ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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11レ中:未来皇帝、ネオトウカイザー

「どうっすか? カイザー。調子は」

「絶好調だ。ギャラリーに不調なんて見せられないからな」

「いやそういうことを聞いてるんじゃないっすよ……?」

 

 ネオトウカイザーは、調整を続けていた。彼も彼をキールとするトレイナー、名松一志もまだ若く経験もない者同士であるが、だからこそふたりは気のおけない関係にまで発展しているのだ。

 

「まぁでも、そういう返しができるなら大丈夫っすね」

「おいそれはどういう意味だ……?」

「そのまんまっすよ。さて、今日は出走予定のノリモンのデータを持ってきたっすから、確認するっすよ」

 

 名松は20枚弱の紙束をカイザーに渡した。そこにはメガループへの出走が発表されている、カイザー以外の15のプロの走り方のクセや特性が細かく記載されている。

 

「毎回毎回よくこんなの調べてくるな」

「カイザーと会う前から単純にこっちはレースのファンだったっすからね。苦にはならないっすよ」

「そうだとしても、俺のような出てるレースが少ない連中の情報を集めてくるのはかなり骨が折れると思うが」

 

 カイザーは資料をパラパラとめくりながらそう言った。ノーザンフィールドやスカーレットセイロン、ナリタエクスプレスといった多くのレースに出てくる者から、デンエントシスズカケのようなカイザーと同様このレースをデビューランとする者。さらには今まで走ってきたレースとは全く違う性質のレースを選んできたアオキジェットまで、全てのプロ選手の細かなデータがそれぞれ1枚の紙に纏められている。

 それだけではない。この鉄道の日記念メガループはプロアマ混合レースだ。ゆえに事前に出走を表明している、注目を要するアマチュア選手のデータまでもを名松は集めきっていた。

 そしてそこから想定されるレース展開。マススタートにおいては非常に重要になる要素だ。それが事細かに、しかも数パターン記されている。本当にこのトレイナーは新米なのか? カイザーは訝しんだ。

 

「まぁ、プロランナーの方が分析はしやすいっすよ、動画だって残るんすから。そんで作戦はそこに書いてある通りっす。だいたいのパターンじゃ前半は飛ばしても南武線内のカーブで速度を殺されるから、車列に入ってスリップストリームでスタミナを維持して、多摩川橋梁あたりから飛ばすのに収束する感じっすね」

「だいたい、ということは例外もあるんだな?」

「アマチュア枠は予想がしにくいっすからね。例えば最終順位を気にせず、京葉線内で目立つためのアピールとして逃げに出るランナーもどうせいるんすけど、そういうランナーが車列を形成しちゃったらそれを利用して先頭集団の中でスタミナを温存できてしまうのが出るんすよ。だからそうなる兆しがあったらその時点でそこに加わりにいくべきっすね」

 

 長丁場のレースであればあるほど、スタミナ配分の重要性は増す。10マイル未満の短距離レースの場合はそもそもネックとなる場所が少ないから、とっとと加速して勢い任せに前に出る方が大体の場合有利になる。逆に今回のような100マイルを超える長距離レースになってくると、ボトルネックでの減速を織り込んだランカーブをなぞらなければ後半のネックからの再加速がまともにできないから、勝つことは絶望的になるのである。

 

「つまり全てはアマチュア次第ってことか」

「そうなるっすね。これだから混合レースは予想がしにくいってよく言われるっす。型破りなことをしてくるランナーは数多くいるっすけど、型無しのアマチュアと比べたらまだかわいい方っすよ」

「なるほどな。今までのレースでマススタートじゃなくてタイムトライアルばっか選んでたのはそういう事だったのか」

「そうっすね。一体何考えて帝王(キング)はこんなレースを指定してインビテーションを出したんすかね」

「そういう事を言うなや。前に俺達にいろんなレースを経験してほしいって言ってたし、それ以上の意味はないと思うぞ」

「そうそう。あんまりに君が選ぶレースがつまらないものばっかだったしね。わたしたちで決めちゃった」

 

 そう言うのはビシャスオサナジミ。カイザーと同じ、【帝国(セントラル)】に所属する先輩のノリモンだ。

 

「別にマススタート自体はいいんすよ、ナジミさん。ただアマチュア混じりなのがやりにくいだけで」

「到底デビューラン前に出るセリフとは思えないって」

「だってカイザーはもうアマチュアレベルなんかじゃないっすから」

「そうね。だったら気をつけなよ。アマチュアなのにアマチュアレベルじゃないのは、カイザーちゃん()()()()()()()()()()()()よ」

 

 ナジミはそう忠告した。既にここにカイザーという例がある以上似たような存在がいないとは断言できない。それに気をつけろと言っているのだ。

 そこには彼女がかつて失敗した同じ道を辿ってほしくないという、彼女なりの私情も乗っている。

 

「そうか。だとしても関係ない。プロもアマチュアも纏めてこの俺が」

「カイザーが」

「「倒す!」っす」

「その意気だけは褒めてあげる。でも、慢心してると痛い目を見るぞっ。ナジミさんは忠告したからね?」

 

 カイザーの額が、ナジミの人差し指により弾かれた。そしてその手は、弾き飛ばされたカイザーの頭を追って、その上に乗せられる。

 

「でも、応援してるから。カイザーちゃん、それに、新人トレイナー君も。【帝国】の実力、みせたげな!」

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