「おいコダマ号。
「そら言ってませんもの」
「言えや事前に」
話し合いが始まるや否や、まず成岩さんがコダマさんに突っかかった。
「これ俺らいる?」
「いずれわかるさ。話の中で必ずその時は来る」
そして机の反対側では帰ろうとするブライトさん達をヒカリエターナルさんが引き止めている。なんか巻き込んだ形で申し訳ないような、とはいっても勝手に押しかけてきたんだから自業自得のような……。
とりあえず、うん。
「まずは本題に入りませんか? なんとなく要件はわかってるんですけど」
「まぁ、俺がいるからな。山根トレイナー、君の察する通りだ、と言っておこう」
やっぱり。
「巻き込んどいて分からねー話をしないでくれ」
「そうだな、改めて言おう。本日俺がここに来た理由はズバリ! 正式に決定したのだ、『鉄道の日記念メガループ』に!」
「だから何がだよ!」
やっぱりそういうことだったか。
ブライトさんらには悪いけど、僕達はその言葉で何が決定したのかを即座に把握した。しっかし、一体、ヒカリエターナルさんは何を思ってこのふたりを……?
「まぁ、お二方には何の話かはわからないでしょうから、本人の口から話してもらいますわ。ポラリス」
「うん、ポラリスね、レースに出ることにしたんだ!」
「今、何と……?」
そしておそらくそれを聞いて動揺するだろうなと予想していたナマラシロイヤさんが案の定明らかに動揺している。
まぁ、ポラリスの事情を知っていたのだから、そりゃこれ聞いたらこうなるわな……。というか、ここに来てベーテクさんが工場の人達にきちんと連絡入れてたのか心配になってきたぞ……?
「ナマラシロイヤ号、だっけか? 一応言っとくが、この話はポラリスやベーテク、コダマ号も含めて話が纏まっている」
「驚愕。しかしそれは……」
「もちろんリスクだってわかってる。それでもなお、ポラリスの希望を優先することにした」
「だが、俺もコダマも忙しく、彼らトレイナーのお二方はレールレースに関する知識はないと聞いている。故に彼女には関わらせるべき者を増やさねばならぬ。今ここで行わんとしていたのはその話だったのだが。どうやら
あ、なるほど。そういう事か。つまりこのふたりがちょうどここにいたから、これ幸いにと引き受けさせるつもりで巻き込まれた訳だ。
何せふたりともレールレースを走っているのでルールや注意事項を熟知しているし、何より既にこの場にいる――ポラリスを知っているのだ。それに間違いなく、コダマさんはナマラシロイヤさんとポラリスが同郷であったことまでも把握している。つまりポラリスの存在を知っていたか否かに関わらず、ポラリスが成った頃のその地の社会情勢――ベーテクさんの言葉で言えば、
「拝承。私に引き受けさせていただきたく。まだデビューランを終えたばかりですので、力不足ではありますが、何卒」
「うむ、よろしく頼もう」
「よろしくね、ねー……あっ、ロイヤ!」
ナマラシロイヤさんは、話の内容を察するなり即座に頭を下げた。彼女の中にこれを引き受けないという選択肢は無かったようだ。
「なー、コダマ号よー。これそーいうことだよなー?」
「察しが良くて助かりますわ」
「……しゃーねーな。後輩のためだ、このスーパーブライト、やってやりますよー。どーせ面倒見るのがロイヤひとりからポラリスも含めたふたりになっただけだ」
そしてブライトさんも流れるように陣営に引き込まれた。口調はイヤイヤで仕方のない雰囲気を出しているが、その顔を見ればそれが本心ではないのは明らかだ。テールライトピカピカ光ってるし。
「んで、エタさん、ポラリスの陣営はここにいるあんたら以外の5名ってことになんのか」
「強いて言えば、今英国にいる2名も含まれるだろうが、国内ではそうだな」
「俺らもなのか……」
「あなたベーテクのところのトレイナーでしょうに」
……あれ、しれっと僕もなんか巻き込まれてる気が。いろいろ僕が元凶になってしまっている面も多いし、ポラリスとトレイニングできるのが僕しかいない以上頼まれたら引き受けるつもりではあったけどさ。
「なるほどなー。ま、これからよろしくなー、嬢ちゃん」
「うん、よろしく!」
しかして、ポラリスがレースに出る本格的な準備が始まったのだった。
「ところでブライト。貴様ここのところはほとんどレースに出てないようだが」
話し合いの終わったあと、不意にヒカリエターナルさんがそう切り出した。
どうも僕がブライトさんがレースで走ることを知らなかったのは、彼が公式に最後にレースに出たのがもう10年近くも前でそもそも見たことがなかったのが理由のようだった。
「
「つまりまだラストランをしたわけではないと」
「まーな。つーか、仮にラストランすることになってもエタさんみてーに大々的にするつもりはねーからな」
「そうか」
「ま、走りたくなったら走るさ、それが俺の性にゃーあってる。ま、いつになるかは知らねーけど」
ブライトさんはおどけながらそう言った。今のレースに彼の走りたくなるようなものはない。その言葉が意味しているのはこういうことだ。
それを受け取ったのか、ヒカリエターナルさんの顔は少しだけ険しくなった。
「これだけは伝えておこう。貴様の走りを見たいと思っている者、待ち続けている者は決して少なくはないと」
「物好きな奴らもいるんだな」
「それだけ貴様の走りが素晴らしいものであった事の証左よ。……そうだな、協会のメンバーとして、そして【
「おー、やってみな」
それからふたりは、ガシリと握手を交わしたのであった。