さて、ブライトさんのノリでチームを結成した訳だけれど。
「そもそも、チームって何なんですかね」
「定義は特にねーよ。何名か集まりゃそれでチームだ」
うわすっごく雑な定義だ。というか定義ですらないよそれ。
「まー補足すると、一部のレースには確かに複数名でチームとなって走らなきゃいけないよーなのもある。耐久レースによくあるパターンだな」
「あぁ、あの宣戦布告された」
「いや、ムサ線24耐は補給のための並走こそあれど基本は24時間ひとりで走るイカれたレースだ」
「おかしいでしょ。……ポラリス、走れる?」
「がんばる!」
右手でVサインをしながら、ポラリスはそう元気に答えた。まぁ走れるって本人が言ってるし応援はしようか。
「あとはあれだな、チームだと一代限りにならずに名前が後々まで残ったりする。現にエタさんはとっくにラストランしてるけど、まだ【
「それの何がうれしいんですか」
「えっ」
「えっ」
僕たちは顔を見合わせた。大きな認識の差が、そこにあるようだった。
「私は名前が残り、後々まで伝えられることに喜びを覚えます」
「俺は別にどうだっていいな。きちんと仕事がうまくいって、それで1人でも多くが不幸にならずに済むのなら、名前なんて残らなくたっていい」
「ポラリスはみんなに知ってもらいたい、ポラリスのことを」
きれいに分かれたな。それもノリモンと人間とで。
ということはここの違いに何かがあるのだろうか? そう思って考えようとしたところで、前に佐倉さんから聞いたことを思い出した。ノリモンって模倣子の拡散が本能として存在するということを。
「なるほど、確かに
「だろー?」
ブライトさんいわく、最近はレース以外でも何かと様々な分野でチームを組むノリモンが増えているのだとか。もしかすると、JRNのユニットも今でさえトレイナーの集まりになっているけれど、最初の方はノリモンのものだったと聞くし、その制度が始まった頃はもともとそういう意味もあったのかもしれない。
そう考えると、チームを組むという事の意味が理解できてくるような気がしてきた。
「それで、だ。チームを組むとなると、アレが必要になるんだよな」
「アレとは」
「名前だよ名前。チーム名。そしてそれがそのまま俺たちのアカウント名にもなる」
基本的に星座の名前からとられているユニット名と違って、チーム名にそんな制限はない。そして制限が無いということは、逆に言えば決めるのが大変だということでもある。
こういうときは、雑に素案を誰かに出してもらってそれを軸にするのがてっとりばやい。
という訳で。
「ポラリス、何か案ある?」
そもそもがポラリスの為のチームだ。なので、僕はポラリスにまず尋ねることにした。
……しかし、帰ってきた答えは。
「うーん? 【円形広場だいすきクラブ】とか?」
……聞いたこっちがこんな顔をするのもなんだけど、ここにいる他の四名の顔が灰になった。
それで言うと、円形広場とは西国分寺の都立武蔵国分寺公園にある直径150mくらいの円形の広場のことである。体を動かすのにちょうどいいのか、はたまた何かに惹かれるのか、ロイヤさんやブライトさんのお気に入りの場所だそうで、最近はポラリスもそこによく足を運んでいる。
「……ポラリス、ちょっと話がある」
「なぁに富貴」
「あのな、もうちょっと抽象的な感じにした方がいい。それとチームって言ってるんだからクラブは不要だ」
「えっと、じゃあ【広場】?」
「抽象的がすぎるぞそれは……」
「まぁまぁ成岩さん、ここから考えていきましょうよ。ポラリス、なんでその広場っていう言葉を拾ったの?」
「広場ってさ、なぁんにもないじゃん。なのにみんな集まってきて、なんかいいなって」
「なるほどね、じゃあさ、どんな広場にしたい?」
こうやって、名前の要素となる種を拾っていく。そうすればポラリスの中にすんとおさまる名前ができるはず。
「なんだろう? キラキラしてて、ピカピカしてて、とーっても素敵な広場がいいな」
「キラキラ、ピカピカか……」
となると、光り輝く感じのイメージか。……よし、これにしよう。
「だったら、【かがやきひろば】とかどうかな?」
と、提案したのだが、すぐにブライトさんから待ったがかかった。
「『かがやき』はやめてくれ。なんか俺がぜんぶやってるみたいじゃねーか」
あっ。そういえばそうか。よくよく考えたら『かがやき』は英語にするとブライトだ。実際問題けっこうブライトさんに頼ってる部分はあるけど、本人がそれを望まないならそれをチーム名に入れるのはやめた方がいいな。
そう思って別の案を考えようとしたところで、ロイヤさんから代案が飛んできた。
「でしたら、【キラメキヒロバ】というのが宜しいかと。御一考頂きたく」
なるほど、煌めきか。いいじゃん。
「……うん。ポラリス、【キラメキヒロバ】がいい」
「決まりだな。山根は?」
「いい名前だと思う」
「いや『かがやき』が駄目だからって『きらめき』って、わかってやってるよなロイヤは……」
若干1名ほど頭を抱えているけれど、まあ似たような意味の単語でも、かがやきほど露骨ではないし懸念する必要はないだろう。だめだっていう主張もかがやきのときほど強くはないしね。
そうして、僕達のチームの名前は【キラメキヒロバ】に決まったのだった。