ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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14レ後:神託の預言者、スタァインザラブ

 クィムガンのシールドを割り切り、その対応は終わった。あとは帰って報告書を纏めるだけだ。

 ラチ内にいた11人のトレイナーは、みなそう思っていた。

 

 なのに。

 

「うんうん、やっぱりJRNのトレイナーは優秀だねぇ」

 

 この()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()真っ黒なノリモンは、一体何者なのだろうか。

 

「お主は何者か。吾輩はJRNの高山各務、トレイナー。それに、どうやってここに入った?」

 

 高山各務はそのノリモンにそう問うた。

 ありえない。ラッチの外から誰かが侵入してくることなど。

 

「これは失礼。まず最初の質問に答えると、ボクはスタァインザラブ。全てのノリモンの幸せを願ってやまないノリモンさ。そして次の質問だけど」

 

 高山がその質疑応答を続ける裏で、エクレウスとカリーナの両ユニットはすみやかにスタァを挟むように陣取って集まる。そして情報管理に徹していた早乙女もまた、トランジットをして駆けつけた。

 このノリモンが友好的な存在だと直ちには認められない。それどころか、その可能性はほとんどない。そこにいる誰もがそう感じていた。

 それを感じ取ったのだろう。スタァも強烈な威圧感を放ち牽制する。

 

「超次元領域(ゾーン)を通ってきた、それだけだよ」

 

 最初に動いたのはエクレウス・ユニットだった。高山と話をしている間なら隙だらけだ。そう考えての、あまりにも軽率な行動。

 

「野蛮だね、そういう教育なの? 《暁の望みは大陸に繋ぐ》」

 

 紫色の光が浮かんだ次の瞬間、エクレウスの5人のトレイナーのシールドは全て割られていた。その間もスタァは、しっかりと高山等カリーナを見続けていた。

 

「……貴様」

「正当防衛、ということにしてもらえないかな? 先に手を出したのは彼らだし、流石にシールドの割れたトレイナーにまで攻撃する趣味はないよ」

 

 スタァは苦笑いしながらそう答えた。そして一転、顔を強張らせて。

 

「それとも」

 

 次に威圧感が大きくなる。実力の差は、明らかだった。

 

「あなたたちも彼らと同じように野蛮なの?」

「……あまり、姫の仲間を侮辱しないで」

 

 それでも太多姫はその威圧感の中、声を震わせながらそう返した。

 

「確かに、いきなり攻撃したのは事実だから、そこは謝る」

「どうして、あなたが謝る必要が? 理性のある者がない者の尻拭いをするなんて、不毛以外に当てはまる言葉が無いよね?」

「……!」

「それにね、ボクは怒ってなんかいないよ。ただ火の粉を払っただけ」

 

 エクレウスとて、JRNのユニットだ。わざわざJRNにまで出動要請のかからないような並大抵のクィムガンなら単独で対応できる。

 そんな彼らを、スタァは降りかかる火の粉に形容した。その事実に、太多は声を失った。

 あまりにも格が違いすぎる存在だと、わからされてしまったのだ。

 

「さて。本題に入るよ。あなた達には伝言を頼みたいと思ってるんだ」

「頼まれずとも、ラチ内での全ては報告させて頂く」

 

 声の出なくなった太多のかわりに、高山がそう返した。

 

「そっか。じゃあ話が早いね――欠痕の門は閉じねばならない。かわりの門を用意した。そうあなた達のボスに伝えて」

「いかなる意味を孕むか」

「トシマ姉さんならわかるはずだから。じゃあね」

 

 次の瞬間、ラチ内を支配する威圧感が()()()。そして、スタァの姿も。

 

「どこに、消えた?」

 

 紀勢佐奈の、ようやく捻り出せたその声だけが、ラチ内に響いた。

 


 

「完敗。逃げられたんすよ」

「逃げられた?」

 

 成岩さんと出場してきた名松と一緒に担架を取りに行く道すがら、彼はそう伝えてきた。

 

「スタァインザラブ。そう名乗るノリモンが急にラチ内に現れて。こっちは手出しすらできなかったっす」

「言っている意味がわからないが」

「こっちも何が起きたのかはわからなかったっすよ……。ただ、あまりの威圧感に身体が動かない程だったっす」

「そんなに」

「だからどう報告していいか今高山さんと早乙女さんが詰めているところっす」

 

 もはや意味がわからな……いや、でも。

 あのSバーストの後の、どこでもないゾーン。あそこまで含めてラチ内だと思っていたけれど、あれはラッチの外側に抜け出していたのではないか? そう考えると……?

 

「……超次元」

「知ってるんすか? あのノリモンも言ってたんすよね、超次元領域(ゾーン)って」

「詳しくは知らないけれど、前に僕はラチ内で行方不明になったことがありまして」

「そういや君は長崎でそうだったっすね。反応薄い訳っす」

「こいつが矢鱈変な事象を引くだけだ。あんま参考にするな」

「言い方ひどくない?」

 

 そうやいのやいの言いながら担架を持ってラッチのところに戻ると、佐倉さんがラッチを開けてラチ内の10人が出てきたところだった。うち5人、エクレウス・ユニットの皆さんはその場に倒れている。

 到着していた保線区の方にも手伝ってもらいながら彼らを担架に乗せて川越線の線路から運び出す。応急処理と安全確認さえ終われば、もう間もなく運転は再開されるだろう。

 

 だけど、僕達が日常を取り戻せるようになるのはだいぶ先になるだろう。話を聞いているだけでもここ数ヶ月のクィムガン発生は素人目でも異常だとわかる。わかってしまう。

 そこに現れた謎のノリモン、スタァインザラブ。何かが起きない訳がない。それが何かはわからないけれど、そういった共通認識がここでは出来上がっていた。

 もう事態は既に、出発信号を踏んでいるのだ。

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