ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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6レ前:店長

 ポラリス陣営が固まって少しした頃。とりあえず週に数日はロイヤさんにポラリスを預かってもらえるので僕達の方も少しだけ余裕が増え、情報収集や自分の訓練の方にも割く時間が生まれたり、久々の丸一日の休日が発生したりした。

 今日はその貴重な休日なので久々に羽を伸ばさんと西国分寺の都立図書館まで行こうと思っていたのだけど。

 

「どうして僕は担がれて運ばれてるんですかねブライトさん」

「うるせー、人間様は黙ってノリモンに運ばれてればいーんだ」

「うわ、らしくないですね」

 

 ブライトさんから連絡があって、新小平駅で少し顔を合わせることにしたらこれである。これ絶対誰かの差金だな。

 そうして暫く輸送されていると、これまた懐かしい顔に出会う。

 

「ご無沙汰してます、瓜生先輩」

「久しぶりね。……そっちもそうなのね」

 

 ……僕と同じように担がれて運ばれている。

 そしてその運んでいるノリモンはヤチさん。ここまで来れば、もう誰がこんなことをさせたのか察しがつく。

 

「店長戻ってきてるんですか」

「そーいうことだ、諦めろ。俺だってこんな目立つ手段取りたくねーし普通に連れてくりゃいーだろって言ったんだが」

 

 店長の判断基準は至って明確だ。

 面白いか、面白くないか。それだけである。ぜひ巻き込まれる側の身にもなってほしい。

 

「なんか、ご苦労様です……」

 


 

「やぁみんな久しぶりだね! 元気してた?」

「元気してたも! 何も! 一番! 連絡取れなかったの! あなたでしょう!」

 

 購買部の店長、ゲッコウフィートさん。そんな彼にツッコミを入れるのは在庫管理の鬼、ヤチヨダイスカイさん、通称ヤチさんだ。

 僕とブライトさん、ヤチさん、そしてヤチさんをキールとする瓜生先輩。購買部には数十名ほどが所属しているけれど、その中ではこの4名はよくシフトの時間も重なるので一緒に動くことがよくあった仲だった。

 

「まぁまぁヤッちゃん、落ち着いて」

「落ち着ける訳、ないでしょうがあぁっ!」

「そのへんにしとけー、俺は店長の話を聞きたい」

 

 店長に張り付くヤチさんをブライトさんが引き剥がす。

 

「ありがとうね、ブライト」

「後で一発殴らせろ」

「なんで」

「後でな、とっとと本題入ろーか莫迦。リニューアルオープンはいつなんだよ」

「ふたりともなんかひどくない?」

 

 そうは言いながらも、根は真面目な店長は資料を全員に配りながら話を始める準備に入った。

 

「さっきブライトがチラって言ってた通り、今日僕がみんなを呼んだのは、ズバリリニューアルオープンが来月、9月の半ばに決まったからなんだけどね」

「最近まで決まってなかったように聞こえるが?」

「ちょっと工事業者が混み合っててね……」

 

 どうもただでさえ供給不足の土建業界で工事も遅れ気味なのに、半導体不足もあって機械類の納期も怪しくなり、工事の終わる時期が見通せるようになったのはもうお盆が明けた後だったのだとか。だいぶギリギリだ。

 

「ま、そういうわけだから、シフト希望調査出しといてね!」

「どこに出せばいいのよ、工事中なんでしょ?」

「普通に構内便で購買部に送ってくれれば、僕のもとに転送されることになってるけど、言ってなかったっけ?」

「「聞いてない」」

 

 そうでもしなきゃ取引先に迷惑かけちゃうかもしれないじゃん? などと宣っているけれど、取引先にかかる迷惑を想像できるのならぜひとも部下にかかる迷惑を想像して頂きたいものである。

 ……無理か。対外的なところは割と真面目にやるのに身内に対してはその配慮が全て「面白そう」で消し飛ばされる方だ、この店長は。そのくせ本当に面白い企画を出して売上上げたりしているからたちが悪いというか、優秀というか……。

 

「とりあえず、月末までには送ってね。それと……」

 

 あ。店長の目が光った。これは何か企んでるな。

 

「さぁ、みんなまた集まったんだし、リニューアルオープンセールの始まりだァァァ!」

「落ち着いて、店長。まだオープンは半月先だって」

「……ったく。懐かしいなこの感覚。店長といると本っ当に疲れる、だけどそれがいい」

 

 ……良かった、まだ常識的な企画で。たぶんリニューアルオープンセールなら普通のお店でもやってるはず。

 そう思ったのも束の間。

 

「というわけで、何をセールしたいかのアンケートがシフト調査のところについてるからそこも忘れず記入しといてね」

 

 あっ駄目だこれ。

 間違いなく始まる。大喜利が。

 そしてそれを何故か採用してしまうのがこの店長なのだ。

 うん。クシーさんのところに行く前にも瓜生先輩から聞いていたけれど。

 

「クシーさんの下でも、ユニットでも結構いろいろな訓練をしてきましたが、やっぱり想定外のアクシデントへの対処法という意味ではここの購買部が一番ですね……」

「いろいろ話題になってる君でもそうなんだね……」

 

 何か理解できないことがあったときの対応を落ち着いてできるようになったのは、だいたい店長と綾部のおかげである。綾部もたいがいひどいけれど、実行してきたことの規模の大きさで言えば、今のところは店長の方が勝っている。

 

「まぁ、現場じゃ何が起こるかわからないですし、これも訓練の一環だと思うことにしますよ」

「その訓練、生かされないと思うわよ」

 

 瓜生先輩の正論が僕を襲う。

 とはいえ、そもそもこのような訓練なんてものは生かされない方がいいに決まっているので、それを願ってやっていくより他ないだろう。

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