新小平に戻り、情報整理のために招かれた部屋で僕達が聞いたのは、にわかには信じがたい報告だった。
「人為的に、ノリモンをクィムガンに……?」
「はい。アウリガとエクレウスが向かった先からは、そのような目撃証言が」
「それは……事実だとしたら、大変で大変だ」
うお、早乙女さんの語彙力が溶けてる。
こんな状況の早乙女さんを見たことは今まで一度もなかったので、おそらく相当に動揺しているのだろう。
「ウルサの向かった先では、何かイレギュラーはありませんでしたか」
「イレギュラーは、イレギュラーだ」
あっこれは相当駄目なやつだ。答えが答えになってない。
僕達は顔を見合わせてから、早乙女さんの肩を叩いた。
「リーダー、俺から話すから一旦休んでな」
僕と佐倉さんとで脇の下から早乙女さんを持ち上げ、ソファーに座らせる。彼は一度顔に手を当ててから、言葉をひねり出した。
「……すまない」
「そのために、5人いる」
早乙女さんはなにか言いたげな顔をしてから、一度首を横に振った。
「頼む、成岩君」
「任せとけ。報告する、俺等の向かった先では、現地警察がノリモン2名をラッチに巻き込んでしまっていて、俺等が入場したときにはほぼほぼその巻き込まれたノリモンによりクィムガンは無力化されていた」
「それは……ずいぶん無能な警察官と有力なノリモンですね。それ以外に情報は」
「ない。警察と情報共有する前に巻き込まれた2名の救出のために入場し、出た後は即刻帰還命令だ。巻き込まれた2名の証言も含めて、警察からの報告を待つしかねえ」
あの警察官がきちんと報告まとめられるかには割と疑問符がつくけれど。さすがに本署まで行けば他の警察官も対応に加わってくれると信じたい。
「入場前に情報共有をしているものだと想定して帰還命令を出したのですが、事情が事情ゆえ仕方ありませんね。他になにか気がかりなことは?」
「んー、ただ1つあるとすりゃ、帰路で確認したことだが、ユニット全員が入場時にその空気に違和感を覚えていた。ベテランのリーダーから新人の北澤山根まで、全員が、だ」
「違和感、ですか」
「あぁ。気がついたら消えていたが……」
確かあのクィムガンが消える直前くらいまでは、妙な違和感があったのを覚えている。
「それと、あの最後の攻撃もアタシは初めて見たかな。知らないだけで、似たようなのがあるのかもしれないけど」
「……いや、私も見たことがないな」
「あの内側からクィムガンを喰らい尽くすかのように強く光ったやつですよね」
「わかりました。一度報告書にまとめて下さい。3ヶ所全てのクィムガンの報告書も届き次第、全て纏めてこちらで精査します」
その言葉の指す意味は、明確だった。
「つながっている、と考えて」
「そこも精査すれば結論は出るでしょう」
それから全現場の撤収が終わるまで、僕達は部室待機で報告書を仕上げることになった。
「さーて、みんな戻ってきたね」
スタァインザラブは集まったメンバーを見て、満足げにそう発した。
「さっそくだけど、どうだったか報告してもらうよ。まずはブゥケから」
「一言で言えば、失敗。すぐ嗅ぎつけた野良トレイナーに見つかっちゃって、ラッチを貼られておしまい。状況的には、この前のシャワァのとおんなじ」
「やっぱりラッチ、アレはどういう仕組みなんだろうね。通れるのがトレイナーだけだなんて。……次いこっか、ジュン」
「大成功。リロンチもさせられたし、何より警察がトチって俺ごとラッチに入れたからな」
「……へぇ! それは!」
スタァインザラブは、ジュゥンブライトの手をとって喜んだ。
「リロンチの最中にJRNのトレイナーがやってきたけれど、なんとかボロ出さずには誤魔化せたと思う」
「それはよくって、気になるのはラッチの方だよ! アナタから見て、ラッチはどういうものに見えた?」
「ラッチってのは、言うなりゃ結界だ。あの内側は人造的な
次元と領域は類似した概念だ。この世界のの中のシステム化された空間で、その内部に意識体が発生しうるものを次元、しえぬものを領域と呼ぶ。そして、どの次元や領域にも属さない残された空間がどこでもない
ジュゥンブライトの考える、ラチ内の空間は領域であるということは、
「なるほど、別の領域かぁ。それは厳しいね。今度Cycloped様に聞いてみるかなぁ」
「Cycloped神に?」
「うん。あの方、いくつかの次元を行き来しているみたいだからね。じゃあ最後、リング。どう? 上手く行った?」
「……Negative。見られてしまった」
「見られたって、何を?」
「全部だ。ヤバいと思って飛んで逃げたからオレだってことはわからなかったと思うが、祝福を与えたところから一時的にクィムガンになってしまうところまで全てを」
「そっかぁ。アナタはしばらくは今まで通り裏方だね」
「かたじけない……」
「いいのいいの。今回はアナタ達が実際に動いてどうなるのかを見たかったのもあるから。他の方に適性があるのに適性が無いってわかってることをさせるほど、ボクは無能じゃないからね」
スタァインザラブは笑顔でそう言いながら、頭を下げているエンゲヰジリングの肩に手をおいた。