ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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4レ後:仮説検討

 部室に、いつもいる人がいない。

 そういった異常は、数回程度ならばまぁそんなこともあるかで済まされてしまうが、あまりにも長く続くと流石に無視できなくなってくるものだ。

 

「さて、今日はここまでにしようか。お先に失礼するよ」

「じゃ、私は研究室に」

「2人とも、じゃーねー! また明後日!」

 

 その日も活動が終わってすぐ。佐倉さんは研究室へと飛んでいった。普段は研究の一部ですらリモートと称して部室で行う彼女が、だ。

 

「佐倉先輩、最近忙しいのかな?」

「まぁ研究なんてそんなもんだろ。俺も突然死にそうなくらいタスクが生えてきたことは結構あるからな」

 

 なんだか申し訳ない。

 僕は彼女がここまで忙しくなった理由を知っているどころか、その原因が僕にあることまでなんとなく察せてしまっている。

 

「山根君はどう思う? 最近の佐倉先輩」

「……いや、成岩さんの言う通りじゃないですかね」

 

 とはいえ、研究の内容には守秘義務が入ってしまっているので僕の口からは言えないから、こうやって誤魔化さざるを得ないのだけれど。

 うーん、なんかもどかしい。せめて結果出たら受け取るときに研究室に菓子折り持ってこう……。

 

「……」

「成岩先輩?」

「いや、何でもねぇ。……そういや山根、来週の火曜の終わった後予定空いてるか」

「特に予定はないですが……何です?」

「昼にコダマ号から予定あいてるか聞いとけって言われただけで、詳細は俺も知らん」

 

 直々にコダマさんから飛んでくるってそれ絶対面倒くさいやつじゃん。

 そして内容もまぁ、なんとなく想定できる。うん。

 僕は()()()へと視線を向けた。

 

「コダマのおじちゃんとお話? ポラリスついてっていい?」

「ついてくるも何もお前の話だからどっちにしろ出席させるぞ」

 

 ……まぁ、こういうことである。そもそもベーテクさんかポラリスが関わらないとコダマさんが僕の予定を聞いてくる理由なんざ存在しないわけで。業務の範疇だから別にいいんだけどさ……。残業手当出るし。

 

「……はぁ」

「なんか、お疲れ……」

「別にいいんだけどね、遅かれ早かれ誰かがやらなきゃいけなかったことだし……」

 

 むしろこうなるのがベーテクさんをキールとする成岩さんと同じユニットに所属する僕で良かったと結果論では言えるレベルだ。全く関係ないトレイナーにあの執着心を見せちゃったりしたらそりゃあもう大変というよりは最早事故レベルだし。

 もっとも、その場合はベーテクさんがミッドランドには行く事はなかったような気もするけれど、それはそれだ。

 

「この前はゴメンね、本当に……」

「いいって、誤解だったんだし。それに成岩さんの方が明らかに大きいんだから僕ばっかり文句を言ってもいられないしね」

 

 成岩さんは自宅でまでポラリスを預かって面倒を見ている。にもかかわらず、あの人疲れていたりする素振りを全く見せていないあたり結構すごいと思う。

 そんな彼らの方を見れば。

 

「えっでもポラリスは予定とか、聞かれてないよ?」

「もともとお前にゃ俺達関わらない予定はねえだろうが」

「たしかに、ないけどー!」

「あるなら当然考慮するから言えよ」

 

 微笑ましいような、少し引いてみれば案外そうでもないような酷いやり取りをしている。多分ベーテクさんが引き取ってからずっと一緒にいたから馴れてるってのもあるんだろうな……。

 僕があそこまで馴染めるのはいつになることやら。

 


 

「お帰り、サクラちゃん」

「ただいま。解析どう?」

「ぜんっぜん。一応()()()()()()()()()()()()可能性も調べといてって言われたけど、そうだとすると逆に弱すぎるのよね」

「うん、これまで接してきてそれは絶対違うと思う」

 

 ()()()()()()は、姉から資料を受け取りながら投げかけられたその言葉にそう返した。

 

「じゃあ、他にどんな可能性があると思う?」

「今朝スカイが言ってた通り、ヒトがノリモンに成る、そのメカニズムの最中?」

 

 ヒトがノリモンに成れるのか。余りにも単純なこの命題は、驚くほどに先行研究が存在していなかった。そもそもノリモノイド自体がヒトを模した姿かたちをとるように変化したものであるから、ヒトがそうなっても恐らく外見上変化はまったくない。それは、仮に()()()()()()()()例があったとしても、観測されていない可能性が高いことを意味する。

 

「あり得ると、サクラちゃんは考えてるのね」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「だったら、どこかの新車のデータを持ってくるのが一番比較には適してるのでしょうけど、計測したことってあったかしら……」

「車両にノリモンが宿るメカニズム、安慶名博士とか?」

「うーん、あそこって超次元的な解析まではやってはいなかったと思うのよ。そもそも、鳥満博士(ボス)に言われてるのだけれど、ロケットの子のお話だからあんまり彼を知らない他のラボの方達を巻き込みたくないのよねぇ」

「だとすると、事業者との調整、データ取り……最低、3ヶ月」

「データを取っている間は他のこともできるとはいえ、流石に長いわね……」

 

 ふたりの顔は、一気に険しくなった。

 そして、少し間をおいてから、1つの提案が出された。

 

「それ、ノリモンなら何も鉄道車両じゃなくてもいいのよね、だったらもっと短くなるんじゃない?」

「そっか」

 

 とは言えど、それでも月コースは確実。だけれども、ふたりの間では未知に対する好奇心が面倒くささを上回った。

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