ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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回6レ:キールに名乗り出たボクのけじめ

 1号館。ロケットのなかで、主に研究をする者たちが根城にしている建物だ。

 今日僕がここを訪れたのももちろん、ここで研究をしている彼女に会うためだった。

 

「話は聞いてるよ。大金星だったらしいんだって?」

 

 ラウンジの端の方のテーブルで、彼女はそう言いながら僕を出迎えてくれた。

 

「あれは、プッピスのリーダーがぜんぶお膳立てをしてくれていたからです。それにその前には巻き込みまで起こしてますし……」

「ボクも報告書は読んだけど、あれは入ってきたのが悪いよ。クィムガンには設置型の攻撃をしてくるのだっているんだから、進路は必ず確認しないと」

「でも撃ったのは僕です。その事で相談したいと思って……」

 

 そう僕が懸念事項を伝えようとしたとき、クシーさんはそれを遮るように言葉を発した。

 

「なるほどね、キミが何を言いたいのかは分かったよ。だから先に言っておくと、ボクの武器は《桜銀河》ひとつだけ。これはラッチが開発されるよりも前、ノリモンが直接クィムガンに対応してた時代からね」

「じゃあ、その頃はどうやって味方を撃たないようにしてたんですか?」

「トレイナーには大きく逃げもらってたけど、その他は特に何もしてなかったな。ノリモンなら当たっても違う色のシールドは残るでしょ?」

「ノリモンが戦ってた時代でしか通用しない手段だ……」

 

 ノリモンは程度の問題はあれ五色のシールドを張ることができる。これはノリモンの一形態たるクィムガンも同じだ。だからこそ、《桜銀河》に巻き込んでも削れるのは黄色だけで済んでいたのだろう。

 だけど、トレイナーはノリモンではない。出せるシールドはどの派閥の攻撃でも割れる無色のものだけだ。クィムガンの攻撃はなぜかどの色のシールドにも通ってしまうので、そこだけ見れば全く問題がないけど、こういうイレギュラーには大きな差がある。

 

「でも、そっか。なんでこの程度の事で相談に来るのかなって思ったけど、確かにトレイナーだけで対応してるとけっこう死活問題だね……」

「考えてなかったんですか」

「たまーに演習とかでクィムガン役をやることはあったけど、ボクの味方としてのトレイナーがいることはまずないからね」

 

 確かに、必要がなければ考えることなんてないもんなぁ。

 ラッチが開発されてからは、クィムガンによる設備や民間人への被害は格段に減ったけれど、その裏でJRNのクィムガンへの対応方針を劇的に変えてしまった。その結果として、それより前の知見がけっこう役にたたなくなってしまったものだから、当時は大変だったということは少し上の世代の口からはよく出てくる。少なくとも国内の陸上については移行は完了してもう10年は経っているから、もう済んだ話だと半分聞き流してはいたけれど、まさかこういう形で自分が直面する羽目になるとは。

 

「ゴメンね、ボクも一緒に解決策を考えるから」

「え、クシーさんしばらく忙しくなるって……」

「いや、もともと今日は暇だったしね。それに、これは研修中にその可能性に気づかなかったボクの責任で、キミのキールに名乗り出たボクのけじめだよ」

 

 こういうのは実際にやってみるのが早いので、僕達は地下の演習スペースでちょっとした実験をすることにした。

 ノリモンはラッチを潜れないから、ラチ内へとノリモンを入れるためには、クィムガンをそうしているように閉じ込めるようにしてラッチを張るしかない。そうやって張ったラッチの中に入ると、彼女は既に黄色のシールドを貼って待ってくれていた。

 

「理論上は、トレイニングしている間なら全ての攻撃がその派閥の攻撃になるはずなんだ。とりあえず思いつく限りの方法でシールドを割ろうとしてみてよ」

 

 そう促されるままに、僕は拳で殴ったり、蹴ったり、高速で体当たりをしてみたり、あるいは準備されていたのだろう、彼女の横においてあった棒でシールドを殴ったりしてシールドを割ろうとした。

 でも、どんなに殴ってもシールドは割れることはない。クシーさんが強度の設定を間違えたのかとも思って試しに《桜銀河》も打ち込んでみれば、今度は5秒も経たないうちにシールドは割れてしまった。

 

「……どうしようねこれ」

 

 クシーさんは苦笑いをしながらそうこぼした。僕からは詳細なデータがどうなっているのかはわからないけれど、そんなものを見なくても明らかな事だった。

 

「とりあえずデータだけ言うね。棒で殴るのは全くシールドのエネルギーを削れていない」

「つまり、無意味」

「そうなるね。そして拳、蹴り、体当たりは……後で詳しくデータを解析してみないとわからないけど、たぶんシールドのエネルギー減少量は衝突そのもののエネルギーに比例していそう、なんだけど……。うん」

 

 まぁ、言わんとしてることはわかる。

 きちんとデータを覗いていないこっちですら、感覚で察せてしまうほどのものなのだから。

 巻き込みを忌避して小手先でなんとかしようと工夫をしたところで、あまりにも弱すぎる。そして結局はそれができるタイミングを逃し続けてでも、きちんと一度《桜銀河》を撃ち込む方がはるかに効率がいいという身も蓋もない結論。

 クシーさんの方ではそれに結びつく生々しいデータまでもが見えてしまってるんだろう。

 

 今ここでああだこうだ考えてもまったく有意義ではない。お互いにその結論に至ったことを確認した僕達は、この議論を当面先延ばしにすることにした。悪く言ってしまえば棚上げだ。天才のひらめきがなければ、この問題はおそらく先に進めない。

 だからこそ、将来何らかのタイミングで意外な授かり物を得られたときには、できるだけ速やかに連絡を取り合って議論を再開させよう、そういう話になったのだった。

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