JRN3号館の外壁は、いつ見ても建物らしくない色合いをしている。もう少し薄い方がいいんじゃないかなぁなどと考えつつも、僕はその入口でスカイさんと合流した。
「待っていたよ山根君。合宿中の話を聞いてから、皆今日の日を心待ちにしていたよ」
「僕もですよ。うすうすと自分が何かおかしいという所には気がついているのに、その理由がわからないのって結構不気味ですし」
そう、今日は待ちに待った検査の日。いい加減に自分の体の謎をはっきりとさせたいのである。
「さ、行こうか。博士も待ってる」
そうしてスカイさんに連れていかれたのは、鳥満博士の研究室――ではなく、1階に設けられていた救護室の一角だった。
「おはようございます」
「うむ。来てくれたか。早速じゃが、まずはレントゲンとエコー検査から始めるぞ」
あれ、意外と普通だ。もっとなんか、特殊な機械とかを使って体をスキャンしたりするのかとも思っていたけれど。
そう疑問に思って聞いてみれば、通常のバイタルがおかしかったらそれを抜いて検査してもまともな考察はできないとのことで。そりゃそうか。
まずは検査着に着替えて首から下のレントゲンを撮影。続いてベッドに寝かされ、何かジェル状のものを全身に塗りたくられてその上をバーコードリーダーのようなものが往復する。何度か腕や足を曲げるよう指示され、そしてまた機械が肌の上を滑る。これを何度か繰り返すと全身の筋肉の形だとかが分かるらしい。
「終わったよ、お疲れ」
「何か分かりました?」
「これだけで分かる訳無いが……。まぁ、強いて言えば骨がかなり頑丈で詰まっている」
スカイさん曰く、今日は基本的にはデータを取るだけで、分析には一週間程度また時間がかかるらしい。そりゃそうか。
それから僕達はようやく鳥満博士の実験室へと移動して、また別の検査が始まる。
今度は立ったまま体中や頭にペタペタと無数の電極を貼られて、しばらく安静にしているように言われる。おそらく神経とか脳波とかそういう感じのものを調べているのだろう。続いて簡易ベッドの上に横になって、またしばらく計測。そしてその後は……。
「ランニングマシーン?」
「そうじゃ。君の運動中のデータも必要じゃからの」
うげぇ。ランニングマシーンって、あんまり好きじゃないんだよなぁ。景色が変わらなければ風も感じないので、どうも走っている感じがしないし、どれくらいの速度で走っているかがぱっとはわからないから。
まぁ、文句を言ってもしょうがないんだけどもね……。
「それじゃ始めるぞ」
そして足元が動き出す。普通のランニングマシーンならば、足元の動く速さが手元の液晶に表示されるから、それを見て足を動かせばいいのだけれど、今回はなぜか液晶が消灯しているので足元だけの感覚で速度を掴まなきゃいけない。なんというか、ひどく精神的に疲れる。勾配の変化はもともと足の感覚に頼ってる部分が大きいからまだマシなんだけどね……。
そうして、30分くらい走ったところでデータが取れたのか、ランニングマシーンは速度を緩めてやがて止まった。そして一休みしてから電極を外し、そのまま次の検査へと移る。
こんな感じで、午前中はほぼ普通の検査を受け続けていた。フィットネスバイクを漕いだり、肺活量の測定をしたり。
正直なところ、わざわざ鳥満博士のところでやる必要あるのかと疑問に感じるような検査ばかりだ。もちろん、意味があるからこそやってるんだろうけれど……。
「お疲れ様」
「……正直な感想言っていいですか」
「わざわざここでやる意味がない、違う?」
「え、なんで」
「顔に書いてある」
そんなわかりやすい顔してたんだ……。
「でも、それは違う。あの実験室で、運動機能試験をすること自体に意味がある」
「……といいますと?」
「あの部屋の壁、センサだらけ」
あ、そうか。体中に電極を大量につけていたからそっちばっかり気にしてたけど、何もセンサーはそこだけに限ってなかったのか。
「超次元方向からの力の供給があれば、僅かな揺らぎが発生する。壁のセンサはそれを検知してる」
「だからこの部屋で……」
「そういうこと。それとナリタスカイ号の技《イミグレーション》、この2つでこの実験室の外から中へと流れ込むものを把握できる」
なるほど。スカイさんってそんなことできるのか。
……あれ? でも、確かウェヌスから力を得るのって。
「ちょっと待って。チッキはそっちで預かってもらってるはずですよね?」
「うん、預かってる」
トレイナーが超次元を通じて
「佐倉さん。それで、どうだったんですか」
「データ見てないし、聞いてもない。まだ」
「じゃあ分かったら」
「勿論」
その後午後も一見ぱっとしない地味な検査が続き、15時頃に採血をして全ての検査プログラムが終わった。
そしてスカイさんに見送られて、僕は3号館を後にしたのだった。