ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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6レ後:試運転

「それじゃあまずは、エンジンだけを使って走ってみようか。まずは全部1速で」

「はーい」

 

 ドドドドドドド。けたたましい音を上げてエンジンを起動させたポラリスが、ラチ内の周回軌道を走り出した。

 今日は早速、ポラリスの性能確認試運転だ。様々な条件でポラリスに走ってもらって、速度やスタミナの時間変化を調べる。このデータがあって初めて、ランカーブを書くことができるのだ。

 とはいえ、ポラリスの場合は走ればその走行データを自動で記録するシステムが車の頃からついているから、ただ普通に何周か走ってもらうだけで欲しいデータが手に入る。それも、足を動かさないで走るのだから補正する必要すらない。そんなものがなかったブライトさんの頃は、データを取るだけでもかなり苦労したのだという。

 

「なー、山根。1つ()ーていーか。嬢ちゃんのスタミナ源ってフューエルであってるんだよな」

「そうですね、蓄電池は載ってますけど、蓄電池なだけでバッテリーユニットではないです」

「で、回生ブレーキも使える、と。ルールの隅をつくよーな存在だな……」

「そうなんですか?」

 

 ブライトさん曰く。

 初期段階で持てるスタミナの量は、バッテリーユニットに比べてフューエルユニットの方が優遇されているらしい。その理由が電気車は大体が持っている発電ブレーキや回生ブレーキ。これらのブレーキは、減速して運動エネルギーを減らすときにスタミナを同時に回復させてしまうことができるからだ。

 そして、大抵の場合これ以外でスタミナをレース中に回復させることはできない。技を使って回復するようなノリモンもいないわけではないけれど、ほんの一握りだ。だからこそ、エネルギーを戻せないフューエルユニットは最初に入れられる量が多く設定されているのだとか。

 

「つまり、フューエルユニットに回生ブレーキの組み合わせは考慮すらされていない、と」

「そもそもが意味不明だしなー。そーいう面ではかなり嬢ちゃんにゃ有利なルールだ」

 

 僕知ってるよ、そういうのって数年暴れたら規制されるやつでしょ。

 それかあるいは、蓄電池を外せって言われるか。ポラリスの場合は蓄電池無しでも走れない訳じゃないけれど、その場合完全にモーターがただのお荷物になってしまう。かといって電気車扱いにすればと言ったところで、蓄電池の容量は……。

 

「……蓄電池容量、電気車のノリモンのバッテリーユニットと比べたらもうどうしようもないってわかりそうなものですが」

 

 車だった頃の速度ならともかく、今のノリモンとしての最高速度から回生だけで停まろうとすると下手したら回生失効する。回生失効とは、回生ブレーキで生み出した電気エネルギーに抵抗がかからなくなることで回生ブレーキが運動エネルギーを奪えなくなり、速度が落ちなくなってしまう現象のことだ。

 それがポラリスの最大の弱点で、彼女はそれを本能的にわかっていたのか初めから空気や排気――エンジンの排気弁を閉じて強力にした機関ブレーキだ――を併用して停まることが多い。逆にそんなことを知らなかった僕は停止直前まで発電ブレーキをかけるクシーさんの走りのクセで、しょっちゅう回生失効させて慌てて空気ブレーキをかける……なんてことがベーテクさんに指摘されるまではよくあった。

 

「多寡じゃなくて有無だからなー。そのへんの判断するのは協会で俺等じゃねーけど」

「難しいですね……」

「まー俺は国際ルール考えると意外と変わらねーと(おも)ーけどな。ヨーロッパじゃ電気式気動車のランナーは少なくねーから」

 

 ヨーロッパの電気式ディーゼルのノリモンも、発電ブレーキを持っている者はいても、それは車だった頃の発電ブレーキと一緒で熱として捨てるだけでフューエルユニットが回復することはない。そして彼らの中に蓄電池を持っている者はいない。つまりはポラリスが持っているのがフューエルユニットである限りは、規制しようとしたところで厳しいだろう、というのがブライトさんの見解らしい。

 

 そんなルールの話をしていると、ちょうど渡した全てのプログラムが終わったようで、ポラリスが戻ってきた。

 

「それじゃ、データもらうよ」

「うん!」

 

 ポラリスの()()の端子からケーブルを繋ぎ、ブライトさんが持ち込んだ端末へとデータを移す。

 その最中、既に移し終わったデータを眺めるのだろう、ブライトさんの顔が少し険しいものとなっていることに気がついた。

 

「なー嬢ちゃん、なんでここ一旦加速やめたんだ?」

「んー? あ! ここはね、充電してたの」

「蓄電池ってそんなに容量ねーのか……。そして充電中はモーターで加速はできねー、と。なるほどなー、あくまで電気は補助か」

 

 それから続いて転送された各ギアでのエンジンのデータを一通り眺めると、今度は逆に笑いだした。どうも今日のブライトさんは感情の波が大きい。

 

「なー山根。嬢ちゃんって本則+(プラス)いくつまでいける車だったか?」

「さぁ……。ポラリス、わかる?」

「50」

「だって」

「そうか。なら今なら……。これはアレだな、超高速域の伸びはいまいちだが、区間新記録くらいは狙えるかもしれねーな」

 

 ブライトさんはそう言いながら、にやりと笑った。

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