「って感じで、不思議な出動だったんですよね」
「うーん、レオミノルじゃそんな変なのあたったことないなぁ」
店長に指定された集合時間の前。たまたま前入りしていた瓜生先輩――レオミノル・ユニットに所属している――との話の中で、話題は自然と半月ほど前の不思議な出動に移っていた。
「でもあのレポートに書いてあることが本当だったら、ヤバいよね」
「ヤバいですよねぇ。ただでさえJRNまで要請が周ってくるクィムガンってラッチがなかった頃は酷い被害を出してたのに、それが人為的に引き起こされたら、それはもう……」
「テロよ、テロ」
結局、まとまった報告書では3か所の発生自体は関連があるとは断定されなかったけれど、同一の人物あるいは組織によって引き起こされた可能性を完全に否定することはできない、といった結論が出ている。
これ、そのうち今は週に2日半のユニットでの活動がそれぞれたとえば3日とかになったり、あるいはユニットの活動ではなくともユニット全員がJRNの敷地内のみで済む活動に限定されたりする日や時間帯ができたりするんじゃんじゃないだろうか。
「JRNにできることなんて、備えることくらいだから。みんなで頑張らないとね……」
結局は、瓜生先輩のこの言葉が全てなのだ。クィムガンが発生する条件が解明されていない以上、JRNはクィムガンが発生してからしか動けないのだから。
そんな話をしていると、ぼちぼち時間も過ぎて約束の時間に近づいて、部屋に集まる仲間の数も多くなってきた。この購買部にはノリモンとトレイナーが合わせて30名ほどが所属しているから、ほぼ全員が集まった形になる。
そして、自ら予告した時間通りに店長が現れたのだった。
「いやぁ、みんな! 本当に待たせたね! 来週の頭、月曜日についにリニューアルオープンだよ!」
と、言うわけで僕達は工事が終わり、まだ新築の内装の香りがプンプンとする購買部へと連れられた。
まだ商品は納入されていないから、ガランとした棚だけが並んでいるだけだけれど、それでもどこか懐かしい感覚が背骨を撫でた。
それから店長に案内されるまま、リニューアルオープンで変わったところを中心に見て回る。一新されたレジのPOSや、新しくできたカフェテリア――という名のただのイートインコーナーだ――、そして記憶にあるものよりは広くなっているバックヤード。正直、一年前のあの妙に薄暗くボロボロの購買部と同じ場所に作られたものとは思えないほどにきれいだ。
そして店内を周りつつ、店長は皆から出てきた疑問や質問に丁寧に答えていた。こういうところは真面目にやるんだよな……。
「本当に、また始まるのね……」
「やっぱりユニットでの活動だけじゃ寂しいですよね。他の人達みんな研究とかやってますし」
「それもあるけど、ユニットでの立場としてもね。購買部が休みだと備品の経費申請がこんなに大変だったとは思わなかったのよね」
瓜生先輩は遠い目をしながら言う。
「そうなんですか?」
「だってコピー用紙買うだけで見積もりとらなきゃいけないし、わざわざ検収もしなきゃいけないのよ?」
3月の改装のために休みに入る前はいろんな部署やユニット、ラボの方々が消耗品をまとめ買いに来ていた理由が分かった気がする、とは瓜生先輩の談だ。
というか、そんなんなのになんでリニューアルオープンの改装で半年も閉めちゃったんだ……。
「君たちは知ってるでしょ、古い設備だましだまし使っててもうボロボロだったこと」
と、頭の中で考えていたことに対して唐突に店長から答えがかえってきた。
「あれ、口に出てましたか」
「ばっちり」
店長曰く、本当は別の場所に新店舗作って今までの方から商品と店員はぜんぶ即日移転! で済ませたかったらしいのだけど、本部からその許可が降りなかったらしい。
「もしかして長々とやってたのって」
「いや、それはただ単に工賃抑えたかったのが本音だよ。腹いせもちょっとはあるけど」
あるんかい。
まぁ確かに検収には本部の方の立ち会いが要るらしい――ベーテクさんがなかなか来ないことに対して怒っていたのを覚えている――からこの半年は本部は大忙しだっただろうけど。関係ない方たちからすればとばっちりもいいところだ。
「予算絞る本部が悪いね」
「うわぁ開き直ってる」
でもこうなったからこそ、次にリニューアルが必要になったときには別店舗移転が認められるんだろうな。何十年先のことかはわからないけど。
それから僕達が一通りの設備を見て回った後は、全員で輪になって諸々の初回発注分を決めたり、あるいは棚に何をどう置くかの配分を決めたりしていたら、いつの間にやら日が落ちていて。帰り際に来週分のシフトを受け取って、あとはリニューアルオープンの日を待つのみとなった。