周くらいがいいだろう」

「あの、早乙女さん」

「なんだい?」

「ここ、陸上トラックですよね?」

 

 そう、僕達が到着したのは普通の陸上トラックだ。そこに線路はない。

 ここで、並走しろと?

 

「軌道上であれば、車輪の回転数の変化と足の動きの変化、その2つをもってで差異を容易に吸収して強引な並走ができてしまう。故に、並走に限ってはどちらかの影響を排除して走行する方が効果的だと私は考えている」

「なるほど。 ポラリス、走れる?」

「うん!」

 

 そして僕達は早乙女さんの合図で、同時にその陸上トラックを走り出した。

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